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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年12月27日水曜日

12月第4週:①会社法改正の第4次審議(途中)、②特許法実施細則の改正成立、③人体器官提供及び移植条例、④来週休載

①会社法改正の第4次審議(途中)

全人代のWebサイトを見ていましたら、会社法改正について、第4次審議稿の審議に入ったとの記事がありました。
http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202312/t20231226_433775.html
第3次改正草案で終わりかと思っていたのですが、またいくつかの点で修正があるようです。
出資者の出資責任の強化、払込未了持分の失権制度、さらに解散清算の検討段階での従業員の意見聴取、といった内容が列挙されています。
詳細は全文を見てから分析しようと思います。

②特許法実施細則の改正成立

少し前にご紹介していた、特許法実施細則の改正が成立に至りました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6921633.htm
まず最初に目に入ってくるのは、電子申請に関する規定が拡充されている部分です。
また、2020年の改正特許法で導入された「開放許諾」の制度について、公告すべき事項などが明確化されました。
その他、国際出願に関する優先権など手続に関する規定もあるようです。

③人体器官提供及び移植条例

国務院から臓器提供と移植に関する行政法規が出ています。
2007年に既に《人体器官移植条例》という法令があったようなのですが、今回は「臓器提供」の部分についての重要性を強調するということで、臓器提供は自発的・無償を原則にすることや、生体移植は配偶者や近親者への移植に限ること、近親者が死後臓器提供をしたことがある人は移植手術において優先されることなどが規定されています。
移植に関する医療技術の向上を求めている部分もありますので、これに用いられる技術や器具等については、今後、需要が増してくるのかもしれません。

④来週休載

来週はお正月休みのため休載いたします。あしからずご容赦ください。
2024年は中国建国75周年だそうです。良い年になることを期待したいと思います。

2023年12月22日金曜日

租税法律主義

日本では、税金の賦課・徴収の根拠は全て国会が制定する法律によって定めることが求められています。これを「租税法律主義」と言います。これは憲法にも明文で定められている原則です。
日本「憲法」
第八十四条〔課税の要件〕 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

中国でも同じく、税金の賦課・徴収の根拠は法律によって定めることを求める条文はあるのですが、憲法ではなく、《立法法》という別の法律で規定されています。
中国《立法法》
第11条  次に掲げる事項については、法律のみを制定することができる。
(六)税目の設定、税率の確定及び租税徴収管理等の租税基本制度

ただ、中国の税収の大きな割合を占める増値税については、《増値税法》という法律が未だ成立しておらず、国務院が定めた行政法規に過ぎない《増値税暫定施行条例》によって課税されているという現状でもあります。
年内とは限らないものの比較的短期の間に成立が見込まれていたので(5月の記事)、そろそろかもしれないのですが、税収に影響があるので景気を見ながらなのかもしれません。

2023年12月19日火曜日

12月第3週:①上場会社の内部統制評価、②政府調達の透明性、③独禁法違反の警告書

①上場会社の内部統制評価

上場会社及び上場予定の会社の内部統制についての内部統制評価及び監査の強化に関する通知が財政部と証監会から出ています。
中国ではここ数年、証券法改正など上場会社に対する管理を厳しくしてきています。今年も会計事務所企業自身の会計監査等の管理強化が求められてきていました。
今回は、内部統制の有効性向上のために、企業自身が内部統制評価を行い、会計事務所による監査を受けることが求められています。
取引先や合弁パートナーの側で、このような内部統制との関係でさまざまな制約を受ける場面がありますので、留意ください。

②政府調達の透明性

財政部関係でもう一つ、政府調達の関係で透明性を高めるための通知が出ています。
http://gks.mof.gov.cn/guizhangzhidu/202312/t20231214_3922192.htm
入札で落札が決まった後にこっそり契約条件を変更してしまう例があるようで、そのような行為を禁じることや、全過程において電子プラットフォームでの取引実施を推進することなどが挙げられています。

