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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年9月26日火曜日

インボイス制度のインボイス(発票、適格請求書)の書式

日本のインボイス制度、いよいよ来月からスタートです。
直前になってようやくですが、始まるにあたって、これはなかなか大変なことであることが個人的に実感として分かってきたので、少し話題として触れます。

中国の増値税のインボイス制度では、商品の販売者や役務の提供者が発行するインボイス(中国語では「発票」といいます。)は書式が固定されていて、発行者の名称、金額や税率など、どこに何が書かれるか、一目瞭然になっています。
中国語が分からない人でも、どこに何が書かれているか、「慣れ」ですぐに分かるようになります。

一方、日本の消費税のインボイス制度にいうインボイス(適格請求書)は、なんと、「書式が自由」だそうです。

そうなると、受け取り側の方で、記載事項が揃っているかどうかチェックするのが、とても困難になります。
さらに、「必要事項が複数の書類に分かれて記載されていてもOK」とされているので、下図のように、必要事項がどこに書かれているのか、複数の書類から拾い出していかなければならないという負担が生じることもあります。















インボイス制度、受け取る側の方が大変という話は聞きますが、確かに、もらった請求書からこの①~⑥を探して拾い出す作業はなかなか大変だろうと思います。
今はAIがあるから大丈夫なのかもしれませんが、一昔前のアタマで、「スキャンしてOCRで読み込む」と考えると、「紙のこの位置に、この大きさ、このフォント、この順番で書く」というフォーマットを決めて欲しい!」という気持ちになります。

取引先に「我が社への請求書はこの書式でお願いします」とお願いしたいところですが、発行側からすると、顧客ごとに異なる書式で発行するのも大変ですよね...。

ネジ、蛍光灯、乾電池、トイレットペーパー、なんでも大きさがバラバラだと困るので、JIS規格で一定の規格が決まっています。
自由に放置すれば多様化・複雑化・無秩序化してしまうモノやコトについて、「統一」又は「単純化」することで便利になるということだそうです。

社内の経費精算で経理の方に領収書を渡すときに、この①~⑥を拾い上げる作業をしなければならなくなって大変ということもあるかと思います。
いつもいろんな機会に感じることですが、このインボイスも、書式・様式・フォーマット、統一されていると便利という場面の一例かと思いました。

2023年9月25日月曜日

9月第4週:①税務関連業務の基本準則、②道路運送の重大事故リスク判定基準、③ビザ申請書フォーマットの改訂

①税務関連業務の基本準則

税理士事務所及び税務関連の専門サービスを提供する会計士事務所、弁護士事所、財務・税務コンサルティング会社などを対象とした基本準則と職業道徳規則が、国家税務総局から公表されています。
書面での業務報告又は専門的意見を提供する場合は(個人名ではなく)事務所名義で依頼者に対して提出すべきこと、納税状況審査など4類の業務にかかわる場合はその業務を担当した税理士、会計士又は弁護士が捺印すること等が規定されています。
また、業務過程で知り得た国家安全情報や個人情報の秘密保持についても、職業道徳規則で規定されています。国家安全情報の秘密保持については、最近はさまざまな法令で見かけるようになってきました。

②道路運送の重大事故リスク判定基準

交通運輸部から、旅客や貨物の道路輸送に関する重大事故リスクの判定基準が発布されています。
企業が自らチェックして、問題を発見したときは管轄の交通運輸主管部門へ報告するように求められています。物流企業のみが対象ですが、速度超過や積載量超過、運転者の過労など運用面にもかかわる内容のようですので、ご参考までに。

③ビザ申請書フォーマットの改訂

外交部の定例会見で、中国入国のためのビザ申請表フォーマットについて簡素化したことが紹介されていました。
https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202309/t20230920_11145944.shtml
学歴や家族情報の記述などの項目が簡素化されたようです。
出張時にビザが必要な状況はまだ続きそうですので、申請するときに手間が少しでも省けるのは良いことかと思います。

