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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

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2024年4月3日水曜日

4月1日からの登記手続変更:外国人の方々の日本国内での不動産登記(国内連絡先)

ひさしぶりに日本のお話です。

大阪で不動産を購入される外国人の方々の手続のサポートなどしておりますが、この4月1日は、司法書士の先生など不動産登記に関わる方々にはなかなか難しい時期になっているようです。
様々なところで苦慮されているのではないかと思いますので、雑感を含めて、ここで書き留めておきます。


不動産登記法やそれに関する政令等の改正があり、日本国内に住所のない外国人の方々などが日本で不動産登記をする際に、4月1日から「国内連絡先」の登記が必要になっています。
2024年3月1日:令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

ここでいう「国内連絡先」とは、単なる日本国内の住所や電話番号ではなく、「所有権の登記名義人が国内に住所を有しないとき」に、「その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの」(改正「不動産登記法」第73条の2第1項第2号)です。
つまり、外国人の方が日本の携帯電話をもっていて常時連絡が取れるとか、日本に来た時に滞在する不動産を持っているとか、そういった事情があったとしてもここにいう「国内連絡先」としては足りず、日本に住民票のある個人か、日本に事業所のある法人を指定しなければなりません。
(用語として、「連絡先」ではなく「連絡担当者」とか「連絡窓口」とした方が誤解が無いような気もします。)

この法改正自体は前々から知っていたのですが、「国内連絡先」については「なし」で申請することもできることが早い段階で決まっていましたので、特段問題にならないだろうと見ておりました。
ところが、いざ制度が始まってみると、「なし」で登記申請をしようとすると、「国内連絡先となる者がないときはその旨の上申書(登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされたもの)」が必要とのこと。
もし国内連絡先として日本国内の誰かを登記しようとしても、その方の印鑑証明書と承諾書が必要になるという厳重さです。
まだしも「なし」で申請する方が簡単です。
(制度設計としては、本来はなるべく日本国内の連絡先を登記してもらった方がよいはずなのに、若干あべこべな感じもします。)
確かに、連絡先そのものについて地面師のような第三者に悪用されてしまう危険もありますから、慎重であるべきことも理解はできるのですが、なかなか厄介なところがあります。

立法の過程を見ていると、「国内連絡先」としては所得税・消費税に関する納税管理人のような委任関係のある第三者が想定されているらしいのですが、
誰かに国内連絡先をお願いしようとしても、国内連絡先になるとどのような負担が生じるのか、住所が変更になったらどうするのか、本人と連絡が取れなくなったらどうなるのかなど、分からないことが多いです。
比較的最近の政令改正に関するパブリックコメントの結果を見ていても、未解決の問題が多い中でスタートしているように見えます。
2023年10月4日:「不動産登記令等の一部を改正する政令案に関する意見募集結果について」

これでは、なかなか外国の方々に「国内連絡先」について説明するのも難しいですし、
日本国内で誰かに「国内連絡先」になってもらうようお願いするのも難しいような状況になってしまっています。
「国内連絡先になる方々へ」といったような手引きやリーフレットがとても欲しくなりますが、法務局の窓口には既にあるのでしょうか?
もしどなたかご存じでしたら、是非ご教示いただければと思います。

他にも、外国の住所の確認についてもパスポート(旅券)のコピー(これにもご本人の署名が必要。)が追加で必要になるなど、登記手続上、必要な書類が増えてしまっています。
いずれも外国から書類を取り寄せることになりますから、時間も手間もかかります。
登記手続が滞ってトラブルになってしまう例もありそうです。


日本では通常、改正法施行前に政令・省令・通達などが出て、研修会などもよく行われますので、施行日には実務対応は比較的分かりやすくなっていることが多いのですが、今回は比較的実務に大きな影響のある改正で、また改正項目が多かったためか、この外国人の方々向け対応のところまで固まっていない部分があるように思われます。
中国では、施行日直前まで細則規定が発布されず、施行後にようやく実務の対応が分かってくることが多いですので(場合によっては施行後随分経ってからようやく具体的な規定が出ることもあります。)、中国業務ではよく見る光景ではあるのですが、日本でもこういうことがあるのかと改めて感じました。


2023年6月1日木曜日

日本の話題: ショートメッセージ(SMS)データの編集(変造・捏造)

過去にセミナーでもお話したことがある話題ですが、最近改めて同じような話題を目にしたので、この機会に改めてブログに掲載しておきます。










この写真は、何年か前にとある事件で、【携帯に保存されているショートメッセージのデータを編集できるかどうか】が争点になったとき、詳しい業者さんに相談して実験してみたときの写真です。
私もその作業に立ち会って見せてもらったのですが、結果として、「送信元」も「メッセージの内容」も、きれいに入れ替えることができました。画像を加工することは当然、簡単ですが、携帯電話に入っているテキストデータも、技術的には書き換えることができる場合があるということです。
このときの実験では、送信元はもともとメールのアドレスだったのですが、それが特定の電話番号から届いたという表示に変わり、メッセージの内容の文字も違うものに変わっていました。私も知識としては、そういうことが可能だとは抽象的には知っていたのですが、実際に目にしてみると、やはり驚きでした。

チャットアプリのLINEやWeChatで同じことができるのかどうかは私も試したことがなく知らないですし、SMSについても端末によって異なるのかもしれないのですが、データである以上、同じようなことがあり得るのかもしれません。
場合によっては鑑定が必要になると思われますので、スクリーンショットやバックアップデータがあれば可と考えるのではなく、端末の元データを保存しておく(機種変更しても元の端末を保管しておく)ということも大切になってくるかと思います。

最近ではAIを活用したディープフェイクという技術も話題になっています。
なんであれ本物「らしく」見えてしまう世の中ですから、証拠は一つ何かがあれば良いというわけではなく、複数あるべきだと言えそうに思います。