③独禁法違反の警告書

反独占・反不正競争委員会と市場監督管理総局から、《反独占法》違反に関する「三書一函」(3つの書面と1つのレター)についての通知が出ました。
これら書面のうち、一番最初の段階のものは「注意喚起・督促レター」(提醒敦促函)という書面です。この書面は早期に予防及び是正の目的で発行されるもので、これを受け取った企業は直ちに状況報告とともに是正措置をとる必要がありそうです。

2023年12月15日金曜日

債権者による破産申立てのハードル



中国企業相手のビジネスに関する業務に携わっておりますと、売掛金のある取引先が事実上倒産状態にあるのに一向に破産などの法的手続に入ってくれない、差押など法的措置によって債権回収をしようにも既に多数の差押があって回収の見込みがない、という場面がよくあります。
こういう場面で、日本でもバブル崩壊後によく見られたのですが、財産散逸防止や損金処理などのために債権者破産の申立てによって回収を図ることがあります。

日本の場合、破産申立ての際には、その後の管財人による活動など破産費用に充てるために、申立人があらかじめ予納金を納付する必要があります(日本「破産法」第22条第1項)。この予納金、会社の規模などによりますが、裁判所に納付する予納金が100万円以上必要になる場合も多く、債権者とすれば自身の貸付金や売掛金が回収できていないのに、さらに破産会社のために比較的大きなおカネを立て替える形になりますので、これはなかなかハードルが高いです。

一方、中国の場合、債権者側が破産の申立てをするときは、費用をあらかじめ納付する必要がありません。(中国《訴訟費用納付弁法》第20条第2項但書、《「企業破産法」の適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の規定(1)》第8条参照。)
実際には管財人の活動や資産評価のための会計事務所・評価事務所への委託など、さまざまな費用が発生してくるのですが、これらは破産会社の財産(破産財団)から拠出されることになっています。
ですので、中国では日本に比べて、債権者破産の申立てのためのハードルは低いと申し上げてよさそうに思います。

2023年12月11日月曜日

12月第2週:①民法典・契約編通則の司法解釈、②外国法の調査費用、③大気汚染改善

①民法典・契約編通則の司法解釈

民法典の契約編のうち通則部分についての司法解釈が出ました。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/12/id/7681709.shtml
《民法典》の契約編として統合される前の《契約法》に関する司法解釈(一)及び(二)は、民法典の施行(契約法の廃止)に伴って廃止されており、《民法典》の条文に取り込まれた部分以外は空白が生じていたのですが、今回のこの司法解釈でその部分がアップデートされて補われる形になります。
条文数はそれほど多くないのですが、
  • 意向書や備忘録の形式で意向を示しただけで将来の契約締結を約束していないような場合には契約が成立したものとは認めない(第6条)、
  • 政治・経済・軍事など国家安全に悪影響を及ぼす契約、社会の安定を損なう契約、社会の善良な風俗に反する契約などは、法律・行政法規の強制性規定に違反していなくても無効とする(第17条)、
などなど、実際の取引に影響しそうな重要な内容もかなり含まれているようです。
債権譲渡についての規定も大幅に拡充されていますので、細かく読み込んでみる必要がありそうに思っています。

②外国法の調査費用

《渉外民事関係法律適用法》という国際私法のルールに関する法律(日本の「法の適用に関する通則法」、昔の「法例」に相当する法律)の司法解釈(二)が出ました。
https://www.chinacourt.org/law/detail/2023/12/id/150495.shtml
人民法院が外国法を適用しようとするとき、その調査方法はいくつかあるのですが、そのうち一つとして「中国・外国の法律専門家により提供されたもの」があります。このとき、人民法院はその専門家に対して出廷して質問を受けるように通知することができるのですが、現地での出廷が確実な困難な場合はオンラインで質問を受けることもできます。もっとも、単に外国法についての理解を述べるだけで、その他の法廷活動に関与することはできません。
ちなみに、このような外国法の調査のための費用については、「当事者間に約定があれば」その約定に従うものとされています。約定がない場合、裁判所が判決時に合理的負担を定めることができることとされていますので、思わぬ費用負担を生じないように、契約書の準拠法条項には「外国法調査費用は各自負担、裁判所による調査費用は敗訴者負担」など、何らかの約定を追加しておいた方がよさそうです。

