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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年6月29日木曜日

動産差押の方式(「死封」と「活封」)


中国の差押の方式には、「死封」と「活封」の2つの方式があります。

「活封」とは、債務者の財産のうち生産設備や原材料など事業活動に必要な動産が封印・差押の対象となった場合でも、引き継続き債務者や第三者にその使用継続を認める差押の方式です。活きた状態での封印、ということです。
(《人民法院の民事執行における財産の封印、差押え及び凍結に関する最高人民法院の規定》第10条第2項、第13条第2項など)
これに対して、「死封」とは、そのような差押対象となる動産の使用を認めない、差押対象動産が文字通り使えない状態で封印されてしまっている方式の差押です。
経験的には、差押を受けている債務者も堂々と工場を運営している場合が多いですし、最高人民法院も堂々と「活封」を活用することを奨励しています。

これに対して日本はと言うと、日本でも、動産の差押をするときは、執行官が相当であると認めるときは、債務者に差し押さえた動産を保管させることができ、さらに相当であると認めるときは、その使用も許可することができます。(日本「民事執行法」第123条)
ただ、動産をそのまま債務者に占有させておくと紛失などのおそれがありますから、中国ほど堂々と使わせることは稀であるように思われます。
そもそも、日本でそのように事業に用いる設備が差し押さえられてしまうような状況になれば、民事再生や破産など倒産手続に入るでしょうから、そこも大きな違いかもしれません。

2023年6月27日火曜日

6月第3週:①酷暑・高温作業に関する事故防止、②ガスボンベの安全検査、③安全生産管理の「一案双罰」(両罰)

①酷暑・高温作業に関する事故防止

今年も暑くなってきたため、「防暑降温」業務に関する通知が国家衛生健康委員会弁公庁から発布されています。
以前から《防暑降温措置管理弁法》という衛生部などが連合で発布している規定もあって、日中の最高気温が35度以上になると「高温天気」として作業の停止や作業時間の調整などが命じられることになっています。
今回の通知では、業界や業種によって健康への影響は異なるので業務ごとに的を絞った対策を講じるべきこと、重点業界・業種ではアニメーションや短編動画などを用いて宣伝に注力することなどが規定されています。

②ガスボンベの安全検査

6月21日に寧夏回族自治区の銀川市で発生した爆発事故を受けて、各地でガスボンベなどガス爆発の原因になる隠れたリスクの特別取締活動を行う旨の発表がなされています。
山東省や江蘇省でも緊急に安全対策についての会議等が行われていますので、各企業においても改めてガス関連の安全管理にはご留意ください。

③安全生産管理の「一案双罰」(両罰)

ちょうどその6月21日の朝ですが、企業の安全生産管理に関する重大事故リスク2023年特別取締活動について、企業と主要責任者の双方を処罰する、いわゆる両罰規定の適用事例が発表されていました。
「主要責任者」や「主管人員」が会社のどのような地位にあるものかは記載されていませんが、常に董事長や総経理が処罰対象となるというわけでもなさそうです。もちろん、部下に責任をなすりつけるのは良くないですが、業務の分担を明確にすることで、何でも董事長や総経理の責任になってしまわないようにしておくことは事故防止のためにも大切かと思います。


2023年6月19日月曜日

6月第2週:①「盲盒」(福袋、ガチャ)のガイドライン、②建物内装の安全管理強化、③知的財産権局のマークの使用

①「盲盒」(福袋、ガチャ)のガイドライン

国家市場監督管理総局から、「盲盒」経営行為規範指針(試行)が発布されています。
「盲盒」とは、事前に商品の範囲は告知されているものの、確定した型式等は告知されていない状態で、消費者がランダム抽選の方式で特定範囲の商品を購入する取引方式をいいます。日本で言えば福袋やガチャのようなものかと思います。
抽選規則や抽選の確率などを公示すること、抽選結果を操作したり確率を変えたりしてはならないことなどが規定されています。

