かねて社内研修などに使っていただけるように動画配信などしていたこともあるテーマなので、ここで少し掲載しておきます。
セクハラに関する対応について、初動対応ではやはり「二次被害の防止」には気を配るべきとされています。
「中国には『二次被害』という概念はないですよね。」
「いろんな弁護士(中国律師)に相談しましたが、その概念は中国には無いと言われました。」
という反応を受けたことがありました。
つまり、この当時、多くの中国の弁護士さんは、一般的に、「二次被害」という概念そのものをご存じなかったわけです。
また、「セクハラは直ちに解雇事由になりますよね。」と言われたこともありました。
この方の場合は、「セクハラ」を非常に酷い性的暴力のみを指す概念であるかのように誤解されていたのかなと思います。
日本では平成9年(1997年)に企業その他雇用者のセクハラ防止措置義務が明文化され、既に20年以上の歴史を経る中で、社内研修等を通じてセクハラに関する知識も経験も蓄積されており、日常業務の中で留意すべき事項もある程度は周知のものとなっています。
一方、中国では、2005年に《婦女権益保障法》が改正されて、同じく企業のセクハラ防止のための義務が規定されました。しかし、最近の《個人情報保護法》や《データ安全法》に見られるように、中国では一般的・抽象的な条文が法令上設けられたとしても、それが具体的に実務運用のうえで考慮されるようになるには、なお一定の期間が必要なことが多く見られます。《婦女権益保障法》は2022年に改正されて、社内規程の整備や研修の実施、苦情申立て窓口の設置など、一歩進んで具体的な措置を企業に義務付けています。
日本でも中国でも、男性でも女性でもセクハラの加害者にも被害者にもなり得ます。
とはいえ、日本では「男女雇用機会均等法」に規定が置かれているのに対して、中国ではセクハラに関する詳細な規定は《婦女権益保障法》に置かれています。中国《民法典》にもセクハラに関する条文はあり、そこでは男女ともに対象として規定されていますので、中国でも必ずしも女性のみが保護されるものではないのですが、しかし、中国においては、まずは女性側が被害者、男性側が加害者となる例が多いのであろうと考えられます。
セクハラの事案に取り組んでいるときの日本人・中国人の男性・女性の心理的反応・捉え方、姿勢の違いを見ていると、中国国内でも男女の意識の差は大きいようであることに加えて、さらに、日中両国の国の違いも加わって、なかなか意識の差が大きくなりがちな話題だなと感じます。常に女性目線で見てくれる人がいないと、とても対応が難しいです。
2022年にはセクハラ撲滅活動に取り組んでいた日本の弁護士の先生自身がセクハラの問題を起こして提訴されるという事案もありましたし、日本でも、プロでも間違うくらいの難しいテーマと言えるのかなと思います。
私自身もまだまだ意識できていない部分も多いかもしれないなと改めて思いました。
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