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公益通報者の匿名性: 「通報者探し」(通報者の探索)をしてはいけないことの根拠条文(日本)

最近何かと話題の公益通報について。 業務上、社内の不正などに関する内部告発について取り扱う機会が多いので(特に中国は匿名での内部通報は多いです。)、少し書き留めておきます。 匿名での通報があったときに、なぜ「通報者探し」(※)をしてはいけないのか?という点について、法令上の根拠条...

2022年4月13日水曜日

上海市の「三区」分区差異化管理についてのFAQ


上海では現在、小区(団地のような区画)単位で、封控区(14日隔離)、管控区(7日隔離)、防範区(それ以外)の3つに区域を分けた管理に入っています。
【4月11日】「三区」区分リスト管理の発表

ただ、外出できるはずの防範区でも、実際には外に出られない小区もあるようで、FAQにその問答が掲載されていました。
【4月12日】「三区」分区差異化管理のFAQ
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問4、 なぜ、一部の防範区ではまだ外に出られないのですか?
答 防範区に感染陽性者が発生した場合は、封控区へと調整されます。
  隣接地区に比較的多くの封控区がある、クラスター性のリスクを発生させる可能性がある防範区については、各区は状況に応じて、措置を強化して管理レベルを上げることがあります。
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问4、 为什么有的防范区还是不能出门?
答 如防范区内出现阳性感染者,则调整为封控区。对毗邻地区有较多封控区、可能产生聚集性风险的防范区,各区可根据情况,强化措施提级管理。
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中国では公表された方針に実態がなかなか追いついてこないことがあるので、現場の情報はとても大切だと思います。





4月第1週:①「信訪」(陳情)に関する条例、②化学工業園区への移転促進、③失業保険と雇用安定還付金、④金融安定法の意見募集

①「信訪」(陳情)に関する条例

中国に赴任されたことがある方々は目にされたことがあると思いますが、私が北京にいたときは、毎朝、通勤の途中で、ずっと人が並んでいるのを見かける場所がありました。人気のお店などではなく、裁判所の陳情窓口でした。各種の政府機関にも同じような陳情窓口がありました。
「お上に直訴」するにもルールがありまして、《陳情条例》という法令で「多数で陳情に来る場合は代表5人までを選んで」というような決まりもあったのですが、今回はこれに代わって《陳情業務条例》というのが発布されたようです。ちなみに、多人数で押しかけるのではなく5人の代表を選んで、というルールは変わりがないようです。
会社が従業員と揉めたとき、従業員が政府に「あの会社はけしからん」と集団で陳情に押しかけることがあります。そういった状況も頭に入れて応対いただく必要がありますので、平素から政府機関との根回しは配慮しておいていただくのがよいかと思います。

②化学工業園区への移転促進

石油化学その他化学工業の化学工業園区への移転を促進する政策が出ていました。都市部にある危険化学品生産企業の移転を全面的に完了すること、2025年までに化学工業園区に業界の総生産額の70%を集約すること等の方針が示されています。
従来から都市人口の拡大に伴って化学工業分野の企業の郊外への移転は求められてきたところですが、化学工業は大規模なプラント投資を伴う業界でもありますので、移転に伴う補償などの予算がつくのかどうかも気になるところではあります。

③失業保険と雇用安定還付金

失業保険、日本の感覚では書類さえ揃えば受給できるはず、という意識になってしまうのですが、私が数年前に聞いた話では、中国の失業保険は受給することが非常に難しいようです。
なぜ受給できないのかも分からないとのことで、補助金の場合と同じように、法定の条件を満たしているかどうかの判断が人による部分があり、さらに、予算による制約があるので、申請者の見えないところで、なぜか受給できないということになるのかと推測しています。ただ、もちろん、日本と同じく、申請者の知識不足で必要書類を用意できていないだけという場合もあるでしょう。
中国でも、飲食、小売、観光、航空、旅客といった業界はコロナ禍により特に大きな打撃を受けており、中小零細企業における雇用安定もさらに重要になっています。こういった部分で、失業保険の給付を拡大するとともに雇用維持に対する奨励を引き上げて、雇用を維持しようという政策が出ています。失業保険が普通に受給できるようになってくれれば、雇用をめぐる会社と従業員とのトラブルも少し解決しやすくなると期待しています。

