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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2021年12月28日火曜日

12月第4週:①サプライヤー向けの文書から「炎上」、②ライブコマースの有名タレントの脱税、③コールドチェーン物流発展計画、④来週は休載

①サプライヤー向けの文書から「炎上」

今回はインテルがサプライヤー向けに発行したレターに「新疆地区の労働者、製品・サービスの不使用を確保する必要がある」との記述があったことが物議を醸して「炎上」し、謝罪と釈明に追い込まれた事例を取り上げました。
背景として、日本でも報道されているとおり、アメリカで新疆ウイグル自治区の製品の輸入を原則的に禁止する法律が成立し、半年後から禁輸措置が有効になるとのことです。
 (ジェトロ様Webサイトより)
今後、輸入製品が強制労働に依拠していないと証明する際に必要な証拠について定めるガイダンスが策定されていくとのことですが、半年後に米国に届いた時点で禁輸対象なのかどうかを判断しようとすると、そこから遡って必要な書類を揃える段取りも必要です。なるべく早期に具体的な企業対応が判明してもらえればと願うばかりです。
これまでも米中摩擦をめぐっては難しい話題が多かったですが、企業にとっては非常に敏感な話題です。冒頭の話題も、「この謝罪のしかたで鎮火できるのだろうか?」という気もしますので、今後の状況の推移を含めて見ることで参考にしたいところです。今後も類似の問題は容易に発生し得ることに留意しつつ、対応の参考となる情報を集めていきたいと思います。

②ライブコマースの有名タレントの脱税

ライブコマースの有名なインフルエンサーが、2年間で6億元以上の脱税をしていたということで、追徴課税と滞納金と罰金を合わせた金額が13億元以上(日本円では200億円以上)にのぼるとのこと。
数年前に大きな話題になった范氷氷氏のときは、同じく追徴課税や罰金などで合わせて8億元ほど(日本円で150億円近く)だったとのことですから、ライブコマースがどれほど急激に伸びているのか、税務当局の調査能力が向上しているのか、さまざまな変化があることが推測できるようにも思います。
企業としては、多額の広告費を投じて宣伝を依頼したインフルエンサーがスキャンダルを起こしてしまうと、企業イメージのダウンにもつながることになります。しかし、完全な対策というのはあり得ないことでもあるので、今後、さらに広告に関する契約のあり方も問われてくるのではないかと思います。冗談ではなく、このような事態に対応できる保険が中国でも必要になるような気もしています。

③コールドチェーン物流発展計画

「第14次5ヶ年計画期間におけるコールドチェーン物流の発展計画」が公表されています。農産品の流通段階での損失を減らし、高品質の食材が供給されることで、農村振興・農業収入の増加にも寄与するとのこと。2025年までに初歩的に全国と海外までをつなぐコールドチェーン物流を整備し、2035年には世界最先端水準までの進展を図るとの計画です。
輸送される品目の項目としても幅広くカバーするということで、①肉製品、②果物・野菜、③水産品、④乳製品、⑤冷凍食品、⑥医薬品、と並んでいます。
話はいつもどおり脱線しますが、新型コロナの感染状況について、一時期、日本では比較的流行が抑えられている要因として私が最も好んでおり且つそれなりに説得力がありそうに感じる仮説は、「ワクチンの輸送過程における冷凍保管の丁寧さ」によってワクチンの効果が高く維持された状態で接種場所まで届けられているのではないか?というものです。確かに、海外でお住まいになられたことのある方々であれば、誰しも、「確かに、日本ほど丁寧には運んでくれていないかも」と思われるのではないでしょうか。
また、アイスクリームは普通の冷凍食品などと比べても扱いが難しいらしく、アイスクリームの売上もその国のコールドチェーン物流の水準が上がるとともに増えていくというお話を聞いたことがあります。大雪のニュースを見ながらですが、アイスクリームがどこでも買えること、個人的にはとてもありがたいことと感じています。
こういった話を見るにつけ、日本にはまだまだ世界に誇れる技術や技能があふれているように感じます。

④来週は休載

来週はお正月休みのため休載いたします。
皆様、今年も一年、いろいろありましたが、どうもありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。


2021年12月21日火曜日

12月第3週:①会社株主が「返済説明」に署名したら?、②登録商標を示す「○R」表示、③市場参入許可ネガティブリストに違反している事例

①会社株主が「返済説明」に署名したら?

