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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2022年6月28日火曜日

6月第4週: ①応急管理部の安全生産通報システム、②中国共産党の指導者・幹部親族による企業経営、③反独占法改正

①応急管理部の安全生産通報システム

企業の生産活動において安全面でのリスクがあるときや、事故があったのに隠匿・虚偽報告がなされているときに、誰でも通報できるシステムがリリースされました。
実名と匿名、両方の通報が可能であり、通報後の進捗状況を見ることも可能になっています。
(ちなみに、匿名通報の方を選ぶと、「もし事実が確認されても奨励金を受領することができませんが、よろしいですか?」というポップアップが表示されます。)
匿名でも連絡先は記入しないといけませんし、中国は電話もネットも実名制ですから、結局は身分が分かるのでは?とも思いますが、場所を選んで通報内容を記載すれば手軽に通報できるようになっています。
通報をきっかけにした調査等が入ることもあり得ますので、生産安全管理には引き続きご留意ください。

②中国共産党の指導者・幹部親族による企業経営

中国共産党の指導者・幹部の配偶者、子女とその配偶者が企業を経営することについての管理を強化するという通知が出ていました。
局レベル以上の指導者・幹部のこれら親族の方々については、企業を設立すること、私営企業や外資系企業の高級職位に就くこと、私募ファンドでの投資・就業、有償の社会仲介及び法律サービスなどの行為が制限の対象となります。
レベルの高い指導者・幹部であるほど制限も厳しくなるそうです。親族が事業をやめるか、本人の職位を調整するか、という対応になるとのこと。

③反独占法改正

《反独占法》が改正され、8月1日から施行となっています。
実務上よく問題になる取引相手方との間での転売価格に関する合意については、「安全港(セーフ・ハーバー)」制度が設けられ、「関係市場における市場占有率が反独占法律執行機構の規定する基準より低いことを証明できる場合」には、禁止対象にならないことが明文化されました。
ただ、具体的な市場占有率の基準がまだ明示されていませんので、基準が速やかに示されることを期待したいと思います。


2022年6月25日土曜日

(日本の話題)商法第512条、ご存じですか? (『サービス』の有償・無償について)

日本の商法には、商法第512条という規定があり、商人の行為は原則として有償である、つまり商人に何かを頼めば費用が発生するのが原則、ということになっています。
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日本「商法」
第五百十二条(報酬請求権) 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
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ちなみに、細かい説明は省きますが、会社の行為は通常は「商人がその営業の範囲内において」行ったものと推定されます。

これは日本の商法上のルールですから、一般の消費者の方々や外国人の方々はご存じでなくても当然なのですが、ご相談を受けてお聞きしている話からすると、どうやら商法が適用されることが当然であるビジネスの場面でも、稀に、「合意がない限り何を頼んでも無償」という誤ったご認識を持たれている取引先や顧客の方々もいらっしゃるようです。

ちなみに、取引先に「『サービスで』これもやってよ!」と無償で何かをさせるというのは、下請法が適用される場面では、不当な経済上の利益の提供要請ということで下請法違反になります。
また、下請法が適用される場面でなくても、優越的地位の濫用(独禁法違反)に該当する場合もあります。


この商法第512条が適用された裁判例というと、例えば、 仙台高等裁判所昭和48年1月24日判決があります。
 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/997/023997_hanrei.pdf
この事例は、不動産仲介業者に対して、不動産の購入を希望する者が場所、広さ、価格などの自己の希望条件を示し、これに適合する物件を探すように依頼して、現場案内まで受けたにもかかわらず、結局はこの不動産仲介業者を通さずに(仲介費用も払わずに)、あろうことか別の業者を通じてその物件を購入してしまったという事例でした。
もちろん、この最初に物件を案内した不動産仲介業者には一定の報酬をもらう権利があるという判決になっています。
不動産仲介の場面ではよくあるトラブルと言えると思いますが、もちろん、他の様々な業務の場面でも同じ道理が成り立ちます。
似たようなお話はビジネスの日常でもたくさんあると思いますが、裁判例としてはあまり数は多くないように思います。日本では暗黙の常識として、不義理なことはしないという商売上のルールを皆さんが守っておられるからかもしれません。


