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公益通報者の匿名性: 「通報者探し」(通報者の探索)をしてはいけないことの根拠条文(日本)

最近何かと話題の公益通報について。 業務上、社内の不正などに関する内部告発について取り扱う機会が多いので(特に中国は匿名での内部通報は多いです。)、少し書き留めておきます。 匿名での通報があったときに、なぜ「通報者探し」(※)をしてはいけないのか?という点について、法令上の根拠条...

2021年8月31日火曜日

8月第4週:①自動車データ安全管理若干規定、②会社の「休眠」制度、③「農民工」(出稼ぎ労働者)、④食品安全関連の6件の著名事件

①自動車データ安全管理若干規定

自動車関連のデータセキュリティに関する規定が発布されました。施行は《データ安全法》と《個人情報保護法》のちょうど中間、10月1日の予定です。内容から考えて、「2022年」の10月なのでは?と不思議に思い、2回、3回と見直してみましたが、やっぱり今年、「2021年10月1日」と書いてありました。
ずっと以前からあるカーナビや地図案内アプリはもちろん、日本では最近「あおり運転」の問題があって搭載が増えたドライブレコーダー、カメラやレーダーなどを使ったセーフティ・サポートカーなど、自動車の走行に関しては敏感な地図データ、運転者の個人データなどを含めて、多くのデータが収集・処理されますし、今後はもっとその傾向が加速するでしょう。
今回の規定では、「重要データ」は中国国内に保存しなければならないことが定められました(第11条)。安全評価を受けて認められれば中国国外に提供することもできるようですが、安全評価時に明確にした目的・範囲・方式及びデータの種類・規模などの範囲を超えることができません(第12条)。《データ安全法》第31条では、従来から《ネットワーク安全法》で規制されていた範囲以外の「重要データ」の国外移転について、別途の安全管理弁法を制定することとされていましたが、今回のこの自動車データの安全規定がそのうちの一つということになるのでしょう。
草案段階では、「個人情報」も中国国内での保存となっていたようですが、正式発布された内容では、対象は「重要データ」に限られています。「重要データ」には、顔やナンバープレートなど社外の画像データや、10万人を超える個人にかかわる個人情報などが含まれますが(第3条)、それ以外の個人情報の国外提供の安全管理については、別途、関係する法令の規定に従うとされています。
(ちなみに、「重要データ」の一番目にはもちろん、軍の施設や党の機関などの重要な敏感区域に関する地理情報や人員・車両の通行量などのデータが挙げられています。うっかりこれらの情報を国外に持ち出すと、スパイの嫌疑を受けることにもなりそうです。)
データの保管場所を変えるのは10月1日までにできそうな事柄には思えませんので、先んじて中国にデータセンターを確保していた各企業の方々は非常に先見の明があったということになりそうですね。
このほか、4つの原則(第6条)が掲げられていますが、このうち「デフォルト不収集」原則というのは、毎回の運転時にデフォルトの設定としてデータを収集しない設定にするようにすることが提唱されています。本人が自主的な設定で変更することは可であるものの、データ収集にあたっての告知事項が細かく、さらに、ユーザーマニュアルや車載画面、音声、アプリなどで目立つ方式で告知しなければならないとされているので(第7条)、もし毎回の設定になると、なかなか面倒なようにも思います。
その他、自動車業界に限らず、《データ安全法》と《個人情報保護法》のもとでは同様の規制が多方面で見られるようになるのではないかという気もしますので、是非、参考にしていただければと思います。

②会社の「休眠」制度

以前にもご紹介したことがあったかと思いますが、会社の「休眠」制度が正式に全国で適用されるものとして国務院から規定されました。企業等の登記に関する規定の一部で定められています。
「休眠」の登記をすることによる具体的効果がどうなのか、今後の運用を見ながら考えていかなければなりませんが、事実上「休眠」状態にある会社は既に多数存在しているのが実態ですので、それらの会社はわざわざ「休眠」登記の申請をすることはなさそうな気もします。
一点、中国ではペーパーカンパニーは認められないと長らく言われてきましたが、今回のこの条例では文書送達場所をもって登録住所と見なすとされています。「休眠」状態であればバーチャルオフィスも何もなくてもOKとなりましたので、この点は一つ、無駄なオフィス賃料を節約できて良いことかと思います。
一方で、取引先管理という観点では、債務の支払をしないまま「休眠」状態に入ってしまう会社も出てくると思われます。会社が運営している状態ならば、継続的な収益から弁済を受けることも期待することもできますし、売掛金や在庫商品などからの回収も図れるのですが、事業活動が止まってしまうと取引先としては困ることも増えそうです。(ただ、これまでは登記や届出の制度がなかっただけで、事実上は知らないうちに休眠してしまっている会社もありましたから、実はそれほど実務面での影響は無いのかもしれません。)