③大気汚染改善

国務院から空気品質持続的改善行動計画が公表されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6919000.htm
PM2.5の削減や非化石燃料へのシフトなど、それぞれ具体的な数値目標が示されています。鉄鋼や自動車などの産業分野についての記述もあり、私には技術的な事項はよく分からないのですが、環境関連の事業には影響する部分があるのかもしれません。


2023年12月6日水曜日

弁護士レター(中国語「律师函」)についての再考


弁護士からの「通知書」や「催告書」、「警告書」など、いわゆる弁護士レターが届いた場合、日本と中国ではその取扱いには実務上かなり差があるものと長年にわたって感じてきました。
しかし、最近では、日常業務においてさまざまな案件に接するうち、急速にそのイメージが変わってきているように感じることが多くなってきました。

例として、以下のような2つの事例を挙げます。
(1)当社の競合他社であるA社が、当社の顧客に対して、当社の特許を侵害している製品を販売しようとしている旨の情報を得た。そこで、当社は弁護士に依頼して、A社に対して、侵害を行わないよう警告するレターを送付した。
(2)当社はB社との間で、継続的に製品を供給してきた。数ヶ月前から、B社からの支払が滞るようになってきており、営業担当者が支払を催促しても猶予を求めるばかりで支払おうとしない。

(1)(2)いずれも、日本の場合であれば、弁護士から内容証明郵便で弁護士レターを送付すると、通常、少なくとも黙殺はされず、反論や解決の申出など何らかのフィードバックが得られます。そうして、弁護士を介しての協議が行われ、訴訟に至らず解決できるケースも比較的多いでしょう。これは、今も昔もそう変わらないように思います。日本では弁護士代理が強制されているので(過去の記事はこちら)、訴訟になると被告側も弁護士に応訴対応を依頼せざるを得なくなりますから、その負担を回避するための訴訟前の協議解決が促されるという面が一つあろうかと思います。
一方、中国はといえば、弁護士レターを送っても黙殺されるケースが日本に比べて明らかに多いというのが実感でした。むしろ提訴前にレターを送ることによって相手方に提訴対応のための余裕を与えてしまうなどデメリットもあるので、証拠さえ揃っていれば(つまり訴訟前の協議を通じて証拠を補充していく必要が特になければ)直接に提訴・民事保全をしてしまう、「奇襲攻撃で短期解決を目指す」戦略による方が時間と費用が節約できることが多いというイメージでした。
しかしながら、ここ数年、特に今年に入ってからは、弁護士レターを送付することで相手方が速やかに対応してくれるケースが明らかに目立つようになってきました。上記のA社の事例であれば特許の許諾を求めてくる、B社の事例であればごく近い時期での支払や分割払いの具体的提案をしてくる、そのような迅速な解決につながる回答が得られるようになってきています。

その原因や背景について個人的に思うところは、次のようなものです。
A社のような知的財産権をめぐる事例については、現在では特許法のみならず、商標法、著作権法、さらには不正競争防止法でも懲罰的賠償を認める制度が設けられており、実際に懲罰的賠償を認める事例も見られるようになってきていることがあると思います。弁護士レターの受領によって故意侵害としてこのような懲罰的賠償を求められることになってしまう危険が意識されることで、侵害を自主的に思いとどまってもらうことができるというわけです。これは、当社から見れば(不当な)競合他社を排除して売上が確保できることにつながるので、費用対効果が見えやすく、良い弁護士レターの活用方法であるように思います。
B社のような支払を遅らせる取引先の場合については、いわゆるブラックリストなど信用にかかわる制度の充実が2015年頃から進められてきましたが、この1~2年は、ある裁判所でB社が提訴されたという情報が公表されると、多くの会社から提訴が「殺到」して、数ヶ月のうちに通常の事業継続が困難な程度の信用不安に至ってしまうという現象が見られるようになってきました。これは、訴訟に関する情報の公開が非常に進んだこと、最高人民法院や各地の裁判所の運営するWebサイトでの掲載のみならず、アプリで取引先情報を登録しておけば自動的に危険な情報を察知して配信してもらえるサービスもあるなど、関係するサービスの利用が普及した結果という一面もあろうかと思われます。つまり、「提訴された」という情報そのものが伝播することを避けるために、提訴される前の協議による解決を希望するケースが増えてきており、結果として、弁護士レターがトラブル解決に役立つ割合が増えてきたという理解をしています。