株主有限責任の原則は、日本でも中国でも共通です。そして、中国では日本とは異なり、会社の債務について代表者やオーナーが個人保証を提供する商慣習は存在せず、会社の負債について個人保証を見かけることは極めて稀です。したがって、会社の実質的オーナーとの間で売掛金の回収について何度も話し合いをしたのに、結局、最後には「会社の負債は個人と関係ない」ということで回収が得られないままになってしまう事例も生じやすいことになります。
会社の負債について株主から返済意向が示されたとしても、それはあくまで会社としての負債の承認であると考える。それは法的には正しいのですが、しかしながら、実際の訴訟の場面では、個人が個人として責任を負担する意思を示したと解釈できる場合もあります。
今回はそのような事例を取り上げました。資料のp.4です。
債権回収のための交渉過程で、後日のために有利な材料を一つでも積んでおいていただきたく、この「返済説明」を代表者やオーナーに差し入れてもらうという手法は、覚えておいていただければと思います。

②登録商標を示す「○R」表示

商標一般違法行為についての新しい通知が出ています。
中国で商標の問題と言えば、いわゆるニセモノ、つまり権利がない第三者が登録商標を勝手に使ってしまう、少しだけ文字や図柄をアレンジして似たような表示をする、そういった問題がすぐに思い当たります。
しかし、実は、「権利者であったとしても」登録商標の表示を勝手にアレンジして使っていると、行政処罰を受けることがあります。例えば、漢字と英語で構成されている商標で勝手にその位置を入れ替えてしまう、図形と文字で構成される商標の図形を一部変更する、といったような場合に、そのまま「登録商標です」と記載している場合には、《商標法》第49条第1項違反として是正要求を受け、是正しない場合は商標の登録が取り消されることになります。商標について「●●は当社の登録商標です。」と書いてあれば分かりやすいのですがそうではなく、登録商標の表示の横に付される「○R」マークのみが付されている場合でも、これはRegistered(登録済み)を示す記号ですから、やはり登録商標として表示しているのと同じです。
非常にマニアックなお話ではありますが、商標登録をした表示をアレンジする場合には改めての登録が必要になること、ご留意ください。

③市場参入許可ネガティブリストに違反している事例

発展改革委員会から、市場参入許可ネガティブリストに違反している事例を収集する旨の通知が出ています。
いわゆるネガティブリストは、《ビジネス環境最適化条例》でも規定されている内外資問わず適用される中国の規制改革の重要な要素ですが、地方政府がこれを無視して独自の審査を行っているとか、逆に企業がネガティブリストで制限・禁止されている事業に違法に参入しているといった状況があるようで、今回の通知では、別紙で18個の事例が挙げられており、地方政府や業界団体主導で他省の業者を排除していた事例なども紹介されています。
このような事例について各地方、各部門が定期的な調査を行って国家発展改革委員会に報告するように求めるという内容ですので、今後はさらにさまざまな事例についての情報が集積されていき、予見可能性も高まっていくものと期待されます。
少し脱線しますが、補助金の申請もコネが無いと受理してもらえない、政府機関から紹介されたコンサルティング会社に依頼しないと申請しても通らない、といったようなことは外資系企業に限らず中国国内ではありふれた光景のようです。中国の政府機関は、日本と違って申請要件などを懇切丁寧に説明してくれたりはしないですので、このうちには、相当数、実際に申請要件を満たせていない、申請書類に不備・不足があるといったケースが含まれているはずであって、決して「コネ」の問題が全てではないと思いますが、一部そういった疑いを招くケースもあるのでしょう。
どのような申請の場面でも、窓口での指導を期待するのではなくて、きちんと根拠となる法令等を見て、申請要件を満たすかどうか確認いただければと思います。

2021年12月15日水曜日

12月第2週:①中小企業に対する未払金の精算、②国有金融機関の資産の譲渡に関する新たな通知、③期限切れ間際の特許の活用、④5G消息(メッセージ)の商業利用

①中小企業に対する未払金の精算

資料p.2について。
近年はこの時期になると見慣れた号令になってきた印象もありますが、国務院常務会議から各政府機関や事業単位に対して、中小企業に対する支払を遅らせている買掛金や工事代金などをきちんと支払うように、という呼びかけが出されています。
《中小企業代金支払保障条例》が昨年9月から施行されており、政府機関や大企業については、毎年3月31日までに前の年の中小企業への未払金の契約数量・金額等の情報を公表しなければならないというルールが始まっています。
各企業の財務や営業のご担当者は、長期未回収になっている売掛金が、取引先側できちんと公示されているかどうか、一度見てみていただくのは如何でしょうか。