④金融安定法の意見募集

新聞でも報道されていますが、中国で「金融安定法」という法律を制定しようということで意見募集稿が公表されています。
過去にも中国についてはシャドー・バンキングとか地方政府融資プラットフォームといったシステミック・リスクが指摘されたことがありましたが、現在ではそういったシステミック・リスクが多様化・潜在化している、グローバル化しているといったことも言われています。
金融安定保障基金という基金も設立されるとのことで、システミックな影響をもたらす重大な金融リスクの処置に用いるのだそうです。

2022年4月5日火曜日

3月第5週:①「信用修復」をめぐる詐欺、②他社サイトの実績情報を盗用、③意匠権の権利期間延長(1年経って)

①「信用修復」をめぐる詐欺

中国では、2013年頃から、債務が返済できない債務者のうち一定の悪質とみなされるものについてブラックリストが作成されて「信用中国」Webサイトなどで公表される仕組みがあります。2014年頃からは行政処罰情報も公開されるようになり、さまざまな面で不利益が課されるようになっています。このような不利益を課す制度は信用失墜懲戒(中国語「失信惩戒」)と呼ばれています。
一方で、これらネガティブな情報が公開されてしまっている状態を解消する「信用修復」(中国語「信用修复」)の申請をすることができる制度もあります。これは特にコロナ禍において企業活動を維持するためにも重要になっており、2020年には最高人民法院が信用修復メカニズムを適切に運用するよう求めてもいました。
ところで、今回ご紹介した発改委弁公庁からの通知文によると、この公式な制度・手続である「信用修復」と似て非なる「征信修復」というサービスを宣伝して高額の費用を採る業者がいるそうで、これを厳しく取り締まる必要があるとされています。
「征信」とは、日本語では「信用調査」とか「与信」とか訳出されていますが、ローンの審査などで一般にも知られた言葉で、「征信修復」と言われると公式な制度・手続と非常に紛らわしいようです。
日本でもいわゆる多重債務問題との関係で、金融機関のブラックリストから事故記録を消すという詐欺があったようですが、中国の場合は公に似たような制度がある分、余計に紛らわしいです。

②他社サイトの実績情報を盗用

消費者からのクレームを受け付けて、それをメーカーに連絡することで解決してあげるというWebサイトがあり、これをめぐる判決の記事が一つ、新聞で紹介されていました。私が上海に赴任していたとき、ラジオ番組でも同様のコーナーがあり、タクシーの中でよく運転手さんが聞いていたことを思い出します。音楽番組はあまり聞かなかったので、中国ではこういう社会派の番組が人気なのだなと意外に思っていたものです。
今回はWebサイトに関する事件で、他社がこのサイトに掲載されたクレーム情報を勝手に自社サイトにも掲載して、自社にも多くの解決実績があるような印象を与えるように装ったということで、不正競争防止法違反で提訴されていました。判決では、このように勝手に他社のサイトに掲載された情報を流用することは商業道徳違反であり規制すべきものと判断しました。虚偽宣伝とも認定しているのですが、一つ一つの掲載情報の真実性よりは全体としてデータベース全体を一部盗用していることの適否が問題なわけですから、商業道徳違反という一般条項に基づく判断を持ち込んだのは実態に即した判断と言えると思います。ちょうど2週間前にご紹介した不正競争防止法の司法解釈に関係するもので、具体的な適用場面の事例の一つとして参考になるものと思いました。

③意匠権の権利期間延長(1年経って)

2020年の《特許法》改正により、中国の意匠権(中国語「外观设计专利权」)の権利期間は従来の10年から15年に延長されました。この改正は2021年6月1日から施行となっていましたが、今回は3月下旬に、権利維持のための年金について11~15年目の年金を年3000元とするという通知が出ていました。施行は1ヶ月後の5月5日からとのこと。
もう随分前に施行されていたのになぜかというと、どうやら、年金は毎年の権利期間が過ぎる1ヶ月前に納付するので、去年の6月1日以降に権利期間が延びた分の年金の納付期限がちょうど5月だからということのようです。
《特許法》改正、今年の6月施行だったか?と時間を一年勘違いしてしまい、我ながら歳をとったなと感じました。





2022年3月30日水曜日

3月第4週:①市場参入許可ネガティブリスト(2022年版)、②《医療機器生産監督管理弁法》《医療機器経営監督管理弁法》改正、③品質安全の特別取締活動

①市場参入許可ネガティブリスト(2022年版)

