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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年10月31日火曜日

10月第4週:①愛国主義教育法、②未成年者ネットワーク保護条例、③消費者クレーム情報の公開

①愛国主義教育法

日本でもニュースで報道されていますが、「愛国主義教育法」という法律が制定されました。
対象としては全国民ですが、そのうち特に学校や家庭における青少年・児童の教育は特に重視されているようです。また、国家機関の公職者や、企業の従業員、香港・マカオ・台湾の同法、海外の華僑など、それぞれに対して教育活動を行うべきことが規定されています。
歴史文化教育や「一国二制度」、さらには「台湾独立」や分裂に対する対抗などについても言及されています。
日本企業にとっては、抗日戦争勝利記念日や南京大虐殺公祭日などについても規定されているところが注意点となると思います。
(その他、日系企業の方々に気をつけていただきたい日付については、こちらもご覧ください。東海日中貿易センター様の会報誌5月号にもご掲載いただいています。)
山河の観光などにより悠久の歴史や文化に触れることなどにも触れられており、なかなか興味深い内容になっています。

②未成年者ネットワーク保護条例

ネット上における未成年者の保護に関する基本的な法令となるべく、《未成年者ネットワーク保護条例》が制定されました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6911288.htm
内容については、色情的、暴力的なものや、賭博、さらには自傷自殺へ誘引するような情報は禁止されています。具体的な種類や範囲、判断基準、注意喚起表示の方法などは、各関係政府部門により確定されるとのこと。
ネットにはまってしまって正常な学習生活が送れなくなってしまうことの予防や対策についても規定されています。

③消費者クレーム情報の公開

市場監督管理局が受け付けたクレーム情報の公示について、新しい規則が発布されています。
12315プラットフォーム上で原則公開されることになっています。
虚偽や悪意のクレームについては公開されないことになっていますので、初動対応で如何に事実の根拠の有無を確認するかが重要になってきそうです。


2023年10月27日金曜日

賃貸借契約の期間



賃借物件を工場・倉庫として使っているとき、契約期間を30年と定めて借りていたのに、ある日、「法律上は20年が上限です」と言われて立ち退きを求められ、賃料の値上げなどを要求されるケースがあります。

賃貸借の期間については、日本でも中国でも法律上の制限があります。
日本では、民法上は50年が上限となっています(日本「民法」第604条)。以前は20年でしたが、民法が改正されて50年になりました。日本では不動産の賃貸借については借地借家法が適用される場合が多く、土地の賃貸借については下限が30年になっているので(日本「借地借家法」第3条)、民法上の上限よりも借地借家法の下限の方が長くなるという少し不思議な状況でしたが、それは解消されています。
一方、中国では、賃貸借期間の上限は、以前の日本と同じく20年となっています。そして、20年を超える部分は無効とされています。(中国《民法典》第705条)
更新することはできますので、当事者間で改めて契約すればよいだけなのですが、冒頭に述べた事例のとおり、条件が悪化することもあります。

中国では土地は国家・集団所有であり、企業や個人は土地使用権が付与されるに過ぎません(中国《憲法》第10条)。そして、この土地使用権には期限が付されているので、土地使用権と賃借権を混同してしまって勘違いされている例もあります。気をつけてみていただければと思います。




2023年10月23日月曜日

10月第3週:①非銀行金融機構の行政許可事項、②特許の実用化推進、③汚染物排出の自動モニタリングデータ

①非銀行金融機構の行政許可事項

銀行以外の金融機関(リース会社など)に関する行政許可事項の実施弁法が改正されました。
海外の非金融機構が金融資産管理会社の出資者となることを認めるなど、参入条件が若干緩和された部分があるようです。また、出資者の資質審査についての規定を拡充したとのこと。
純資産など財務状況に関する条件も具体的な数字で示されているので、実務上は関係する事業をされている場合は参照する機会がある規定かと思います。

②特許の実用化推進

特許の実用化推進のための特別行動方案(2023~2025年)が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6910281.htm
スタートアップへの投資などにつき優先株や転換社債、科学成果とストックオプションによる資本参加、知的財産の証券化などについて言及されています。