②建物内装の安全管理強化

住宅都市建設部から、建物内装の安全管理強化に関する通知が出ていました。
https://www.mohurd.gov.cn/gongkai/zhengce/zhengcefilelib/202306/20230609_772638.html
最近、黒竜江省のハルピン市で賃借人が無断で建物の耐力壁を撤去してしまったという事件が話題になったようで、建物の耐荷重構造に変動を生じてしまうような施工をしないこと、クーラーの室外機が落ちる危険があるときは直ちに固定又は交換すること等が規定されています。

③知的財産権局のマークの使用

知的財産権局のマーク(英語の「IP」と星の図案)を製品や展示パネルに使用する行為についての照会回答(批复)が公表されています。
国家機関の名義やイメージを宣伝に利用しているもので、《特許標識表示弁法》や《広告法》の規定に違反しているとの回答になっています。
製品の宣伝のために特許登録番号や発明名称などを表示することはあると思いますが、その際に知的財産権局のマークをついでに付してしまうのは違法ということです。


2023年6月13日火曜日

弁護士以外の者が代理人になれるかどうか(弁護士代理の原則)

中国の方々からのご相談を受けていると、「弁護士以外の者が代理人になることはできないのか? 自分が代理人になってはいけないか?」という質問を受けることがよくあります。
これは、日本の依頼者の方々からはあまり受けることがないご質問です。

「弁護士代理の原則」とは、日本において、訴訟の場面では原則として弁護士しか代理人になることはできないというルールのことを言います。
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日本「民事訴訟法」第54条(訴訟代理人の資格)
1 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
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一方、中国では、弁護士でなくても、訴訟代理人になることができます。つまり、弁護士代理の原則というのがありません。
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中国《民事訴訟法》
第61条  当事者及び法定代理人は、1名から2名を訴訟代理人として委任することができる。
 次に掲げる者は、訴訟代理人として委任されることができる。
 (一)弁護士及び基層法律サービス業務者
 (二)当事者の近親者又は業務人員
 (三)当事者の所在する社区及び単位並びに関係社会団体の推薦する公民
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このように、少なくとも訴訟の場面で見れば日中双方の制度は大きく異なっていますので、冒頭のような日本ではあまり聞かないようなご質問が出てくることになります。


ちなみに、日本でも、訴訟の場面ではなく、報酬を得る目的でなければ、弁護士でなくても代理人になることができる場合はあります。
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「弁護士法」第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
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ですので、訴訟以外の場面についてはご説明がなかなか難しいのですが、訴訟以外の場面であっても、非弁護士の代理人と称する方が介入している場合は、少なくとも日本の弁護士自身は、その案件に関わることが難しくなります。下記「弁護士職務基本規程」の規定があるためです。
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「弁護士職務基本規程」第11条(非弁護士との提携)
弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる 相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
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中国の方々が弁護士でない人を代理人に立てて交渉しようとする場面を見かけても、お互いに背景が違うことを理解して冷静にご対応いただければと思います。


2023年6月12日月曜日

6月第1週:①国務院の2023年立法計画、②市場監督分野の業界標準、③法律適用問題の照会回答

①国務院の2023年立法計画

先週は全人代常務委員会の今年の立法計画についてご紹介しましたが、今週は国務院の立法計画が出ていました。
全人代常務委員会の審議に上程する法律案、国務院が定める行政法規案、それぞれの起草について、それぞれどの部門が担当するか別紙で列挙されています。

②市場監督分野の業界標準

市場監督分野の業界標準についての管理弁法が出ています。
市場主体登記や遠視営業許可証、信用管理、不正競争、ネット市場の管理など、市場監督分野に関する業界標準について、今後、MRのコードを付して制定されていくようです。

