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中国で提出する書類の記入・署名: なぜ「ボールペン不可」「万年筆で記入」なのか?

中国に関係するビザ申請の関係書類や、中国で会社登記機関(市場監督管理局)や裁判所(人民法院)などの公的機関に提出する書類を記入したり署名したりするときに、「ボールペンで記入しないでください」「万年筆で記入してください」と言われたことはないでしょうか。

2021年11月17日水曜日

中国《個人情報保護法》における同意取得のあり方

中国の話題です。
2021年11月14日付で《ネットワークデータ安全管理条例》の意見募集稿が出ましたが、この中に個人情報に関する同意取得の方法についての規定が若干含まれています。
「単独の同意」はどう取れば良いか?など実務上の疑問を解消する材料の一つになるかと思います。

タイトルから見て、個人情報に関する記述があるのを見逃してしまう方がいらっしゃるかもしれませんので、念のためにて。

2021年11月16日火曜日

11月第2週:①外国人の養老保険(年金)受領問題に関する通達、②個人の破産事件と初の「破産人」、③虚偽訴訟の典型事例、④原料薬産業の発展

①外国人の養老保険(年金)受領問題に関する通達

外国籍で中国の社会保険に加入している方々について、養老保険待遇を受ける(年金を受給する)ときの条件についての通達が出ていました。
定年退職年齢に達したとき、その地方での社会保険加入年数が10年に満たない場合には、前に10年以上の納付実績がある地方で養老保険待遇を受けることなどが示されています。ちなみに、中国での永住権を取得している場合には、中国籍の方々と同じく、納付年数が足りなくても最低年数に達するまで納付を延長して、年金を受給することができるそうです。
日本は年金が地方ごとに分かれておらず、全国で統一的に運用されていますから、何の規定なのかピンと来ない方が多いと思われますが、中国では日本とは異なり地方ごとに社会保険の取扱いが異なるために、どの地方で年金を受け取れるのかという問題が生じます。
ちなみに、実はこの問題は外国人に限ったことではありません。多くの日系企業で、定年退職する従業員が増えてきていますが、これも年金を受給できない従業員が発生するなど、トラブルが多くなっています。中国赴任歴が長い方々でもこれまで出遭わなかった新たな問題ですので、是非、「我が社で定年に近い人はどれくらいいるだろうか?」と一度興味を持って見てみていただければと思います。

②個人の破産事件と初の「破産人」

pptには目次のみ挙げていますが、個人破産の事例について。
「中国で初めての個人破産制度が深センで先行開始」という記事をキャスト中国ビジネスで3月に掲載しましたが、その後、第1号の事件については7月16日に再生(重整)計画が債権者集会で採択されて裁判所に認可され、初の個人再生事例となっていました。
ワークショップでは7月第4週に「全国初の個人破産事件の裁定が確定: 男性が75万元の負債を負って再生を申請」という記事をご紹介していましたが、これは個人再生の事例でした。クレジットカード会社など10社からの負債約56万元について、破産清算では弁済率が33.34%にしかならないところ、再建計画では36ヶ月かけて元本全額を弁済するという計画となったようです。
一方、今回は新たに、上記のような再生ではなく、「破産宣告」を受けた事例が発生して、初めての「破産人」(個人の破産者)として報道等で取り上げられています。
中国の「破産宣告」(中国語でもそのまま「破产宣告」です。)は、申立て受理後に破産要件を満たすときに宣告され、受理が決定された次のステップとなります。破産宣告によって個人は破産者となり、その財産は破産財産となります。
破産宣告に先立って、破産者が引き続き持つことができる財産や支出することができる生活費の金額などにつき管財人が意見を述べ、債権者集会で採択されました。こうして、破産宣告の日から3年間の「考察期間」が始まり、この期間は財産状況の報告義務や高額消費の制限などが引き続き課されることになります。
今後、おそらく全国にも展開される参考になる事例と思われますので、与信管理のご担当者の方々などは一度ご覧いただくと具体的なイメージがつかめて良いのではないかと思います。