③「農民工」(出稼ぎ労働者)

「農民工」と言えば、上海万博や北京五輪の当時に建設現場などでよく見かけたような、農村から大きな布団を持って都市に出てきて働く出稼ぎ労働者をイメージします。しかし、現在、北京に出稼ぎに来ている人たちのうち半数以上は、肉体労働ではなくIT業界などで働いているそうです。
80年代以降に生まれた比較的若い世代の出稼ぎ労働者は、農業にほとんど従事したこともなく、報酬の多寡だけではなく自身の将来性などを考慮して仕事を選ぶ、といった傾向がみられるとのこと。
特段の技能を要しないローエンドの製造業などで働き、流動性が比較的高い伝統的な出稼ぎ労働者が農村からほぼ無限に供給された時代は終わりを迎え、都市化のための新たな戸籍制度も推進されてきています。
10年で大きく変わった中国、「農民工」という言葉のイメージも少し変えていかないといけないようです。

④食品安全関連の6件の著名事件

「民有所呼,我有所应」。民衆の呼ぶ声があればそれに応えるということで、今年4月以来話題となった食品安全関連の6件の著名事件(火鍋店や喫茶店、ファーストフード店やスーパーなど)について、それぞれ厳しく取り締まった状況が発表されています。
「四个最严」、4つの面から最も厳しい取り締まりがなされたとのことで、①問題が発見された店舗だけでなく同ブランドの全店舗を対象とした調査、②末端の店舗だけでなく本部及び地域支部への行政指導、③店舗だけでなく店長や責任者個人への処罰、④当該企業だけでなくサプライチェーンの上下流の同業関係企業にも調査を広げる、といったことが紹介されています。
食品安全には「ゼロリスク」はないが、あらゆる違法行為に「ゼロ容認」を貫くとのこと。これまでも、取引先や同業他社で何らかの事故や不備があると我が社にも調査が波及してくるという事例は目にしたことがありますが、今後はさらにそういった展開も予測しておくべきということになりそうです。


2021年8月24日火曜日

セミナー告知: 中国《データ安全法(データセキュリティ法)》、《個人情報保護法》の対応

中国の《個人情報保護法》が成立して、11月1日施行まで、およそ2ヶ月となります。
10月には国慶節休暇期間もありますので、対応は早めに進めておいた方が良い部分もあるかもしれません。

日本では、施行までの準備期間も長く設定されていることが多いですし、どのような対応を取れば良いかについても、公的機関や各種業界団体からさまざまな形での情報発信がなされ、比較的取り組みやすい親切な環境があります。
しかし、中国ではそういった便利な情報が少なく、今回の中国《個人情報保護法》についても、具体的に何をすれば良いのか、分かりやすい情報はあまり見当たりません。
また、中国《個人情報保護法》の内容についてネット上で参照することができる記事も、現在のところ、まだ過去の意見募集稿に関する古いものが多いようです。(ネットの記事を参照する際は気をつけてみてください。)

ちょうど10月19日に登壇させていただくセミナーもありますので、この機会にお知らせしておきます。


化学工業日報社様主催:
10/19ライブ配信《ビジネスセミナー》
『中国データ安全法(データセキュリティ法)と、中国個人情報保護法に関する対応』

2021年8月23日月曜日

8月第3週:①個人情報保護法が成立! ②基幹情報インフラ安全保護条例、③保険を解約して再契約させる違法行為、④「刷酸(ピーリング?)」美容施術は医療行為

①個人情報保護法が成立!

中国の《個人情報保護法》がついに成立しました。6月に成立した《データ安全法》と並行して審議されていたので、そろそろかと思っていましたが、8月18日に第三次審査稿が出たという発表があってから数日での正式公布という急展開となりました。
正式公布になった全文は、下記URLから見ることができます。
(今回配信の資料では、まだ、第三次審査稿が出たという発表までしか反映できておりません。ご容赦ください。)
施行は11月1日からとなっています。
詳細はまだ見ていませんが、個人との間で契約を結ぶために必要な情報や、会社が個人を雇用するために必要な情報の処理は、同意不要になったようで、少し安心しています(第13条第1項第2号)。もちろん、同意なしでできる範囲は限られるので、結局は同意を得なければならないということも考えられますが、これは今後の課題となります。
一方、個人情報の国境を跨いだ提供については、単独の同意が必要であること(第39条)など、概ね従来の意見募集稿と変わりないようですから、これらについては今後、各企業においても対応が必要になる部分と思われます。
ちょうどお盆休みのうちにセミナーの資料を作成しておりまして、残念ながらその資料の内容は修正しなければならなくなりましたが、10月のセミナーでしたので、開催直前の変更ではなくてよかったとホッと胸をなでおろしています。