市場参入許可ネガティブリスト(市场准入负面清单)の2022年版が発布されました。
2020年版に比べて6項目減少した117項目のリスト(うち禁止事項が6、許可事項が111)となっているそうです。
リストの発布と同時に、全国統一リストでの管理が求められており、地方や部門が独自のネガティブリストを発行してはならないとされています。個別の行政許可事項を全て網羅したものではありませんが、内外資共通で参入が規制されている業種・分野のリストですので、事業・投資の管理に携わる方々は見る機会も多いかと思います。

②《医療機器生産監督管理弁法》《医療機器経営監督管理弁法》改正

《医療機器監督管理条例》は昨年改正されていましたが、今回はこれに基づく2つの弁法(生産、経営)が改正されました。
輸入・卸売・小売といった流通段階では経営弁法の方を見ることが多いですが、第三類が許可管理、第二類が届出管理、第一類は許可も届出も不要という分類になっているのは従来どおりです。
申請手続を規制緩和で簡素化しつつ、検査措置や検査手段を拡充して、事前審査から事中事後管理を強化する内容のようですので、医療機器の生産・流通にかかわる企業の方々は業務の見直しもご検討ください。

③品質安全の特別取締活動

市場監督管理総局から、2022年重点工業製品の品質安全の特別取締行動に関する方案が公表されています。
今回は、10種類の工業製品を重点対象として、品質安全事故の起こりやすい部分を重点的に取り締まるとのこと。また、クレーム・通報、世論情報などを基にモニタリングを行っていく方針も示されています。
国家基準・認証制度との不適合や、出荷前検査の実施・記録保管の不備などが対象として挙げられていますので、品質管理のご担当者には目を通していていただければと思います。

2022年3月28日月曜日

新型コロナウイルスに起因する業務遅延と民事責任(振り返り)

コロナ禍の影響による業務遅延に関して、過去に掲載いただいた原稿のURLを再度掲載しておきます。
アップデートができておらず当時のままで恐縮ですが、ご参考までにて。


【寄稿】「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行による経済への影響をどう乗り切るか。---中国における裁判所の取り組みから、中国企業とのトラブルの対処を考える---」
東海日中貿易センター会報誌2020年8月号


【中国法務レポート】
新型コロナウイルス肺炎の感染症流行にかかわる民事案件を法により適切に審理することにかかる若干の問題に関する最高人民法院の指導意見(一)
不可抗力や事情変更の主張には、適時の通知と証明資料が必要になります。これは後日では補うことができず、今この時点で必要な対応ですので、どうぞ忘れずにご対応ください。


2022年3月24日木曜日

3月第3週:①3・15晩会(「404エラー」の驚くべき原因)、②薬品安全に関する刑事事件の司法解釈

①3・15晩会(「404エラー」の驚くべき原因)

 今年も3月15日の消費者保護デーにCCTVの「3・15晩会」が放送されました。今年は日系企業に関わる話題はなく一安心でしたが、一つ、とても興味深い話題がありました。
 企業活動において、消費者の「口コミ」はますます重要になっています。これら口コミをめぐる各種のマーケティング活動をバズマーケティングと呼ぶそうですが、中には、消費者を装って問答を自作自演したり検索エンジンの上位に表示されるよう操作したりする業務を受託する会社もあるそうです。
 今回はそれらと並んで、「自社の評判を低下させる情報が記載されたページを『404エラー』で表示されないようにする」という手法が暴露されていました。
 「404エラー」とは、「このURLは存在しません」という表示される、インターネットを閲覧しているとよく見かけるものです。この404エラーを活用する「技術的手段」を利用して、なんと、自社にとって不都合な記載のあるページを表示されなくすることができるとのこと。番組では、従業員への給与遅配などの書き込みがなされていた某企業から依頼を受けたバズマーケティング会社が、そのページにアクセスした人の画面に404エラーが表示させるように遮蔽し、企業にとって不都合な情報を見えないようにした事例が紹介されていました。
 そう言われてよく見てみると、今週の資料でご紹介した事例の記事の中でも、「昨日は表示されていたのに、今日は表示されなくなっている」というものがありました。私自身、このような現象は中国政府による行政指導か何かによるものかと思い込んでしまっていたのですが、それ以外に、企業向けの民間による世論操作サービスによっても同様の現象が起きていることがある。これは個人的にはかなり驚きでした。
 企業法務の業務においては、法的責任の有無と並んで、企業のレピュテーションリスクもよく考慮される事項です。その観点からすると、自社の悪評を見えなくする、良い情報だけが表示されるようになるという「世論浄化契約」によるサービスは、興味を引くものではあります。
 ITの世界は次々にさまざまな手法が登場してくるので追いつくのが大変ですが、法的にどのような位置づけになるのか、私もこれから勉強してみたいと思います。

