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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2021年4月30日金曜日

4月第4週:①個人情報保護法草案の二次審議稿(意見募集2回目)、②知的財産権宣伝週間・知財判決10大事例(OPPOの事例)、③半導体関連の奨励策対象企業の条件、④自動車部品の再製造、⑤生態製品、⑥「軽資産」企業

今週のキーワード:
ネットワークライブ配信マーケティング、人手不足職業ランキング、知的財産権の典型事例


①個人情報保護法草案の二次審議稿(意見募集2回目)

中国の個人情報保護法(草案)、二次審議稿が公表されました。
2回目の意見募集で、今回の意見募集の期間は4月29日から5月28日までとなっています。

ポイントとなる中国国外への個人情報提供についての規定は、昨年の意見募集稿と大きくは変わっていないようですが、
提供のための条件のうち一つであった国外の提供先との間の契約については、
・ 【国家ネットワーク情報部門が制定する標準契約に従って】国外の受領者と契約を締結し、双方の権利及び義務を約定し、かつ、その個人情報処理活動がこの法律所定の個人情報保護基準に達することを監督していること(第38条第3号)。
という【  】部分が追加されました。
この標準契約がどんな内容になるのかは不明ですが、
この点が不明のまま、法律としては成立してしまいそうな気もしています。
一方、以下の各部分は、前回の意見募集稿から特に変わりなさそうです。
・ 個人に対して「国外の情報受領者の連絡先」や「提供する個人情報の種類」などを告知したうえで、「単独の同意」を得なければならない(第39条)
・ 国外の情報処理者が中国国内に機構を設置又は代表を指定しなければならない(第52条→第53条)
その他の詳細は後日、機会があれば研究してみようと思います。

なお、個人情報安全技術に関する各種の国家基準は、この数ヶ月、多数の意見募集が出ています。
「中国の個人情報保護基準を満たす」と一言で言っても、国家基準に定めた各種の条件をクリアしていく必要があります。
日系企業の皆様は概ね B to B の取引が多く、顧客やユーザーの個人情報を扱うことは少ないと思うのですが、
関係する企業の方々におかれては、国家基準も見ることを忘れないようにご留意ください。


②知的財産権宣伝週間・知財判決10大事例(OPPOの事例)

ちなみに、今週は知的財産権宣伝週だったそうです。
4月26日がWIPOの「知的財産権の日」で、その前の一週間が宣伝週になっているとのこと。
ですので、今週は新聞では知的財産権の話題が多くなっていました。
知的財産権の10大事例はいつも参考になりますが、
pptでも紹介したOPPOの事例は、
権利者側がライセンス交渉中に他国で訴訟を提起した行為に対して、
FRAND義務違反を理由に「全世界にわたり他国で提訴してはならない」という保全裁定を出したものです。
中国が「国際知的財産権規則の追従者」から「国際知的所有権規則の指導者」に転換することについて重要な推進的意義を有するとのこと。
詳細は事例の原文をよく見て分析してみなければ分からないですが、
中国企業へのライセンス・アウトの交渉には大きな影響を与えそうに思います。

③半導体関連の奨励策対象企業の条件

なお、半導体関連の奨励策、対象企業となるための条件が公表されました。
企業所得税の減免税のほか、設備輸入免税などの政策を享受する基準となりますので、
条件を満たす会社は、日本からの輸出先顧客として有望ということにもなるかと思います。


④自動車部品の再製造

このほか、細かいですが、いくつか。

自動車部品の「再製造」に関する弁法が出ています。
もともと《廃棄機動車回収管理弁法》という弁法があり、廃車になった自動車から部品を取り出してリサイクルする場合のルールを規定しており、
いわゆる「5大アセンブリ(五大总成)」は再製造できる場合以外はスクラップにしなければならないことなどを定めていますが、
その再製造に関するルールの部分を明確にしたもののようです。