なお、同じく8月20日付で、自動車データ安全管理に関する若干の規定(試行)も発布されています。こちらでも個人情報に関する規定がありますし、中国国外へのデータ提供についての安全評価制度が導入されているなど、実務に影響がありそうですが、こちらも今回の資料では間に合いませんでしたので、来週以降取り上げます。

②基幹情報インフラ安全保護条例

基幹情報インフラストラクチャ―安全保護条例も発布されています。
ネットワーク安全法(サイバーセキュリティ法)では、基幹情報インフラの安全を非常に重視しており、その運営者には通常のネットワークに比して段違いに重い各種の義務を課しています。
(些事ですが、ネットワーク安全法はまさにネットワークの安全に関するものであり、サイバー空間はネットワークの中にあるとか限らないのでは?と常々疑問に思っています。ですので、私は頑固にずっとネットワーク安全法と呼んでいます。)
滴滴の一件でも話題になった《ネットワーク安全審査弁法》もありますが、銀行ATM一つとっても問題が生じると多数の人たちに非常に不便を生じることを考えると、この方面での規制が厳重になるのは自然かとも思います。
《ネットワーク安全法》で定められていた「専門のネットワーク安全管理機構の設置」及び「ネットワーク安全管理責任者及び基幹職位の人員に対する安全背景審査の実施」について、より具体的な規定が出るかと少し期待していましたが、見たところその部分は特に従来と変わりないようです。
テロ対策との関係でも求められている「安全背景審査」、オリンピック関係者のお話もありましたが、今の時代、どこでも人選にあたって従来とは異なる配慮が必要になっているのだなと思います。

③保険を解約して再契約させる違法行為

今回のニュース記事の中では、社内不正関連の題材として、保険の勧誘について、元の保険を解約して改めて契約させるという違法行為が摘発されていた事件を取り上げました。
日本でもかんぽの事例がありましたが、全然異なる点として、日本のかんぽの問題は過剰なノルマをこなそうという「会社のため」の真面目さの表れでしたが、こちらの中国の事例は「新規顧客獲得」インセンティブをせしめるための「個人のため」の不正行為でした。日本のかんぽの事例は被害者は個人の消費者でしたが、中国のこの事例は被害者は保険会社である、という点も異なります。(保険会社の従業員になりすまして販売している点も異なります。この点は、オレオレ詐欺にも似ていますね。)
ただ、保険の業界に限らず、営業活動について様々なインセンティブを付与している例は多いと思いますので、その制度を悪用している人がいないか、内部統制にかかわる方々には視点として持っておいていただければと思います。
また、異なる背景、異なる動機であっても、現れてくる現象としては共通ということもありますので、やはり、何らかの現象に違和感を感じて察知する感性は日ごろから磨いておきたいなと思っています。

④「刷酸(ピーリング?)」美容施術は、医療行為

国家薬品監督管理局から発表された注意喚起情報によると、「刷酸」という美容用語が流行しているとのこと。
「刷酸」とは、美容施術の一種で、角質除去・保湿、新陳代謝促進、毛穴をきれいにする、といったように美容に良いとされているのですが、腫れ、シミ、痛みなどの副作用も出てくることがあり、傷跡が残ってしまうこともあるそうです。
ですので、「刷酸治療」は必ず医療資質のある病院や診療所で、研修を受けた専門スタッフの施術を受けるようにしてください、という注意喚起になっています。
化粧品の中でも「酸で皮膚を入れ換える」といったような宣伝をしているものがあるらしいですが、化粧品は医療作用があるものではないので、「刷酸治療」とは本質的に別のものだということも説明されています。ですから、化粧品についてこのような宣伝をしてはいけないと言われています。
いつもセミナー等で申し上げていることですが、日本での宣伝文句をそのまま中国語に訳していると、中国では違法となってしまう場面がありますので、どうぞご留意ください。

2021年8月16日月曜日

8月第2週:①個人情報不正取得の処罰事例、②女性従業員の会食同席、③「鴻蒙」の商標、④職務発明の退職後出願、⑤家電業界の回収目標責任制、⑥商貿物流分野での行動計画