③虚偽訴訟の典型事例

虚偽訴訟についての典型事例が紹介されています。債務逃れのために債務を仮装することは犯罪行為でもあります。裁判所も、まっとうな債権者が害されることがないように、執行逃れのための担保設定などには厳しく対応するようですから、裁判所への情報提供なども考えていただくのが良いかと思います。

④原料薬産業の発展

原料薬(原薬)の発展に関する実施方案が出ています。
その解説を見てみると、現状としては、(1)企業のR&Dの能力が不足しており、国際市場では全世界の原料薬貿易額の4分の1程度を占めているものの大部分は付加価値の低いものである、(2)都市化によって原料薬生産企業の移転が必要なのに環境容量不足などの問題がある、(3)生産過程中で用いる溶剤・試薬などの種類が多く、排出量が大きく成分が複雑なため処理が難しい、といった問題が指摘されています。
先端技術を駆使した新薬開発の促進などが方向性として挙げられており、高性能な生産設備や生産過程で用いられる消耗材料を導入していくことを重視するとされていますので、医薬業界に限らず幅広い分野に関係するかもしれません。


2021年11月9日火曜日

11月第1週:①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動、②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)、③安全生産の企業等級

①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動

 IT企業に対する個人情報保護などを含む対応を求める通知が出ています。5つの改善、2つのリスト、4つの向上ということで、短縮して「524」活動と名付けられています。
 名宛人となっているのは中国移動など基礎電信事業者のほかインターネット企業であり、Tencentをはじめとした大手IT企業の主要サービスを列挙したリスト39社分が第一弾として掲載されています。
 今年12月や来年3月を〆切として各種の対応を求めており、アプリやポップアップのウインドウを閉じるボタンを分かりやすく表示すべきことや、カスタマーサービスの月平均応答時間を30秒以内にする目標などが掲げられ、なかなかに細かいことを言われています。アプリやWebサイトの仕様、カスタマーサービスの体制などに影響してくると思われますので、関係ありそうな企業の方はご一読ください。

②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)

 自分の外見に自信が持てない、容姿に不安を感じている、そのような心境を指す「容貌焦慮」という言葉が流行しているそうです。今回は美容医療の広告に関するガイドラインが発布されており、このような「容貌焦慮」を生み出してしまうような広告や、容姿の良し悪しと貧富や素養を結びつけるような広告などが、重点的な取締対象とされています。
 日本でも、外見のコンプレックスを煽るような広告はかえって嫌悪・忌避されるということが言われていますが、外見による差別については「ルッキズム」という言葉も話題になっているようですし、少し注意すべき世の中になっているようです。
 ここでいう美容医療は創傷性又は侵襲性の医学技術方法で容貌を修復・再生することを指し、医療機関が行うものですから、適法な資質を有する医療機関でなければならないことは当然で、日系企業に直接関係するわけではなさそうですが、マーケティングの考え方として、一つ、こういった流れを作ろうとしていることは知っておいた方がよさそうです。
 ちなみに、日本でも今年7月に医療広告規制におけるウェブサイトの事例開設というのが出ておりまして、医療機関のマーケティングに携わる方々にとっては参考になるものと思われますので、URLをご紹介しておきます。

③安全生産の企業等級

 税関や外貨管理の規制上は以前から取り入れられている企業の等級分類によって優遇を与える制度ですが、安全生産の分野でも取り入れられることになりました。早速、今月から開始とのことです。
 詳しくはまた別の機会にご紹介しようかとも考えていますが、労災保険料率が下がる、安全生産責任保険の保険料率が下がるなどの優遇が得られるようですので、一度ご検討いただくのも良いのではないかと思います。

2021年11月3日水曜日

10月第4週:①個人情報保護法の施行を迎えての対応、②不動産税の試行拡大、③中小企業に対する段階的納税猶予、④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