⑤生態製品

「生態製品」、あまり聞きなれない言葉ですが、
自然環境を観光資源などとして旅行などのサービスに提供することを意味するほか、
さらに、飲料などのブランド化による価値向上などといった形で、
環境資源の経済的価値を可視化していって「製品」にするというイメージでしょうか。
「定量化しにくく、担保にならず、取引しづらく、現金化しづらい」という環境資源の価値を
経済的に認識できる仕組みを構築していきましょう、ということが政策として打ち出されています。
具体的には、昨年11月に発表された生態製品価値実現の典型事例(第2集)を見ると、少しイメージはしやすいかと思います。
もし興味があればご覧ください。

⑥「軽資産」企業

「軽資産住宅リース企業」、これも馴染みのない言葉ですが、
「軽資産企業」とは、日本でも一時話題になった「持たない経営」、すなわち資産を自前で持つのではなくてアウトソーシングで調達して顧客に提供するビジネスモデルを採用している企業を指します。
ここでは、住宅の賃貸借の場面ですから、所有者から物件を借りて転貸するサブリース企業のことを意味します。
以前にご紹介したとおり、サブリース企業が賃料を持ち逃げする事例が多発しているらしいですので、その管理を強化するという通達のようです。


追伸:
 5月1日~5月5日が珍しく日本も中国も同時に5連休となりますので、
 来週の資料は休載とさせていただく予定です。
 直前のお知らせとなり恐縮ですが、ご了承くださいませ。




2021年4月23日金曜日

4月第3週:①証券業界での中国式集団訴訟、②会社の休眠を認める制度、③魔蠍(サソリ)...「パスワード教えて」は全て詐欺、④アプリの画面共有機能の悪用

今週のキーワード:
不動産抵当権登記、企業の「休眠」、独占処罰


①証券業界での中国式集団訴訟

「康美薬業」の事件については、
昨年5月第4週のワークショップ資料で「A株市場最大の粉飾事件」として取り上げました。
銀行払戻伝票の偽造、定期預通帳の偽造、固定資産の水増しなどによる巨額粉飾が発見され、
株価が9割近く蒸発したのに証監会による行政処罰の上限は60万元でしかないということで
問題視されていた事件です。
また、昨年8月第1週の資料でも、
中国版の集団訴訟が出航 『康美』などが投資家による損害賠償請求の大時代へというタイトルで、
《証券紛争の特別代表人訴訟にかかる若干の問題に関する規定》が発布されたことと、
これによる集団訴訟の初のケースは「康美」などの粉飾決算事件を起こした会社になるだろうという記事を紹介していました。
今回は、4月16日に中小投資者服務中心が50名以上の委託を受けて特別代表人訴訟を開始したことについて、
証監会も上場会社の粉飾という「悪性腫瘍」に対する「ゼロ容認」の態度に沿うものとして支持するとの記事です。
中国式集団訴訟がどのように運用されていくのか、今後も見ていきたいと思います。

②会社の休眠を認める制度

会社の「休眠」については、これまでずっと正面からこれを認める法的根拠はなく、
しかし実務上は非常に多数存在している状況が続いてきました。
登記や信用調査では特に変わった様子が見られないのに、
工場を訪れてみると誰もいない、登記されている住所には別の会社が入っている、
そんな経験をすることもよくありました。
今般、コロナ禍によって長期休業を余儀なくされた会社が多かったのか、
ようやく、会社の休業に関する制度が設けられるそうです。
今回の資料では、先行している南京市の事例を取り上げていますが、
実務運用が定着するまでは従来どおりの事実上の休眠の方が使いやすい場面が多そうに思います。
(逆に言えば、上記のような「隠れ休眠」状態の会社はまだまだ無くならないのではないかと。)