②薬品安全に関する刑事事件の司法解釈

 薬品安全の刑事事件に関する新しい司法解釈が出ました。刑法改正で新たに薬品管理妨害罪という罪名が追加されていたところですが、今回の司法解釈では、無許可で薬品を製造する工場(「黒作坊」)やそのような無許可で製造された薬品をそれと知りつつ販売する行為が薬品管理妨害罪に該当すること等が規定されています。もちろん、その薬品がニセモノや粗悪品であった場合には、さらに重い虚偽・劣悪薬品の製造・販売罪として処罰されることになります。
 医療保険基金は市民の「救命」のための資金であり、医療保険を利用して医薬品を騙し取って転売するなどの行為については厳しく取り締まるとされています。先日も処方箋を「後付け」で発行する例などをご紹介していましたが(2021年12月第1週)、薬品流通の利便性と適正確保の両立がIT技術の進歩によって高まっていくことを期待したいと思います。

2022年3月15日火曜日

3月第2週:①政府業務報告、②全国商業秘密保護イノベーション試行業務方案、③手続代行業者の選定、④中小企業向け優遇政策(見逃し厳禁!)

①政府業務報告

毎年、全人代では国務院(政府)から全人代の代表の方々に対して、その一年の活動と次の一年に向けた方針の報告が行われます。
この政府業務報告は、中国政府が注力している分野などが全般的に述べられていますので、中国でのビジネスや投資に携わる方々は多くの方がご覧になっていると思います。
個人的には、今年は不動産について何か新しい言及が見られるか興味を持っていたのですが、従来どおり「住宅は住むために用いるものであり、投機のために用いるものではない」ということで、大きな方針転換は無いような印象でした。
毎年、前年分と比較してみると一層面白いだろうと思いつつ、ざっと眺める程度しかできないのが少し残念ですが、抽象的な記述が並ぶ中でも雰囲気が少し変わっている部分などもありますので、興味のある言葉が登場する部分だけでも、ご覧いただければと思います。

②全国商業秘密保護イノベーション試行業務方案

一部の地域において3年の時間をかけて、商業秘密保護をさらにレベルアップさせるという施策が打ち出されています。行政、司法、民事の多元的な保護制度によって、政府各部門が連動して互いに補いあう業務メカニズムを形成するとのこと。また、国際競争ルールとも連結された保護体系を構築するとのことです。
特許や著作権などの目に見えるものから、さらにノウハウなどの商業秘密に保護の範囲を広げるもので、企業においても十分に保護が得られるように、しっかりノウハウを認識・特定して管理することが求められるかと思います。

③手続代行業者の選定

商標局から、商標関連の代行業者の選定に関する注意喚起が出ていました。
内容としては、既に会社の法人登記を抹消されているのに、商標局の側での登録が残っているのを良いことに、そのまま新たな商標関連手続の代行業務を受託する業者がいて、代行を依頼した申請者が損害を被る事例が見られるとのことです。
手続代行を依頼するときには国家企業信用情報公示システムで登記状態を確認してください、とのこと。
とはいえ、毎回依頼するときに確認するのか?という疑問も湧きます。
商標に関する手続代行に限らず、普段の取引でも同じ問題は発生する可能性はあるので、取引先の名前を登録しておいて、登記状態に変化があったら自動的に通知が来るようなシステムやサービスがあれば良いのにと思います。
もし既にそのようなサービスがあり、ご存じの方がいらっしゃいましたら、是非、ご教示いただければと思います。
よろしくお願いいたします。

④中小企業向け優遇政策(見逃し厳禁!)

