注目の投稿

2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2021年9月28日火曜日

9月第4週:①ソフトウェアのアップデート時の条項、②高層ビル火災と電動自転車、③知的財産権強国、④恒大集団関連の記事

①ソフトウェアのアップデート時の条項

とあるEV(電気自動車)のメーカーがあり、そのメーカーが展開している車種では、オンラインでのアップグレードによってソフトウェアが更新でき、運転支援などの機能が向上していって最高でL4の自動運転機能まで実現できるという触れ込みになっています。
しかし、そのEVメーカーからの更新通知を受けた車両オーナーからの話によると、「個人のナビゲーション及び音楽再生の履歴の収集」などプライバシーに関する条項があり、且つ、その更新通知には「同意しない」のボタンがなく「閲読して同意しました」のボタンしかないとのこと。しかも、その同意ボタンを押さないと、引き続きクルマを使うことができなくなったそうです。しかも、今回が初めてではなく、7月にも同様にアプリの更新で「不同意」を押すとアプリが強制終了され、アプリが使用できず、クルマの機能が使えなくなってしまうということがあったとのこと。
自動運転と、OTA(Over the Air)技術によるオンライン更新、この2つの技術はまさに車の両輪のように今後の新たな車種での技術を牽引していくはずですが、更新のたびに意に沿わない条項に同意しなければクルマが使えなくなるようですと、消費者からの苦情が絶えないことになりそうです。しかし、ソフトウェアが更新されずバラバラなまま運用されているというのも危険なように思います。
個人情報保護法やデータ安全法にも関わる新たな課題、どのように解決されていくのか気になります。

②高層ビル火災と電動自転車

6月に民間用の高層建築についての消防管理規定が発布された関係によるものなのか、中国のビルにおける火災のニュースを目にすることが増えた印象があります。
電動自転車を建物内に持ち込んで充電していると、そこから出火して火災になってしまうことがあります。2009年以降だけで、この原因による火災で3名以上がなくなった事故が70件以上あるとのこと。バッテリーも使っているうちに劣化してくると思いますし、耐用年数もあるはずですが、車検のように何年かごとにチェックする仕組みがないと、危ないまま使ってしまっていることもあるのではないかという気もします。
充電場所を決めて防火設備を設置する、過剰充電の遮断機能をつける、といった規制が設けられていますので、電動自転車の駐輪と充電にはお気をつけください。
ついでに脱線しますと、かつて私が上海にいたころ、マンションで大きな火災事故があり、そのあおりを受けて建設中の工場の消防検査が非常に厳しくなってしまい、操業開始が大きく遅れてしまったという事例がありました。また、北京では事務所の隣の部屋が消防検査に不合格になり、ずっと使えない状態になっていたこともありました。(私自身も「こんなに要るだろうか?」と思いながら何本も消火器を買い揃えたことを覚えています。)
それ以降、大きな火災のニュースには個人的にはいつも気をつけるようにしています。「対岸の火事」と思わずに、消防検査が厳しくなることを予測する一つの材料をご理解ください。

③知的財産権強国

「知的財産権強国」建設のための2035年までの綱要が公表されました。
綱要ですので、特に具体的なことが書かれているわけではないのですが、特許集約型産業の育成に力を入れることが大きな目標として掲げられており、さらには知的財産権取引価格の統計発布メカニズムを構築することや、国有知的財産権の帰属及び権益分配メカニズムを改革することといったように、知的財産権の価値の実現・運用のメカニズムを整備していくことが掲げられています。
また、知的財産権を担保とする知的財産権融資モデルについてもイノベーションを模索していく、著作権取引プラットフォーム、作品の資産評価、登録認証などサービスについても整備していく、といった施策が掲げられています。
もちろん、データについても、データの開放とプライバシーの調整処理を改善して、知的財産権としての価値を有するデータ資源の市場価値を実現させるための制度を整備していくとのことです。
その他、人材育成などを含めたさまざまな施策が挙げられていますので、今後も具体的にどのような制度が導入・運用されていくのか注目していきたいと思います。

④恒大集団関連の記事

毎週さまざまな中国のニュース記事を見ていますが、恒大集団に関する記事については、かなり大きな影響が出ていると取り上げているものもあれば、逆に中国語版リーマンショックなんてあり得ないとするもの、さらには比較的中立・客観的な記事まで、なかなかバリエーションに富んでいます。
普段、中国でのニュースの内容は方向としては似たり寄ったりという感じなのですが、今回は両極端な記事を含めてバラバラな印象で、どれかの記事を取り上げるとその記事を支持しているような印象になってしまうかと思い、選べませんでした。
一方で、日本でのこの恒大集団の件についてのニュースなど見ていると、どちらかというと悲観的なものに偏っているようで、「共同富裕」だから救済できないというような内容にある程度方向が揃っているように感じるところもあります。あくまで個人的な印象だけですが、「皆がそう言っている」という状況の方が情報を選ぶ苦労が無くてむしろ楽なのだなぁと実感したこの数日でした。

