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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年11月30日木曜日

個人の破産制度が無いことで


拙著など含めさまざまな場面でご紹介していることですが、中国には今でも、個人の破産制度がありません。

企業については《企業破産法》があり、この《企業破産法》に基づいて破産清算のほか、和議、重整(日本の会社更生と民事再生に対応)といった再生型の手続も用意されています。企業については、取引先や従業員など多数の利害関係者がいて、地元の税収や雇用にも影響がありますので、債務超過・倒産状態になった企業の破綻処理を行うことは企業自身以外の利益にも適うところがあります。
一方、個人については、中国では個人が自由に事業を行うことはできず、個人事業者(个体工商户)としての登録を受けないと事業ができませんから、企業のように破綻処理の制度を用意する必要性は低そうですし、いわゆるモラルハザードの懸念もあるでしょう。
そのように制度の必要性の面でかなり差があるのかもしれないと推測しています。

実際、深センでは試験的に個人の債務整理の制度が実施されていますが、2021年3月の開始から2023年8月までの2年半ほどの間で中級人民法院での受理件数は2000件余り、そのうち受理されたものは632件という状況であり、深センの人口や経済規模から考えるとそれほど多くはない数字にとどまっている印象です。
(2023年10月11日深セン市人民政府Webサイト掲載記事参照。

このように個人の破産制度が用意されていない結果として、個人はいくら負債があっても整理ができないので、ご家族や友人に代わりに借入や契約をしてもらうことをお考えになるようです。個人的には、これが比較的気楽に他人の名義を借りる現象が多く見られるなど、とても複雑な状況を生み出している一因になっているようにも感じます。

2023年11月27日月曜日

11月第4週:①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置、②銀行業のカントリー・リスク管理、③化学工業園区のリスク評価

①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置

中国外交部の報道官の定例会見で、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6ヶ国を対象に商用(中国語「经商」)、旅行、親族訪問、トランジットを対象に「一方的」に15日以内のノービザ入国を認めるとの発表がありました。
日本が対象国に含まれていないことは残念ですが、「一方的」措置、つまりその国が中国との関係でノービザ入国を認めていなくても、ノービザ入国の措置を認めてもらうことができるということで、これであれば日本との関係でもノービザ入国を再開いただけるのでは?という期待もできるように感じています。
人民日報日本語版にも記事が出ていました。(下記URLご参照ください。)

②銀行業のカントリー・リスク管理

国家金融監督管理総局から、銀行業の「国別リスク管理」に関する規定の改正が発布されています。
銀行業については、銀行がカントリー・リスクに対して適切に引当がなされているか監督当局が国別に適切な最低引当額を設定するなどの管理がなされており、今回の改正は13年前に設定されたガイドラインを「弁法」として修正したものです。
銀行が内部・外部のリソースを利用して評価をすることなどが求められています。

③化学工業園区のリスク評価

応急管理部から、化学工業園区のリスク評価に関するガイドラインの改訂が公表されています。
化学工業園区については以前から管理が強化されてきているところですが、今回も全国に640あるとされる化学工業園区について全面的にリスク評価を行って、整理を進めていくとのこと。
省レベルで3年ごとに全面的に安全リスク等級の確認を行い、高リスクと判断された場合には是正期間中は新たなプロジェクトや既存プロジェクトの拡張を禁じることなどが定められています。


2023年11月23日木曜日

宅建試験に合格しました


私ごとですが、令和5年度宅地建物取引士資格試験に合格しまして、その合格証書が届きました。(日本の、です。念のため。)
試験当日、会場では中国語でお話されている方々も見かけましたので、大阪で不動産関係のお仕事にかかわっておられる中国の方々も多いのだなと実感しました。
業務上、不動産にかかわる案件に接する機会も増えてきていますが、まだまだ勉強しなければならないことは多いなと感じることばかりです。今後もさまざまな機会で情報発信に努めていければと思っています。


2023年11月21日火曜日

取締役(董事)の選任方法


合弁会社において、それぞれの出資者・株主が何名の取締役(董事)を派遣できるのかは、合弁会社の経営の在り方を左右するポイントになる事項です。
ところが、この点について、日本と中国では、一部、気づかないうちに逆転が生じそうな部分があります。

日本では、取締役は株主総会の決議により選任されますが、取締役が2人以上いる場合、累積投票、すなわち株主の議決権の比率に応じて取締役が選任される仕組みが原則になっています(日本「会社法」第342条)。条文に「定款に別段の定めがあるときを除き」とあるとおり、これを排除するには定款の定めが必要です。つまり、日本では、例えば出資比率がA社60%:B社40%であり取締役が5名いる場合、通常、A社が3名、B社が2名を取締役として選ぶことができます。