2022年6月25日土曜日

(日本の話題)商法第512条、ご存じですか? (『サービス』の有償・無償について)

日本の商法には、商法第512条という規定があり、商人の行為は原則として有償である、つまり商人に何かを頼めば費用が発生するのが原則、ということになっています。
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日本「商法」
第五百十二条(報酬請求権) 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
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ちなみに、細かい説明は省きますが、会社の行為は通常は「商人がその営業の範囲内において」行ったものと推定されます。

これは日本の商法上のルールですから、一般の消費者の方々や外国人の方々はご存じでなくても当然なのですが、ご相談を受けてお聞きしている話からすると、どうやら商法が適用されることが当然であるビジネスの場面でも、稀に、「合意がない限り何を頼んでも無償」という誤ったご認識を持たれている取引先や顧客の方々もいらっしゃるようです。

ちなみに、取引先に「『サービスで』これもやってよ!」と無償で何かをさせるというのは、下請法が適用される場面では、不当な経済上の利益の提供要請ということで下請法違反になります。
また、下請法が適用される場面でなくても、優越的地位の濫用(独禁法違反)に該当する場合もあります。


この商法第512条が適用された裁判例というと、例えば、 仙台高等裁判所昭和48年1月24日判決があります。
 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/997/023997_hanrei.pdf
この事例は、不動産仲介業者に対して、不動産の購入を希望する者が場所、広さ、価格などの自己の希望条件を示し、これに適合する物件を探すように依頼して、現場案内まで受けたにもかかわらず、結局はこの不動産仲介業者を通さずに(仲介費用も払わずに)、あろうことか別の業者を通じてその物件を購入してしまったという事例でした。
もちろん、この最初に物件を案内した不動産仲介業者には一定の報酬をもらう権利があるという判決になっています。
不動産仲介の場面ではよくあるトラブルと言えると思いますが、もちろん、他の様々な業務の場面でも同じ道理が成り立ちます。
似たようなお話はビジネスの日常でもたくさんあると思いますが、裁判例としてはあまり数は多くないように思います。日本では暗黙の常識として、不義理なことはしないという商売上のルールを皆さんが守っておられるからかもしれません。


私が社会人になった当時はまだビジネス上の常識として、「タダより高いものはない」といいますか、他人・他社に何かお願いするときは気持ちだけでも何か費用をお支払する意識があったと思うのですが、もしかするとそういう意識も薄れてきてしまっている部分もあるのかも?というように感じました。
(たまたま私が一緒にお仕事をさせてもらった方々が常識をわきまえた方々だったから、ということでもあるでしょうけれど。)
日本の会社にもそこにお勤めの方々にも余裕がなくなってしまっているからなのか、寂しい気持ちもしますが、共存共栄でお仕事を円滑に進めていただくことを少しでもお手伝いできることがあればと思っています。

2022年6月15日水曜日

(日本の話題)日本国内で外国人間で交わされた契約の解釈(当事者間に周知の外国法の法理)

仕事柄、日本にお住まいの中国人の方々からのご相談を承ることもありますが、基本的なことでも、よく考えるとまだまだ知らないことも多いなと感じることがあります。


ともに日本に居住し、同じ国から来ている外国人の方々が、外国人同士で契約を締結しているとき、果たして、その契約に細かい定めがない部分について、どう解釈するべきなのでしょうか。

契約解釈は当事者の合理的意思によるべきと言いますが、外国人の方々が同じ国から来られている場合、その合理的意思は、よく知らない日本法ではなく、慣れ親しんだ本国法の発想に近い場合が多いのでは?という気がします。
この点、私も詳しく研究したことはなかったのですが、判例百選にも掲載された裁判事例があり、以下のような判示がなされていたようです。
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大阪高裁昭和37年10月19日判決
...わが法律(日本法)を準拠法とする場合においても、契約自由の原則の範囲内において、契約の内容の細目の定めをなさないで、その部分につき外国法の規定ないし当事者間に周知の外国法の法理に委ねることも許される。また現実にかかる明示的の指定がなくとも、契約の性質その他の諸般の事情から推定される当事者の合理的意思により定まる法律ないし法理により右契約を規律しうるものと解されている。...
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離婚や相続の場合は、法の適用に関する通則法で本国法になる場合が多いので分かりやすいのですが(外国国籍のご夫妻が夫婦喧嘩をしているとき、日本法を考えているとは到底思えませんので)、契約の場合は、多種多様でありケースバイケースで異なるところもあるので、なかなか奥が深いなと感じます。

このブログはあまり中国から来られた方々がご覧になることは無いと思いますが、一つ、何かのときにはご参考になればと思います。


2022年2月9日水曜日

(日本の話題)「顧客満足度No.1」を謳う広告について


昨年少しブログで言及していた「No.1マーケティング」(「顧客満足度No.1」などと謳う広告など)について、
「また後日どこかで」と書いたまま忘れていましたが、
日本マーケティング・リサーチ協会から1月18日に「抗議状」を出されていました。

(過去の記事はこちら。
 https://chineselawtopics.blogspot.com/2021/05/5348.html

商品やサービスの広告表示において「No.1」を表記しても不当景品類及び不当表示防止法に抵触しないように、
その客観的な根拠資料を得る目的で行われる調査ですが、
実は調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査が行われており、
「No.1 を取得させる」という「結論先にありき」で、「No.1 調査」を請け負う事業者やこれらをあっせんする事業者がいるとのことです。

消費者の目線では、どのような調査を行ったのか、下に書いてある小さな文字まで読むことは普通は無いと思いますが、
もし「No.1」と謳っている広告を見かけられたら、小さい字の部分を見ていただくと、少し面白いのではないかなと思います。