②国有金融機関の資産の譲渡に関する新たな通知

国有系の金融機関が保有している資産の譲渡に関する新しい通知が出ています。
昨今の恒大集団の件などもあり、企業が自らの有する資産の換価を進めていく動きは今後も推進されていくことが見込まれるところですが、国有系の金融機関やそのグループ会社(地方政府が出資しているものを含みます)の有する株式等の資産の譲渡については、国有資産監督管理委員会の定めた《金融企業国有資産譲渡管理弁法》が従来から存在しており、国有資産の一部である財産が廉価で売却されてしまうことがないように厳格な手続が定められています。つまり、国有資産は迅速・機敏に譲渡して換価することが制度上できないことになっています。
今回の上記通知でも、資産評価や公開取引などの手続を厳格に履践するように求めているわけですが、一点、注目すべき点として、広く譲受人を募る公開取引をせずに直接、第三者への譲渡契約を締結できる場面の一つとして、「投資合意や契約で約定した条項の履行として退出する場合」や「契約の約定に基づき第三者に優先購入権を行使する場合」には、国有金融機関内部の決裁プロセスを経て、直接に譲渡を行うことができるとしている点があります。
今回の通知は国有系金融機関やそのグループ会社が出資している株式・出資持分などの譲渡に関するものですが、金融機関でない一般の国有企業に関しても、合弁契約や投資契約において優先購入権や売渡請求権を約定しておくことは改めて重要になってくると思われます。

③期限切れ間際の特許の活用

かねてから特許紛争を繰り返している中国の電器メーカー2社の間での紛争について、日系企業から権利期間の満了を目前にした特許を買い取って、その特許に基づいて相手方に対して賠償請求するという新しい「手口」が開発されたようで、裁判所もそのような権利行使を認めたという事例が出ていました。資料p.4の事例です。
日系企業各社は多数の特許を中国でも登録されていると思いますが、既に権利期間満了を間近に控えているものも多いと思われます。そういった場合、このように中国企業において活用いただく可能性もあるかと思いますので、一つのアイデアとして考慮していただくと可能性が広がるのではないかと思います。

④5G消息(メッセージ)の商業利用

日本ではリッチコミュニケーションサービス(RCS)と呼ばれるようですが、従来のショートメッセージの機能を拡充して、テキストのみならず画像や動画を使った相互通信ができるようになり、アプリのインストールや「お気に入り」登録などをせずとも、ショートメッセージから直接、予約や購入ができるというものだそうです。日本で言うと、「+メッセージ」というアプリもこれに該当するそうです。
この「5G消息」の商業利用が徐々に進んでおり、冬季五輪でも運用されるとのこと。中国聯通、中国電信、中国移動といった通信事業者がそれぞれ商業利用への投入を進めており、中国移動が工商銀行と共同でリリースしたデジタル人民元サービスも既に10月から始まっているそうです。
確かにアプリがたくさんになり過ぎて分からなくなりますし、便利になるのは良いことなのですが、今でもショートメッセージはどれが本物でどれがニセモノだろうか?と迷ってしまうくらいですから、一ユーザーとしては、正しく活用できるようについていくのは大変なような気もします。一方で、ビジネスのうえでは欠かせない存在となってくることが予想されますから、是非、ユーザーに使いやすいものが開発されていくことを期待したいです。

2021年12月10日金曜日

セミナーに登壇させていただきました。(中国《データ安全法》と《個人情報保護法》に関する対応)

昨日、標記のセミナーに登壇させていただきました。
相変わらず拙いお話で、一時間半という短い時間でしたが、
参加者の方々皆様、熱心にお聞きくださっていたようで、
改めて関係者各位に御礼申し上げます。
2分で分かる!という触れ込みでありながら、
実際には一時間半かけても話し尽くせないところがあったため
そこはどうなのか?というご指摘もあろうかと思いますが、
どうぞご寛容を賜れますようお願いいたします。

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日本国際貿易促進協会京都総局 様
【終了】2021.12.09(木) 第113回専門セミナー(ウエブセミナー)
演題『中国データ安全法(データセキュリティ法)と、中国個人情報保護法に関する対応』
講師 金藤 力 氏(弁護士法人キャストグローバル大阪事務所 代表弁護士・中小企業診断士)