私が社会人になった当時はまだビジネス上の常識として、「タダより高いものはない」といいますか、他人・他社に何かお願いするときは気持ちだけでも何か費用をお支払する意識があったと思うのですが、もしかするとそういう意識も薄れてきてしまっている部分もあるのかも?というように感じました。
(たまたま私が一緒にお仕事をさせてもらった方々が常識をわきまえた方々だったから、ということでもあるでしょうけれど。)
日本の会社にもそこにお勤めの方々にも余裕がなくなってしまっているからなのか、寂しい気持ちもしますが、共存共栄でお仕事を円滑に進めていただくことを少しでもお手伝いできることがあればと思っています。

2022年6月24日金曜日

「健康コード」に関する職権濫用事件

河南省鄭州市で起きた、感染の疑いがある方々の移動制限に使われている「健康コード」が濫用され、感染の疑いがない市民の方々の移動が制限された事件について、中国共産党中央紀律検査委員会でも処分に関する記事を掲載していました。

とある銀行の預金者の方々の「健康コード」を赤色(移動制限)にしたとのことです。
「健康コード」については、《個人情報保護法》成立の背景となった個人情報保護に関する意識の高まりの一つのきっかけにもなった面があるように思われます。当時から指摘されていた濫用の懸念が現実のものになったという意味で、なかなか重要な事件のように感じましたので、備忘のため書き留めておきます。

ちなみに、処分内容については、主犯格の疾病対策部門の部長は職務取消処分、副部長は降級処分になりましたが、ほか3名は過失記録(昇級・昇格停止など)の処分とのこと。いろいろと情状酌量すべき事情があったのかもしれません。

2022年6月21日火曜日

6月第3週:①応急管理部の「一案双罰」典型事例、②モバイルアプリ情報サービス管理規定の改正、③「COD除去剤」を用いた環境規制の潜脱

①応急管理部の「一案双罰」典型事例

応急管理部から、安全生産に関する処罰事例が公表されました。今回は、法人と責任者個人、双方に対する処罰(いわゆる両罰規定)の適用が大きく取り上げられています。
発生した事故について、法人と責任者個人の双方がそれぞれ処罰を受けるのはごく一般的な処理なのですが、今回、興味深いのは、これらの事例はいずれも検査によって安全生産管理体制の不備が指摘されたことで処罰が行われた事例であることです。
事故が起こったときの対応はもちろんですが、事故が起きていなくても管理不備で責任者の処罰につながってしまうことがあります。

②モバイルアプリ情報サービス管理規定の改正

スマホアプリなどに関する管理規定が改正されました。アプリ提供者がコンテンツがもたらす結果に対して責任を負うこと、したがって違法な情報が伝播しないよう自覚的に不良な情報に対して予防することを求めています。また、いわゆるボットを使ったアクセス水増しや高評価の捏造などによってユーザーをダウンロードするよう誘導することを禁止することなども規定されています。

③「COD除去剤」を用いた環境規制の潜脱

水質汚濁の指標の一つとして化学的酸素要求量(COD)という指標があるところ、この指標を下げることを目的とした「COD除去剤」という商品があるそうです。実際には排水の水質を向上させる効果がないのに、環境モニタリング設備で検出されるCODの数値だけを下げるということで、環境汚染の規制を不正に逃れるための手段と認定されて、会社に罰金20万元、主たる責任者であった被告に執行猶予付きの懲役刑が言い渡された事例が紹介されていました。便利過ぎる商品にはお気をつけください。

2022年6月15日水曜日

(日本の話題)日本国内で外国人間で交わされた契約の解釈(当事者間に周知の外国法の法理)

仕事柄、日本にお住まいの中国人の方々からのご相談を承ることもありますが、基本的なことでも、よく考えるとまだまだ知らないことも多いなと感じることがあります。


ともに日本に居住し、同じ国から来ている外国人の方々が、外国人同士で契約を締結しているとき、果たして、その契約に細かい定めがない部分について、どう解釈するべきなのでしょうか。

契約解釈は当事者の合理的意思によるべきと言いますが、外国人の方々が同じ国から来られている場合、その合理的意思は、よく知らない日本法ではなく、慣れ親しんだ本国法の発想に近い場合が多いのでは?という気がします。
この点、私も詳しく研究したことはなかったのですが、判例百選にも掲載された裁判事例があり、以下のような判示がなされていたようです。
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大阪高裁昭和37年10月19日判決
...わが法律(日本法)を準拠法とする場合においても、契約自由の原則の範囲内において、契約の内容の細目の定めをなさないで、その部分につき外国法の規定ないし当事者間に周知の外国法の法理に委ねることも許される。また現実にかかる明示的の指定がなくとも、契約の性質その他の諸般の事情から推定される当事者の合理的意思により定まる法律ないし法理により右契約を規律しうるものと解されている。...
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離婚や相続の場合は、法の適用に関する通則法で本国法になる場合が多いので分かりやすいのですが(外国国籍のご夫妻が夫婦喧嘩をしているとき、日本法を考えているとは到底思えませんので)、契約の場合は、多種多様でありケースバイケースで異なるところもあるので、なかなか奥が深いなと感じます。