これに対して、中国では、董事は株主会の決議によって選任されることになっており、通常の有限公司の場合、その投票のしかたについては特に定めがありません(中国《会社法》第37条第1項第2号、第43条)。株式有限公司の場合は累積投票制もありますが(中国《会社法》第105条)、なぜか有限公司の場合はこれに対応する規定がありません。
2020年1月1日に《外商投資法》施行に伴って《中外合資経営企業法》が廃止されるまでは、各株主が出資比率に応じて董事を任命派遣(指名)することになっていたので、特に何も意識して定款に規定を置かなくても、結果として日本と同じように、出資比率が董事会メンバーの構成に反映されるようになっていました。
しかし、現在は董事の選任方法について、《会社法》が適用される結果、特に定款で異なる規定を置いていない限りは単純に出資比率で決議されてしまう(上記の例ですと5名全てがA社の意向に沿ったメンバーになる)、そういった事態もあり得る状況になっていますので、特に定款の定めが重要になっています。

逆に、日中双方ともにですが、もし出資比率どおりではなく、より大株主の意向が反映されるようにしたければ、これも定款での規定が必要になります。興味深いことに、インターネットなどで公表されている定款の書式のうちには、日本における「別段の定め」(累積投票としない旨の規定)がデフォルトで入っているものがあります。経営上の意思統一のしやすさに重きを置いているのでしょうか。
この場面に限らずですが、書式を選ぶときにも、場面に適したものを選んでいただければと思います。


2023年11月20日月曜日

11月第3週: ①危険廃棄物管理の変更、②中小企業向け公共サービス、③会計事務所の監査報酬

①危険廃棄物管理の変更

危険廃棄物管理についての新しい通知が生態環境部弁公庁から発布され、2024年1月1日からの変更点もいくつか言及されています。
2024年1月1日から、リスク評価について全国固体廃棄物管理情報システムを通じて行うこと、重点監督管理単位についてはこのシステムで電子ラベルのQRコードを生成取得して電子管理を行うこと、危険廃棄物の移転も同様にこのシステム及びアプリなどを使ってリアルタイムで記録することなどが規定されています。

②中小企業向け公共サービス

工業情報化部から、中小企業向け公共サービスに関する指導意見が出ています。
中小企業向けのサービスについて全国統一ネットワークを構築し、地方レベルでもワンストップでのサービスを提供すること、そこではサービス項目やサービス内容など6項目を公開するなど情報公開を進めることなどが規定されています。研修や職業訓練などサービス人材の面での保障についても言及しています。

③会計事務所の監査報酬

とても当たり前のことだと思うのですが、財政部から、会計事務所の監査費用について、金額と監査結果を関連付けてはならないという通知が出ています。
「上場インセンティブ」として、上場が実現できるか否か、社債発行ができるか否かなどによって、監査費用が増減するような方式があるようですが、このような費用決定方法は禁止とされています。
その他、会計事務所側が違法な報酬を支払おうとする顧客のリスクを慎重に評価しなければならないこと、財政部門が会計事務所の報酬基準の問題を監督検査の重点事項としていることが記載されています。

過去にラッキンコーヒー(luckin coffee、瑞幸咖啡)の粉飾決算事件についてご紹介したこともありましたが、投資にかかわる場面では、監査法人との間の報酬の取り決めのしかたについても見ておく方が良いということかと思います。
【参考】キャストグローバル中国ビジネス2020年4月17日記事
 ラッキンコーヒー(luckin coffee)粉飾決算事件から(無料公開)

2023年11月17日金曜日

連載第4回まで来ました。

東海日中貿易センター様の会報誌で隔月で掲載いただいている連載「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」ですが、第4回まで来ました。

第1回: “攻め”と“守り”両面を見据えた体質改善
第2回: “攻め”(内販強化、新規事業)で直面する課題とその対処法
第3回: “守り”(事業売却・縮小、リストラ、外注化など)で直面する課題とその対処法 
第4回、第5回: 組織作りのポイント~組織・人員(本号、次号で掲載)
第6回: 組織作りのポイント~資産、取引、その他

原稿を書き始めた頃からたった半年あまりで、スパイ容疑での邦人の身柄拘束問題や、不動産業界をはじめとする経済状況の変化、輸出入の制限に関する問題など、随分と景色が変わってしまったなような印象もあります。
書いても書いても足りないようなところもありますが、どのような局面にあっても機敏に対応できるように、何かの参考にしていただけるようでしたら幸いです。




2023年11月13日月曜日

11月第2週: ①外資に対する差別待遇、②入札分野での地方保護・市場分割、③政府と社会資本の合作(PPP)

