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2023年11月21日火曜日

取締役(董事)の選任方法


合弁会社において、それぞれの出資者・株主が何名の取締役(董事)を派遣できるのかは、合弁会社の経営の在り方を左右するポイントになる事項です。
ところが、この点について、日本と中国では、一部、気づかないうちに逆転が生じそうな部分があります。

日本では、取締役は株主総会の決議により選任されますが、取締役が2人以上いる場合、累積投票、すなわち株主の議決権の比率に応じて取締役が選任される仕組みが原則になっています(日本「会社法」第342条)。条文に「定款に別段の定めがあるときを除き」とあるとおり、これを排除するには定款の定めが必要です。つまり、日本では、例えば出資比率がA社60%:B社40%であり取締役が5名いる場合、通常、A社が3名、B社が2名を取締役として選ぶことができます。

これに対して、中国では、董事は株主会の決議によって選任されることになっており、通常の有限公司の場合、その投票のしかたについては特に定めがありません(中国《会社法》第37条第1項第2号、第43条)。株式有限公司の場合は累積投票制もありますが(中国《会社法》第105条)、なぜか有限公司の場合はこれに対応する規定がありません。
2020年1月1日に《外商投資法》施行に伴って《中外合資経営企業法》が廃止されるまでは、各株主が出資比率に応じて董事を任命派遣(指名)することになっていたので、特に何も意識して定款に規定を置かなくても、結果として日本と同じように、出資比率が董事会メンバーの構成に反映されるようになっていました。
しかし、現在は董事の選任方法について、《会社法》が適用される結果、特に定款で異なる規定を置いていない限りは単純に出資比率で決議されてしまう(上記の例ですと5名全てがA社の意向に沿ったメンバーになる)、そういった事態もあり得る状況になっていますので、特に定款の定めが重要になっています。

逆に、日中双方ともにですが、もし出資比率どおりではなく、より大株主の意向が反映されるようにしたければ、これも定款での規定が必要になります。興味深いことに、インターネットなどで公表されている定款の書式のうちには、日本における「別段の定め」(累積投票としない旨の規定)がデフォルトで入っているものがあります。経営上の意思統一のしやすさに重きを置いているのでしょうか。
この場面に限らずですが、書式を選ぶときにも、場面に適したものを選んでいただければと思います。


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