2021年12月7日火曜日

12月第1週:①インターネット医療と処方箋、②消費者保護のダブルスタンダード、③交通運輸業界の「新業態」の就労人員の権益保障

①インターネット医療と処方箋

《インターネット診療監督管理細則(意見募集稿)》に関する記事が出ていました。2018年に《インターネット診療管理弁法(試行)》などのインターネット診療に関する法令が発布されましたが、その後、細則は未だ整理されていなかったとのこと。
この試行弁法では、初診の患者に対してはインターネット診療は不可としつつ、オンラインでのデジタル処方箋発行を一定の条件のもとで認めています。DTP薬局(Direct to Patient)がオンライン診療のうえで処方箋が発行できるような仕組みができれば、病院に長蛇の列を作るような必要もなくなり、非常に効率的になるように思われるわけですが、利便性ゆえに様々な新しい問題も起こり得ます。
今回のこの記事では、「統方」(医師の薬品使用につき統計し、それを医薬販売員に提供して、その薬品使用に応じたリベートを渡す行為)、「補方」(先に薬品を販売して後で処方箋を補充する行為。すなわち医師の関与なく患者と薬局がどの薬を使うか決めてしまう。)といった行為を禁止対象としています。日本でも昔から「薬漬け医療」という言葉もあり、過剰な投薬が行われる問題についての対策が講じられてきました。適切に使われてこそ大きなメリットをもたらす医薬品のことですから、経済目的の不正な方法がはびこらないように、効率的な管理が広まって、より効率的に正しく入手できるようになって欲しいものです。
折しも日本でもオンライン診療のガイドラインの見直しが行われており、オンライン診療の普及には逆にオフラインの「かかりつけ医師」(日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師)の方々の活動が重要になってくる面もあるなど、オンラインとオフラインの連係を取る仕組みが今後も大切になるのは日本も中国も共通なのだろうと思います。

②消費者保護のダブルスタンダード

資料p.3の記事について。
10年も前に書いた論稿でも書きましたし、その後も何度も同じことを色んな場面で申し上げているところですが、「中国国内における消費者保護は、中国以外の諸外国(日本を含む)における消費者保護に比べて、同様に設定されていなければならない」というのは、法律の世界でもそうですが、それ以上に、マーケティングの観点からは必須と言えます。
今回は、この典型的な問題で、カナダグースのダウンジャケットが「炎上」したという記事をご紹介しました。すっかり寒くなって、ダウンジャケットが活躍する時期ですので、こういった時期に販売に悪影響が及ぶ話題は、会社の方々としてはメーカーも販売店も驚かれただろうなと思います。
特に製品のリコールなどの場面では、「中国人の生命・身体の安全は、他国の方々よりも軽いと言うのですか?」という極めてまっとうなご指摘を招くことになります。
日本企業各社の製品は、世界でも有数の繊細と思える日本文化の中で暮らす日本の消費者の方々の目を通ってきたものですから、中国の消費者の方々は日本の消費者の方々よりはまだしも大らかではないかな?と思い、堂々と「ご不満があればどうぞおっしゃってください」と販売すれば良さそうにも思うのですが、なにぶんにも実際に応対する店舗や販売者の方々もまた中国の方々ですから、応対に不備が生じることもあります。
クレーム対応は企業の顔の一つですから、どうか日本企業各社は面倒に思わずに、堂々と中国でも展開していっていただければと希望しています。

③交通運輸業界の「新業態」の就労人員の権益保障

Uber(Eatsではない方)、滴滴のなどインターネット配車サービスについて、運転手と乗客に向けてプラットフォームが公示すべき価格計算ルールについて、8部門から連合で新たな政策意見が発布されました。今後、滴滴で配車サービスを利用した後、精算のときには、乗客が支払った総額がいくら、運転手の労働報酬がいくら、その総額から報酬を差し引いた「手数料」がいくら、ということを表示することが求められるとのことです。
また、これらのサービスで働く運転手について、社会保険に参加することを支援していくとの記載もあります。完全に労働関係が掲載させている場合でなくても、配車サービスのプラットフォーム企業が運転手を社会保険に参加させるように促していくそうで、段々と「従業員」ではない労働者の方々が社会保険の仕組みに参加していく仕組みに変わっています。
先日、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用についての講演を拝聴する機会があって、(薄々感づいてはいたものの)やっぱり日本は特殊なのだなと改めて思ったところですが、「中国だから」の一言で片づけるのではなく、我々が慣れ親しんだ日本の制度と正しく比較のうえで、人事労務の管理を考えていただければと思います。