①外資に対する差別待遇

商務部から、各地方・各部門が発布している政策措置や、事業単位や社会団体が制定している各種措置について、外資企業に対する差別待遇がないか特別整理活動が行われることが公表されています。
例えば、以下のような状況があるとのこと。
・ ある業界で外資企業の行政許可申請について内資企業よりも申請に時間がかかる、求められる資料が多い、審査が厳しい。
・ 新エネルギー車の消費促進政策につき、国内メーカー車を購入・使用した消費者のみに補助を与える。
・ 業種協会の制定した工事プロジェクトの評価で内資1点、合弁0.5点、外資独資0点という評価項目を設ける。
・ 地方での財政補助について国有・民営企業にのみ個別に通知するなどして外資系企業が公平に政策を享受することができていない。
・ 業種協会での登録表示について、明文規定はないが実際の運用においては外資系企業の申請を受理しない扱いとなっている。

②入札分野での地方保護・市場分割

国家中央が全国統一市場の形成を促しているのに対して、地方では入札における信用評価の面で、現地での支店設立有無や社保納付実績などを評価基準に加えることで「形を変えて」参入障壁が設けられている例が見られるということで、国家発展改革委員会から通知が出ています。
https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/tzgg/202311/t20231108_1361858.html
ごく短い通知ですが、各地の関係部門とともに全面的な調査を行うこと、入札分野での信用評価の運用におけるモニタリングの強化、「信用中国」Webサイトや全国公共資源取引プラットフォームなどでの公表を行っていくことが規定されています。

③政府と社会資本の合作(PPP)

官民連携(PPP・Public Private Partnership)に関する新しい指導意見が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6914161.htm
受益者負担プロジェクトについて採算性があるかどうかのチェックなどによる地方政府の隠れた負債の防止などについて言及されており、見るべき内容は多そうですが、詳細のご紹介は別の機会に譲りたいと思います。


2023年11月8日水曜日

一般保証(単純保証)と連帯保証


中国では、以前は特に明示がなければ連帯保証と見なされることになっていましたが、2021年の《民法典》の施行後は、連帯保証ではない一般保証と見なされることになりました(《民法典》第686条第2項)。それまでは逆に、どちらなのか不明確な場合は連帯保証とされていました(廃止された《担保法》第19条)。
日本では民法にはそのような条文はありませんが、ビジネスの場面では「商法」第511条第2項の規定によって連帯保証になる場合が多いでしょうし、通常は契約書面上でも連帯保証であることが明記されていることが多いと思われます。

日本では個人根保証契約や事業に係る債務についての保証契約の特則など、保証をめぐるルールが近時改正されましたが、中国では元々、日本のように経営者や代表者が金融機関からの借入にあたって会社の保証人になる習慣がなかったためか、そのような特別のルールは特に無いようです。
それでも会社の債務について返済できない場合は経営者や代表者が会社とともに被告や被執行人になっている例をよく見かけますので、「保証していないから責任がない」というものでもないのですが、日本と中国、それぞれの習慣に応じたルールがありますので、ご留意ください。

2023年11月7日火曜日

11月第1週:①一部の罰金の取消及び調整、②特許法実施細則の改正意見募集、③出入国時の健康申告カード

①一部の罰金の取消及び調整

国務院から、各種法令に定められている行政処罰としての罰金の一部について、取消及び調整の決定が発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6913197.htm
内容は表形式になっていて、非経営性インターネット情報サービスの届出番号の下に届出管理システム上のリンクを置かない行為についての罰金を「所定の期限に是正されなかった場合に罰金を科す」という内容に改めるなど、各種の罰金規定について各部門に60日以内に改正作業を求めています。
あまり業務上直接の影響はなさそうですが、ビジネス環境改善の一環として公表されていますので、ご参考までに。

②特許法実施細則の改正意見募集

11月3日の国務院常務会議で、特許法実施細則の意見募集稿の改正が採択されて、今後、全人代常務委員会での審議に供される旨の発表がありました。
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202311/content_6913486.htm
具体的な内容はまだ公表されていないようですが、特許の申請及び審査に関する制度をさらに改善するとのことです。

③出入国時の健康申告カード

11月1日から出入国時の健康申告カードの記入を不要とする旨の税関総署の公告が出ていました。
空港でQRコードをスキャンしてWeChatのミニプログラムで記入していたので、紙のカードには見覚えがなかったのですが、とにかくまた一つ、出入国が便利になりました。
ただ、発熱、咳、嘔吐、下痢などの症状があるときは自主的に申告して、検査を受けることが求められていますので、その点はご留意ください。