2023年9月21日木曜日

逮捕と勾留、拘留と逮捕(捜査段階での身柄拘束制度) + 居住監視

ニュース・報道を見るとき、私自身もよく用語で混乱してしまうので、この機会に書き留めておきます。

日本の「刑事訴訟法」では、ある個人について犯罪の嫌疑があって身柄拘束を要する場合、通常まずは逮捕状により警察機関により「逮捕」され(第199条以下)、その後、72時間のうちに検察官により勾留請求が行われて(第205条)、裁判所が勾留状を発することで引き続き「勾留」されることになります。勾留の期間は延長を含め20日間です(第208条)。つまり、逮捕と勾留の期間を合わせると、最長で23日間(3+20)となります。

一方、中国の《刑事訴訟法》ではどうかと言うと、まず公安機関が「拘留」(※中国語ママ)し(第82条)、「拘留」後3日以内に(延長可)人民検察院に「逮捕」の請求をします(第91条)。「逮捕」されるのは懲役以上の刑罰に処する可能性のある被疑者又は被告人に限られます(第81条)。「逮捕」による身柄拘束の期間は2ヶ月(これも延長可で、最長では7ヶ月)となっています(第156条~第159条)。

つまり、起訴される前の捜査段階の身柄拘束としては、日本が「逮捕」→「勾留」の順番なのに対して、中国は「拘留」→「逮捕」の順となっており、日本にいう「勾留」が中国では「逮捕」と称しているので、とてもややこしいです。また、「拘留」も、日本で「拘留」といえば刑事罰の一種(30日未満の刑事施設での拘置)ですから(日本「刑法」第16条)、これも用語がとても混乱しやすいです。(「こうりゅう」という読み方も重複してしまっていますし...)





ちなみに、中国ではこの「拘留」(日本にいう「逮捕」)の前に、さらに、
取保候审」(保釈)(中国《刑事訴訟法》第67条、第71条)という制度と、
监视居住」(居宅監視)(同第74条、第77条)という制度があります。
期間はそれぞれ前者が最長12ヶ月、後者が最長6ヶ月となっています(同第79条第1項)。
保釈の場合は、市・県を離れてはならないという制限であり比較的緩やかですが、
居宅監視の場合は、監視場所(原則は自宅や居所)を離れてはならないという制限になります。
いわゆる自宅軟禁のようなイメージですが、テロ活動など国の安全に関する犯罪の嫌疑がある場合は別の場所が監視場所となることもあります(中国《刑事訴訟法》第75条)。

制度が似ているところ、違っているところが混在しており、用語もとても紛らわしいので、ご参考になりましたら幸いです。

2023年9月18日月曜日

9月第3週:①福建省の両岸融合発展モデル区(台湾関係)、②経営者集中(企業結合)に関する独禁法上のコンプライアンス、③企業標準化促進弁法

①福建省の両岸融合発展モデル区(台湾関係)

中共中央と国務院から、台湾と福建省の海峡両岸の融合発展モデル区の建設に関する意見が出ています。
台湾の子女が大陸で就学することなど、台湾との間の人員往来を歓迎する方向のようです。法律職業資格を得た台湾住民が福建エリアで弁護士業務に従事できる範囲を拡大することも述べられています。
厦門(アモイ)と金門島の融合発展の加速ということで、金門島に電気・ガスを通したり橋を架けたり、共用インフラを整備していくことも考えられているようです。また、福州と馬祖島も同じく「同城生活圏」を作り上げようということが書かれています。
その他、かなり読み応えのある内容になっていますので、別の機会にじっくり読み解いてみたいと思います。
ちなみに、これに先立って9月2日、東莞も最も早い時期から台湾企業が進出していた地域であるということで、台湾との連携を深める「合作総体方案」が国務院により認可されています。

②経営者集中(企業結合)に関する独禁法上のコンプライアンス

《反独占法》に基づく経営者集中の申告(独禁法上の企業結合の届出)について、買収・M&Aや合弁会社設立を行う企業側の目線でチェックすべき事項についてのガイドラインが出ました。
申告は集中を実施する前に行わなければならないところ、その「実施」の基準については、登記手続の完了有無だけではなく、経営陣の派遣や実際の経営上の意思決定への関与、敏感な情報の交換や実質的な事業の統合などがあるかどうかが考慮されるとのこと。
合弁会社の新設については、合弁当事者が共同支配権を有する場合は申告対象になるところ、これについて具体的な事例(【案例】)として、事業計画や財務予算、高級管理者の任免など経営管理事項に関する拒否権の有無が挙げられています。
内容はこれまで既に法令で定められているところに準拠しており、新たな規制となるものではありませんが、企業側の目線で整理されているので、とても参考になるものと思います。

