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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2024年4月22日月曜日

4月第3週:①上場会社の「殻」の価値削減、②上場会社の監督管理強化、③商業分野での決済の利便性向上

①上場会社の「殻」の価値削減

証監会から新たに、上場会社の市場退出メカニズムの健全化の実施方案が出ています。
中国の上場会社の一部にあっては、上場審査をパスする難関を避け、既に上場している上場企業を使って買収と事業再編などを通じて他の会社が実質的に上場の目的を果たすこと(いわゆる「裏口上場」)のために、本来であれば上場廃止になるべきところ上場会社の地位にとどまって「殻」(=上場会社としての地位)を第三者に売却しようとする問題などが見られます。
投資家の保護を強化しつつ、「殻」の価値を削減していくとして、粉飾決算のあった場合の上場廃止や、買収・再編にあたっての審査を上場審査並みに厳しくすることなどが挙げられています。

②上場会社の監督管理強化

国務院からも、上場の参入時から上場後、さらに上場廃止までの全過程についての監督管理についてのリスク防止の強化についての意見が出ています。
今回の注目点としては、「仲介機構」のブラックリストについての規定が挙げられます。ここにいう「仲介機構」とは、いわゆる証券会社のことで、証券発行会社と投資者との間で専門的な仲介業務、つまり証券の売出や推薦、売買の代理などの業務を行います。一方、会計士事務所、弁護士事務所、評価会社などは「証券サービス機構」という分類になります。どちらも地方レベルでは以前から処罰を受けた会社や事務所がリスト形式で公表されていることはあったように思いますが、証券会社の選別・淘汰が進むことが期待されるとともに、証券会社等におけるM&Aなどの業務の対応が慎重になり、プロジェクトが進めづらくなる場面も予想されます。

③商業分野での決済の利便性向上

中国人民銀行、商務部、国家外貨管理局が共同で、商業分野における支払決済の利便性向上についての意見を出しています。
https://www.gov.cn/lianbo/bumen/202404/content_6945991.htm
先だって3月にも支払決済の利便性向上についての政策についてご紹介していましたが、それを受けて具体的に各地の商務部門と人民銀行の支店が連携して、ショッピングセンターなど重点場所でのATMの展開・改造などの施策を進めることなどを述べています。
現金使用環境の改善や外国銀行カードへの対応などについても挙げています。




2024年4月17日水曜日

4月第2週:①外貨決済に関する規制緩和2件、②環境保護のための補償措置、③付加価値電信業務の対外開放拡大

①外貨決済に関する規制緩和2件

国家外国為替管理局から、貿易に関する外貨決済の規制緩和に関する通知が出ています。
https://www.safe.gov.cn/safe/2024/0407/24204.html
各外為局における企業リストの登録管理をやめて、国内の銀行で直接に登録ができるようになります。
また、資本項目の外為業務指針(2024年版)も公表されています。
https://www.safe.gov.cn/safe/2024/0412/24226.html
2023年に新たに発布された外貨管理面の規制緩和措置をガイドラインに反映しています。こちらの業務指針は実務上よく参照するものですので、該当する場面で該当箇所をご覧ください。(とても分厚いですので、全部を通読する類の資料ではありません。念のため。)

②環境保護のための補償措置

森林や草原、湿地などの環境を保護するために行われる補償措置に関する国務院の行政法規が公布されました。
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202404/content_6944395.htm
日本に同じような仕組みがあるのか不勉強で存じ上げないのですが、環境保護のための保護措置が講じられると開発等が行えなくなり経済的な不利益が生じますので、これに対して補償が与えられます。
国家財政から企業・団体・個人に対して垂直方向での補償が行われるほか、地区間において水平方向で書面での協議書を締結して補償を行うこと、さらには市場における排出権等の取引を通じて補償を行うことなどが規定されています。
つまり、ここでいう「補償」という言葉にはネガティブな意味合いはなく、単に有利不利のバランスをとるための埋め合わせの措置と理解できるかと思います。

③付加価値電信業務の対外開放拡大

工業情報化部から、付加価値電信業務(增值电信业务)の外資企業向け規制緩和の通知が出ています。
https://www.miit.gov.cn/zwgk/zcwj/wjfb/tg/art/2024/art_2326271e1b424e09b6e5924ad2948863.html
北京のサービス業解放拡大総合モデル区をはじめ、上海、海南、深センのそれぞれのモデル地域をテスト地域として、データセンター(IDC)やプロバイダ(ISP)などの業務に関する外資持株比率の規制を撤廃するとのことです。
なお、もちろんこれらの業務を行うには許可証取得が必要ですから事業活動については中国の法律に基づく監督管理が行われます。