①個人情報保護法の施行を迎えての対応

11月1日、《個人情報保護法》の施行日を迎えました。成立・公布後、国慶節休暇を挟んだこともあり、準備万端とはいかない部分もありますが、施行日が近づくにつれ、各企業における取り組みも進みつつあるようです。ただ、《個人情報保護法》による規制は多岐にわたりますので、11月1日までに全ての対応を終えた企業は少ないものと思われ、何に優先して取り組むのかという悩みもあるようです。
この点について、今回、中国消費者協会からは、企業に対して5点、消費者に対して5点、それぞれに向けた注意喚起が発表されており、企業における取り組みの参考になるかと思われます。
但し、私個人としては、各企業の優先順位は一律ではないはずであろうと考えています。事業活動の状況によって事実上問題になりやすい部分とそうでない部分を分けてみて、それによって優先順位を決めて対応した方が現実的でしょう。

②不動産税の試行拡大

5月にご紹介したとおり、「住宅は住むために用いるものであり、投機のために用いるものではない」(「房子是用来住的,不是用来炒的」)ということで、中国では不動産の価格抑制政策が打ち出されています。
今回は、一部地域における不動産税改革の試行についての政策が出て、日本でも報道されています。建物については「房産税(建物税)」、土地については「城鎮土地使用税」が以前から存在していましたが、さらに「房地産税(不動産税)」が課されるということになるようです。既に2011年から、上海では2件目以降の住居、重慶では別荘や高級住宅について課税されていたようですので、まったく新たな税というわけでもなく課税範囲が拡大されるだけのようではあります。土地払下収入に依存していた地方財政からの脱却ということも背景の一つにあるようです。
日本でバブル崩壊に至ったきっかけとしては、不動産向け融資の総量規制と、いわゆる地価税の導入が挙げられることがあります。今の中国の施策を見ると、ついつい日本のバブル崩壊を連想してしまうのですが、中国政府の方々は当然ながら、日本の経験を十分研究したうえで施策を決定しているはずですから、歴史の新たな経験則が生み出されていくのか、興味が湧くところです。
脱線ですが、日本でバブル経済と税金に関する記事を見ていると、明治時代の「ウサギ税」という税金のことが紹介されていました。中国では古酒や骨董品も高値で取引されているようですが、もしかすると今後は何か変わった税金が誕生するのかも?と想像してみたりもします。

③中小企業に対する段階的納税猶予

国際商品市況の高騰、生産コスト上昇などによる影響は製造業について特に大きなものとなっています。そのため、国務院は第4四半期につき中小企業に対して企業所得税や増値税などの納税猶予措置を打ち出しています。年間売上高2000万元以下の製造業の小型・零細企業(個人事業者を含む)については全額の納税猶予、年間売上高2000万元から4億元の製造業の中型企業については50%の納税猶予、特別困難企業については全額猶予となっています。納税猶予は11月1日から来年1月の申告期終了までとなっています。
また、同じ記事で、国外機関投資家が国内債券市場で得た利息収入について企業所得税と増値税を徴収免除する政策が2025年12月31日まで延長されたことが発表されていました。最近話題になっている社債市場でのデフォルトをめぐる不安を解消するための措置と思われます。

④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

国家インターネット情報弁公室から、重要データの国外移転時に必要となる出国安全評価の細則の意見募集が出ています。《データ安全法》第31条に基づき別途制定することとされていたものです。
「重要データ」については先日もお伝えしたとおり工業データ一般についてのデータ安全管理弁法も意見募集中です。
また、この意見募集稿では、個人情報保護法により国外移転時に必要となる安全評価についても対象としています(意見募集稿の第2条)。《個人情報保護法》第40条では一定数量以上の個人情報処理者に国外移転時の安全評価を求めているのですが、この意見募集稿では、100万人以上の個人情報処理者がその一部を国外提供する場合か、「累計で」10万人以上の個人情報又は1万人以上の機微な個人情報を国外提供する場合を対象としているようです(同第4条)。(なお、《個人情報保護法》第55条で個人情報の国外移転の場面一般に求められる「個人情報保護影響評価」と混同してしまわないようにご留意ください。)