①個人情報不正取得の処罰事例

顔認識については司法解釈が出たことを前々回にご紹介しましたが、今回はその関連で、「315晩会」でも取り上げられたKOHLERの店舗での顔情報収集についての行政処罰決定書が7月26日付で出ていましたので、その事例を取り上げました。
全国222店舗に565台のカメラを設置し、220万件あまりの顔情報を取得したとのことで、罰金50万元の処罰を受けています。
3月15日に「315晩会」で報道されたので、翌々日3月17日に立件し、調査の結果、膨大な量の個人情報が集められていたことが判明したので4月20日に公安に移送したものの、6月22日に公安から不受理で戻ってきたので、改めて調査のうえ行政処罰した、と書かれています。
結果としては《消費者権益保護法》違反による行政処罰で終わっているわけですが、この経緯から見ると、一歩間違えると刑法上の個人情報不正取得罪(《刑法》第253条の1)で刑事犯罪として処罰されてしまうかもしれなかったようです。思いのほか重い罪になる可能性があるのですね。

②女性従業員の会食同席

ネットで話題になっている事例を取り上げている報道の中では、とある女性従業員が勤務時間外に顧客との食事(飲酒)に同席するように求められ性的被害に遭ったと述べている事例など、「8時間以外」(※勤務時間外、の意味。)の上司に絶対服従という風潮が蔓延しているとの問題意識が取り上げられています。上司の迫力に負けてお酒を飲むのも「No」と言えない、これも権力による圧迫の悪性の現れと言われています。
今はコロナ禍ですので、日本ではあまり機会は無いかもしれませんが、上司・部下が異性である場合には特に、中国でも、勤務時間外をめぐる習慣が変わってきている時代でもありますので、是非ご留意ください。

③「鴻蒙」の商標

Huaweiの新しいOS「鴻蒙」(Harmony)、米国からの制裁によりAndroid OSの最新バージョンが搭載できなくなることに対応するために開発したものですが、商標をめぐっては既に「鴻蒙」という別の登録された商標が存在していたようで、「鴻蒙HongMeng」というように中国語のピンイン表記と併記してみたり、「鴻蒙Harmony」と英語名称と併記してみたり、さまざまな工夫をして商標登録をしようと苦心しているようです。
このうち、「鴻蒙HongMeng」は中国語読みを併記したものですが、「鴻蒙」という先行商標の存在を理由に登録が拒絶され、Huaweiはこれを不服として裁判所に提訴していました。しかし、どうやら第一審ではHuaweiの訴えを退ける判決が出たようです。
OSの名称をコロコロ変えるわけにもいかないでしょうし、商標やブランド、商品名の命名は難しいものだなと思います。

④職務発明の退職後出願

職務発明について、会社を退職した人が退職後に特許出願してしまう事例につき、最高人民法院はさまざまな事情を考慮して決めると言っていますが、
判断要素が増えれば増えるほど、どういった結論が出るのか、予測可能性は小さくなっていくので、実務上は応対に困ることになってきます。
こういったトラブルに備えて、そこまで多くの事情を考慮せずとも結論が明確に見通せるように、会社内でも証拠を確保しておく習慣を作っていただくことを是非お勧めしたいところです。

⑤家電業界の回収目標責任制

家電業界について、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの4種類の製品については、メーカーによる回収目標責任制が奨励されています。
奨励とは言うものの、活動に取り組んでいる企業リストが公表されるほか、回収目標任務や実施状況の評価結果が公表されることになっています。
家電製品の更新・買換え消費を盛り上げていく政策の方向性の中では、必然的に古い家電製品の回収機能を販売・流通ネットワークの中に組み込んでいく必要がありますので、その面での政策的な措置が強化されている状況と理解しています。

⑥商貿物流分野での行動計画

商務部など9部門から、商貿物流分野での行動計画が出ています。
スマートラベルや自動搬送車両(AGV)、自動仕分機など先進的な流通配送システムの導入を進めることや、コールドチェーン物流のインフラ整備など、重点的に設備投資が行われそうな話題がそれなりに見て取れるように思われます。
また、小さな話題ですが、配送車両に対する駐車料金や反則金をみだりに徴収する例があるようで、「通行難、駐車難、積卸難」を解決するとされています。
また、業界団体による課題研究、コンサルティング、人材研修などの面での積極的な作用を発揮させるということも書かれていますので、日本と同じように、それぞれの業界に必要な法規制の情報が業界団体から発信されるようになれば便利になるだろうと期待しています。

2021年8月6日金曜日

8月第1週:①オリンピックと全民健身計画、②半導体価格吊り上げ、③飲食チェーン店の衛生問題、④粉塵爆発防止、⑤一定の業務完了を期限とする労働契約、⑥発票と支払どちらが先か?

