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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年6月29日木曜日

動産差押の方式(「死封」と「活封」)


中国の差押の方式には、「死封」と「活封」の2つの方式があります。

「活封」とは、債務者の財産のうち生産設備や原材料など事業活動に必要な動産が封印・差押の対象となった場合でも、引き継続き債務者や第三者にその使用継続を認める差押の方式です。活きた状態での封印、ということです。
(《人民法院の民事執行における財産の封印、差押え及び凍結に関する最高人民法院の規定》第10条第2項、第13条第2項など)
これに対して、「死封」とは、そのような差押対象となる動産の使用を認めない、差押対象動産が文字通り使えない状態で封印されてしまっている方式の差押です。
経験的には、差押を受けている債務者も堂々と工場を運営している場合が多いですし、最高人民法院も堂々と「活封」を活用することを奨励しています。

これに対して日本はと言うと、日本でも、動産の差押をするときは、執行官が相当であると認めるときは、債務者に差し押さえた動産を保管させることができ、さらに相当であると認めるときは、その使用も許可することができます。(日本「民事執行法」第123条)
ただ、動産をそのまま債務者に占有させておくと紛失などのおそれがありますから、中国ほど堂々と使わせることは稀であるように思われます。
そもそも、日本でそのように事業に用いる設備が差し押さえられてしまうような状況になれば、民事再生や破産など倒産手続に入るでしょうから、そこも大きな違いかもしれません。

2023年6月27日火曜日

6月第3週:①酷暑・高温作業に関する事故防止、②ガスボンベの安全検査、③安全生産管理の「一案双罰」(両罰)

①酷暑・高温作業に関する事故防止

今年も暑くなってきたため、「防暑降温」業務に関する通知が国家衛生健康委員会弁公庁から発布されています。
以前から《防暑降温措置管理弁法》という衛生部などが連合で発布している規定もあって、日中の最高気温が35度以上になると「高温天気」として作業の停止や作業時間の調整などが命じられることになっています。
今回の通知では、業界や業種によって健康への影響は異なるので業務ごとに的を絞った対策を講じるべきこと、重点業界・業種ではアニメーションや短編動画などを用いて宣伝に注力することなどが規定されています。

②ガスボンベの安全検査

6月21日に寧夏回族自治区の銀川市で発生した爆発事故を受けて、各地でガスボンベなどガス爆発の原因になる隠れたリスクの特別取締活動を行う旨の発表がなされています。
山東省や江蘇省でも緊急に安全対策についての会議等が行われていますので、各企業においても改めてガス関連の安全管理にはご留意ください。

③安全生産管理の「一案双罰」(両罰)

ちょうどその6月21日の朝ですが、企業の安全生産管理に関する重大事故リスク2023年特別取締活動について、企業と主要責任者の双方を処罰する、いわゆる両罰規定の適用事例が発表されていました。
「主要責任者」や「主管人員」が会社のどのような地位にあるものかは記載されていませんが、常に董事長や総経理が処罰対象となるというわけでもなさそうです。もちろん、部下に責任をなすりつけるのは良くないですが、業務の分担を明確にすることで、何でも董事長や総経理の責任になってしまわないようにしておくことは事故防止のためにも大切かと思います。


2023年6月19日月曜日

6月第2週:①「盲盒」(福袋、ガチャ)のガイドライン、②建物内装の安全管理強化、③知的財産権局のマークの使用

①「盲盒」(福袋、ガチャ)のガイドライン

国家市場監督管理総局から、「盲盒」経営行為規範指針(試行)が発布されています。
「盲盒」とは、事前に商品の範囲は告知されているものの、確定した型式等は告知されていない状態で、消費者がランダム抽選の方式で特定範囲の商品を購入する取引方式をいいます。日本で言えば福袋やガチャのようなものかと思います。
抽選規則や抽選の確率などを公示すること、抽選結果を操作したり確率を変えたりしてはならないことなどが規定されています。

