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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2022年2月23日水曜日

2月第3週: ①ファイナンスリース会社に対する監督強化、②商品相場や価格の高騰に関する注意喚起、③フリーランスの求人募集をめぐる事件

①ファイナンスリース会社に対する監督強化

ファイナンスリース会社については、2020年5月に《ファイナンスリース会社監督管理暫定施行弁法》が中国銀保監会から発布・施行されていますが、現在はまだ3年間の過渡期の過程にあります。今回さらに、「非現場監督管理規程」が発布され、ファイナンスリース会社の重大事項についての報告を求めるなどの規制は上記の弁法でも規定されていますが、情報提供や検査権限などの面で規制が強化されるようです。
ちなみに、ファイナンスリース会社は、「金融リース会社以外の」ファイナンスリース業に携わる会社をいいます。歴史的な縦割り行政を背景とした整理として、「金融リース会社(金融租赁公司)」は銀監会の認可を経た金融機構(いわゆるノンバンク)であるのに対して、「ファイナンスリース会社」は商務部の認可により設立される非金融機構である、という違いがあります。資金源や業務面での規制が異なるのですが、2018年の国務院機構改革で銀監会と保監会が統合されて銀保監会となったとき、ファイナンスリース会社に対する監督管理権限も商務部から銀保監会に移行されました。
ただ単に監督官庁が変わっただけではなく、銀保監会による管理への移行に合わせて、2020年の弁法発布から3年間で金融機関並みの規制に対応することが求められています。しかし、これまでファイナンスリース会社は「金融機関ではない」という前提でずっと運営してきたものですから、既に移行期間の半分が経過した現状でも、なおファイナンスリース会社各社では若干の混乱があるようにも見受けられます。
グループ内にファイナンスリース会社がある企業各社では、そのような背景事情を含めて理解いただき、過去の延長線とは違う現状があることを改めて認識いただければと思います。

②商品相場や価格の高騰に関する注意喚起

2月15日に市場監督管理総局から、鉄鉱石の港での在庫量や先物取引の状況に基づき、関連する企業に対して注意喚起と警告が出ています。関係企業する企業は、虚偽の価格情報を発信することや、悪意の投機的売買、買占めや物価吊り上げ行為を行わないように、という内容となっています。
中国では《突発事件対応法》という法律があり、政府は自然災害、事故災難又は公共衛生事件の発生した場合に買占めや物価吊り上げ行為を処罰する対応措置を講じることができます(第49条第8号)。新型コロナウイルス感染拡大によりマスク価格が高騰した場面で講じられたような措置です。また、そのような事態でなくても、《価格法》第14条第3項は商品価格を高騰させるような行為を不正価格行為として禁じています。
今回も上記のような行為については厳しく取り締まるとのことです。今回は鉄鉱石の価格に関するものですが、昨年8月にも半導体について同様の通知がありました。さまざまな物価上昇が話題になる昨今ですから、中国における価格に関する規制についても目にする機会が増えるかもしれません。

③フリーランスの求人募集をめぐる事件

中国でも様々なフリーランスの方々向けの求人プラットフォームがあります。先日も中国の国家統計局から、フリーランス(灵活就业)の形態で就業する人たちが2億人を超えたことが紹介されていました。
配車アプリのときもそうでしたが、新しいサービスが普及していく過程では世間の耳目を集めるような悲惨な事件が起こって、それに応じて規制が強化されるという動きが起こります。今回は、一人の男性が求人募集に応じたところ、犯罪集団に某国に連れて行かれて違法に監禁されたうえ、大量に血液を抜かれて(「血奴」、血液の奴隷と紹介されています。)生命の危機に陥って病院に搬送され、某国の中国大使館に通報があったという記事が出ていました。
企業にとっても個人にとっても便利な求人募集のプラットフォームですが、日本でも「闇バイト」といってSNS等で犯罪に巻き込まれることもあるようですから、中国でのこうした事件も参考にしながら活用を考えていただければと思います。


