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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2022年3月1日火曜日

2月第4週:①施行延期の通知、②「証照」の電子化、③個人情報保護法と業務システムへの情報記入、④プラットフォーム(Webサイトやアプリ)の利用規約変更、⑤訴訟前調停による解決の推進

①施行延期の通知

1月第4週にご紹介していた《金融機構の顧客デューディリジェンス調査と顧客身分資料及び取引記録の保存管理弁法》ですが、「技術原因」により施行延期となったようです。
発布後にいくつかの中小金融機関から、この弁法で定められている金融商品と業務モデルごとの具体的なルールや要求事項につき、金融機関側での内部管理制度、情報システム、業務フローを整備して人員の研修も行う必要があるとの求めがあったためとのこと。
もともと1月19日に発布されて2022年3月1日から施行ということで、施行まであまり時間的余裕がなかったところですが、春節休暇が間にあり、さらに今年は冬季五輪もありましたので、無理からぬところかという気もいたします。
「もう少し施行まで余裕のある期間設計にした方がよいのでは?」と思うことも多々ありますが、締切が遠いとついつい対応が後回しになってしまうのも人の常というものです。まずは施行期日を決めておいて、状況を見て延期という方式は、それはそれで合理的なのかもしれません。

②「証照」(証書・許可証)の電子化

中国では行政手続のIT化も進められています。以前から「発票」の発行のための専用システムや税務申告のためのシステム、税関関連の手続のペーパーレス化などは広く導入されていましたが、さらに営業許可証をはじめとする各種業務の許可証についても電子化して、逐一企業から情報・資料の提出を求めなくとも行政機関自身が確認できる仕組みを構築し、全国で通用するように連繋を進めようとしています。
これらの電子「証照」(証書・許可証)を取得して活用するには、申請段階からオンライン申請によることが求められます。そこでは、なりすましを防止するため、USBの認証キーなどを使った電子署名・電子印鑑が必要になりますが、これら紙の署名や印鑑に代わる本人確認手段も付随して普及する必要があります。こうした一連のインフラを整備することに民間企業が関与することも奨励されています。
ところで、日本でも行政改革の一環として「脱ハンコ」が進められています。行政機関の窓口でも、印鑑を求められることが少なくなった印象は確実にあります。ただ、個人が手書きで記入する用紙は自筆署名があるので良いのですが、会社名の書類は個人が署名する箇所はなく、会社の四角いゴムのスタンプ印だけで手続ができてしまい、代表者の丸印はもちろん会社名の角印すら不要という状況になっています。仕事柄、「これで本当に良いのか?」と思ってしまうところもあります。本来、印鑑廃止とデジタル化は表裏一体であり、デジタル化には紙の印鑑や署名に代わる本人確認も必須と思うのですが、会社の代表者の署名はあっても会社自身の署名と言うものは無いわけですから、会社の方は印鑑があった方が良いのでは...と個人的には未だに少し戸惑っています。

③個人情報保護法と業務システムへの情報記入

昨年11月1日から個人情報保護法が施行され、顧客の個人情報についてはIT企業やBtoC企業でなくとも法的に保護する義務があることが明確になっています。
今回紹介した事例では、業務システムにさまざまな情報を書き込めるようになっていたところ、従業員が「このお客様は●●が好き」「このお客様はSNSに投稿をする」などの情報を書き込んでいたことが問題となりました。
サービス業の観点から言えば、この人は顧客のことをきちんと覚えようとする仕事熱心な人なので、ご本人としても決して悪意はなかったのだと思いますし、きっとお客様の評判も良かったのだろうと想像します。
しかし、「知らないうちに」情報が記録・使用されていることは愉快ではありません。仕事熱心は間違いなく良いことなのですが、きちんと同意を得る習慣も求められる世の中になってきているという例かと思います。

④プラットフォーム(Webサイトやアプリ)の利用規約変更

引っ越しなど物流サービスをWebサイトやアプリで提供している会社が、利用規約(服務協議及び交易規則)の変更について、法律に定められた意見募集を行わなかったとのことで罰金の処罰を受けていました。
日系企業各社の立場では、運営者側ではなくユーザー側(出店者側)としてかかわることが多いと思われますが、改定内容に同意せずサービスの利用をやめることができることは当然として、さらに、改定内容が事前にプラットフォームの目立つ位置に掲示されていなかったという理由で事後にその効力を争うということも考えられます。
規約の改定があった場合、内容を見るよりも、その通知の有無や掲示されている場所などを先に見た方が良いかもしれません。

⑤訴訟前調停による解決の推進

中国ではここ数年、訴訟によらず調停によって紛争を解決することを促す方向で司法インフラの整備が進んでいます。
2021年の実績としては、訴訟前調停成立件数が610.68万件、「速裁快审」(一回結審など法律の許す範囲内で手続を簡略化した訴訟手続)の件数が871.51万件とのことで、一営業日あたり4.3万件がプラットフォーム上で調停され、1分あたり51件の紛争が訴訟前に解決されているとのことです。
(ちなみに、中国の年間訴訟件数は、民事・刑事合わせて2016年に2000件、2019年に3000万件を超えています。2020年も3000万件を超え、そのうち55%が民事案件とのことです。)
訴訟手続の迅速化は当事者に早い解決を提供するとともに、司法のリソースを有効に活用できるメリットがあります。しかし、日本にいる我々から見ると、ただでさえ十分な審理を尽くしてもらうことが難しい面がある中国での訴訟対応ですから、「事前に十分な証拠と論拠を揃える」ことが今後さらに求められてくると思われます。



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