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2024年3月7日木曜日

差押・仮差押の申立てのハードル(債務者の財産の調査)

中国では、裁判所と登記機関、銀行や証券会社などがネットワークでつながっており、仮差押でも本差押でも、債権者が相手方の財産を探す必要はなく、裁判所がこのネットワークを使って差押対象となる財産を探してくれるようになっています。
このシステムを「ネットワーク執行調査統制システム」(网络执行查控系统)といいます。
本差押(強制執行)の場合は、必ずこのシステムを使って債務者の財産の状況がチェックされます。

《民事執行における財産調査にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定(2020年)》
第1条  執行過程において、執行申立人は被執行人の財産の手がかりを提供しなければならず、被執行人は財産をありのままに報告しなければならず、人民法院はネットワーク執行調査統制システムを通じて調査をしなければならないものとし、事件の必要に基づき他の方式を通じて調査をするべき場合には、同時に他の調査方式を採用しなければならない。

一方で、仮差押(民事保全)の場合は、必ずではなくて、裁判所の裁量によって、調査してくれたりしてくれなかったりします。
《人民法院が財産保全事件を取り扱う際の若干の問題に関する最高人民法院の規定(2020年)》
第10条  当事者及び利害関係人は、財産保全を申し立てるにあたり、人民法院に対し被保全財産の明確な情報を提供しなければならない。
  当事者が訴訟において財産保全を申し立て、確かに客観的な原因により被保全財産の明確な情報を提供することができないけれども、財産の具体的な手がかりを提供する場合には、人民法院は、財産保全措置を講ずる旨を法により裁定することができる。
第11条  人民法院が前条第2項の規定により保全裁定をした場合には、当該裁定の執行過程において、保全申立人は、既にネットワーク執行調査統制システムを確立している執行法院に対し、当該システムを通じた被保全人の財産の照会を書面により申請することができる。
  保全申立人が照会申請を提出した場合には、執行法院は、ネットワーク執行調査統制システムを利用して、保全裁定を受けた財産又は保全金額範囲内の財産に対し照会をし、かつ、相応する封印、差押え又は凍結措置を講ずることができる。
  人民法院は、ネットワーク執行調査統制システムを利用しても提供可能な保全財産を照会し得なかった場合には、保全申立人に書面により告知しなければならない。


日本では、債権者が差押対象財産を自分で見つけてきて指定しないといけないのですが、それに比べると、債権を取り立てようとする債権者にとっては、とても便利な仕組みです。
どこの銀行に預金口座があるか見てくれるだけではなく、その時点での残高があるかどうかまで見てもらえます。
日本では、差押の対象になる財産を探すために、弁護士会を通じた照会などの方法による必要があるので、調査すること自体に時間がかかってしまい、また、差押をしても空振りになることがよくあります。ですので、「紛争になる前に平素から」、取引先の状況をよく把握し、どの銀行に口座があるのか、どの会社と取引があるのか、不動産などの固定資産はどこにあるか、会社名義か代表者名義かなどを掴んでおくことが求められます。
中国では、(現地に赴任したご経験のある方々はお分かりいただけるかと思いますが)それほどきめ細かな対応は実際上困難ですから、そのこともあって、上記のような便利なシステムが用意されることになったのかもしれません。


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