①オリンピックと全民健身計画

《全民健身計画(2021~2025年)》。ちょうどオリンピック期間に合わせて発表なさったのかなと思いますが、フィットネスクラブなど直接のサービスにかかわる企業のみならず、スポーツウェアやスポーツ用品などの業界にも関係します。さらに、日本と同じく、健康寿命を延ばすということも考えると、高齢者介護などにも関係するかもしれません。
2025年までの目標として、体育鍛錬への経常参加比率を38.5%、千人あたりの体育指導員2.16名、全国の体育産業の総規模は5兆元まで高めるとのこと。
普段はまったく運動しない不健康な私のような人間でも、オリンピックを見ていると何か運動でもしようかという気持ちになります。一人で家でできるオリンピック種目があると良いのですけれども。

②半導体価格吊り上げ

日本でも半導体不足の影響が各業界に広がっていますが、中国でも自動車業界での半導体不足が取りざたされています。自動車のスマート化に伴って需要も大きいところ、価格の吊り上げ行為も見られるようで、価格のモニタリング及び通報に基づいて政府部門の調査が開始されたとのこと。
中国の新聞記事を見ても、多くの自動車メーカーで半導体チップ不足が今年のうちは継続し、もしかすると来年も継続するかもしれないと見込んでいるようで、供給遅延や価格変動によるトラブルが起こりやすい環境にあります。

③飲食チェーン店の衛生問題

飲食チェーン店の衛生問題は消費者に近いこともあり話題になりやすいですが、新聞記者が潜入取材で店舗や工場に従業員として入り込んで、「ゴキブリがいる」とか「傷んだ果物を使っている」といったような記事を書かれることがあります。
今回ご紹介した記事の事例では、報道が出た後、各地の政府部門からの調査や行政指導が入り、しかも複数の政府機関が関与してくるので、企業としては対応に追われる結果となりました。
ネット社会ですから、情報が広がるのも早いですし、政府機関が動くのも早いですので、各企業においては「避難訓練」のような形でときどきシミュレーションしておかれないと、なかなか即座に正しく対応することは難しいのではないかというようにも思います。

④粉塵爆発防止

法令の面では、個人的には、《工貿企業粉塵防爆安全規定》が現場では大事だろうと思います。工場や倉庫では様々な粉末を保管されていると思いますが、火の気がないところでも、電気配線の劣化・腐食等によって火花が散って爆発が起こってしまうこともあるようです。
「可燃性粉塵目録」というリストがあり、各種の金属粉、繊維、樹脂粉末などが列挙されています。塗料・染料や防腐剤などもありますし、幅広い産業で留意いただく必要があるものですから、この機会に是非一度ご覧ください。

⑤一定の業務完了を期限とする労働契約

雇用契約の期間に関して、中国《労働契約法》では、①固定期間、②無固定期間、③一定の業務の完成を期限とする、これら3種類とされていますが、このうち③については、なかなか使いづらく、あまり普及していないように思っています。
教科書的には、(1)あるソフトウェアの開発、(2)ある建設工事の完了、(3)農産物の収穫時期だけの臨時雇用、といった例が挙げられているのですが、その都度、社会保険に加入させ、退職時に経済補償金を払うという実務処理は、実際には煩瑣でメリットもあまりないので、活用するのがなかなか困難です。また、賃金をなるべく長くもらうために、ゆっくり仕事をして開発や工事の完成を引き延ばした方が労働者にとって得になってしまう(企業の利益と整合しない)という問題もあります。
今回、北京市では、「企業の雇用の柔軟性を高めるために」として、この一定業務完成を期限とする労働契約についてモデル文書とその締結ガイドラインを出しています。少し期待して中身を見てみましたが、まだ上記のような困難が解消されるものではないようでした。

⑥発票と支払どちらが先か?

中国では代金を請求するとき「先に発票をください。発票がないと払えません」と言われることがあります。逆に自社から取引先への支払のときにも、会社の財務の人に「発票を持ってきてもらわないと経費精算できません」と言われることがあるのではないでしょうか。
一方、発票を発行する側は、その時点で増値税を納税することになりますので、発票を発行した後に代金支払を受けられないと、増値税だけ払って代金がもらえないという困ったことになります。ですので、本当は、支払を受けてから発票を発行したいところです。
どちらが正しい処理なのか、社内の処理もあってなかなか難しいですが、よくある話題なので事例を紹介しておきました。支払が先か発票が先か、もし話題になったときには是非この事例をご活用ください。
なお、「発票」は「インボイス」と訳されることがありますが、誤解を招きやすいので、私はいつも、そのまま「発票」とご説明しています。中国で事業をするなら「発票」は基礎の基礎ですから、正確に理解しておいていただければと思います。