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2024年4月3日水曜日

4月1日からの登記手続変更:外国人の方々の日本国内での不動産登記(国内連絡先)

ひさしぶりに日本のお話です。

大阪で不動産を購入される外国人の方々の手続のサポートなどしておりますが、この4月1日は、司法書士の先生など不動産登記に関わる方々にはなかなか難しい時期になっているようです。
様々なところで苦慮されているのではないかと思いますので、雑感を含めて、ここで書き留めておきます。


不動産登記法やそれに関する政令等の改正があり、日本国内に住所のない外国人の方々などが日本で不動産登記をする際に、4月1日から「国内連絡先」の登記が必要になっています。
2024年3月1日:令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

ここでいう「国内連絡先」とは、単なる日本国内の住所や電話番号ではなく、「所有権の登記名義人が国内に住所を有しないとき」に、「その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの」(改正「不動産登記法」第73条の2第1項第2号)です。
つまり、外国人の方が日本の携帯電話をもっていて常時連絡が取れるとか、日本に来た時に滞在する不動産を持っているとか、そういった事情があったとしてもここにいう「国内連絡先」としては足りず、日本に住民票のある個人か、日本に事業所のある法人を指定しなければなりません。
(用語として、「連絡先」ではなく「連絡担当者」とか「連絡窓口」とした方が誤解が無いような気もします。)

この法改正自体は前々から知っていたのですが、「国内連絡先」については「なし」で申請することもできることが早い段階で決まっていましたので、特段問題にならないだろうと見ておりました。
ところが、いざ制度が始まってみると、「なし」で登記申請をしようとすると、「国内連絡先となる者がないときはその旨の上申書(登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされたもの)」が必要とのこと。
もし国内連絡先として日本国内の誰かを登記しようとしても、その方の印鑑証明書と承諾書が必要になるという厳重さです。
まだしも「なし」で申請する方が簡単です。
(制度設計としては、本来はなるべく日本国内の連絡先を登記してもらった方がよいはずなのに、若干あべこべな感じもします。)
確かに、連絡先そのものについて地面師のような第三者に悪用されてしまう危険もありますから、慎重であるべきことも理解はできるのですが、なかなか厄介なところがあります。

立法の過程を見ていると、「国内連絡先」としては所得税・消費税に関する納税管理人のような委任関係のある第三者が想定されているらしいのですが、
誰かに国内連絡先をお願いしようとしても、国内連絡先になるとどのような負担が生じるのか、住所が変更になったらどうするのか、本人と連絡が取れなくなったらどうなるのかなど、分からないことが多いです。
比較的最近の政令改正に関するパブリックコメントの結果を見ていても、未解決の問題が多い中でスタートしているように見えます。
2023年10月4日:「不動産登記令等の一部を改正する政令案に関する意見募集結果について」

これでは、なかなか外国の方々に「国内連絡先」について説明するのも難しいですし、
日本国内で誰かに「国内連絡先」になってもらうようお願いするのも難しいような状況になってしまっています。
「国内連絡先になる方々へ」といったような手引きやリーフレットがとても欲しくなりますが、法務局の窓口には既にあるのでしょうか?
もしどなたかご存じでしたら、是非ご教示いただければと思います。

他にも、外国の住所の確認についてもパスポート(旅券)のコピー(これにもご本人の署名が必要。)が追加で必要になるなど、登記手続上、必要な書類が増えてしまっています。
いずれも外国から書類を取り寄せることになりますから、時間も手間もかかります。
登記手続が滞ってトラブルになってしまう例もありそうです。


日本では通常、改正法施行前に政令・省令・通達などが出て、研修会などもよく行われますので、施行日には実務対応は比較的分かりやすくなっていることが多いのですが、今回は比較的実務に大きな影響のある改正で、また改正項目が多かったためか、この外国人の方々向け対応のところまで固まっていない部分があるように思われます。
中国では、施行日直前まで細則規定が発布されず、施行後にようやく実務の対応が分かってくることが多いですので(場合によっては施行後随分経ってからようやく具体的な規定が出ることもあります。)、中国業務ではよく見る光景ではあるのですが、日本でもこういうことがあるのかと改めて感じました。


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