拙著など含めさまざまな場面でご紹介していることですが、中国には今でも、個人の破産制度がありません。
企業については《企業破産法》があり、この《企業破産法》に基づいて破産清算のほか、和議、重整(日本の会社更生と民事再生に対応)といった再生型の手続も用意されています。企業については、取引先や従業員など多数の利害関係者がいて、地元の税収や雇用にも影響がありますので、債務超過・倒産状態になった企業の破綻処理を行うことは企業自身以外の利益にも適うところがあります。
一方、個人については、中国では個人が自由に事業を行うことはできず、個人事業者(个体工商户)としての登録を受けないと事業ができませんから、企業のように破綻処理の制度を用意する必要性は低そうですし、いわゆるモラルハザードの懸念もあるでしょう。
そのように制度の必要性の面でかなり差があるのかもしれないと推測しています。
実際、深センでは試験的に個人の債務整理の制度が実施されていますが、2021年3月の開始から2023年8月までの2年半ほどの間で中級人民法院での受理件数は2000件余り、そのうち受理されたものは632件という状況であり、深センの人口や経済規模から考えるとそれほど多くはない数字にとどまっている印象です。
(2023年10月11日深セン市人民政府Webサイト掲載記事参照。
このように個人の破産制度が用意されていない結果として、個人はいくら負債があっても整理ができないので、ご家族や友人に代わりに借入や契約をしてもらうことをお考えになるようです。個人的には、これが比較的気楽に他人の名義を借りる現象が多く見られるなど、とても複雑な状況を生み出している一因になっているようにも感じます。
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