今年、2022年1月から12月にかけて、中小企業が購入した500万元以上の設備や器具について、償却期間3年のものについては当年度に一括して全額を損金算入でき、同4年、5年、10年のものは50%を当年度に一括で損金算入して、残り50%を以降の年度で損金算入していくという優遇政策が出ています。もし今年、所得から控除しきれない部分があっても、以後5年間は控除ができることになっています。
中小企業の設備調達において、かなりの減税効果がありそうな施策となっています。
ただ、こちらの政策、自社でこの優遇を享受するか否かの選択をする必要があり、自動的に適用されるものではありません。
日本の中小企業関連の施策もそうなのですが、知らないと享受できず、知らないうちに「もったいない見逃し」をしている場合があります。
ここで言われている中小企業の範囲は相当広いですので、日系企業各社でも対象になり得る会社も少なからずありそうに思われます。是非、一度ご覧ください。
また、設備や器具を販売する側の企業の場合、単位価値が500万元を超えるか超えないか微妙なときには、500万元を超えるように設定した方がむしろ税制メリットを享受できて有利、ということも考えられるかもしれません。


2022年3月8日火曜日

3月第1週:①3月5日から全人代・ウクライナ情勢、②外商投資企業授権登記管理弁法、③「小微企業」(小型薄利企業)に対する「六税両費」の減免政策

①3月5日から全人代、ウクライナ情勢

先週は3月5日からの全人代を控えていたからか、あまり目立った新法令・新政策はありませんでした。また、新聞記事の方も、ロシアとウクライナをめぐる問題が大きく取り上げられている関係で、法律関係であまり注目を集めている記事はなかった印象です。
ですので、今回はとりわけ安全生産の面で発表された取締事例と重点取締の話題をご紹介しています。工場・事業所での事故については関係者が厳しく処罰される傾向が続いていますので、改めて、事例を通じて留意点などをおさらいしておいていただければと思います。

②外商投資企業授権登記管理弁法

《外商投資企業授権登記管理弁法》が改正されました。《外商投資法》とその実施条例を受けた改正のようで、現行のものは2016年版と思っていたのですが、2002年版が廃止されて改めて発布されたという形式になっています。
外商投資企業の登記登録管理は、市場監督管理総局から権限を授権された各地の市場監督管理局が行っており、《外商投資法実施条例》第37条第1項でその名簿が公表されることが定められていますが、従来の《外商投資企業授権登記管理弁法》第7条でも授権の決定は公告されることになっていました。今回の改正はその授権の審査のための資料を簡素化するなどの見直しがあったとのこと。「登記管理についての授権」に関する弁法で、政府機関内部の権限分配の規定ですから、企業には直接影響はないものです。
いつもはなるべく企業活動に関係ありそうなものだけを取り上げるようにしているのですが、今回は次の「六税両費」の件と合わせて、開けてみて少しガッカリというものが多かったので、ここで書き留めておくことにしました。

③「小微企業」(小型薄利企業)に対する「六税両費」の減免政策

小型薄利企業に対する「六税両費用」、6つの税金と2つの費用の減免政策が出たということで中身を見てみましたが、6つの税金とは、資源税、都市維持保護建設税、家屋税、印紙税、都市・鎮土地使用税、耕地占用税です。2つの費用とは、教育費付加、地方教育付加の2つでした。ですので、これも重要度はあまり高くなさそうです。
ちなみに、優遇対象となる小型薄利企業の基準は、課税所得額300万元、従業員数300人、資産総額5000万元という基準とされています。この基準は2019年から採用されており、それ以前は2018年(財税[2018]77号)では工業企業では課税所得額100万元、従業者数100人、資産総額3000万元が基準でしたので、かなり適用範囲が拡大されてきています。
過去に該当しなくても、今は該当することもあるかもしれませんので、中小企業向けの優遇の適用範囲は常に見ておいていただければと思います。









2022年3月1日火曜日

2月第4週:①施行延期の通知、②「証照」の電子化、③個人情報保護法と業務システムへの情報記入、④プラットフォーム(Webサイトやアプリ)の利用規約変更、⑤訴訟前調停による解決の推進

①施行延期の通知

1月第4週にご紹介していた《金融機構の顧客デューディリジェンス調査と顧客身分資料及び取引記録の保存管理弁法》ですが、「技術原因」により施行延期となったようです。
発布後にいくつかの中小金融機関から、この弁法で定められている金融商品と業務モデルごとの具体的なルールや要求事項につき、金融機関側での内部管理制度、情報システム、業務フローを整備して人員の研修も行う必要があるとの求めがあったためとのこと。
もともと1月19日に発布されて2022年3月1日から施行ということで、施行まであまり時間的余裕がなかったところですが、春節休暇が間にあり、さらに今年は冬季五輪もありましたので、無理からぬところかという気もいたします。
「もう少し施行まで余裕のある期間設計にした方がよいのでは?」と思うことも多々ありますが、締切が遠いとついつい対応が後回しになってしまうのも人の常というものです。まずは施行期日を決めておいて、状況を見て延期という方式は、それはそれで合理的なのかもしれません。