③企業標準化促進弁法

1990年に制定された《企業標準化管理弁法》が改正されて、新たに《企業標準化促進弁法》として発布されています。
《標準化法》第27条にも定められている企業標準の自己声明公開及び監督制度によって届出管理制度に代えるということで、公共サービスプラットフォーム上で10分で手続できて費用もかからないとのこと。
また、企業におけるイノベーションに寄与すべく、目立った経済社会的効用を生む企業標準については奨励を与えるとされています。



2023年9月14日木曜日

従業員との間の労働契約書(雇用契約書)の締結義務

労働契約(雇用契約)は、日本では「期間の定めのない」労働契約であることが一般的です。そして、日本では労働契約書を締結することも強制されていません。ですから、長らくの間、そもそも労働契約書を締結しておらず、労働条件通知書のみで雇用関係が成立している状態が「正社員」であって、労働契約書を締結する場合は「契約社員」と称されてきました。
労働条件通知書は法律上の作成義務がありますし(日本「労働基準法」第15条、同施行規則第5条)、労働契約の内容を「できる限り書面により確認する」ことにもなっていますが(日本「労働契約法」第4条第2項)、労働契約書が締結されていなかったとしても、そのこと自体に対する直接のペナルティはありません。

これに対して、中国では、労働契約の締結義務が法定されています(《労働契約法》第10条)。
そして、これに違反した場合には2倍の賃金の支払義務を生じる(同第82条)というペナルティがあるほか、さらに無固定期間契約を締結したものと見なされるという扱いになってしまいます(同第14条第3項)。
(ちなみに、中国でも、もともと昔の《労働法》の時代から締結義務を定めた条文はあったのですが、罰則がなかったので、《労働契約法》ができるまでは労働契約が締結されていないことも往々にしてありました。その後、《労働契約法》でペナルティが設けられた途端、状況がガラリと変わり、ほぼ例外なく全ての従業員との間で労働契約が締結されるようになりました。)

そして、この中国で全従業員が会社と個々に締結している労働契約には、業務内容や勤務地が明記されています。(中国《労働契約法》第17条第1項第4号による法定記載事項です。)
ですから、労働条件通知書で一方的に通知しているだけの日本と違って、業務内容や勤務地が変わる場合には、いちいち、個々人との間で取り交わした労働契約書の変更が必要ということになってきます。

日本の「労働契約法」と、中国の《労働契約法》、奇しくも同じ2007年にできた法律ですが、日本の「労働契約法」に比べて、中国の《労働契約法》の方が条文数も多く、法律で企業に義務付けられている内容も多いです。
さらに、それぞれ基礎となる雇用をめぐる各種制度や実務運用が異なっているところも多いですが、中でも、この労働契約の締結義務、そして、それによる個々人との労働契約の拘束力は、日本と中国では全然違う部分ですので、是非覚えておいていただければと思います。

この労働契約書の有無は、実はさまざまな場面で人事労務管理に大きく影響してきます。現在、東海日中貿易センター様の会報誌にて連載いただいている「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」でもご紹介していく予定ですので、機会があればご覧ください。








2023年9月11日月曜日

9月第2週:①企業名称管理の細則の改訂、②企業の設備投資に関する税制優遇、③不法移民の送還、④今年の国慶節休暇は8連休

①企業名称管理の細則の改訂

企業名称についての弁法が改正されています。
自己使用目的ではなく悪意をもって先に他社の名称などを登録してしまう行為や、一定の影響力のある名称に近い名称を故意に登録することなどが禁じられています。
また、不正に登録されている企業名称を排除する方法・手続については、従来どおり、①登記機関に名称紛争処理を申請する、②不正競争行為として行政機関に通報する、③人民法院に対して提訴する、これら3つの方法があります。

