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2025年1月30日木曜日

Webにおけるフォントの利用(「商用利用可」の範囲、Webフォント)

今日は少し文字のフォントについてのお話を書きます。


このブログもそうですが、PCやスマホではさまざまな文字が表示されます。

PCで出力される文字は、それぞれの文字そのものではなく、文字コードの形で数字とアルファベットを組み合わせた文字コードの形で、データとして格納されています。例えば、Unicode(UTF-16)の規格では、文字コード「6C34」(中国の国家標準であるGB18030でも同じ)の情報から、漢字の「水」が表示されることになっています。この文字コードは規格(共通ルール)であり、美観や個性は関係がないので、著作権はありません。

1バイト(0と1が8桁、256通り)16進数2桁(00~FF)のASCIIコード
 →  2バイトor3バイトの文字コード(0x00~0xFF:16進数4桁or6桁)
 → テキストデータ
      + フォント
 → 文字として表示(印刷用字体)

このようなイメージかと思います。

このようにデータが文字として目に見えるようになるまでのプロセスの中には、実は、2つの異なる著作権の問題が混在しています。


1つめは、目に見える文字の形です。
これらの文字の形(印刷用字体)については美観や印象、個性があってデザイン性がある面もありますから、著作権の問題が発生することがあります。Webサイト上で目立つように書かれているキャッチフレーズのようなものも、少し凝ったオシャレな字体が選ばれていることがありますが、こういったものは著作権侵害の問題を起こしやすいです。商品の包装や会社のロゴなどが分かりやすいでしょう。

一方で、この文字の形そのものについては、日本でも中国でも、単なる情報の表示手段として使われている場合には著作権侵害にならないという考え方においては共通しています。
中国の最高人民法院の判例(※)でも、もしある字体が美術的な作品に属するとしても、他者が正当に漢字を利用して一定の思想を表示し一定の情報を伝達することを制限することはできない、とされているものがあります。
 (※)最高人民法院[2010]民三终字第6号民事判决书

つまり、「ある字体を使ったらすべて著作権侵害」ということにはならないということです。
これがまず1つめのお話、目に見える世界のお話です。


2つめは、そうした字体の集まりであるフォントのデータベースとかプログラムの著作権です。これは、見た目では分からない、ちょっと複雑なお話になります。
こうした字体(書体、タイプフェイス)を印刷するためのツールであるフォントは、文字盤であったりソフトウェアであったりしますが、PCで表示されるフォントはフォントファイルとしてプログラムの著作物になっていて、著作権があります。
PCやスマホでWebページを閲覧しようとする場合、通常、Webページはhtmlで記述されています。そのテキストファイルにはフォント情報が保存されていないので、テキスト情報にフォントデータを合わせてようやく文字が表示できるようになります。
ですので、この字体を表示するためのフォントのデータがどこから取得・提供されているか、フォントの著作権者が誰のどのような使用を許諾しているかによって、著作権侵害の問題が生じることがあります。
この2つめの問題を考えるときは、見た目だけで判断できず、できあがったWebサイトやコンテンツを作った人に遡って、フォントの利用に関するライセンスがあるのかどうかを確認する必要があるので、なかなか厄介です。

ここでさらに細かく言うと、WebページのテキストをPCやスマホに表示するのにはフォントデータが必要ですが、このとき、仕組みとしては大きく2つあります。
 ① デバイスフォント: PCやスマホが自分で持っているフォントデータを使う。
 ② Webフォント: Webページからフォントデータをダウンロードして使う。
①は端末によって表示のされ方が変わってしまうので、②の方が端末によらずキレイに表示できるそうです。
ところが、フォントの著作権の面から言うと、この②のWebフォントについては注意が必要です。というのは、フォントファイルを端末にダウンロードさせている=フォントファイルを頒布している形になるからです。

マイクロソフトのOfficeに標準で組み込まれているフォントであっても、フォントの使い方によっては別途のライセンスを得る必要があるものがあり、実は、許諾内容はフォントごとに異なっています。


MS明朝、MSゴシック
遊明朝、遊ゴシック

Arial
Times New Roman

宋体SimSun
黒体SimHei

Noto Sans


実際に侵害の指摘や警告などが来た場面では、どのように対応するのかしないのか、状況に応じて個々に判断する必要があることが多く、なかなか奥が深いものと感じています。
最近では、YouTubeの動画で使われている字幕やタイトル文字についても、著作権の問題が指摘されることがあると聞きます。
文字は日常的に使うものですが、それだけに、思いがけない問題が生じることもあり得ますので、気をつけておきたいと思います。


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