②建物内装の安全管理強化

住宅都市建設部から、建物内装の安全管理強化に関する通知が出ていました。
https://www.mohurd.gov.cn/gongkai/zhengce/zhengcefilelib/202306/20230609_772638.html
最近、黒竜江省のハルピン市で賃借人が無断で建物の耐力壁を撤去してしまったという事件が話題になったようで、建物の耐荷重構造に変動を生じてしまうような施工をしないこと、クーラーの室外機が落ちる危険があるときは直ちに固定又は交換すること等が規定されています。

③知的財産権局のマークの使用

知的財産権局のマーク(英語の「IP」と星の図案)を製品や展示パネルに使用する行為についての照会回答(批复)が公表されています。
国家機関の名義やイメージを宣伝に利用しているもので、《特許標識表示弁法》や《広告法》の規定に違反しているとの回答になっています。
製品の宣伝のために特許登録番号や発明名称などを表示することはあると思いますが、その際に知的財産権局のマークをついでに付してしまうのは違法ということです。


2023年6月13日火曜日

弁護士以外の者が代理人になれるかどうか(弁護士代理の原則)

中国の方々からのご相談を受けていると、「弁護士以外の者が代理人になることはできないのか? 自分が代理人になってはいけないか?」という質問を受けることがよくあります。
これは、日本の依頼者の方々からはあまり受けることがないご質問です。

「弁護士代理の原則」とは、日本において、訴訟の場面では原則として弁護士しか代理人になることはできないというルールのことを言います。
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日本「民事訴訟法」第54条(訴訟代理人の資格)
1 法令により裁判上の行為をすることができる代理人のほか、弁護士でなければ訴訟代理人となることができない。ただし、簡易裁判所においては、その許可を得て、弁護士でない者を訴訟代理人とすることができる。
2 前項の許可は、いつでも取り消すことができる。
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一方、中国では、弁護士でなくても、訴訟代理人になることができます。つまり、弁護士代理の原則というのがありません。
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中国《民事訴訟法》
第61条  当事者及び法定代理人は、1名から2名を訴訟代理人として委任することができる。
 次に掲げる者は、訴訟代理人として委任されることができる。
 (一)弁護士及び基層法律サービス業務者
 (二)当事者の近親者又は業務人員
 (三)当事者の所在する社区及び単位並びに関係社会団体の推薦する公民
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このように、少なくとも訴訟の場面で見れば日中双方の制度は大きく異なっていますので、冒頭のような日本ではあまり聞かないようなご質問が出てくることになります。


ちなみに、日本でも、訴訟の場面ではなく、報酬を得る目的でなければ、弁護士でなくても代理人になることができる場合はあります。
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「弁護士法」第72条(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
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ですので、訴訟以外の場面についてはご説明がなかなか難しいのですが、訴訟以外の場面であっても、非弁護士の代理人と称する方が介入している場合は、少なくとも日本の弁護士自身は、その案件に関わることが難しくなります。下記「弁護士職務基本規程」の規定があるためです。
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「弁護士職務基本規程」第11条(非弁護士との提携)
弁護士は、弁護士法第七十二条から第七十四条までの規定に違反する者又はこれらの規定に違反すると疑うに足りる 相当な理由のある者から依頼者の紹介を受け、これらの者を利用し、又はこれらの者に自己の名義を利用させてはならない。
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中国の方々が弁護士でない人を代理人に立てて交渉しようとする場面を見かけても、お互いに背景が違うことを理解して冷静にご対応いただければと思います。


2023年6月12日月曜日

6月第1週:①国務院の2023年立法計画、②市場監督分野の業界標準、③法律適用問題の照会回答

①国務院の2023年立法計画

先週は全人代常務委員会の今年の立法計画についてご紹介しましたが、今週は国務院の立法計画が出ていました。
全人代常務委員会の審議に上程する法律案、国務院が定める行政法規案、それぞれの起草について、それぞれどの部門が担当するか別紙で列挙されています。