③汚染物排出の自動モニタリングデータ

最高人民法院、公安部、生態環境部の3部門共同で、環境関連の汚染物排出の自動モニタリング設備への干渉、データの改ざんなどを行ったことに関する処罰事例を公表しています。
https://www.mee.gov.cn/ywgz/sthjzf/zfzdyxzcf/202310/t20231019_1043534.shtml
「COD除去剤」による汚染の隠蔽など、既に他のところでも見たような事例が紹介されていますが、事案の経過が比較的細かく紹介されているので、環境汚染に関する事案の発覚から処罰の決定までのプロセスについて、参考になるものと思います。


2023年10月20日金曜日

会社の印鑑の差押


会社の公印(中国語「公章」)は、会社名義での各種手続をするのにも、契約を締結するのにも使います。果たして、これが差し押さえられてしまうことがあるでしょうか。

日本の「民事執行法」では、「実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの」は差押禁止動産の一つです(第131条第7号)。

中国でも、差押禁止動産は日本と概ね似たような物品が列挙されているのですが、印鑑はその中に含まれていません(《人民法院の民事執行における財産の封印、差押え及び凍結に関する最高人民法院の規定(2020年)》第3条各号参照)。
ですので、会社の公印が差し押さえられることもあり、実際に一部の裁判所では、公印の差押をして労働者への未払賃金の支払を実現した成功事例を公表しているところもあります。
公印を差し押えても競売を通じて売るわけにもいかないでしょうし、いったいどう処理するのか不思議ですが、裁判所も、法律に反しない範囲でいろんな方法を工夫しているようです。

2023年10月16日月曜日

10月第2週:①工業情報化部などの編制変更、②「普恵金融」推進、③中国共産党の幹部教育

①工業情報化部などの編制変更

いくつかの政府部門について、その職責、組織機構などについて、編制の調整が行われています。
工業情報化部については、科学技術部に属していた科学技術開発区などの建設業務や、技術市場・科学技術仲介などの業務が工業情報化部に移されています。
https://www.gov.cn/zhengce/202310/content_6908734.htm(工業情報化部)
中国人民銀行、国家衛生健康委員会、社会科学院についても同様にいくつかの組織や職責の調整が行われているようです。

②「普恵金融」(Financial Inclusion:金融包摂)の推進

普遍的にあまねく全ての人々が金融サービスを受けられることを推進していくということで、「普恵」、普遍的に恩恵のある金融体系についての実施意見が国務院から出ています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6908495.htm
農村などで金融機関の視点などが置かれていない地方でも金融や保険のサービスが受けられる、零細企業や個人事業主でも直接に融資が受けられる、脱貧困のための小額貸付が得られるなど、広く金融サービスが受けられることを目標としています。
地方ごとの特徴ある農産品保険の奨励など、比較的具体的な施策も挙げられています。
消費水準がまだそれほど高くない地方都市や農村に向けたビジネス展開を考慮するときには、これら政策の活用も考慮いただくと有益かと思います。

③中国共産党の幹部教育

これは業務にはほとんど関係ないのですが、中国共産党中央委員会から幹部の教育研修に関する業務についての条例の改正が公表されていました。
https://www.gov.cn/zhengce/202310/content_6909282.htm
内容については勉強不足なのでよく分からないのですが、研修に参加する日数や時間数が決められているようで、また財政支出によらず本人負担で参加しなければならない研修もあるなど、幹部になるのも楽ではなさそうだということだけは感じられます。

2023年10月13日金曜日

銀行口座の開設(会社名義の銀行口座)

中国では、会社設立と銀行口座開設は一連の手続です。
そもそも資本金を払い込む時点から、資本金を払い込む基本口座という口座を開設する必要があり、それが会社設立の手続の一部として組み込まれています。
また、事業における資金決済も、会社の口座を通さなければ営業許可を得た会社の事業と認められず、個人の口座を使うと無許可の個人営業をしているか会社のおカネを横領しているように見えてしまいますから、会社名義の口座が無いということは通常あり得ません。
ですから、中国の方々は、「日本で会社を設立する」→「会社名義の口座ができて当たり前」と思っておられる場合があります。

ところが、日本では、会社を設立しても銀行口座を開設できるとは限りません。
むしろ近時では、個人事業のときから一定の取引実績を作っておかないと、法人成りしようとしても会社名義の銀行口座を開設してもらえないことがあります。
この規制をクリアするために架空の取引実績を作ることを請け負うような業者もいる、という話も耳にするほどです。

例えば、中国の企業や個人が日本のとある会社の事業を引き継ごうとする場面で、
「事業譲渡がよいですか? 株式譲渡がよいですか?」
というご質問を受けることはよくあります。
そういった場面では、この銀行口座をめぐる両国の事情の違いも少し考えてみていただければと思います。