2021年9月21日火曜日

9月第3週:①ネットに対する規制は今後も強化の方向、②国民皆保険計画、③世界ロボット大会、④税関の企業等級分類の改正

①ネットに対する規制は今後も強化の方向

中共中央弁公庁、国務院弁公庁から、《ネットワーク文明建設の強化に関する意見》が発布されています。
オンラインゲームの規制などが最近は話題ですが、中国政府として、ネット空間における思想や道徳の面での対応を強めていくことが示されています。青少年の保護についてプラットフォームの責任を強化するなど、今後も新たな規制が導入されてくると見込まれます。
「清朗」「浄網」といった一連のネット環境の改善のための活動もさらに推し進めるとのこと。個人情報保護法やデータ安全法の執行も含めて、一般市民の法的知識・素養を高めていくことも掲げられています。
歴史虚無主義に反対する、品性・人徳が高いネット文明環境を形成する、といったことも述べられているので、中国のネットユーザーも視野に入れたコンテンツの制作・提供にも影響してくると思います。

②国民皆保険計画

第14次5ヶ年計画期間における全民医療保障計画が公表されました。
「全民保険加入(国民皆保険)」計画を確実に実行していくということで、都市居住者が居住地・就業地で保険加入することを推進、また、柔軟性就業人員(個人請負などの形態での就労者)について保険参加のための戸籍面での制限を緩和するとされています。商業健康保険、特に高齢者向けの保険商品も発展させていきましょう、とのこと。
また、省を跨ぐ医療保険の手続について、オンラインで精算できるようにするということも掲げられています。他の省で病院に行っても地元の省で医療保険の精算をしなければならないという手続負担が軽減されていくことが見込まれます。

③世界ロボット大会

9月12日まで北京で「世界ロボット大会」が行われたということで、外骨格ロボット、手術ロボット、柔性ロボットアームなどの製造・物流業務で使われるロボットのほか、掃除ロボット、配膳ロボット、ロボット犬といったサービス・娯楽ロボット、さらに消防ロボット、AIゴミ集積所といった特殊ロボットなど、さまざまなロボットが展示されたそうです。
記事によると、中国の工業ロボット市場規模は8年連続で世界第一位とのことで、国家統計局のデータでは2016年から2020年にかけて工業ロボット生産量も年平均31%伸びたとのこと。医療・養老・教育といった分野でのサービスロボット、特殊ロボットの需要も伸びていくことが期待されています。
もちろん、工業分野においても、労働集約型産業における求人難・人件費高騰を受けて、ロボットによる代替が進んでいくことも見込まれています。ハイエンド分野ではまだまだ中国国産メーカーのシェアは低いそうですが、全体としての国産シェアは高まっているとのこと。中国的特色あるロボット、どんなものが出てくるのか楽しみです。

④税関の企業等級分類の改正

税関の企業等級分類が4段階→3段階に変わりました。
ご参考まで。

2021年9月15日水曜日

9月第2週:①食品・化粧品過剰包装の国家基準、②文化・道徳に関する通知、③販売員の使う資料(コロナ予防に有効?)、④ワクチン接種とスーパー入店、⑤「建設単位」≠建設会社

①食品・化粧品過剰包装の国家基準

食品・化粧品の過剰包装の制限についての強制性国家基準GB 23350-2021が改正されました。改正前のものは2009年版だったそうで、この新たな国家基準は「2023年」9月1日から(つまり2年後に)施行となります。
法律レベルでも《固体廃棄物環境汚染防止処理法》第68条において、過剰包装を制限する国家基準を遵守すべきことが規定されています。商品が市場に出ていって販売され終わるまでの期間を考えても、2年はずいぶん長いなと感じます。
ちょうど中秋節ですから、過剰包装の代表格としてどうしても頭に浮かんでしまうのは「月餅」です。特に北京にいた頃は、お菓子を買っているのか箱を買っているのか分からないほど、箱の方が立派でした。月餅は日持ちするので早めに買う人も多いのですが、さすがに、去年の月餅というのは無いでしょうし...。
一方で、化粧品は、これから企画することを考える場合には、市場に出て全てが売り切れるまでには2年以上かかりそうですから、今から新しい基準に適合させるようにしておく方が良さそうです。
今回の改正では、中身の重量又は体積と最も外側の包装の体積や、包装が何層になっているかなどが変わったようです。全文は下記URLからご覧ください。
 中国 国家基準全文公開システム: http://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/
国家基準の改正に合わせて商品の仕様変更が必要なのに、その施行日までに仕様変更をするのを忘れていたり、間に合わなかったり、という事例をときどき見かけます。法律は直接に商品仕様に影響することは多くないですが、国家基準は例えば包装で言えばラベルの色や注意書きのフォントなど細かく具体的なことが書いてあることが多く(今回の過剰包装かどうかという問題とは別ですが)、機能や形状の面でもダイレクトに商品仕様の変更が必要になってくることが多いですので、国家基準、ゆめゆめ軽視することのないようにした方がよろしいかと思います。