③法律適用問題の照会回答

各地の高級人民法院から最高人民法院に対する照会と回答についての規定が公表されています。
https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/402522.html
普遍性や指導的意義がある問題の回答については、回答を受けた人民法院が案例を編集して、「指導性案例」の候補として推薦することができるそうです。
また、技術類知的財産権や反独占法の問題については、一審の人民法院が最高人民法院に対して照会をすることもできるとのこと。
我々が普段かかわることのない、上下の人民法院間での話ではありますが、日本とは仕組みが異なることが分かる規定かと思います。


2023年6月9日金曜日

会社数、事業者数(こんなにも激しい競争社会)


中国でのビジネスは日本に比べても熾烈な競争環境にあると感じられることがあります。
その感覚によく合う数字がありますので、ご紹介しておきます。

中国における事業者数は、2021年末時点において1.54億者であり、そのうち約3分の2にあたる1.03億者が個人事業者です。
ですので、概ね残りの3分の1にあたる約5000万社の企業があるというイメージになります。(法人格を持たない組合企業などが含まれるので、「法人化割合」ではありません。)

一方、日本の事業所数は2018年時点で約639万事業所、企業数が2016年で約359万社とのことです。
(経済センサス-基礎調査(令和元年)、中小企業庁平成30年11月30日発表にかかる中小企業・小規模事業者数の集計結果)

このように見てみると、およそ10倍以上の数の事業者が、3倍程度のGDPを奪い合っているような、熾烈な競争環境であることがイメージしやすいかと思います。

【2024年1月追記】
会社法改正の関係記事を見ていましたら、中国の事業者数が大幅に増えたのは2014年以降、出資払込の規制が撤廃されて、企業の設立が非常に簡単になった後だったようです。
この10年間で1億者増えた、数としては約3倍になったということで、この1億者の中には実態のない又は零細な事業者も多いでしょうから、見た目ほどに事業者が多いわけでもないのかもしれません。
補足までにて。

中国と日本の訴訟件数(中国の方が訴訟になりやすい)

日本における民事事件(※)の件数は、年間で約136万件(新受件数ベース)とのことです。
 (※)訴訟のほか、強制執行、破産なども含まれています。

参照:令和4年司法統計年報速報版 


これに対して、中国の場合、同じく民事事件の件数を見ると、1812万件(受理件数ベース)となっています。

参照:2022年全国法院司法統計公報


随分前に、同じような比較の観点から、「日本の3倍くらいのGDPで、事件数は10倍くらい。つまり、日本よりも3倍くらい訴訟になりやすい、と言えそうです。」というお話をしていたような記憶がありますが、今はその傾向がもっと強まっているように思います。

日本の広告をそのまま中国語にして使ってもよい?

こちらも過去にセミナーでお話した内容から、一つ、ブログでご紹介しておきます。
こちらは中国のお話です。





中国の《広告法》では、
一般的に広告に含めてはならない内容として、このように11項目を挙げています。

このうち、よく引っかかるのは第3号で、
「業界No.1」とか、「最先端」といった用語は不可となっています。
この「等」が非常に幅広い表現をカバーするので、大きくしておきます。

何年か前に某有名ブランドのプロモーション動画で問題になったような、
中国の方がピザやパスタをお箸で食べているとか、
民族的な自尊感情を損ねるような内容もいけません。第9号です。

他にも、タレントさんが旧日本軍の軍服を着用している写真なども、
社会的秩序や良好な風俗に反することになりますから、気をつけましょう。
第7号ですね。

とにかく、「日本の広告をそのまま中国語にして使う」、これは危ないですので、
是非、基本的な知識として覚えておいていただければと思います。

なお、近年よく問題になる「ステルスマーケティング」についても、
中国《広告法》はこのように明文で禁止していますので、
合わせて知っておいてください。


2023年6月6日火曜日

「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」に関する記事(第1回)を掲載いただきました。

【寄稿】「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」
  ~第1回: “攻め”と“守り” 両面を見据えた体質改善~

東海日中貿易センター会報誌2023年5月号に掲載いただきました。


全6回の連載を予定しておりまして、第1回は導入編ということで、
なぜ今、改めて“攻め”と“守り”の両面に強い組織作りが大切になっているのか?などご紹介しています。