2022年2月15日火曜日

2月第2週:①中国弁護士(律師)の成功報酬、②工業・情報化分野のデータの国外移転などの規制見込み(第2回意見募集)、③CMタレントとアフィリエイト

①中国弁護士(律師)の成功報酬

訴訟案件の対応を弁護士に依頼する場合、日本では着手金+成功報酬方式が一般的ですが、中国は少し様子が違います。中国では成功報酬方式(中国では「风险代理」と呼びます。)はまだ歴史が浅く、案件の対象金額に応じて固定した金額で費用を支払う方が主流でした。しかし、最近では成功報酬方式が採用されることも多くなり、依頼者側から成功報酬での対応可否を聞かれることも多くなっています。
今回、司法部など3部門から中国弁護士(律師)の収受する費用について新しい意見が出たのですが、その中では、成功報酬についての規制が強化されました。
すなわち、《律師サービス費用管理弁法》という2006年の法令では、成功報酬の上限は「(訴訟等の)対象金額の30%」が成功報酬の上限となっていたのですが(第13条)、今回の意見では金額に応じて6~18%の範囲とされました。最終的な回収額や債務の減免額も成功報酬の基準としても良いと改めて明記されているので、債務減免を目標として案件を受任する律師も増えるかもしれません。
また、離婚・相続案件や、労働報酬の支払請求案件、刑事事件や行政事件、国家賠償事件及び集団性訴訟案件などについては、成功報酬方式を用いることは禁止されていましたが(第11条、第12条)、この点については今回の意見でも変わらず禁止されています。
今後、中国での訴訟案件で中国弁護士(律師)に訴訟代理を依頼するときには、このような基準も改めて見てみていただければと思います。

②工業・情報化分野のデータの国外移転などの規制見込み(第2回意見募集)

昨年9月末に意見募集をしていた《工業及び情報化分野のデータ安全管理弁法(試行)》について、再度の意見募集が行われています。
データの国外移転については、重要データの国外移転に安全評価を求めることなど大枠は変わっていませんが、中核データは国外移転は一切不可とされていたところが、重要データと同じく安全評価を行えば国外移転できる余地が生じたようです。
また、重要データ及び中核データの保管については、前回から定められていた公共ネットワークからのアクセスの制限やバックアップ及び保管媒体の安全管理のほかに、さらに定期的にデータ復旧のテストを行うことなどが追加されています。
安全評価そのものについては、前回は一般データについても自主評価を奨励する旨が規定されていたのですが、今回はその言及は無くなったようです。
詳細はまた別の機会にどこかでご紹介できればと思いますが、引き続き、《個人情報保護法》よりもこちらの方が幅広い企業に影響がありそうな話題ですので、いつ規制が始まっても驚かないように、最新情報はフォローしておいていただければと思います。

③CMタレントとアフィリエイト

上海市の市場監督管理局から、《広告法》の定める「広告代言人(イメージキャラクター)」についてのガイドラインが出ています。
最近はTikTokなどのSNSで一般の方々がお勧めの商品やサービスを紹介していることもあり、アフィリエイト広告やステルスマーケティングなど新たなマーケティング手法についての法規制は日本でも議論されているところですが、中国《広告法》では過去にさまざまな事件があったこともあって、CMタレントが広告内容について広告主と連帯責任を負わなければならないことになっています。
どこからが有名人で、どこまでは有名人でないのか、判断が難しいところはあります。また、過激で誇張されたものでないと目立つことができず、必然的にそのようなコンテンツばかりが氾濫してしまうという傾向もあります。とても難しいテーマですが、広告については任せきりにせずに、企業側も個人側も互いにチェックしあっていただく観点が必要かと思います。