②市場監督分野の業界標準

市場監督分野の業界標準についての管理弁法が出ています。
市場主体登記や遠視営業許可証、信用管理、不正競争、ネット市場の管理など、市場監督分野に関する業界標準について、今後、MRのコードを付して制定されていくようです。

③法律適用問題の照会回答

各地の高級人民法院から最高人民法院に対する照会と回答についての規定が公表されています。
https://www.court.gov.cn/zixun/xiangqing/402522.html
普遍性や指導的意義がある問題の回答については、回答を受けた人民法院が案例を編集して、「指導性案例」の候補として推薦することができるそうです。
また、技術類知的財産権や反独占法の問題については、一審の人民法院が最高人民法院に対して照会をすることもできるとのこと。
我々が普段かかわることのない、上下の人民法院間での話ではありますが、日本とは仕組みが異なることが分かる規定かと思います。


2023年6月9日金曜日

会社数、事業者数(こんなにも激しい競争社会)


中国でのビジネスは日本に比べても熾烈な競争環境にあると感じられることがあります。
その感覚によく合う数字がありますので、ご紹介しておきます。

中国における事業者数は、2021年末時点において1.54億者であり、そのうち約3分の2にあたる1.03億者が個人事業者です。
ですので、概ね残りの3分の1にあたる約5000万社の企業があるというイメージになります。(法人格を持たない組合企業などが含まれるので、「法人化割合」ではありません。)

一方、日本の事業所数は2018年時点で約639万事業所、企業数が2016年で約359万社とのことです。
(経済センサス-基礎調査(令和元年)、中小企業庁平成30年11月30日発表にかかる中小企業・小規模事業者数の集計結果)

このように見てみると、およそ10倍以上の数の事業者が、3倍程度のGDPを奪い合っているような、熾烈な競争環境であることがイメージしやすいかと思います。

【2024年1月追記】
会社法改正の関係記事を見ていましたら、中国の事業者数が大幅に増えたのは2014年以降、出資払込の規制が撤廃されて、企業の設立が非常に簡単になった後だったようです。
この10年間で1億者増えた、数としては約3倍になったということで、この1億者の中には実態のない又は零細な事業者も多いでしょうから、見た目ほどに事業者が多いわけでもないのかもしれません。
補足までにて。

中国と日本の訴訟件数(中国の方が訴訟になりやすい)

日本における民事事件(※)の件数は、年間で約136万件(新受件数ベース)とのことです。
 (※)訴訟のほか、強制執行、破産なども含まれています。

参照:令和4年司法統計年報速報版 


これに対して、中国の場合、同じく民事事件の件数を見ると、1812万件(受理件数ベース)となっています。

参照:2022年全国法院司法統計公報


随分前に、同じような比較の観点から、「日本の3倍くらいのGDPで、事件数は10倍くらい。つまり、日本よりも3倍くらい訴訟になりやすい、と言えそうです。」というお話をしていたような記憶がありますが、今はその傾向がもっと強まっているように思います。

日本の広告をそのまま中国語にして使ってもよい?

こちらも過去にセミナーでお話した内容から、一つ、ブログでご紹介しておきます。
こちらは中国のお話です。





中国の《広告法》では、
一般的に広告に含めてはならない内容として、このように11項目を挙げています。

このうち、よく引っかかるのは第3号で、
「業界No.1」とか、「最先端」といった用語は不可となっています。
この「等」が非常に幅広い表現をカバーするので、大きくしておきます。

何年か前に某有名ブランドのプロモーション動画で問題になったような、
中国の方がピザやパスタをお箸で食べているとか、
民族的な自尊感情を損ねるような内容もいけません。第9号です。

他にも、タレントさんが旧日本軍の軍服を着用している写真なども、
社会的秩序や良好な風俗に反することになりますから、気をつけましょう。
第7号ですね。

とにかく、「日本の広告をそのまま中国語にして使う」、これは危ないですので、
是非、基本的な知識として覚えておいていただければと思います。

なお、近年よく問題になる「ステルスマーケティング」についても、
中国《広告法》はこのように明文で禁止していますので、
合わせて知っておいてください。


2023年6月6日火曜日

「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」に関する記事(第1回)を掲載いただきました。

【寄稿】「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」
  ~第1回: “攻め”と“守り” 両面を見据えた体質改善~