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第1回: “攻め”と“守り”両面を見据えた体質改善(本号掲載)
第2回: 「攻め」(内販強化、新規事業)で直面する課題とその対処法
第3回: 「守り」(事業売却・縮小、リストラ、外注化など)で直面する課題とその対処法
第4回、第5回: 組織作りのポイント~組織・人員
第6回: 組織作りのポイント~資産、取引、その他
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2023年6月5日月曜日

5月第5週:①2023年立法計画(会社法改正は8月の予定)、②個人情報出国標準契約の届出指南(第一版)、③消費品の標準化推進

①2023年立法計画

全人代常務委員会から、2023年の立法計画が公表されています。
継続審議中の法案17件については、何月に公布予定か記載されています。
《会社法》改正は8月となっています。
長らく《暫定条例》であった増値税についても、同じく8月に《増値税法》の予定とのこと。
その前の6月に《対外関係法》、12月に《金融安定法》と《民事強制執行法》など、気になる項目は色々ありますが、それぞれ公布に至ったときに改めてご紹介したいと思います。

②個人情報出国標準契約の届出指南(第一版)

《個人情報出国標準契約弁法》が6月1日から施行ということで、実際の届出手続に関する指南が公表されています。
データが国内にある状態でも、国外から照会、閲覧、ダウンロード、エクスポート可能な状態になっていると、やはり個人情報の国外提供として届出が必要になるとのこと。
手続を処理する担当者の委任状や、申請内容に虚偽がないことなどを記載した承諾書のフォーマットが添付されています。
個人情報保護影響評価をしてから届出まで3ヶ月以内であること、その間に重大な変化がないことも、承諾書の内容に含まれています。

③消費品の標準化推進

国家標準化管理委員会、工業情報化部、商務部の3部門が共同で、消費品標準化建設の強化についての行動方案を公表しました。
消費品の国家基準について、重要技術指標における国際基準との一致の程度を95%以上にするという目標が掲げられています。
重点領域としては、家電製品、電子製品などが挙げられており、スマート化に対応するインターフェースなども対象となっています。
また、塗料や壁紙等の内装用建材や、アパレル製品についても、安全性向上や高機能化に対応した標準化などが掲げられているようです。

2023年6月1日木曜日

日本の話題: ショートメッセージ(SMS)データの編集(変造・捏造)

過去にセミナーでもお話したことがある話題ですが、最近改めて同じような話題を目にしたので、この機会に改めてブログに掲載しておきます。










この写真は、何年か前にとある事件で、【携帯に保存されているショートメッセージのデータを編集できるかどうか】が争点になったとき、詳しい業者さんに相談して実験してみたときの写真です。
私もその作業に立ち会って見せてもらったのですが、結果として、「送信元」も「メッセージの内容」も、きれいに入れ替えることができました。画像を加工することは当然、簡単ですが、携帯電話に入っているテキストデータも、技術的には書き換えることができる場合があるということです。
このときの実験では、送信元はもともとメールのアドレスだったのですが、それが特定の電話番号から届いたという表示に変わり、メッセージの内容の文字も違うものに変わっていました。私も知識としては、そういうことが可能だとは抽象的には知っていたのですが、実際に目にしてみると、やはり驚きでした。

チャットアプリのLINEやWeChatで同じことができるのかどうかは私も試したことがなく知らないですし、SMSについても端末によって異なるのかもしれないのですが、データである以上、同じようなことがあり得るのかもしれません。
場合によっては鑑定が必要になると思われますので、スクリーンショットやバックアップデータがあれば可と考えるのではなく、端末の元データを保存しておく(機種変更しても元の端末を保管しておく)ということも大切になってくるかと思います。

最近ではAIを活用したディープフェイクという技術も話題になっています。
なんであれ本物「らしく」見えてしまう世の中ですから、証拠は一つ何かがあれば良いというわけではなく、複数あるべきだと言えそうに思います。