2022年2月9日水曜日

(日本の話題)「顧客満足度No.1」を謳う広告について


昨年少しブログで言及していた「No.1マーケティング」(「顧客満足度No.1」などと謳う広告など)について、
「また後日どこかで」と書いたまま忘れていましたが、
日本マーケティング・リサーチ協会から1月18日に「抗議状」を出されていました。

(過去の記事はこちら。
 https://chineselawtopics.blogspot.com/2021/05/5348.html

商品やサービスの広告表示において「No.1」を表記しても不当景品類及び不当表示防止法に抵触しないように、
その客観的な根拠資料を得る目的で行われる調査ですが、
実は調査対象者や質問票を恣意的に設定する非公正な調査が行われており、
「No.1 を取得させる」という「結論先にありき」で、「No.1 調査」を請け負う事業者やこれらをあっせんする事業者がいるとのことです。

消費者の目線では、どのような調査を行ったのか、下に書いてある小さな文字まで読むことは普通は無いと思いますが、
もし「No.1」と謳っている広告を見かけられたら、小さい字の部分を見ていただくと、少し面白いのではないかなと思います。

2022年2月2日水曜日

1月第4週:①「お歳暮」の会社への報告・届出制度、②歴史関連の地名と悪意の商標出願、③金融機関による顧客へのデューディリジェンス調査

①「お歳暮」の会社への報告・届出制度

某大手電気自動車メーカーでの社内不正取締活動が大きく報じられています。取引先側に対しても、「廉潔協議書」などに基づいて違約金などの制裁を課す制度が運用されているとのことです。
取引先との取引開始にあたり、守秘契約や取引基本契約と同時に、「廉潔協議書」などのタイトルで贈答や接待を禁じる旨の合意書に署名・提出を求められることも増えてきました。私たちのような外部専門家であっても提出を求められていますので、どのような取引であってもこの種の合意書を提出する慣行が少しづつ普及・定着しているように思われます。
春節前は、ちょうど日本でいう「お歳暮」の季節ですし、同郷の仲間と集って商売の話をする時期でもありますから、こういった節目の時期には思い出してみていただければと思います。

②歴史関連の地名と悪意の商標出願

「長津湖」という朝鮮戦争の激戦地を題名にした映画があるそうです。その映画が公開されるのに合わせて同名の商標を出願した会社があり、悪意での商標出願だと言うことで罰金及び違法所得没収の処罰を受けたという記事がありました。
出願されていないのに違法所得?と思われるかもしれませんが、この件で処罰を受けたのは出願人となった会社だけでなく、その出願を代理した代理会社も処罰を受けているので、この代理会社が受け取った出願業務の委託料であろうと思われます。
悪意の出願であると認定された理由の部分が、「明らかに正常な経営活動の必要を超えているから」と書かれているだけですので詳細は不明ですが、今後は商標の出願を委託するときには代理会社から「正常な経営に使うのですか?」と聞かれるかもしれません。

③金融機関による顧客へのデューディリジェンス調査

国際的なマネーロンダリング(洗銭)やテロ組織の資金源への取締の一環として、中国でも金融業界で顧客に対するデューディリジェンス調査の具体的要求事項の更新があります。金融リース会社や自動車ローン、消費者金融の会社も対象となっています。
疑わしい取引については顧客の身分につき独立のデータ・資料から顧客の身分を確認すべきこととなっていますが、リスクの状況に応じてデューディリジェンス調査の措置を講じなければならず、30日の双方の支払・受取累計が5万元又は1万米ドルなど、調査を行うべき一定のトリガーが定められているとともに、背後の実質的所有者についても調査することなどが規定されています。
また、第三者に委託して調査を行う場合につき、海外の第三者に委託する場合には、高リスク国家又は地域の第三者を通じて調査を行ってはならないことなども言及されています。
日常の取引にまで影響する場面は少ないかもしれませんが、金融機関からの株主の状況等に関する照会に対する対応などについては時折話題に上ることもありますので、ご参考までに。



なお、来週は春節休暇のため休載いたします。