東海日中貿易センター会報誌2023年5月号に掲載いただきました。


全6回の連載を予定しておりまして、第1回は導入編ということで、
なぜ今、改めて“攻め”と“守り”の両面に強い組織作りが大切になっているのか?などご紹介しています。

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第1回: “攻め”と“守り”両面を見据えた体質改善(本号掲載)
第2回: 「攻め」(内販強化、新規事業)で直面する課題とその対処法
第3回: 「守り」(事業売却・縮小、リストラ、外注化など)で直面する課題とその対処法
第4回、第5回: 組織作りのポイント~組織・人員
第6回: 組織作りのポイント~資産、取引、その他
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2023年6月5日月曜日

5月第5週:①2023年立法計画(会社法改正は8月の予定)、②個人情報出国標準契約の届出指南(第一版)、③消費品の標準化推進

①2023年立法計画

全人代常務委員会から、2023年の立法計画が公表されています。
継続審議中の法案17件については、何月に公布予定か記載されています。
《会社法》改正は8月となっています。
長らく《暫定条例》であった増値税についても、同じく8月に《増値税法》の予定とのこと。
その前の6月に《対外関係法》、12月に《金融安定法》と《民事強制執行法》など、気になる項目は色々ありますが、それぞれ公布に至ったときに改めてご紹介したいと思います。

②個人情報出国標準契約の届出指南(第一版)

《個人情報出国標準契約弁法》が6月1日から施行ということで、実際の届出手続に関する指南が公表されています。
データが国内にある状態でも、国外から照会、閲覧、ダウンロード、エクスポート可能な状態になっていると、やはり個人情報の国外提供として届出が必要になるとのこと。
手続を処理する担当者の委任状や、申請内容に虚偽がないことなどを記載した承諾書のフォーマットが添付されています。
個人情報保護影響評価をしてから届出まで3ヶ月以内であること、その間に重大な変化がないことも、承諾書の内容に含まれています。

③消費品の標準化推進

国家標準化管理委員会、工業情報化部、商務部の3部門が共同で、消費品標準化建設の強化についての行動方案を公表しました。
消費品の国家基準について、重要技術指標における国際基準との一致の程度を95%以上にするという目標が掲げられています。
重点領域としては、家電製品、電子製品などが挙げられており、スマート化に対応するインターフェースなども対象となっています。
また、塗料や壁紙等の内装用建材や、アパレル製品についても、安全性向上や高機能化に対応した標準化などが掲げられているようです。

2023年6月1日木曜日

日本の話題: ショートメッセージ(SMS)データの編集(変造・捏造)

過去にセミナーでもお話したことがある話題ですが、最近改めて同じような話題を目にしたので、この機会に改めてブログに掲載しておきます。










この写真は、何年か前にとある事件で、【携帯に保存されているショートメッセージのデータを編集できるかどうか】が争点になったとき、詳しい業者さんに相談して実験してみたときの写真です。
私もその作業に立ち会って見せてもらったのですが、結果として、「送信元」も「メッセージの内容」も、きれいに入れ替えることができました。画像を加工することは当然、簡単ですが、携帯電話に入っているテキストデータも、技術的には書き換えることができる場合があるということです。
このときの実験では、送信元はもともとメールのアドレスだったのですが、それが特定の電話番号から届いたという表示に変わり、メッセージの内容の文字も違うものに変わっていました。私も知識としては、そういうことが可能だとは抽象的には知っていたのですが、実際に目にしてみると、やはり驚きでした。

チャットアプリのLINEやWeChatで同じことができるのかどうかは私も試したことがなく知らないですし、SMSについても端末によって異なるのかもしれないのですが、データである以上、同じようなことがあり得るのかもしれません。
場合によっては鑑定が必要になると思われますので、スクリーンショットやバックアップデータがあれば可と考えるのではなく、端末の元データを保存しておく(機種変更しても元の端末を保管しておく)ということも大切になってくるかと思います。