2023年10月11日水曜日

売買代金額の75%の支払(所有権留保の75%ルール)


所有権留保付き売買について、中国には独特なルールがあります。

所有権留保の約定があっても、買主が75%以上の代金を支払っていると、売主は目的物を取り戻すことができなくなります(《売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)》第26条)。
破産の場合でも、売主が破産した場合であれ、買主が破産した場合であれ、売主はもはや目的物を取り戻すことができなくなります《「企業破産法」の適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定(二)(2020年)》第35条、第37条)。
さらに、2021年1月1日から施行された《民法典》では、「売主が目的物について留保する所有権は、登記を経ない場合には、善意の第三者に対抗することができない。」という条文が追加されました(《民法典》第641条第2項)。これに伴い、現在では、動産を対象とする場合であっても、中国人民銀行信用調査センターでの登記が第三者対抗要件として必要になっています。
設備の売買などでは、最終回の支払として10%程度を「品質保証金」などの名目で納品後1年ほど残してあることが多いのですが、そのような場合、残代金の回収のために所有権留保を主張することはできないという難点があります。

日本では、所有権留保については「代金が完済されるまで所有権は移転しない」とされることが通常であり、法律上も上記のように一定の比率を定めて所有権移転を強制するような制度はありません。
また、所有権留保は主に動産の売買について利用され、自働車など登記・登録の制度がある場合でなければ対抗要件は占有改定等の方法によることになり、機械・設備などで所有権留保を示すプレート等を付す例もありますが、いずれにせよ登記・登録を第三者対抗要件として必ず要求しているものではありません。

なにより、中国では以前から会計・税務上の取扱いとして「所有権が留保されている場合は、自社の資産であるから、自社の資産として計上し続けなければならない」(つまり、支払を受けるまで売上を計上することができない)という実務的な慣行が見られることから、営業部門にとって非常に不評であるためでしょうか、もともとあまり活用されていませんでした。しかし、債権回収の場面では、取引先が破産した場面でも所有権留保の条項があったゆえに危うく難を逃れることができたこともあります。
75%ルールなど、日本と違って落とし穴にもなりやすい部分がありますが、所有権留保、なるべく取引に活用を考えていただければと思います。

2023年10月9日月曜日

9月第5週:①企業档案管理規定、②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見、③10月の「敬老月」活動

先週は国慶節の連休でしたので、1週間遅れて、9月末の分をご紹介します。

①企業档案管理規定

企業档案管理規定が改正されました。
「档案」とは、企業や個人のさまざまな履歴を保存するファイルのことで、人事档案、文書档案、会計档案など様々な種類の「档案」があり、国や地方政府が保存・管理している档案もあれば、企業その他の組織が保存・管理している档案もあります。
今回の規定は、企業の研究開発、建設、経営及びサービス等の活動により形成される記録に関するものです。
各企業では档案管理のための人員を配置し、火事などに強い場所に保管すべきことなどが規定されています。
また、当然ながら電子データで保存されるものもあるため、档案の情報化という章も設けられています。
なにぶん、档案局という普段あまり業務上かかわることがない政府機関が管轄しているものですから、頻繁に検査が入る安全生産や消防などと違って意識する機会も少なそうですが、情報管理についてはよく話題になる昨今ですので、ご参考までに。

②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見

ネット上における誹謗中傷やプライバシー侵害などの行為について、被害者が精神的に追い詰められて自殺などに至ることのほか、社会公衆の安全感も損なわれるということで、取締に関する新しい指導意見が最高人民法院、最高人民検察院、公安部の連名で出ています。
典型事例も発表されています。
ネットを通じて不特定多数に対して個人情報を発信する行為は刑法第253条の1の個人情報侵害罪、悪意をもって煽り立てる行為(いわゆる炎上商法)は刑法第287条の1の情報ネットワーク違法利用罪など、各種の刑法規定が適用されることが紹介されています。

③10月の「敬老月」活動

全国老齢工作委員会から、10月1日~10月31日まで「敬老月」活動を行うという発表がありました。
ボランティアによる独居老人への慰問訪問などの活動が行われるようです。従来から提唱されているITを使った健康管理の普及活動もあります。また、いわゆる健康寿命を延ばすために、太極拳などの伝統的な運動種目を広める活動なども挙げられています。