③魔蠍(サソリ)...「パスワード教えて」は全て詐欺

なお、「魔蠍データ」社の事件、魔蠍(サソリ)という名前からして既に怖いですが、
ネット金融会社や小規模銀行と提携して、個人の信用データを提供していた会社の起こした事件です。
ネット金融のプラットフォーム上に設置したプラグインで社会保険や信用調査センターなどのアカウントとパスワードを入力させ、
それらのアカウントを使った通話記録や各種データをコピーしていたとのこと。
しかも、ユーザーとの規約で「アカウントやパスワードは保存しません」と明記していたのに
実際には裏でしっかりこれらを利用してデータ収集を行っていたというトンデモナイ悪質事件でした。
日本でもそうですが、「パスワード教えて」は全て詐欺!ということで、基本を忘れずに暮らしていただきたいと思います。
(ちなみに、恥ずかしながら私自身、中国で電話の詐欺に引っかかりそうになったことがありました。
 中国語ができる人ほど引っかかってしまうらしいですので、充分お気をつけください。)

④アプリの画面共有機能の悪用

最後に、個人的には、「アプリの画面共有機能を利用した詐欺」の記事で、
『知らない人に画面共有しないように!』という注意喚起の記事から出ているのが気になります。
詳細な理由は書かれていませんが(犯罪の手口を広めると困るからですね)、
会社内部の会議や、よく知った取引先との会議以外では、画面共有機能はなるべく使わない方がよさそうです。


2021年4月15日木曜日

4月第2週:①会社に名義を貸して処罰、②中古車の履歴情報とプライバシー、③なぜか財政部が医薬企業を処罰

今週のキーワード:
輸出入食品安全管理、アリババ独占処罰、虚偽訴訟、中古車履歴情報権利侵害事案


①会社に名義を貸して処罰

虚偽訴訟の事例、
従業員が会社のために名前を貸した結果、
虚偽訴訟として犯罪者になってしまいました。
昔は一般の事業会社は「委託貸付」という方式で
銀行に名義を借りなければ他者への貸付はできませんでした。
今は、そのような貸付でも民事上は有効であることが実務上も確立されているので、
従業員の名義を借りる必要など全くなかったはずなのですが、
知識がなかったのか何か事情があったのか、不憫な事例であるように思います。
昔の知識で行動を決めてしまうことがないように、気をつけたいですね。

②中古車の履歴情報とプライバシー

中古車取引に関するアプリの事例、
プライバシーとは「知られたくない」情報全てを言うのではないことは当然として、
日本と同じように、何が個人情報で何が個人情報でないのかは
誰から見るかによって変わってしまうことがあります。
この事例では、他の情報と組み合わせて個人を特定することが可能であるとしても、
そのコストが大きければ、なお個人を特定可能であるとは言えないとしました。
技術の進展によって変わる部分もあるので、敏感な話題です。


③なぜか財政部が医薬企業を処罰

財政部が医薬企業を処罰したということで、
国家薬品監督局の間違いでは?と思って見てみましたら、
発票の虚偽発行や資金名目の偽装、帳簿の不備などによる処罰でした。
過去には著名な外資系企業が処罰を受けて大きな話題になったこともありましたし、
まだまだグレーなお金が流れる業界だということなのかもしれません。

アリババグループの発表レターの内容(中国反独占法処罰の件)

遅まきながらですが、4月10日のアリババの発表レターの内容(中国語繁体字版)、最初と最後の部分だけ、ざっと日本語にしてみます。粗いですがご参考まで。

https://www.alibabanews.com/

(英語版はこちら)https://www.alizila.com/a-letter-to-our-customers-and-to-the-community/


(仮訳ここから)

---------

尊敬するアリババの事業者、消費者、取引先及び投資者各位:

本日、我々は国家市場監督管理総局のアリババ集団に対する行政処罰決定を受領しました。この処罰に対し我々は誠実に受け入れ、必ず従います。この機会を借りて、アリババおよび全アリババスタッフ、事業者、消費者、取引先及び投資者の我々に対する信頼と寛容につき、我々の感謝の意を表し、また我々の将来長きにわたる健全な発展に対する考え及び行動を率直に伝えたいと思います。

過去数ヶ月にわたり、我々は全力で調査に協力し、国家のプラットフォーム経済に対する政策及び要求を真摯に学びました。業務の安定的な運営を確保すると同時に、システムの自主審査と改善を行いました。我々は、本日の処罰は、我々に対する注意喚起と鞭撻であり、業界発展に対する規範と保護であり、国家が公平な競争市場環境を守り、プラットフォーム経済の高品質の発展を推進する重要な措置であることを認識しました。