最近ではAIを活用したディープフェイクという技術も話題になっています。
なんであれ本物「らしく」見えてしまう世の中ですから、証拠は一つ何かがあれば良いというわけではなく、複数あるべきだと言えそうに思います。


2023年5月29日月曜日

5月第4週:①契約行政監督管理弁法、②新就業形態の典型案例(第3弾)、③《商用暗号管理条例》改正

①契約行政監督管理弁法

国家市場監督管理総局から、契約についての行政監督管理に関する弁法が発布されています。
従来は《契約違法行為監督処理弁法》という別の法令があったのですが、《民法典》の施行もあったので名称が変わったようです。
従来から、消費者との間の契約における不平等な条項などについては罰金の処罰をすることなどが定められていましたが、その罰金額の上限が3万元から10万元になりました。
また、省級以上の市場監督管理部門が特定の業界又は分野について契約モデル文書を制定することができる旨の規定も追加されています。もちろんその書式に準拠することが強制されるものではありませんが、事業を行ううえでは、関係する地域において、該当する業界・分野についての契約モデル文書があるかどうかを確認いただく方がよさそうです。

②新就業形態の典型案例(第3弾)

人力資源社会保障部と最高人民法院から、新就業形態の労働争議の典型案例(第3弾)が公表されました。
「新就業形態」での就労者は8400万人にのぼるとのことで、これにはトラックの運転手、配車アプリの運転手、出前配送員などが含まれます。
これらの就労者とプラットフォーム企業との間で、労働関係(=《労働契約法》による労働者保護や労災補償が適用される関係)が認定されるかどうか?という事例が6つ紹介されています。
労働関係が認められた事例、認められなかった事例、両方がありますが、やはり契約の名称や文言ではなく、実質的に労働管理がなされていたか否か等が考慮されているようです。

③《商用暗号管理条例》改正

《商用暗号管理条例》が改正されました。1999年の古い規定でしたが、改正で《暗号法》などに整合するようになりました。
一部の記事では「商業パスワード管理条例」と紹介されていましたので、「パスワード?」と思う方々もいらっしゃるかもしれませんが、中国語「密码」、いわゆる暗号化技術のことです。メール送受信でも、無線LANを使った通信でも、デジタルデータを安全に通信するために暗号化は常に随所で用いられています。
商用暗号製品の輸出はもともと輸出管理の対象でしたし、大衆消費類製品に用いられる暗号については輸入・輸出許可制度の対象ではないことも従来から明文で規定されていました(《暗号法》第28条)。
商用暗号製品の生産・販売許可、製品登録の制度に関する条文がなくなり、検測認証制度に関する条文が増えたようですが、これも概ね《暗号法》(同第26条など)の規定に沿うものかと思います。

過去の寄稿一覧(SMBCチャイナマンスリー)


SMBCチャイナマンスリーに寄稿させていただいた記事の一覧です。
一般公開されていますので、機会があればご覧ください。


2023年5月 中国《反スパイ法》改正について(限定公開)
2023年3月 個人情報の国外への提供・移転のための標準契約
2023年1月 工業および情報化分野データ安全管理弁法(試行)
2022年10月 国家標準管理弁法の改正
2022年9月 個人情報の中国国外への提供・移転について
2022年7月 正札価格表示および価格欺罔禁止にかかる規定
2022年5月 中国 《反不正競争法》に関する司法解釈と関連事例
2022年3月 中国 ファイナンスリース会社非現場監督管理規程
2022年1月 中国 安全生産研修の「形骸化」に対する特別取締活動
2021年11月 中国における個人情報保護法
2021年9月 市場監督管理分野における3つの新法令(行政処罰情報の公示、信用失墜名簿、信用修復)
2021年7月 中国《データ安全法》(データセキュリティ法)
2021年5月 経営用途貸付の不動産分野への流入防止に関する通知
2021年3月 インターネット販売消費品のリコール監督管理の強化に関する市場監督管理総局の公告
2021年1月 《建設工事企業資質管理制度改革方案》
2020年12月 《販売促進行為規範化暫定施行規定》、《ネットワークライブ配信マーケティング活動の監督管理を強化することに関する市場監督管理総局の指導意見》
2020年9月 市場監督管理分野の部門連合抽出検査事項リスト(第一版)
2020年7月 《民法典》で契約の実務はどう変わる?
2020年5月 新型コロナウイルス肺炎の感染症流行にかかわる民事案件を法により適切に審理することにかかる若干の問題に関する最高人民法院の指導意見(一)
2020年4月 薬品、医療機器、保健食品、特殊医療用途調整食品の広告審査管理暫定施行弁法
2020年3月 ネットワーク情報コンテンツ生態統治規定



