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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2021年8月31日火曜日

8月第4週:①自動車データ安全管理若干規定、②会社の「休眠」制度、③「農民工」(出稼ぎ労働者)、④食品安全関連の6件の著名事件

①自動車データ安全管理若干規定

自動車関連のデータセキュリティに関する規定が発布されました。施行は《データ安全法》と《個人情報保護法》のちょうど中間、10月1日の予定です。内容から考えて、「2022年」の10月なのでは?と不思議に思い、2回、3回と見直してみましたが、やっぱり今年、「2021年10月1日」と書いてありました。
ずっと以前からあるカーナビや地図案内アプリはもちろん、日本では最近「あおり運転」の問題があって搭載が増えたドライブレコーダー、カメラやレーダーなどを使ったセーフティ・サポートカーなど、自動車の走行に関しては敏感な地図データ、運転者の個人データなどを含めて、多くのデータが収集・処理されますし、今後はもっとその傾向が加速するでしょう。
今回の規定では、「重要データ」は中国国内に保存しなければならないことが定められました(第11条)。安全評価を受けて認められれば中国国外に提供することもできるようですが、安全評価時に明確にした目的・範囲・方式及びデータの種類・規模などの範囲を超えることができません(第12条)。《データ安全法》第31条では、従来から《ネットワーク安全法》で規制されていた範囲以外の「重要データ」の国外移転について、別途の安全管理弁法を制定することとされていましたが、今回のこの自動車データの安全規定がそのうちの一つということになるのでしょう。
草案段階では、「個人情報」も中国国内での保存となっていたようですが、正式発布された内容では、対象は「重要データ」に限られています。「重要データ」には、顔やナンバープレートなど社外の画像データや、10万人を超える個人にかかわる個人情報などが含まれますが(第3条)、それ以外の個人情報の国外提供の安全管理については、別途、関係する法令の規定に従うとされています。
(ちなみに、「重要データ」の一番目にはもちろん、軍の施設や党の機関などの重要な敏感区域に関する地理情報や人員・車両の通行量などのデータが挙げられています。うっかりこれらの情報を国外に持ち出すと、スパイの嫌疑を受けることにもなりそうです。)
データの保管場所を変えるのは10月1日までにできそうな事柄には思えませんので、先んじて中国にデータセンターを確保していた各企業の方々は非常に先見の明があったということになりそうですね。
このほか、4つの原則(第6条)が掲げられていますが、このうち「デフォルト不収集」原則というのは、毎回の運転時にデフォルトの設定としてデータを収集しない設定にするようにすることが提唱されています。本人が自主的な設定で変更することは可であるものの、データ収集にあたっての告知事項が細かく、さらに、ユーザーマニュアルや車載画面、音声、アプリなどで目立つ方式で告知しなければならないとされているので(第7条)、もし毎回の設定になると、なかなか面倒なようにも思います。
その他、自動車業界に限らず、《データ安全法》と《個人情報保護法》のもとでは同様の規制が多方面で見られるようになるのではないかという気もしますので、是非、参考にしていただければと思います。

②会社の「休眠」制度

以前にもご紹介したことがあったかと思いますが、会社の「休眠」制度が正式に全国で適用されるものとして国務院から規定されました。企業等の登記に関する規定の一部で定められています。
「休眠」の登記をすることによる具体的効果がどうなのか、今後の運用を見ながら考えていかなければなりませんが、事実上「休眠」状態にある会社は既に多数存在しているのが実態ですので、それらの会社はわざわざ「休眠」登記の申請をすることはなさそうな気もします。
一点、中国ではペーパーカンパニーは認められないと長らく言われてきましたが、今回のこの条例では文書送達場所をもって登録住所と見なすとされています。「休眠」状態であればバーチャルオフィスも何もなくてもOKとなりましたので、この点は一つ、無駄なオフィス賃料を節約できて良いことかと思います。
一方で、取引先管理という観点では、債務の支払をしないまま「休眠」状態に入ってしまう会社も出てくると思われます。会社が運営している状態ならば、継続的な収益から弁済を受けることも期待することもできますし、売掛金や在庫商品などからの回収も図れるのですが、事業活動が止まってしまうと取引先としては困ることも増えそうです。(ただ、これまでは登記や届出の制度がなかっただけで、事実上は知らないうちに休眠してしまっている会社もありましたから、実はそれほど実務面での影響は無いのかもしれません。)

③「農民工」(出稼ぎ労働者)

「農民工」と言えば、上海万博や北京五輪の当時に建設現場などでよく見かけたような、農村から大きな布団を持って都市に出てきて働く出稼ぎ労働者をイメージします。しかし、現在、北京に出稼ぎに来ている人たちのうち半数以上は、肉体労働ではなくIT業界などで働いているそうです。
80年代以降に生まれた比較的若い世代の出稼ぎ労働者は、農業にほとんど従事したこともなく、報酬の多寡だけではなく自身の将来性などを考慮して仕事を選ぶ、といった傾向がみられるとのこと。
特段の技能を要しないローエンドの製造業などで働き、流動性が比較的高い伝統的な出稼ぎ労働者が農村からほぼ無限に供給された時代は終わりを迎え、都市化のための新たな戸籍制度も推進されてきています。
10年で大きく変わった中国、「農民工」という言葉のイメージも少し変えていかないといけないようです。

④食品安全関連の6件の著名事件

「民有所呼,我有所应」。民衆の呼ぶ声があればそれに応えるということで、今年4月以来話題となった食品安全関連の6件の著名事件(火鍋店や喫茶店、ファーストフード店やスーパーなど)について、それぞれ厳しく取り締まった状況が発表されています。
「四个最严」、4つの面から最も厳しい取り締まりがなされたとのことで、①問題が発見された店舗だけでなく同ブランドの全店舗を対象とした調査、②末端の店舗だけでなく本部及び地域支部への行政指導、③店舗だけでなく店長や責任者個人への処罰、④当該企業だけでなくサプライチェーンの上下流の同業関係企業にも調査を広げる、といったことが紹介されています。
食品安全には「ゼロリスク」はないが、あらゆる違法行為に「ゼロ容認」を貫くとのこと。これまでも、取引先や同業他社で何らかの事故や不備があると我が社にも調査が波及してくるという事例は目にしたことがありますが、今後はさらにそういった展開も予測しておくべきということになりそうです。


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