2021年11月1日月曜日

ユーザー名称やプロフィール画像の規制

中国で《インターネットユーザーアカウント名称情報管理規定》の意見募集が出ています。

http://cac.gov.cn/2021-10/26/c_1636843202454310.htm

個人ユーザーのアカウント名称は充分に個人の特徴を表現すべきとのこと。「なりすまし」は2015年の現行規定でも禁止でしたが、ユーザー名やプロフィール画像も要注意となるようです。


2015年の現行規定は下記URLからご覧いただけます。ご参考まで。

http://www.cac.gov.cn/2015-02/04/c_1114246561.htm

2021年10月27日水曜日

10月第3週:①対外的な活動はしないことが仕事の日、②「品質インフラ」(NQI)の充実、③知的財産権の故意侵害の認定基準?、④契約における特許保証条項、⑤石炭価格への介入措置

①対外的な活動はしないことが仕事の日

某大手企業が新製品発表会の日付の選択のせいで処罰されたという新聞記事がありました。本当に日付だけで?と半信半疑で、何か広告内容や宣伝方法に不備があったのでは?と思って行政処罰の内容を見てみたのですが、残念ながら、本当に、新製品発表の日付と時間帯の問題で炎上して社会を騒がせたからという理由だけのようでした。
「国の尊厳又は利益を損なった」という広告法の規定が根拠規定となっているのですが、ネットを見てみると、「なぜわざわざ7月7日、しかも夜10時に?」というコメントから段々と盛り上がり、製品がカメラであったということもあって、原爆投下時の写真や、日本の敗戦直後の写真などが次々と掲示板にアップされて、確かに大炎上してしまっていたようです。
ただ、日付と時間だけでここまで盛り上がるとは、今回はちょっと驚きでした。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりの日付は要注意です。
以前は、中国に赴任する方々は必ず赴任前研修などで教えてもらっていたと思うのですが、私も中国赴任してから10年以上経ったので、最近は忘れていることも多いです。
この現象・事態そのものが是か非かという議論はともかくとして、中国ビジネスにかかわる一人としては、とりあえず改めて、この4つの日は「対外的には何もしないのが仕事の日」と認識しておこうと思います。

②「品質インフラ」(NQI)の充実

「品質インフラ(质量基础设施)」は、英語のNQI(National Quality Infrastructure)から来ているそうで、標準化、適合性評価、計量、認定といった品質関連の枠組みを指すそうです。
こういった品質インフラについて、ワンストップの公共サービスを提供することで、中小企業の技術的能力や信頼性の不足を解消して、個々の企業の製品・サービスの品質、ひいては産業チェーン全体の飛躍につなげようという考えが示されています。
言われてみると、工場見学などにうかがったときのことを思い出すと、大企業と中小企業では、検査・測定用の機器の充実度合いが全く違うような印象があります。
検査は生産性に直接は影響せずにむしろコストを増やす、検査員が頑張ると製造担当部門から煙たがられる、そのような景色の中で、日常の場面では検査が軽んじられてしまうこともあります。しかし、実は高付加価値で競争力ある製品を展開していくには検査・軽量・測定の部分がそれを支えているということは確かにあると思いますので、その部分を重視しているというのは、「なるほど」と感じます。

③知的財産権の故意侵害の認定基準?