このブログはあまり中国から来られた方々がご覧になることは無いと思いますが、一つ、何かのときにはご参考になればと思います。


2022年6月14日火曜日

6月第2週:①上海市の経済回復・復興加速行動方案に関する100のQ&A、②反独占法執行の年度報告、③契約モデル文書ライブラリ

①上海市の経済回復・復興加速行動方案に関する100のQ&A

5月末に上海市が発表した、封鎖解除後の経済回復・復興加速に関する行動方案について、6月3日に100のQ&Aが公表されていました。
従来から報道等でも紹介されているような税制優遇や政策補助などについて、実際に申請しようとするときに気になる具体的な事項が記載されており、分かりやすくなっていると思います。
例えば、
  • 飲食業などを対象とした特定業種向けの支援に自社が該当するかどうかにつき、業種を知るために経営範囲の照会システムで検索することができる。
  • 自社が政策補助の対象となる小規模零細企業に該当するのかどうかにつき、小規模零細企業の名簿が作成されており、企業信用情報公示システムで関連データを入力すれば自動的に判定されて名簿に掲載される(判定プロセス無し)。
といったような、最新のシステムを活用した実務上役立つ知識が掲載されています。

②反独占法執行の年度報告

国家反独占局が2021年の反独占法関連の法執行状況についての年度報告を発表しました。市場支配的地位の濫用や企業結合規制などに関してインターネット、公共事業、医薬、建築材料、半導体、物流、新エネ車、化学工業の各業界で多くの典型事例が紹介されており、最近の反独占法の重点的なトピックを振り返って頭を整理するには便利かと思います。

③契約モデル文書ライブラリ

国家市場監督管理総局のWebサイト上に、「契約モデル文書ライブラリ」が掲載されました。
https://www.samr.gov.cn/(首頁→服務→合同示範文本庫)
従来から建築工事請負契約や土地使用権払下契約などは中央政府所定の書式で統一的に運用されていましたが、そういった実務上必ず使われる書式が一つのところに集められているので、便利に活用いただけるかと思います。
但し、中国国内の各種取引に関するものであるため海外から見る必要はそもそも無いだろうということなのか、日本からのアクセスはうまくできない場合があるようです。

2022年6月6日月曜日

6月第1週:①経済安定のための33項目の政策措置、②中小企業からの購買の強化、③GB 23350-2021改正

①経済安定のための33項目の政策措置

国務院から包括的経済対策として33項目の政策措置が発表されました。
増値税の還付政策や中小企業向け金融支援、国有建物の賃料減免など、従来から既に実施されているものが多い印象ですが、中には、「エネルギー分野で基本的条件が整っていて今年の着工が可能な重大プロジェクトについてはなるべく早く実施することを推進する」といったように、ニュースで見るような出来事の政策的背景が改めて分かるようなものもあります。

②中小企業からの購買の強化

政府調達の分野でも中小企業からの購買を強化する施策が財政部から打ち出されています。
上記の33項目の包括的経済対策にも含まれていますが、400万元以下の工事プロジェクトは可能な限り中小企業から調達することなどが規定されています。
また、大企業が小規模零細企業とコンソーシアムを組成することも奨励されており、入札評価において加点事由として考慮されるとのこと。
自社及び主要な取引先が企業規模の分類上どのランクに分類されるのか、政策によって異なる場合もありますが、こまめにご覧いただくことをお勧めいたします。

③GB 23350-2021改正

2021年9月に食品・化粧品の包装に関する強制性国家基準についてご紹介しました。施行期日は2023年9月1日からとご紹介していました。
ところが、今回、月餅と粽子(中華ちまき)の過剰包装問題が突出しているということで、「第1号修正書」が発布されました。
月餅と粽子については包装の上限を4層から3層にスリム化させ、包装コストも100元以上の月餅と粽子の場合は上限を20%から15%へと制限を厳しくする内容で、2022年8月15日から施行することになったとのことです。
今後も、来年9月を待たず、一部の商品について先行して規制が強化される可能性もありますので、商品を企画される際は包装をスリム化することもご検討ください