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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2022年5月31日火曜日

5月第4週:①安全生産の重点取締活動、②上海市工会条例の改正、③離職証明書の発行時期

①安全生産の重点取締活動

安全生産の重点取締「百日清零行動」が6月初めから9月上旬にかけて行われます。
2021年11月第3週にご紹介していたとおり、この3月までの間を自主検査・是正期間と位置付けて特定業種や特定の職業資格などいくつかのテーマを重点項目とした取締に関する通知が出ていましたが、今回は2022年3月第1週に重点取締対象とされた旨をご紹介していた鉄鋼、アルミ加工、粉塵作業などが重点範囲として挙げられています。

②上海市工会条例の改正

上海市で労働組合(工会)に関する条例が改正されました。
報道では、個人で宅配業務を請け負ういわゆるフリーランスの人たちにも労働組合に参加する権利があることに言及するなど、労働組合の都市の運行安全保障に関する機能を強化したものと紹介されています。
上海ではもともと労災死亡事故や従業員の健康問題への重大危害に対する調査処理には必ず労働組合が参加しなければならないとされていましたが、生産安全事故もこのような労働組合が調査処理に参加すべき場面の一つであることが明記されるなど、企業活動に影響がありそうな内容も含まれています。

③離職証明書の発行時期

裁判事例で、退職した従業員について、次に新しい会社に就職するために離職証明書を求められたところ、前の会社の方が直ちに離職証明書を発行しなかったため、再就職機会を失ったとして賠償を命じられた事例が紹介されていました。
離職証明書には、離職に至った事由(自己都合か会社都合かなど)が記載されるほか、離職後における制限事項などが記載されることがあります(2021年9月第4週ppt資料参照)。ですので、どのように記載すべきか迷う場面もあるかもしれませんが、発行時期が遅れてしまうとそれ自体が別のトラブルを招くことになります。

2022年5月24日火曜日

5月第3週:①上海市でのコロナ禍対応に関する法律問題FAQ、②公平競争審査制度の改善、③生態環境損害賠償管理規定

①上海市でのコロナ禍対応に関する法律問題FAQ

上海市司法局から、コロナ禍における法律問題に関するFAQの第4集が公表されていました。
政府機関が実施している各種の制限措置については、《伝染病防止法》や《突発事件対応法》は「授権性立法」であり、重大な社会的危害をできるだけ早く制御・軽減・除去できるように政府関係部門に一連の緊急対応措置をとる比較的大きな権限・裁量の余地が付与されていることなどが説明されています。
第1集から第3集はいずれも3月末に相次いで発表されていたので、少し間隔が空きましたが、内容的には第1集から第3週の方が、従業員関連の人事労務対応や取引先との契約の処理に関する事項が対象となっていたので、企業活動にとっては参考になる内容であったかと思います。

②公平競争審査制度の改善

市場監督管理総局から、公平競争審査制度について、4つの面からそれぞれテスト地域を選定して改善の検討を行うことが発表されています。
例えば、江蘇省と重慶市では情報の自動収集やビッグデータ分析による審査レベルの向上、安徽省と広東省では市場主体からの通報に対する処理の改善など、各地で異なる改善項目がテスト対象となっているようです。
ちなみに、「公平競争審査制度」とは、市場主体の経済活動にかかわる法令や政策の制定にあたり、市場競争に対する影響を評価し、競争排除・制限効果を有するような法令については調整をしたうえで発布するという制度です。
詳細は2021年6月に発布された《公平競争審査制度実施細則》などをご参照ください。

③生態環境損害賠償管理規定

環境汚染があった場合の損害賠償に関する新しい規定が発布されています。
環境汚染が修復できる場合と修復できない場合の2つに分けて、修復できる場合には修復する、修復できない場合は損失を賠償又は代替措置により環境機能を同等に回復する、といったことが規定されています。
環境汚染に関しては司法と行政の重なり合う部分があるため、手続についても細かく規定されています。
引き続き環境汚染については関心の高い政策テーマということになりそうです。

2022年5月17日火曜日

5月第2週:①先週休載のお詫びとお知らせ、②職業資格の「ニセモノ証書」にご注意、③企業のコスト負担軽減の各種政策、④民間企業における職務侵奪犯罪の典型事例

①先週休載のお詫びとお知らせ

先週はブログの更新を怠っておりました。ご覧いただいている皆様にお詫び申し上げます。
先週、会員制Webサイト「キャスト中国ビジネス」のサイトがリニューアルになりました。
15年ぶりの大幅刷新で、スマホからも見られるようになり、画面もとても見やすくなっています。私も新しい動画コンテンツを掲載してもらっています。
人事異動の時期です。中国にこれから赴任される方々、既に中国事業に長らくかかわっておられる方々、どちらにも是非お役立ていただければと思っています。
機会がございましたら、どうぞ一度ご覧ください。