2023年5月22日月曜日

5月第3週:①生態環境行政処罰弁法、②「企業商業秘密保護能力向上サービス月間」、③能動的司法の典型案例10事例

①生態環境行政処罰弁法

生態環境部から、環境関連の行政処罰を行う際の手続を定めた新しい弁法が出ています。
改正により、名称も2010年の《環境行政処罰弁法》という名称から変更されました。
自動モニタリングデータ設備のデータを毎日12時にマーキングして、モニタリングデータの有効性について異議がないことを確認するという手続などが新たに規定されています。

②「企業商業秘密保護能力向上サービス月間」

国家市場監督管理総局にて、今年6月に初めての「企業商業秘密保護能力向上サービス月間」活動を行うとのこと。ここにいう商業秘密には、技術情報が含まれます。
各企業へのヒアリング等を行って1対1のサービスを提供すること、政策法規の普及活動を行うこと、企業の内部管理制度などにつき行政指導を行うこと、侵害行為の取締を強化すること、とあります。
重点分野では司法部門と協力して大規模・重要事案の調査処理を推進するとのこと。

③能動的司法の典型案例10事例

最高人民法院から、執行案件における「能動的司法」の典型事例10事例が公表されています。
中国の執行をめぐっては日本と違うところも多々ありますが、今回紹介されている各事例は、まさに強制執行の案件を手掛けている身としては非常に実感のある、分かりやすい事例が紹介されていると感じられます。
詳しくは別の機会にご紹介できればと思います。


2023年5月18日木曜日

《反スパイ法》改正に関する記事を掲載いただきました。

SMBC Global Informationにて、下記記事を掲載いただきました。

SMBC・中国レポート~法務編
【中国】反スパイ法の改正 について


2023年5月15日月曜日

5月第2週:①不動産仲介業の規範化、②出入国管理の緩和、③重大事故リスク判定基準解読

①不動産仲介業の規範化

住宅都市建設部と国家市場監督管理総局から、不動産仲介業に関するルールの徹底を求める意見が出ています。
仲介業務は基本業務(物件情報提供や物件内覧、契約締結など)のほか、住宅ローン手続代行費用など別途料金が必要な業務もあります。いずれも料金を明示する必要があります。
契約書式は各住宅都市建設部門が制定することなどが規定されています。

②出入国管理の緩和

国家移民管理局から、5月15日以降の出入国管理の緩和についての公告が出ています。
香港・マカオへの団体旅行の手続が全国でできるようになったとのこと。
外国人については、永久居留証や電子パスポートを持っている場合は「快捷通道」を通れるそうです。

③重大事故リスク判定基準解読

応急管理部から、3月に出ていた重大事故リスク判定基準についての解説が出ています。
図なども入って細かく説明されています。自社に関係する箇所だけ見ればよいものかと思います。