(中略)


今日はアリババ集団の発展の歴史・過程における極めて重要な一日であり、我々はここを新たなスタートとして、問題に正面から向き合い、鋭意革新していきます。政府の監督・管理及びサービス、社会各界の批判、寛容と支持は、アリババの継続的な成長の鍵です。これにつき、我々は心から感謝し、同時に畏敬の念を抱いています。顧客第一に、社会のために不断に長期的価値を創造する良い会社となることは、我々の初心であり、我々の存在及び発展の最大の意義でもあります。我々はこれにつき自信に満ちており、決して動揺することはありません。

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(仮訳おわり)


「我々」の箇所が英語版では「companies like ours」となっているなど、英語と中国語は機械的に一致しているわけではなさそうですので、両方読んでみると、より参考になるように思いました。



2021年4月8日木曜日

4月第1週:①デジタル人民元、②中国でも若者の製造業離れ

今週のキーワード: 
生産安全事故の予防と改善措置の実施状況評価弁法、求人難、分解可能プラスチック製品


①デジタル人民元

話題のデジタル人民元、スマホ決済アプリと同じような感覚で使えるらしいですが、
プライバシーは大丈夫なのか?という心配の声も上がっています。
ビットコインなどの暗号資産(仮想通貨)と違って中央銀行が管理するところ、
マネーロンダリングやテロ資金に使われないように制御する必要があるために、
完全に匿名にするわけにもいかないのでは?という疑問です。
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Q. 携帯電話番号は実名制なので、匿名になりようがないのでは?
A. 確かに携帯電話番号と紐づいているが、電話会社はユーザー情報を中央銀行に開示しないので、完全に匿名だ。
Q. 匿名性とマネーロンダリング対策は両立しないのでは?
A. 大口取引には特別の「口座」を作って届出をさせるので、違法な取引を抑止できる。
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日本や各国でも同じような議論があるのだろうと思われ、興味深く見ています。

②中国でも若者の製造業離れ

それと、若者の製造業離れという記事が出ていました。
どこの国も同じですね。



2021年4月2日金曜日

3月第5週:①「経営範囲」の今と昔、②半導体・ソフトウェア業界の輸入奨励、③発明者報奨の奨励、④上海市の実際の人口は?

 今週のキーワード:

新型消費、精神的損害賠償、免責条項、経営範囲登記の規範化


①「経営範囲」の今と昔

「経営範囲」、昔から中国子会社にかかわった皆さんには耳になじんだ言葉ですが、
その意味合いは昔に比べると随分変わりました。
今は経営活動を制限しない(=逸脱しても処罰されない)となってきています。
 ※ 個別業種の許可証は相変わらず必要ですので、ご注意ください。

②半導体・ソフトウェア業界の輸入奨励

半導体やソフトウェア業界での輸入奨励も出ていますので、
新年度のスタートにあたって、そちらもご覧いただくと
中国向け輸出の売れ筋が分かって良いかと思います。
「2030年」12月31日まで適用するそうですから、長期的に見てご検討ください。

 

③発明者報奨の奨励

政府系研究機関での話ですが、発明の実用化に伴って発明者に支払う報奨について、
社会保険納付基数に影響しない(翌年の社会保険料が上がらずに済む)とのこと。
通常の労働賃金の世界ではあまり見ない発想なので、興味深いところです。
 

④上海市の実際の人口は?

なお、上海の実際の人口について新たな管理規定が41日から施行され、
短期の滞在でも登録を強制されるのか?と話題になっています。
この点、個人については強制ではなく任意ですよ、というのが上海市政府の説明です。
https://www.shanghai.gov.cn/nw12344/20210401/4489006005e84766b26d14ac99378fdd.html
一方で、会社の方は、従業員を上海に来させるとシステム上で
新規増加従業員情報として入力しなければならないとのこと。
会社にとって特にメリットはなさそうなので、つい忘れてしまいそうですね。