注目の投稿

公益通報者の匿名性: 「通報者探し」(通報者の探索)をしてはいけないことの根拠条文(日本)

最近何かと話題の公益通報について。 業務上、社内の不正などに関する内部告発について取り扱う機会が多いので(特に中国は匿名での内部通報は多いです。)、少し書き留めておきます。 匿名での通報があったときに、なぜ「通報者探し」(※)をしてはいけないのか?という点について、法令上の根拠条...

2021年10月27日水曜日

10月第3週:①対外的な活動はしないことが仕事の日、②「品質インフラ」(NQI)の充実、③知的財産権の故意侵害の認定基準?、④契約における特許保証条項、⑤石炭価格への介入措置

①対外的な活動はしないことが仕事の日

某大手企業が新製品発表会の日付の選択のせいで処罰されたという新聞記事がありました。本当に日付だけで?と半信半疑で、何か広告内容や宣伝方法に不備があったのでは?と思って行政処罰の内容を見てみたのですが、残念ながら、本当に、新製品発表の日付と時間帯の問題で炎上して社会を騒がせたからという理由だけのようでした。
「国の尊厳又は利益を損なった」という広告法の規定が根拠規定となっているのですが、ネットを見てみると、「なぜわざわざ7月7日、しかも夜10時に?」というコメントから段々と盛り上がり、製品がカメラであったということもあって、原爆投下時の写真や、日本の敗戦直後の写真などが次々と掲示板にアップされて、確かに大炎上してしまっていたようです。
ただ、日付と時間だけでここまで盛り上がるとは、今回はちょっと驚きでした。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりの日付は要注意です。
以前は、中国に赴任する方々は必ず赴任前研修などで教えてもらっていたと思うのですが、私も中国赴任してから10年以上経ったので、最近は忘れていることも多いです。
この現象・事態そのものが是か非かという議論はともかくとして、中国ビジネスにかかわる一人としては、とりあえず改めて、この4つの日は「対外的には何もしないのが仕事の日」と認識しておこうと思います。

②「品質インフラ」(NQI)の充実

「品質インフラ(质量基础设施)」は、英語のNQI(National Quality Infrastructure)から来ているそうで、標準化、適合性評価、計量、認定といった品質関連の枠組みを指すそうです。
こういった品質インフラについて、ワンストップの公共サービスを提供することで、中小企業の技術的能力や信頼性の不足を解消して、個々の企業の製品・サービスの品質、ひいては産業チェーン全体の飛躍につなげようという考えが示されています。
言われてみると、工場見学などにうかがったときのことを思い出すと、大企業と中小企業では、検査・測定用の機器の充実度合いが全く違うような印象があります。
検査は生産性に直接は影響せずにむしろコストを増やす、検査員が頑張ると製造担当部門から煙たがられる、そのような景色の中で、日常の場面では検査が軽んじられてしまうこともあります。しかし、実は高付加価値で競争力ある製品を展開していくには検査・軽量・測定の部分がそれを支えているということは確かにあると思いますので、その部分を重視しているというのは、「なるほど」と感じます。

③知的財産権の故意侵害の認定基準?

今年の3月第1週のワークショップでもご紹介しましたが、ここ数年で、《特許法》や《著作権法》などの知的財産関連法令の改正が行われ、知的財産分野では全面的に懲罰的賠償制度が導入済みとなっています。
懲罰的賠償の枠組みとしては、概ね、「故意」で且つ「情状が劣悪」な場合に懲罰賠償を命じることになっているのですが、このときご紹介した、故意侵害の認定にかかわる要素は、以下のようなものでした。
 ①通知又は警告を経た後も権利侵害行為を継続した
 ②被告が原告の関係者である
 ③以前に勤務や提携関係がある
 ④以前に業務取引や契約交渉をしたことがある
 ⑤海賊版又は登録商標冒用の行為である
 ⑥その他の事情
今回は、黒竜江省の知的財産権局から中央への照会があったようで、ある事情を「故意」の要素として考慮するのか、それとも「情状が劣悪」の要素として考慮するのか?という問題について、「前者(故意)は主観的要因、後者(情状劣悪)は客観的要因なので、両者を混同してはならない」という見解が示されています。
ですので、結論としては「それは故意かどうかの問題ではなく、情状劣悪かどうかの問題ですね」という回答になっており、通知文書のタイトルと違う内容でした。ときどきこういうこともあるのですが、故意認定の要因をおさらいする機会にはなりました。

④契約における特許保証条項

日本ではサプライヤーが顧客を訴えた構図となって一躍話題となっている、電磁鋼板をめぐる特許権侵害紛争ですが、中国ではごく普通の、サプライヤー間の特許紛争です。
日本での訴訟は、知的財産の仕事をなさっている方々はお分かりになると思いますが、実はこれは非常にショッキングでして、サプライヤーとの契約における特許保証条項の重要性が高まるのはもちろんなのですが、「特許保証条項さえあれば良いのか?」という新たな課題について考えてみる機会でもあります。
まさに法務部と知財部が連携して対応すべき課題と場面ですので、ぜひ話題にして交流してみていただければと思います。

⑤石炭価格への介入措置

石炭価格が過去最高を更新し続け、製造業のコスト負担を増やし、冬場に向けた暖房供給に対しても悪影響を及ぼしているということで、石炭価格に対する介入措置が検討されています。
中国の《価格法》では、重要な商品・サービスに顕著な価格高騰が見られる場合や、市場価格の全体水準に劇的な変動等の異常が生じた場合には、価格届出制度や、緊急価格凍結措置といった介入措置をとることが規定されています。
価格統制は、経済学の理論から言えば必要十分な供給がされなくなり、闇市場を生み出して二重価格構造を生み出すだけで、根本的な解決にならないということは、一般論としてはあるのだろうと思います。ただ、今の中国ほど強力に社会の動きを監視・統制して、闇市場が生まれることを十分に抑制できる能力があるという前提条件のもとならば、果たしてどのような効果が生じるのか、個人的には少しだけ興味があるところです。
世の中には、「高いから買うのをやめよう」と思うものと、「高くても買わざるを得ない」ものがあるので、とりあえず企業の運営に携わる一員としては、コストが高騰せずに済むことは良いことと思っています。

0 件のコメント:

コメントを投稿