今年の3月第1週のワークショップでもご紹介しましたが、ここ数年で、《特許法》や《著作権法》などの知的財産関連法令の改正が行われ、知的財産分野では全面的に懲罰的賠償制度が導入済みとなっています。
懲罰的賠償の枠組みとしては、概ね、「故意」で且つ「情状が劣悪」な場合に懲罰賠償を命じることになっているのですが、このときご紹介した、故意侵害の認定にかかわる要素は、以下のようなものでした。
 ①通知又は警告を経た後も権利侵害行為を継続した
 ②被告が原告の関係者である
 ③以前に勤務や提携関係がある
 ④以前に業務取引や契約交渉をしたことがある
 ⑤海賊版又は登録商標冒用の行為である
 ⑥その他の事情
今回は、黒竜江省の知的財産権局から中央への照会があったようで、ある事情を「故意」の要素として考慮するのか、それとも「情状が劣悪」の要素として考慮するのか?という問題について、「前者(故意)は主観的要因、後者(情状劣悪)は客観的要因なので、両者を混同してはならない」という見解が示されています。
ですので、結論としては「それは故意かどうかの問題ではなく、情状劣悪かどうかの問題ですね」という回答になっており、通知文書のタイトルと違う内容でした。ときどきこういうこともあるのですが、故意認定の要因をおさらいする機会にはなりました。

④契約における特許保証条項

日本ではサプライヤーが顧客を訴えた構図となって一躍話題となっている、電磁鋼板をめぐる特許権侵害紛争ですが、中国ではごく普通の、サプライヤー間の特許紛争です。
日本での訴訟は、知的財産の仕事をなさっている方々はお分かりになると思いますが、実はこれは非常にショッキングでして、サプライヤーとの契約における特許保証条項の重要性が高まるのはもちろんなのですが、「特許保証条項さえあれば良いのか?」という新たな課題について考えてみる機会でもあります。
まさに法務部と知財部が連携して対応すべき課題と場面ですので、ぜひ話題にして交流してみていただければと思います。

⑤石炭価格への介入措置

石炭価格が過去最高を更新し続け、製造業のコスト負担を増やし、冬場に向けた暖房供給に対しても悪影響を及ぼしているということで、石炭価格に対する介入措置が検討されています。
中国の《価格法》では、重要な商品・サービスに顕著な価格高騰が見られる場合や、市場価格の全体水準に劇的な変動等の異常が生じた場合には、価格届出制度や、緊急価格凍結措置といった介入措置をとることが規定されています。
価格統制は、経済学の理論から言えば必要十分な供給がされなくなり、闇市場を生み出して二重価格構造を生み出すだけで、根本的な解決にならないということは、一般論としてはあるのだろうと思います。ただ、今の中国ほど強力に社会の動きを監視・統制して、闇市場が生まれることを十分に抑制できる能力があるという前提条件のもとならば、果たしてどのような効果が生じるのか、個人的には少しだけ興味があるところです。
世の中には、「高いから買うのをやめよう」と思うものと、「高くても買わざるを得ない」ものがあるので、とりあえず企業の運営に携わる一員としては、コストが高騰せずに済むことは良いことと思っています。

2021年10月20日水曜日

【動画】2分で解説!? 中国《データ安全法》と《個人情報保護法》への対応

昨日、セミナーに登壇させていただいたテーマについて、
試みにこのような動画を作成してみました。

2分で分かる!中国データ安全法(データセキュリティ法)と中国個人情報保護法に関する対応(Youtube動画)


3時間のセミナー、90ページの資料があるものでしたので、
本当にごく一部だけのご紹介ですが、どうぞ(文字通り)ご笑覧ください。


2021年10月19日火曜日

中国赴任の前に必ず教えてもらう日付


中国で、日系企業が気をつけるべき日付がいくつかあります(中国語で「国恥日」という)。昔は、中国に赴任する方々は赴任前研修などで必ず教えてもらったと思うのですが、私も毎年、忘れています。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりは、中国のネットでもよく見かけるので、ビジネスに携わる方々は覚えておいて損は無いかと思います。

10月第2週:①中国の国家基準とISOなどの国際基準、②施設の「退役」費用の積み立て、③児童用化粧品の新規制、④決済用QRコードの規制、⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

