所有権留保付き売買について、中国には独特なルールがあります。
所有権留保の約定があっても、買主が75%以上の代金を支払っていると、売主は目的物を取り戻すことができなくなります(《売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)》第26条)。
破産の場合でも、売主が破産した場合であれ、買主が破産した場合であれ、売主はもはや目的物を取り戻すことができなくなります《「企業破産法」の適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定(二)(2020年)》第35条、第37条)。
さらに、2021年1月1日から施行された《民法典》では、「売主が目的物について留保する所有権は、登記を経ない場合には、善意の第三者に対抗することができない。」という条文が追加されました(《民法典》第641条第2項)。これに伴い、現在では、動産を対象とする場合であっても、中国人民銀行信用調査センターでの登記が第三者対抗要件として必要になっています。
設備の売買などでは、最終回の支払として10%程度を「品質保証金」などの名目で納品後1年ほど残してあることが多いのですが、そのような場合、残代金の回収のために所有権留保を主張することはできないという難点があります。
日本では、所有権留保については「代金が完済されるまで所有権は移転しない」とされることが通常であり、法律上も上記のように一定の比率を定めて所有権移転を強制するような制度はありません。
また、所有権留保は主に動産の売買について利用され、自働車など登記・登録の制度がある場合でなければ対抗要件は占有改定等の方法によることになり、機械・設備などで所有権留保を示すプレート等を付す例もありますが、いずれにせよ登記・登録を第三者対抗要件として必ず要求しているものではありません。
なにより、中国では以前から会計・税務上の取扱いとして「所有権が留保されている場合は、自社の資産であるから、自社の資産として計上し続けなければならない」(つまり、支払を受けるまで売上を計上することができない)という実務的な慣行が見られることから、営業部門にとって非常に不評であるためでしょうか、もともとあまり活用されていませんでした。しかし、債権回収の場面では、取引先が破産した場面でも所有権留保の条項があったゆえに危うく難を逃れることができたこともあります。
75%ルールなど、日本と違って落とし穴にもなりやすい部分がありますが、所有権留保、なるべく取引に活用を考えていただければと思います。
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