2024年4月8日月曜日

4月第1週:①入札分野の公平競争審査規則、②《民法典》婚姻・家庭編の司法解釈(二)(意見募集)、③届出済の生成AIサービスのリスト

①入札分野の公平競争審査規則

入札分野における公平競争審査についての新しい規則が発布されています。
公平競争審査とは、以前にもご紹介しているとおり、法令や政策の制定にあたり、市場競争に対する影響を評価し、競争排除・制限効果を有するような法令については調整をする制度です。
今回は、《入札募集・入札法》やその実施条例に基づいて、審査基準の面で「政策制定機関」が市場参入条件や標準文書(モデル文書)を定めるにあたって入札募集を行う事業者に対して不必要・過度な制限を課さないように、採用すべきでない政策措置を列挙しています。引き続き入札分野への参入のしやすさが向上してくることが期待できそうです。

②《民法典》婚姻・家庭編の司法解釈(二)(意見募集)

婚姻関係(当然ながら離婚も含みます。)に関する新しい司法解釈の意見募集が行われています。
「偽離婚」の主張そのものは支持しないが離婚協議書の財産・債務の処理に関する条項の虚偽表示による無効主張は認めることや、父母が子らの結婚のために購入資金を出してあげた不動産については建物を取得した側から他方に対して補償を要すること、子の連れ去りについて連れ去った側が賭博・薬物・家庭内暴力などを理由に適法と主張するときは裁判所が監護権の取消などの方策を告知すべきこと、などが条文案として提示されています。

③届出済の生成AIサービスのリスト

生成AIを用いたサービスについて、《生成系人工知能サービス管理暫定施行弁法》に基づき届出を行ったサービスが国家インターネット情報弁公室からリスト形式で公表されています。
もともと《生成系人工知能サービス管理暫定施行弁法》では生成AIを用いたサービスを提供する事業者に届出義務を課す条文は置かれていないのですが、徐々に各地において届出に関する制度が整備されてきており、これに基づき各地で届出を行った事業者のリストが公表されているもののようです。
このリストは定期的に更新され、その都度改めて公告はしないとのこと。「第●期」とか「第●回」という形でときどきリストが公告されるのが通例ですので、これは少し変わった方式のように思います。
既に100を超えるサービスがリストに掲載されており、北京・上海・広東省が多数を占めているようですが、生成AIを活用しようとするときには、このリストを見ていただくと参考になるように思われます。

2024年4月3日水曜日

4月1日からの登記手続変更:外国人の方々の日本国内での不動産登記(国内連絡先)

ひさしぶりに日本のお話です。

大阪で不動産を購入される外国人の方々の手続のサポートなどしておりますが、この4月1日は、司法書士の先生など不動産登記に関わる方々にはなかなか難しい時期になっているようです。
様々なところで苦慮されているのではないかと思いますので、雑感を含めて、ここで書き留めておきます。


不動産登記法やそれに関する政令等の改正があり、日本国内に住所のない外国人の方々などが日本で不動産登記をする際に、4月1日から「国内連絡先」の登記が必要になっています。
2024年3月1日:令和6年4月1日以降にする所有権に関する登記の申請について

ここでいう「国内連絡先」とは、単なる日本国内の住所や電話番号ではなく、「所有権の登記名義人が国内に住所を有しないとき」に、「その国内における連絡先となる者の氏名又は名称及び住所その他の国内における連絡先に関する事項として法務省令で定めるもの」(改正「不動産登記法」第73条の2第1項第2号)です。
つまり、外国人の方が日本の携帯電話をもっていて常時連絡が取れるとか、日本に来た時に滞在する不動産を持っているとか、そういった事情があったとしてもここにいう「国内連絡先」としては足りず、日本に住民票のある個人か、日本に事業所のある法人を指定しなければなりません。
(用語として、「連絡先」ではなく「連絡担当者」とか「連絡窓口」とした方が誤解が無いような気もします。)

この法改正自体は前々から知っていたのですが、「国内連絡先」については「なし」で申請することもできることが早い段階で決まっていましたので、特段問題にならないだろうと見ておりました。
ところが、いざ制度が始まってみると、「なし」で登記申請をしようとすると、「国内連絡先となる者がないときはその旨の上申書(登記名義人となる者等の署名又は記名押印がされたもの)」が必要とのこと。
もし国内連絡先として日本国内の誰かを登記しようとしても、その方の印鑑証明書と承諾書が必要になるという厳重さです。
まだしも「なし」で申請する方が簡単です。
(制度設計としては、本来はなるべく日本国内の連絡先を登記してもらった方がよいはずなのに、若干あべこべな感じもします。)
確かに、連絡先そのものについて地面師のような第三者に悪用されてしまう危険もありますから、慎重であるべきことも理解はできるのですが、なかなか厄介なところがあります。