①中国の国家基準とISOなどの国際基準

中国の国家基準を見ていると、最初の方に、「国際基準であるISO●●:●●を採用している」など、参照している国際基準が明記されているのをよく見かけます。
ISOなどの国際基準と中国の国家基準を見比べたとき、一見すると非常に似ているので、同じようなものと理解していると、意外な部分で少し中国独特の要素が入っていたり、逆に国際基準の一部が中国の国家基準には取り込まれていなかったり、といったこともあります。
今回公表された《国家標準化発展綱要》では、発展目標として、国家基準と国際基準の基幹技術指標の一致性の程度を大幅に引き上げ、国際基準の(国家基準への)転化率を85%以上に引き上げることを提唱しています。
グローバルで事業展開をしていく企業各社にとっては、ルールが共通である方が便利で助かることが多いと思います。中国の国家基準が世界をリードして国際基準に反映されていく場面も多くなってくるかもしれません。ただ、当面はまだ、「15%くらい、国際基準と違うところもある」というイメージを持っておいた方が良いようです。

②施設の「退役」費用の積み立て

重点危険廃棄物の集中処理施設については、従来から、《固体廃棄物環境汚染防止処理法》において、「退役」(=稼働終了)時において発生する費用を事前に積み立てておく管理が求められていました。今回は、そのうちの埋め立て処理場について、新たに「退役」費用の積み立て管理についての細則規定が出ました。
2016年に、化学工場跡地に建設された外国語学校の大勢の生徒らが体調不良を生じた「常州毒地事件」が大きく取り上げられ、化学工場跡地の有害物質の除去、土壌修復についての機運が高まって、2018年の《土壌汚染防止処理法》に至った大きなきっかけの一つになりました。危険廃棄物の処理施設は、当然ながら危険廃棄物が集積され、土壌や地下水への漏洩等の危険も大きいわけですから、稼働終了時における土壌修復費用も非常に多額にのぼることがあるのだろうと推測します。
日本でも、化学工場跡地で土壌汚染がある土地のうえにマンションが建設・分譲販売されて大きな問題として報道されたことがあったかと思います。いったん建物が建ってしまった後に問題が発覚すると非常に解決困難な状況に陥ることがありますから、やはり、更地になったタイミングでしっかり対応しておくことは大切なように思われます。そのとき、資金がないと何年も放置するか、そのまま目をつぶって新しい建物を建てて活用するか、非常に困った決断を迫られることになります。
今回は埋め立て処理場についての規定ですから直接関係は無いのですが、平時からの事前の積み立て、法律上の強制ではなくても、考えておくのは良いことと思います。(ただ、実際に積み立てようとしても、税制上の手当てが無いのでは難しいのですけれども。)

③児童用化粧品の新規制

《児童化粧品監督管理規定》という新しい規定が出ました。子供用の化粧品、キッズコスメということで、日本でも流行しているようです。
「誰にでも適する」とか「皆が使える」といったような、子どもでも使えることを明示又は暗示するような記載のある化粧品については、「保護者の監護のもとで使用してください」といったような警告表示を加えなければならないとのこと。
ここでいう「児童」は12歳以下の子どもですので、子どもがそういった注意書きを書いて理解できるのだろうか?(12歳当時の私を思い出すと、仮に理解できても無視するような...)という気もしますが、化粧品の企画・販売に携わる方々は、子供向けでなくても子供向け商品としての規制がかかってしまう可能性がある点にご注意ください。

④決済用QRコードの規制

中国で買物に行くと、商品の横に印刷されたQRコードが置いてあって、そのQRコードをスマホでスキャンして代金を支払う、そんな光景を目にすることがあると思います。日本でも随分と目にする機会が多くなってきました。
今回、このような「静態」QRコードについて、個人については、リモートや非対面での使用を原則禁止するとのこと。
個人が自分の決済用QRコードを提供して、決済代行に使わせることで何%かの手数料を得るという「跑分平台」というサービスがあり、2月頃にも一度、マネーロンダリング等に利用されていることをご紹介していましたが、QRコードをめぐる規制も実情に合わせて変わってくる部分があります。

⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

天然ガスの価格高騰、中国での事業にはさまざまなところで影響が出てきています。
今年ほど暖冬を願う冬も珍しいかもしれません。