②「証照」(証書・許可証)の電子化

中国では行政手続のIT化も進められています。以前から「発票」の発行のための専用システムや税務申告のためのシステム、税関関連の手続のペーパーレス化などは広く導入されていましたが、さらに営業許可証をはじめとする各種業務の許可証についても電子化して、逐一企業から情報・資料の提出を求めなくとも行政機関自身が確認できる仕組みを構築し、全国で通用するように連繋を進めようとしています。
これらの電子「証照」(証書・許可証)を取得して活用するには、申請段階からオンライン申請によることが求められます。そこでは、なりすましを防止するため、USBの認証キーなどを使った電子署名・電子印鑑が必要になりますが、これら紙の署名や印鑑に代わる本人確認手段も付随して普及する必要があります。こうした一連のインフラを整備することに民間企業が関与することも奨励されています。
ところで、日本でも行政改革の一環として「脱ハンコ」が進められています。行政機関の窓口でも、印鑑を求められることが少なくなった印象は確実にあります。ただ、個人が手書きで記入する用紙は自筆署名があるので良いのですが、会社名の書類は個人が署名する箇所はなく、会社の四角いゴムのスタンプ印だけで手続ができてしまい、代表者の丸印はもちろん会社名の角印すら不要という状況になっています。仕事柄、「これで本当に良いのか?」と思ってしまうところもあります。本来、印鑑廃止とデジタル化は表裏一体であり、デジタル化には紙の印鑑や署名に代わる本人確認も必須と思うのですが、会社の代表者の署名はあっても会社自身の署名と言うものは無いわけですから、会社の方は印鑑があった方が良いのでは...と個人的には未だに少し戸惑っています。

③個人情報保護法と業務システムへの情報記入

昨年11月1日から個人情報保護法が施行され、顧客の個人情報についてはIT企業やBtoC企業でなくとも法的に保護する義務があることが明確になっています。
今回紹介した事例では、業務システムにさまざまな情報を書き込めるようになっていたところ、従業員が「このお客様は●●が好き」「このお客様はSNSに投稿をする」などの情報を書き込んでいたことが問題となりました。
サービス業の観点から言えば、この人は顧客のことをきちんと覚えようとする仕事熱心な人なので、ご本人としても決して悪意はなかったのだと思いますし、きっとお客様の評判も良かったのだろうと想像します。
しかし、「知らないうちに」情報が記録・使用されていることは愉快ではありません。仕事熱心は間違いなく良いことなのですが、きちんと同意を得る習慣も求められる世の中になってきているという例かと思います。

④プラットフォーム(Webサイトやアプリ)の利用規約変更

引っ越しなど物流サービスをWebサイトやアプリで提供している会社が、利用規約(服務協議及び交易規則)の変更について、法律に定められた意見募集を行わなかったとのことで罰金の処罰を受けていました。
日系企業各社の立場では、運営者側ではなくユーザー側(出店者側)としてかかわることが多いと思われますが、改定内容に同意せずサービスの利用をやめることができることは当然として、さらに、改定内容が事前にプラットフォームの目立つ位置に掲示されていなかったという理由で事後にその効力を争うということも考えられます。
規約の改定があった場合、内容を見るよりも、その通知の有無や掲示されている場所などを先に見た方が良いかもしれません。

⑤訴訟前調停による解決の推進

中国ではここ数年、訴訟によらず調停によって紛争を解決することを促す方向で司法インフラの整備が進んでいます。
2021年の実績としては、訴訟前調停成立件数が610.68万件、「速裁快审」(一回結審など法律の許す範囲内で手続を簡略化した訴訟手続)の件数が871.51万件とのことで、一営業日あたり4.3万件がプラットフォーム上で調停され、1分あたり51件の紛争が訴訟前に解決されているとのことです。
(ちなみに、中国の年間訴訟件数は、民事・刑事合わせて2016年に2000件、2019年に3000万件を超えています。2020年も3000万件を超え、そのうち55%が民事案件とのことです。)
訴訟手続の迅速化は当事者に早い解決を提供するとともに、司法のリソースを有効に活用できるメリットがあります。しかし、日本にいる我々から見ると、ただでさえ十分な審理を尽くしてもらうことが難しい面がある中国での訴訟対応ですから、「事前に十分な証拠と論拠を揃える」ことが今後さらに求められてくると思われます。