②文化・道徳に関する通知

社会的に影響力が大きい著名人の方々については、スキャンダルが発生すると影響が大きいです。ですので、芸能人をはじめとする文化・芸術分野の人たちには、憲法や著作権法、税法などの重要な法律法規をしっかり学習してもらうように、ということが文化観光部からの新たな通知で発布されています。
「実際の業務と結びつけた形での法律教育を行うこと」と書かれており、これは私も企業内弁護士時代の経験から非常に重要と思っており、常に意識していることでもありますし、このワークショップの趣旨・目的でもあります。
また、ビジネスの面で言うと、違法行為をした、非道徳的・非模範的なことをした人員に対しては、舞台やプラットフォームを提供してはいけない、ということも規定されています。
せっかく高いギャラを払っているイメージキャラクターのタレントさんのCMが使えなくなる、商品を紹介してもらっているSNSが閉鎖される、そのようなことも起こりやすくなっていると思いますので、宣伝・広告関係の契約書には「道徳を守り、模範的な行動を」ということを書かないといけないのかな?とも考えています。

③販売員の使う資料(コロナ予防に有効?)

日本の新聞でも報道されていますが、ヤクルトが上海の某スーパーで「善玉菌は新型コロナウイルスの予防において重要な作用がある」という内容の宣伝チラシを配り、消費者からの通報を受けて直ちに回収したものの、市場監督管理局から罰金の処罰を受けたとのこと。
少し脱線しますが、ヤクルトといえば、マーケティングの世界ではヤクルトレディによる販売方式が非常に特徴あるものとして有名です。これまで、中国の労働者はどこかの「単位」(企業など)に所属して賃金をもらうスタイルが基本だったのですが、最近では、新たな就業形態の促進ということで、宅配などいわゆるギグワーカー(個人事業主?)として働く人も増えていますから、ヤクルトレディのような仕組みも中国では広まるかもしれません。
そのようなとき、個々人がどんな販売促進資料を持って商品を売りに回っているか、きちんとチェックすることは難しいのでは?という気もします。

④ワクチン接種とスーパー入店

中国では以前から「健康コード」というQRコードを使った行動制限がありますが、現在はさらにワクチン接種記録もスマホのQRコードで表示されるようになっており、この2つのQRコードでの感染予防が行われています。
中国の一部の地方では、ワクチン接種を加速するために、ワクチンを接種していない人たちはスーパーマーケットや病院などの公共スペースへの立入を制限するという措置を採っていることがあるらしいです。ただ、このような制限措置については、ワクチン未接種の人たちに非常に不便をもたらすということで、そのような措置を採っている地方に対しては是正を求めているとのこと。ワクチンを打ちたくても打てない人もいるでしょうから、スーパーに買い物にも行けないというのは、さすがに少しやり過ぎということでしょう。
中国ではワクチン接種回数は累計21億回以上、接種完了した人の数は9億6972万人とのことで、かなりの人たちがワクチン接種を済ませているようですが、これから中秋節、国慶節の連休期間に向けて引き続き感染予防が呼びかけられています。

⑤「建設単位」≠建設会社

工事建設分野における農民工への賃金支払を確保するための2つの法令が出ています。
工事を発注する側の企業に義務が課されている部分もありますので、建設業界以外の会社でも知っておいていただければと思います。
ちなみに、工事関係の法令ではよく「建設単位」という言葉が出てくるのですが、これが日本語訳では概ねそのまま「建設単位」となっているか、「建設会社」「建設企業」のように意訳されていたりしますので、非常に誤解が生じやすいです。
「建設単位」は、日本語にいう「建設会社」(=実際に建設工事を行う建設業者)のことを指しているのではなくて、建設工事を発注する主体(工場や倉庫などを建設するために、その工事を発注する会社)のことを指している場面が多いですので、日本語訳を見るときに勘違いしてしまわないように十分ご注意ください。

2021年9月8日水曜日

9月第1週:①経済・財政に関するネット情報の取締、②ダンプカーのナンバープレートをめぐる行政独占、③音楽の独占配信権を放棄、④医療サービス価格改革、⑤「十四五」就業促進計画