弁護士レターについて、私自身も自らの認識をアップデートして、改めて活用のしかたを考えてみたいと思っているところです。

2023年12月4日月曜日

12月第1週:①中小企業の長期未収債権、②郷村振興と都市再開発の土地政策指南、③男女間でのトラブル

①中小企業の長期未収債権

例年どおり、今年も《中小企業代金支払保障条例》に基づく特別活動が行われています。12月10日まで継続予定とのこと。新法令ではありませんが、もともと年末は長期未収債権の回収に関しては重要なタイミングですので、ここでご紹介しておきます。
各地の市場監督管理局から大型企業向けにサンプリング調査などが行われており、支払遅延の状況などについて隠していた場合には経営異常リストに掲載されて公表されるなどのペナルティがあります。

②郷村振興と都市再開発の土地政策指南

自然資源部弁公庁から、「郷村」、つまり農村の住宅・産業用地などに関する活用のための政策指南が公表されています。
農村に関するものですので直接に事業にかかわることはあまり無さそうですが、建設用地関連の認可や都市計画上の許可、不動産登記その他土地利用に関する各種事項について比較的網羅的に根拠規定を引用しながら説明されていますので、不動産関連の業務を行う際には参考になる部分がありそうに思います。
また、これよりも少し前に、いわゆるスマートシティなど利便性や生活環境を向上させるための都市再開発に関する政策指南も公表されていました。
こちらでも巻末に関連する政策は列挙されていますが、それぞれの説明の箇所ではなく巻末にまとめられていますので、その点は少し体裁が違います。

③男女間でのトラブル

最高人民法院から、家庭内暴力に関する典型事例が発表されていました。第1集と第2集、相次いで発表されています。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/11/id/7657177.shtml
業務上、中国法のかかわる離婚事件を扱う機会もあり、普段から「日本と中国では随分と違うな」と感じているテーマでしたので、少し見てみました。
第1集は婚姻前を含めた男女間での事例など、さまざまな事例が集められています。
恋愛関係の別れ話から暴力・付きまといなどの嫌がらせに発展した事例、夫婦間での感情のもつれから自殺をほのめかしたり職場に押しかけたりする行為のあった事例などが紹介されています。
第2集は未成年者(子女)に関する事例です。未成年の子の連れ去り、虐待防止のための措置などをめぐる事例となっています。
日本の感覚でごく普通に過ごしていても、文化・風習の違いによってセクハラ、パワハラになってしまうこともあります。もちろん、日本の方々だけでなく、中国の方々にも同じことが言えるのではありますが、感情もかかわる微妙な話題ですので、気にしておくに越したことはなかろうと思います。

2023年12月1日金曜日

ドローンに関する国務院令、2024年1月1日から施行です。


今年も師走の時期に入り、そろそろ来年のことを考える時期になってきています。
いつもご紹介している中国の法令・政策の関係でも、来年から規制が変わるもの、いろいろとありますが、あれこれ見ていると、ご紹介が漏れていたものも多々あります。

そのうちの一つ、ドローンに関する国務院と中央軍事委員会の暫定規定が6月28日に出ていたものがありましたので、随分と遅くなってしまいましたが、遅まきながらご紹介しておきます。
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202306/content_6888800.htm
民用ドローンには実名登録が必要であること、管制区域では微小型のものを含めて一律にドローン飛行は禁止(許可制)であること、一定の仕様以上のものについては識別情報発信機能が必要であることなどが規定されています。
ドローンの輸出規制の方はニュースでも大きく取り上げられていましたが、こちらは中国国内のことですので、あまり注目されていないかもしれません。
中国に赴任・出張でいらっしゃる日本の方々、最近は《反スパイ法》違反の嫌疑など敏感な時期ですので、不用意にドローンを飛ばして処罰を受けることがないように、中国でドローンを飛ばすには諸々の規制があること、しっかり覚えておき、さまざまな意味で気をつけていただければと思います。