②職業資格の「ニセモノ証書」にご注意

人力資源社会保障部とネットワーク情報弁公室から、技能類「山寨」証書の取締活動に関する通達が出ていました。
「山寨」というのは、海賊版や模倣品といった意味の言葉ですが、職業資格まで海賊版が作られているのかと驚きました。
ネット上では、「政府推奨」、「合格保証」、「好待遇就職」などの宣伝文句で、「職業資格」「職業技能鑑定」など如何にも就職に有利なように見える資格が取得できるように見せて受講者を集める悪質な業者がいるようですので、個人でスキルアップを目指す方々はお気をつけください。
逆に、事業者の立場で言うと、国家が定めた職業資格以外に、何らかの職業資格と紛らわしいような制度を作ってしまうと、これら悪質業者と同列に扱われてしまうかもしれないと言えるかと思います。
コロナ禍で出勤できない間に自己研鑽に励もうという熱心な方々が、かえって思いがけないトラブルに遭ってしまわないように願っています。

③企業のコスト負担軽減の各種政策

国家発展改革委員会、工業情報化部、財政部、人民銀行が連名で、企業のコスト負担軽減のための政策メニューに関する通達(2022年版)を出しています。
小規模零細企業向けの税還付など税制優遇、貸し渋り(限贷)や貸し剥がし(抽贷)の防止などの金融施策、行政許可事項の削減などによる制度性コストの低減、失業保険・労災保険の納付猶予などの人件費負担軽減、賃料減免などコスト低減、通行料免除など物流コスト低減、中小企業への代金支払遅延の取締、IT活用支援など、見慣れた項目が並んでいます。
概略のみの箇条書きのような内容ですので、具体的な内容はそれぞれ各企業の所在地のルールを見る必要がありますが、自社で活用可能なメニューを見落としていないかどうか、全体を見渡してみるチェックリスト的に使うにはよさそうに思います。

④民間企業における職務侵奪犯罪の典型事例

最高人民検察院から、職務侵奪罪(日本で言えば横領や背任)に関する典型事例6件が新たに公表されました。
昔からある経費精算をめぐる不正行為や商流への親族・知人の介在などの事例ですが、Eコマースの世界で「発票」が無い支出が増えている状況を反映した事例や、コロナ禍で現地捜査がしづらい中でチャット履歴などの証拠で犯罪行為を立証した事例などがあります。
昔からある類型の不正行為でも、時代に合わせて手口も対策も少しずつ変わってきていますので、ときどきは勉強しておこうと思っています。


2022年5月2日月曜日

4月第4週:①上海市における労働関係に関する通知、②ドローン輸出と《輸出管制法》、③職業に関する民間資格、④中国学術文献データベース(「知網」)をめぐる紛争

①上海市における労働関係に関する通知

上海市の人社局から、コロナ禍での操業停止に関連する人事労務関連の各種事項についての通知が出ていました。
  • 労働報酬、業務方式、労働時間などの変更については、メールやチャットアプリでの意見徴求と協議による変更も「コロナ禍期間のみに適用」とすれば可能とする。(二)
  • 政府による外出制限によって一つの賃金支払周期(例えば月給制なら一ヶ月)を超えて業務に従事できない場合(テレワークできる場合は除く)、労働者側との協議を経て、一ヶ月を超えた後は生活費のみ支給することができる。(九)
といったような、上海での現地法人の人事労務管理に携わっている方々は必ずご覧いただくべき内容が含まれておりますので、現地法人の人事労務のご担当者には是非一度、見ていただくようにお伝えいただければと思います。

②ドローン輸出と《輸出管制法》

ドローン大手のDJI(大疆)がロシアとウクライナでの商業活動を暫定的に停止したとのこと。
《輸出管制法》を含む関連法令のコンプライアンスを改めて自社内で見直すためというコメントも出ているようです。
これまで、中国の《輸出管制法》に関心を払うべき場面は多くはなかったように思いますが、民用技術が戦争にもかかわってしまうことが増えているのかもしれないと思いました。

③職業に関する民間資格

江蘇省のとある民間の試験認証センター(資格学校?)が「全国」で「職業資格」として認められるかのような「登録職業資格証書」を勝手に作っていたようで、問題になっています。今回、人社部から、このセンターの資格証書は国家資格に関するものではなく、採用や昇級、個人所得税優遇などの如何なる職業資格に関する優遇もありません、という声明が出ていました。
コロナ禍で外出できない時間を自己研鑽に、と考える前向きな方々を騙すような話でもありますので、お気をつけいただければと思います。

④中国学術文献データベース(「知網」)をめぐる紛争

精華大学が主導する「知網」という学術文献を一括して大きなデジタル図書館のようなものを作るプロジェクトがあります。CNKIとも略称されます。教育部や国家版権局などの協力のもと推進されており、学校や研究機関が会員になってデータベースを利用するのですが、その費用が高すぎるということで、反独占法違反の市場支配的地位の濫用行為があるとの訴訟を起こされています。実はこのプロジェクトは、単に利用者から費用を取るだけではなく、逆に、利用される論文などを掲載した人たちに対しては収益を分配するということになっているのですが、徴収される費用と分配される収益のバランスが取れていないということも問題視されているようです。
郭兵氏という浙江理工大学法政学院の特任副教授の方がいらっしゃいまして、今回の訴訟ではこの方が原告になっているのですが、実はこの方、杭州野生動物園を訴えて顔認証に関する中国初の裁判事例とされる事例の原告にもなった方です。単に発生した裁判事例だけを観察して分析・論評するだけではなく、自分で原告になってこういった新たな事例を作ってしまうというのは、本当に仕事が好きな方なのだろうなと思います。