立法の過程を見ていると、「国内連絡先」としては所得税・消費税に関する納税管理人のような委任関係のある第三者が想定されているらしいのですが、
誰かに国内連絡先をお願いしようとしても、国内連絡先になるとどのような負担が生じるのか、住所が変更になったらどうするのか、本人と連絡が取れなくなったらどうなるのかなど、分からないことが多いです。
比較的最近の政令改正に関するパブリックコメントの結果を見ていても、未解決の問題が多い中でスタートしているように見えます。
2023年10月4日:「不動産登記令等の一部を改正する政令案に関する意見募集結果について」

これでは、なかなか外国の方々に「国内連絡先」について説明するのも難しいですし、
日本国内で誰かに「国内連絡先」になってもらうようお願いするのも難しいような状況になってしまっています。
「国内連絡先になる方々へ」といったような手引きやリーフレットがとても欲しくなりますが、法務局の窓口には既にあるのでしょうか?
もしどなたかご存じでしたら、是非ご教示いただければと思います。

他にも、外国の住所の確認についてもパスポート(旅券)のコピー(これにもご本人の署名が必要。)が追加で必要になるなど、登記手続上、必要な書類が増えてしまっています。
いずれも外国から書類を取り寄せることになりますから、時間も手間もかかります。
登記手続が滞ってトラブルになってしまう例もありそうです。


日本では通常、改正法施行前に政令・省令・通達などが出て、研修会などもよく行われますので、施行日には実務対応は比較的分かりやすくなっていることが多いのですが、今回は比較的実務に大きな影響のある改正で、また改正項目が多かったためか、この外国人の方々向け対応のところまで固まっていない部分があるように思われます。
中国では、施行日直前まで細則規定が発布されず、施行後にようやく実務の対応が分かってくることが多いですので(場合によっては施行後随分経ってからようやく具体的な規定が出ることもあります。)、中国業務ではよく見る光景ではあるのですが、日本でもこういうことがあるのかと改めて感じました。


2024年4月1日月曜日

3月第4週: ①データ・個人情報出境に関する指南2件、②信用情報に関するクレーム、③駐在員事務所・代表処の登記管理条例などの改正

①データ・個人情報出境に関する指南2件

先週ご紹介した《データのクロスボーダー流動の促進及び規範化にかかる規定》と同日、2つの指南が出ていました。いずれも第二版となります。
https://www.cac.gov.cn/2024-03/22/c_1712783131692707.htm
まずデータ出境安全評価に関する指南について、改正前の第一版と比較してみると、大きく変わったのは安全評価の申告表です。以前に比べて、データの関わる業界の記載など、選択式で項目を選ぶ部分が増えている印象です。また、安全評価の報告書のフォーマットも改正されており、場面ごとに国外に移転されるデータを表にして記載する欄が設けられた一方、記載項目そのものは少し簡略化されています。
次に個人情報の国外移転のための標準契約届出の指南ですが、こちらは標準契約の書式そのものには変更は無し、報告書のフォーマットの方で若干、記載項目が簡素化された程度の修正にとどまるようです。提出方式が書面+電子申請からシステムでの申請に一本化されたことが大きな変化でしょうか。

②信用情報に関するクレーム

金融機関などが貸付等の与信判断に用いる信用情報について、対象者本人が信用情報機関などに対してクレームする場合の規程が公表されていました。
2月に既に発布されていましたが、ネットでの掲載は3月15日だったようです。
匿名・連絡先不明のクレームや、不受理になった内容の重複クレームなどを除いては、10営業日以内にクレームを受けた信用情報機関や金融機関などにおいて処理を行うこととされています。また、《回答意見書》という形式で処理結果がクレーム提出者に提供されることになっています。
ここ数年の中国では、本当に信用記録が重要になってきています。日本とは違った制度が整備されていますので、引き続き興味を持って見ていきたいところです。

③駐在員事務所・代表処の登記管理条例などの改正

8つの行政法規を改正し、13の行政法規を廃止するという決定が公布されていました。
内容を見てみましたが、日系企業に影響がある内容としては、駐在員事務所・代表処の抹消登記手続のときの提出書類から、外為局の発行する文書が一つ減ったという改正くらいかと思います。