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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

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2024年3月14日木曜日

企業の倒産と未払賃金

日本では、企業が倒産すると、労働者は国から未払賃金の立替払を受けることができます(日本「賃金の支払の確保等に関する法律」第7条)。原資は労災保険料です。立替ですから、雇用主の賃金支払義務がなくなるわけではないのですが、実際には雇用者は倒産しているわけですから、支払うことができない場合が多いだろうと思います。(法的倒産の場合はそれなりに回収ができますが、事実上の倒産ですと回収は難しい場合が多いようです。)
この制度の利用は、バブル崩壊後の時期に最も多かったのですが、現在はピーク時に比べると件数、支給額ともに少なくなっています。

この制度が利用されるのは破産や民事再生といった法的手続に入った場合が多く、そうでない事実上の倒産の場合は「労働基準監督署長の認定」が必要となります。それ以外に、労働者かどうか、未払の有無・金額など、事実関係の確認にはそれなりのハードルがあります。
余談ですが、従業員でも何でもなかった人を従業員であったかのように書類等を捏造して申請する詐欺事件も発生しているためです。近年では外国人労働者に対する立替払が必要になる場合も多いので、なかなか大変と聞いています。

一方、中国はと言うと、残念ながら、そのような公的な立替払制度はありません。ですので、従業員は企業が倒産して賃金が未払になると、人力資源社会保障局(昔の労働局)に通報する(※)、企業や地元政府の庁舎の前に座り込んで陳情する、企業の株主や経営者・管理者を取り囲んで責め立てるなど、相当深刻な事態が起こることになります。
しかたなく、倒産した会社の取引先の方で一部の給与を立て替えてあげないといけないような場面もあります。
(※)中国には「労働報酬支払拒絶罪」という犯罪があり、賃金不払に対しては刑事処罰が行われることもあります。中国《刑法》第276条の1参照。
そもそも中国では、(もはや昔の話かもしれませんが)失業保険そのものの申請も容易には認めてもらえないような場合もあります。そのような場面に出遭うたび、やはり日本は労働者に対する保護が手厚い良い国だと感じます。

ちなみに、日本でも、労働関連の債務については破産前に払えるならば払う、ということが実務上は推奨されています。さらに、解雇予告手当と、直近月の給与と、どちらかしか支払えないという場面では、解雇予告手当の方だけでも支払っておいた方が良い、ということになっています。解雇予告手当はこの未払賃金立替払制度の対象にならないからです。
ですので、立替払制度があるから賃金未払になっても安心とは簡単には言えず、それなりに手間もかかるものですが、それでも、制度があるか無いかでは大きな違いがあります。



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