①「信用修復」をめぐる詐欺
中国では、2013年頃から、債務が返済できない債務者のうち一定の悪質とみなされるものについてブラックリストが作成されて「信用中国」Webサイトなどで公表される仕組みがあります。2014年頃からは行政処罰情報も公開されるようになり、さまざまな面で不利益が課されるようになっています。このような不利益を課す制度は信用失墜懲戒(中国語「失信惩戒」)と呼ばれています。
一方で、これらネガティブな情報が公開されてしまっている状態を解消する「信用修復」(中国語「信用修复」)の申請をすることができる制度もあります。これは特にコロナ禍において企業活動を維持するためにも重要になっており、2020年には最高人民法院が信用修復メカニズムを適切に運用するよう求めてもいました。
ところで、今回ご紹介した発改委弁公庁からの通知文によると、この公式な制度・手続である「信用修復」と似て非なる「征信修復」というサービスを宣伝して高額の費用を採る業者がいるそうで、これを厳しく取り締まる必要があるとされています。
「征信」とは、日本語では「信用調査」とか「与信」とか訳出されていますが、ローンの審査などで一般にも知られた言葉で、「征信修復」と言われると公式な制度・手続と非常に紛らわしいようです。
日本でもいわゆる多重債務問題との関係で、金融機関のブラックリストから事故記録を消すという詐欺があったようですが、中国の場合は公に似たような制度がある分、余計に紛らわしいです。
②他社サイトの実績情報を盗用
消費者からのクレームを受け付けて、それをメーカーに連絡することで解決してあげるというWebサイトがあり、これをめぐる判決の記事が一つ、新聞で紹介されていました。私が上海に赴任していたとき、ラジオ番組でも同様のコーナーがあり、タクシーの中でよく運転手さんが聞いていたことを思い出します。音楽番組はあまり聞かなかったので、中国ではこういう社会派の番組が人気なのだなと意外に思っていたものです。
今回はWebサイトに関する事件で、他社がこのサイトに掲載されたクレーム情報を勝手に自社サイトにも掲載して、自社にも多くの解決実績があるような印象を与えるように装ったということで、不正競争防止法違反で提訴されていました。判決では、このように勝手に他社のサイトに掲載された情報を流用することは商業道徳違反であり規制すべきものと判断しました。虚偽宣伝とも認定しているのですが、一つ一つの掲載情報の真実性よりは全体としてデータベース全体を一部盗用していることの適否が問題なわけですから、商業道徳違反という一般条項に基づく判断を持ち込んだのは実態に即した判断と言えると思います。ちょうど2週間前にご紹介した不正競争防止法の司法解釈に関係するもので、具体的な適用場面の事例の一つとして参考になるものと思いました。
③意匠権の権利期間延長(1年経って)
2020年の《特許法》改正により、中国の意匠権(中国語「外观设计专利权」)の権利期間は従来の10年から15年に延長されました。この改正は2021年6月1日から施行となっていましたが、今回は3月下旬に、権利維持のための年金について11~15年目の年金を年3000元とするという通知が出ていました。施行は1ヶ月後の5月5日からとのこと。
もう随分前に施行されていたのになぜかというと、どうやら、年金は毎年の権利期間が過ぎる1ヶ月前に納付するので、去年の6月1日以降に権利期間が延びた分の年金の納付期限がちょうど5月だからということのようです。
《特許法》改正、今年の6月施行だったか?と時間を一年勘違いしてしまい、我ながら歳をとったなと感じました。
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