2023年5月11日木曜日

コンサルティング会社のマッチングサービスと国家機密の不正取得

5月8日のCCTVの報道で、Capvision(凯盛融英)というコンサルティング会社の国家機密不正取得事件が報道されていました。
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CCTV《焦点访谈》 20230508 别有用心的咨询
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報道によれば、この会社は「各分野の専門家と企業をつなぐ」サービスを展開しており、政府や国有企業で勤務している個人を「専門家」として登録して企業をマッチングさせていたそうで、専門家として登録されていた個人のデータベースは30万人にのぼり、国防・軍事工業の分野だけでも1000名以上にのぼっていたと紹介されています。
建前上はマッチングするだけのサービスということだったようですが、実際には専門家が顧客企業に対して国家機密を理由に情報提供を断ると顧客からのクレームとして提示するとともに、高額の報酬を提示して情報提供を求めるというアメとムチのようなやり方で、個人から企業に国家機密を提供させていたようです。

中国の国家秘密をめぐる話題は、《反スパイ法》改正もありましたし、日本でも報道等で最近よく取り上げられています。
ここ最近、アメリカ系の調査会社やコンサルティング会社への調査が報じられていますし、日本企業だけに限らず、外国企業全般にとって敏感な話題にもなっているようです。
上記のケースですと、コンサルティング会社のサービスを通じて国家秘密を取得した側のユーザー企業も処罰を受ける可能性がありそうですので、情報収集活動においては十分ご留意いただいた方がよさそうです。

2023年5月9日火曜日

5月第1週:①国有企業・上場会社の会計事務所選任、②演出(公演・興行)市場秩序の管理強化

①国有企業・上場会社の会計事務所選任

財政部、国有資産監督管理委員会、証監会の3部門連合で、国有企業・上場会社の会計事務所選任についての通知が出ています。
http://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/2023-05/05/content_5754176.htm
選定のための評点をつけるときに、品質管理水準の比重を40%以上にすること、費用見積の比重を15%にすること、といった記載があります。
8年以上連続して同じ会計事務所を起用してはいけないということも規定されています。
日系企業には直接の影響はなさそうですが、合弁会社の中国側パートナーや取引先の上場会社などで会計監査が厳しくなり、これまでどおりの資金調達や取引ができなくなることもあり得ますので、少し気になる話題ではあります。

②演出(公演・興行)市場秩序の管理強化

新型コロナウイルスの流行による行動制限が緩和され、コンサートなどのイベントも活発になってくるということで、「黄牛(ダフ屋)」によるチケット高値転売の取締などに関する通知が出ています。
事業主体については従来から行政上の許認可の規制が厳しい分野ですが、出演者を主催者が勝手に変更してはいけないこと、雑技などの危険性が高い演目では安全管理や保険付保を促すことなども規定されています。
「口パク」は不可、ということなども書いてあるので、なかなかに規制が細かいです。


2023年5月2日火曜日

4月第4週:①《反スパイ法》改正、②対外貿易促進、③中国への渡航前の検査緩和

①《反スパイ法》改正

中国で邦人がスパイ容疑で身柄拘束される事例が少し前に話題になりましたが、これに関する《反スパイ法》という2014年にできた法律が改正されました。
これに先立って2021年4月に《反スパイ安全・防止業務規定》という国家安全部の規定があり、反スパイの教育・研修などを実施して安全・防止意識と対応能力の向上が求められ、重点単位リストによる管理なども定められていました。
今回の改正法では、従来からあった国外追放の規定のほかに、国外送還に関する規定が追加されるなどの変更があります。
詳しくは別の機会にご紹介予定です。

②対外貿易促進

対外貿易促進に関する新たな政策意見が公表されています。
http://www.gov.cn/zhengce/content/2023-04/25/content_5753130.htm
展覧会の強化や自動車輸出の支援、先進技術設備の輸入奨励などが挙げられています。

③中国への渡航前の検査緩和

日本から中国に渡航する際の手続がさらに緩和されるそうです。
従来はPCR検査が必要でしたが、4月29日から、自前の抗原検査キットでの検査でOKとなります。
(日本語ではよく読み取れませんが、中国語原文を見ると「自行使用抗原试剂盒」と書いてあります。)
税関アプリでの健康表明カードの記入は引き続き必要となっています。
また、残念ながら、ノービザ入国の復活はまだですので、引き続き、ビザの手配はお早めにお願いします。