②企業の設備投資に関する税制優遇

8月はさまざまな税制優遇が相次いで発布されており、特に企業における設備購入を後押しするものが目立つようです。
先進的な製造業企業における仕入増値税控除の優遇措置:
設備・機器等の固定資産の企業所得税上の加速償却:
外資R&D機構における科学研究設備・装置等の増値税還付:

③不法移民の送還

日本でも話題になった不法移民の送還について、この送還前の外国人の身柄拘束中の取扱いに関する規定が出ていました。
ビデオ監視システムの録画資料は少なくとも90日は保存すること、身柄拘束された人員にも毎日2時間以上の室外活動時間を与えることなどが規定されています。
また、送還先は国籍国とは限らず、近くで便利な国に送還するとされています。

④今年の国慶節休暇は8連休

昨年12月に既に発表されていたところですが、今年は中秋節の連休が国慶節の連休とつながって、9月29日から10月6日までの8連休になっています。
https://www.gov.cn/gongbao/content/2023/content_5736714.htm
10月7日と8日の土日が振替出勤になっていますので、私を含め、中国業務にかかわる皆様にとっては多少不便があるかもしれません。スケジュール帳に書いておいていただければと思います。


2023年9月2日土曜日

9月第1週:①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集、②《民事訴訟法》改正、③《外国国家適用除外法》成立、④《行政再議法》改正

8月末はさまざまな法令や政策が相次いで出てきましたので、一度に全てご紹介することができないのですが、法律の制定・改正の件だけご紹介しておきます。

①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集

8月末にも成立するかと見込んでいた《会社法》改正ですが、すんなり成立とはいかず、3回目の意見募集が行われることになりました。
意見募集期間は9月1日から9月30日となっています。
内容についてはまだ詳しく見ていませんので、おって改めて別の機会にご紹介できればと思います。

②《民事訴訟法》改正

《民事訴訟法》が改正されました。2024年1月1日施行となります。
日系企業との関係では、国際裁判管轄に関する規定が拡充されている点が重要と思います。
当事者が管轄異議を出さず、答弁又は反訴をしたときは、中国の人民法院が管轄を有するとみなされることや、同一の紛争について一方当事者が外国、他方当事者が中国国内、それぞれ訴えを提起した場合、特に外国の裁判所を専属管轄裁判所とする合意がなければ受理してよいとすることなどの規定が追加されました。
また、外国当事者がかかわる場合の送達や外国判決の承認執行に関する規定も改正されているようです。

③《外国国家適用除外法》(外国国家豁免法)成立

《対外関係法》が先だって成立したとおり、中国は渉外法治の面についての法律の整備を進めています。
今回は《外国国家免除法》という法律が新たに公布・施行されました。これも2024年1月1日施行です。
外国国家やその財産に関する民事事件の司法手続について全面的・系統立てて規定して、国内法治と渉外法治を統合的に進めるとのことです。
外国国家が行う商業活動で、中国国内で行われるか中国国内に直接影響するもの(金銭の貸借を含む)については、外国国家に対する管轄免除の対象にはならない、つまり中国の司法権のもとで管轄があるものとして取り扱うことができることなどが規定されています。
国際条約等に定められた外国の外交機関などの特権が影響を受けるものではなく、国際条約等が優先されることも明記されているので、直ちに何らかの影響があるものではありません。しかし、外国側が中国の国家とその財産に対して与える免除待遇がこの法律に規定するよりも劣っている場合、対等の原則によるものとされているので、詳しく見ていく必要があるのかもしれません。

④《行政再議法》(行政复议法)改正

行政処分についての不服申し立てについて定める《行政再議法》が改正されました。同じく2024年1月1日施行です。
行政再議の対象範囲に収用決定及びその補償に関する決定が含まれることが明記されるなど、行政再議の範囲が拡大したことなどが改正点として挙げられています。


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その他、社会保険の異なる地方での引継ぎなどを含む事務取扱に関する規定や
若年者人材育成についての政策、また住宅ローン関連の緩和政策なども出ていました。