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公益通報者の匿名性: 「通報者探し」(通報者の探索)をしてはいけないことの根拠条文(日本)

最近何かと話題の公益通報について。 業務上、社内の不正などに関する内部告発について取り扱う機会が多いので(特に中国は匿名での内部通報は多いです。)、少し書き留めておきます。 匿名での通報があったときに、なぜ「通報者探し」(※)をしてはいけないのか?という点について、法令上の根拠条...

2021年5月28日金曜日

5月第4週:①銀行カード不正利用(赴任・帰任の季節ですので)、②炭素排出権取引、③「東数西算」、④個人信用調査報告書、⑤レストランの紙ナプキン、⑥環境汚染の通報奨励

今週のキーワード:
危険廃棄物の監督管理、環境違法通報の奨励、地理情報事件


①銀行カード不正利用(赴任・帰任の季節ですので)

銀行カードの不正利用についての司法解釈。
あまりビジネスには関係ないので、詳しい解説が出てこないかもしれませんが、中国に赴任・駐在する方々にとっては非常に大切です。
書籍にも書きましたが、日本ではカード所持人に故意や重大な過失がなければ特に裁判手続を経なくても補償されるのに、中国では多くの場合は裁判をしないと補償されません。
ですので、現実的には泣き寝入りになりがちで、別途保険をかけておくことを強くお勧めしています。
別人によって銀行カードが不正利用されたと主張しようとすると、警察への通報記録や、紛失記録などの記録を提出しなければなりません(第4条)。
不正利用があったことを通報した後、銀行はその後の利用につき監視カメラ録画などの証拠を保存する義務を負い、これらの証拠を出せないと銀行側敗訴となります(第5条)。
ですから、中国の銀行に口座を持っている方は、必ず、口座残高の変動は全てスマホに短信(SMS)で届くように設定し、且つ、その設定が無効になっていないか常に気をつけておくことを強くお勧めします。
(※)しかし、銀行の番号から来たSMSなのに、URLを押すと詐欺だったということもありますので、身に覚えのない通知が届いても決して慌てて押さないでくださいね。
不正利用かどうかは、家族が勝手に使うような場合もあるので諸事情の総合判断になりますが(第6条)、それだけに勝ち負けが見通しにくい厄介な裁判とも言えます。中国の銀行に口座をお持ちの方は、改めてご留意ください。

②炭素排出権取引

炭素排出権取引について、全国炭素市場のリリースは6月に予定されているそうですが、それまでの間は暫定的に、排出権登録アカウントは湖北省取引センター、排出権取引アカウントは上海環境エネルギー取引所が、それぞれのシステムでのアカウント開設・運行などを担当するそうです。この全国炭素市場のカバーする排出量は40億トン以上で、温室効果ガス排出量規模では世界最大の炭素市場となる見込みとのこと。
4月第4週のときに少し触れた「生態製品」の価値実現という話題もそうでしたが、金銭的価値に換算することで分かりやすいインセンティブが働くようになると思いますので、炭素排出量削減にかかわる設備やモニタリングシステムなどのビジネスの加速を期待しています。

③「東数西算」

全国一体化ビッグデータセンターの算力中枢、訳すと何を言っているのか分かりにくいですが、私なりの理解を書いておきます。
監視カメラであれGPSであれスマホ動画であれ、今は過去とは比較にならない膨大なデータが収集・伝達・処理される時代です。5Gの普及でその傾向はさらに進みますが、そのために必要な機器はどこに置かれるでしょうか。
ここで、「東数西算」という分かりやすいキャッチフレーズがあります。
京津冀、長江デルタや広東・香港・マカオなどではユーザー規模が大きくデータ処理需要が大きいのですが、これらの地域では用地やエネルギーの面では限りがあるので、内陸部で再生エネルギーも利用しやすい場所にデータセンターを作り、リアルタイムのデータ処理が必要なものは近くで、それ以外のものは内陸に送って保管・処理する、といったような、全国をネットワークでつないだ役割分担が考えられています。
そのためには各地を結ぶネットワークやハブとなる拠点を計画的に整備していく必要がありますので、これらを政府主導で計画的に推し進めていくことを考えているようです。
同じく今週の記事で、ビットコインの「採掘(マイニング)」禁止の記事も紹介しましたが、政府主導でせっかく整備したデータ処理能力をそんなところに使われては困る、そういうこともあるのかもしれません。

④個人信用調査報告書

個人の信用調査報告書(征信報告)とは、個人の家族や勤務先の情報、個人のローンの残高や、クレジットカードの口座数、利用状況、さらには住宅積立金の納付情報などが記載された公的資料です。ビジネスの中でも、M&Aなどの重要な取引で個人の信用状況が重要となる場合には取引相手に依頼して提供を受けることもある書類ですが、ただ、その記載内容が間違っていることがあるようです。
今回紹介した記事では、過去の勤務先の情報の中に「侮辱的」な職業の記載があったとのことで、消費者金融の会社の従業員が誤って入力したようです。記事の内容としては、「自分でしっかり登録情報に誤りがないか確認しましょう」となっていますが、入力されていた過去の勤務先情報の正誤をどう説明するのか?と考えると、そう簡単なお話でもなさそうに思います。

⑤レストランの紙ナプキン

レストランの紙ナプキン、この事例は、レストランでの注文で、QRコードをスマホで読み取って注文するところ、紙ナプキン(2元)がデフォルトで注文することになっており、しかもそれを取り消せないという仕様になっていて、抱き合わせ販売で処罰されました。
普段の業務なら誰かが気づきそうなものですが、システムやアプリを外注して作るという場面になると、とたんに見落としやすくなるというのは、ありそうなお話だと思いました。

⑥環境汚染の通報奨励

なお、pptにも書きましたが、環境汚染の通報奨励事例が出ています。
最近、昔に比べると「工場に抜き打ちで検査が来た」という話をよく聞くような気がしていますが、近隣住民の通報を受けて検査が入ることもあります。
騒音や振動、異臭などの通報でも検査に来ます。
そして、検査に来た以上は「満点ですね」とは言ってくれず、いろいろと不備を指摘して帰られます。
ですので、中国現地では、検査が来るのも不備を指摘されるのも日常の業務運営の一環と考えておいていただく方がよろしいかと思います。
それにしても、Wechatで100元のお小遣い稼ぎに通報するという気楽さ、これも時代というものですね。


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