①経済・財政に関するネット情報の取締

国家インターネット情報弁公室では、ブログやSNSなどを通じて発信されている経済・財政類の情報について、10月26日まで、特別取締の第一段階を実施するとのこと。
財政部、中国人民銀行、証監会、銀保監会などの部門とともに、主に8つの類型の違法問題を打撃するとしています。
①経済・財政政策方針やマクロ経済データを曲解、②中国の経済・財政政策分野についての海外の報道をそのまま転載、③「独占スクープ」「関係者が語る」など非公開情報を騙ったデマ、④適法な経済・財政ニュースの一部に悪意ある編集を加えて転載、⑤「黒嘴」(SNS等を使って株式投資を勧めて会費を得るなどの違法行為を行う者)など市場攪乱行為、⑥ネガティブ情報の喧伝などによるゆすり・たかり、⑦社会的事件の喧伝により不安など情緒をあおって金融商品等を販売、⑧厳格な本人確認を経ずに政府部門関係者や専門家等の名義でアカウントを開設するなど。
会社の業務としてこれらの情報発信を行うことは通常は無いと思いますが、個人で何かつぶやいてしまうことはあるかもしれませんので、ご参考まで。

②ダンプカーのナンバープレートをめぐる行政独占

中国の《反独占法》は、民間の企業・団体のみならず、政府機関による行政独占も規制対象としており、行政権力の濫用による競争の排除・制限を禁じています。
今回は、深セン市の交通運輸局と公安局警察局が、ダンプカーのナンバープレートについて、全国的ルールとして定められているもの以外に、地方独自の届出番号や合格証取得を義務付けたことについて、他地域の運輸企業や個人の運転手が土砂の運送に従事するハードルを法的根拠なく高めているとして《反独占法》第37条違反として立件調査対象となりました。
各地域で業界団体を作らせ、そこでの研修を経た人にだけ特定業務に従事できる資格を付与するやり方も、比較的よく見られるところです。
「郷に入れば郷に従え」ということで、実務としてはそのようなローカルルールに従わざるを得ないのですが、ナンバープレートのように総数や枠が決まっているものなど、参入障壁が高そうな場合、市場監督管理局に相談してみるのも一案かもしれません。

③音楽の独占配信権を放棄

Tencentが運営しているQQ音楽という事業があるのですが、その事業に関して、2016年にTencentが中国音楽集団という会社の株式の60%超を取得したことがあり、それにつき7月に企業結合の届出をしていないということで処罰を受けていました。
この両社、アクティブユーザー数がそれぞれ1.6億人、2.3億人、市場シェアは33.96%と49.07%という圧倒的シェアで、この2社が結合することにより上流の版権元から独占的ライセンスを提供させたとのこと。
届出をしていなかった違反による罰金を支払うことのほか、市場競争状態を回復させるための措置として、上流の版権元から独占的ライセンスを受けていたものについて、独占権を放棄することを命じられていました。
今回はこれを受けてTencentが各版権元に対して独占権放棄の通知をしたとのことで、消費者にとっても、音楽配信市場に参入したい各社にとっても、音楽の配信を受けられるルートが増えることになります。
良い作品が良い形で流通するようになって欲しいと思います。

④医療サービス価格改革

医療サービス価格項目の改革について、今後3~5年で試行による経験を積み、2025年から全国に普及させるとの目標が示されています。
公立病院での医療サービスについては、現状では地方によって差があるのですが、そのサービス価格項目編製のルールを細かくしていくことで差を解消していく方向のようです。医療サービス価格の制定・調整ルールを綿密に設計することで、行政部門の自由裁量権を小さくするとも言及されています。
一方で、価格調整メカニズムの面では、一般的な医療サービス項目の基準価格は、都市ごとの就業人員の平均賃金によって定期的に調整することになっていることなど、多様な要素が考慮されるようですから、医療の場面でもデータの活用が今後も重要視されてくると思われます。
非公立の医療機関については、価格決定は市場メカニズムに委ねられることになっていますが、品質と価格が合うことなど、行政指導や公表措置などを通じて良好な価格秩序が維持されるようにするとのこと。医療保険を使うときは当然、医療保険基金から支払われる金額に拘束されるわけですが、それ以外の場面でも、医療サービスの価格の決め方については完全に自由ではないと理解しておいた方がよさそうです。

⑤「十四五」就業促進計画

都市部の新規就業者数増加などの目標と、そのための措置について定めた第14次5ヶ年計画期間の就業促進計画が発表されています。
新たな就業形態、さまざまな形での柔軟性ある就業、これまでの雇用慣行とは異なる就業形態が促進されることも見込まれます。
社会保険の登録など、関係する制度の運用についても今後は変化が生じてくると思われます。