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中国で提出する書類の記入・署名: なぜ「ボールペン不可」「万年筆で記入」なのか?

中国に関係するビザ申請の関係書類や、中国で会社登記機関(市場監督管理局)や裁判所(人民法院)などの公的機関に提出する書類を記入したり署名したりするときに、「ボールペンで記入しないでください」「万年筆で記入してください」と言われたことはないでしょうか。

2021年11月9日火曜日

11月第1週:①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動、②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)、③安全生産の企業等級

①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動

 IT企業に対する個人情報保護などを含む対応を求める通知が出ています。5つの改善、2つのリスト、4つの向上ということで、短縮して「524」活動と名付けられています。
 名宛人となっているのは中国移動など基礎電信事業者のほかインターネット企業であり、Tencentをはじめとした大手IT企業の主要サービスを列挙したリスト39社分が第一弾として掲載されています。
 今年12月や来年3月を〆切として各種の対応を求めており、アプリやポップアップのウインドウを閉じるボタンを分かりやすく表示すべきことや、カスタマーサービスの月平均応答時間を30秒以内にする目標などが掲げられ、なかなかに細かいことを言われています。アプリやWebサイトの仕様、カスタマーサービスの体制などに影響してくると思われますので、関係ありそうな企業の方はご一読ください。

②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)

 自分の外見に自信が持てない、容姿に不安を感じている、そのような心境を指す「容貌焦慮」という言葉が流行しているそうです。今回は美容医療の広告に関するガイドラインが発布されており、このような「容貌焦慮」を生み出してしまうような広告や、容姿の良し悪しと貧富や素養を結びつけるような広告などが、重点的な取締対象とされています。
 日本でも、外見のコンプレックスを煽るような広告はかえって嫌悪・忌避されるということが言われていますが、外見による差別については「ルッキズム」という言葉も話題になっているようですし、少し注意すべき世の中になっているようです。
 ここでいう美容医療は創傷性又は侵襲性の医学技術方法で容貌を修復・再生することを指し、医療機関が行うものですから、適法な資質を有する医療機関でなければならないことは当然で、日系企業に直接関係するわけではなさそうですが、マーケティングの考え方として、一つ、こういった流れを作ろうとしていることは知っておいた方がよさそうです。
 ちなみに、日本でも今年7月に医療広告規制におけるウェブサイトの事例開設というのが出ておりまして、医療機関のマーケティングに携わる方々にとっては参考になるものと思われますので、URLをご紹介しておきます。

③安全生産の企業等級

 税関や外貨管理の規制上は以前から取り入れられている企業の等級分類によって優遇を与える制度ですが、安全生産の分野でも取り入れられることになりました。早速、今月から開始とのことです。
 詳しくはまた別の機会にご紹介しようかとも考えていますが、労災保険料率が下がる、安全生産責任保険の保険料率が下がるなどの優遇が得られるようですので、一度ご検討いただくのも良いのではないかと思います。

2021年11月3日水曜日

10月第4週:①個人情報保護法の施行を迎えての対応、②不動産税の試行拡大、③中小企業に対する段階的納税猶予、④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

①個人情報保護法の施行を迎えての対応

11月1日、《個人情報保護法》の施行日を迎えました。成立・公布後、国慶節休暇を挟んだこともあり、準備万端とはいかない部分もありますが、施行日が近づくにつれ、各企業における取り組みも進みつつあるようです。ただ、《個人情報保護法》による規制は多岐にわたりますので、11月1日までに全ての対応を終えた企業は少ないものと思われ、何に優先して取り組むのかという悩みもあるようです。
この点について、今回、中国消費者協会からは、企業に対して5点、消費者に対して5点、それぞれに向けた注意喚起が発表されており、企業における取り組みの参考になるかと思われます。
但し、私個人としては、各企業の優先順位は一律ではないはずであろうと考えています。事業活動の状況によって事実上問題になりやすい部分とそうでない部分を分けてみて、それによって優先順位を決めて対応した方が現実的でしょう。

②不動産税の試行拡大

5月にご紹介したとおり、「住宅は住むために用いるものであり、投機のために用いるものではない」(「房子是用来住的,不是用来炒的」)ということで、中国では不動産の価格抑制政策が打ち出されています。
今回は、一部地域における不動産税改革の試行についての政策が出て、日本でも報道されています。建物については「房産税(建物税)」、土地については「城鎮土地使用税」が以前から存在していましたが、さらに「房地産税(不動産税)」が課されるということになるようです。既に2011年から、上海では2件目以降の住居、重慶では別荘や高級住宅について課税されていたようですので、まったく新たな税というわけでもなく課税範囲が拡大されるだけのようではあります。土地払下収入に依存していた地方財政からの脱却ということも背景の一つにあるようです。
日本でバブル崩壊に至ったきっかけとしては、不動産向け融資の総量規制と、いわゆる地価税の導入が挙げられることがあります。今の中国の施策を見ると、ついつい日本のバブル崩壊を連想してしまうのですが、中国政府の方々は当然ながら、日本の経験を十分研究したうえで施策を決定しているはずですから、歴史の新たな経験則が生み出されていくのか、興味が湧くところです。
脱線ですが、日本でバブル経済と税金に関する記事を見ていると、明治時代の「ウサギ税」という税金のことが紹介されていました。中国では古酒や骨董品も高値で取引されているようですが、もしかすると今後は何か変わった税金が誕生するのかも?と想像してみたりもします。

③中小企業に対する段階的納税猶予

国際商品市況の高騰、生産コスト上昇などによる影響は製造業について特に大きなものとなっています。そのため、国務院は第4四半期につき中小企業に対して企業所得税や増値税などの納税猶予措置を打ち出しています。年間売上高2000万元以下の製造業の小型・零細企業(個人事業者を含む)については全額の納税猶予、年間売上高2000万元から4億元の製造業の中型企業については50%の納税猶予、特別困難企業については全額猶予となっています。納税猶予は11月1日から来年1月の申告期終了までとなっています。
また、同じ記事で、国外機関投資家が国内債券市場で得た利息収入について企業所得税と増値税を徴収免除する政策が2025年12月31日まで延長されたことが発表されていました。最近話題になっている社債市場でのデフォルトをめぐる不安を解消するための措置と思われます。

④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

国家インターネット情報弁公室から、重要データの国外移転時に必要となる出国安全評価の細則の意見募集が出ています。《データ安全法》第31条に基づき別途制定することとされていたものです。
「重要データ」については先日もお伝えしたとおり工業データ一般についてのデータ安全管理弁法も意見募集中です。
また、この意見募集稿では、個人情報保護法により国外移転時に必要となる安全評価についても対象としています(意見募集稿の第2条)。《個人情報保護法》第40条では一定数量以上の個人情報処理者に国外移転時の安全評価を求めているのですが、この意見募集稿では、100万人以上の個人情報処理者がその一部を国外提供する場合か、「累計で」10万人以上の個人情報又は1万人以上の機微な個人情報を国外提供する場合を対象としているようです(同第4条)。(なお、《個人情報保護法》第55条で個人情報の国外移転の場面一般に求められる「個人情報保護影響評価」と混同してしまわないようにご留意ください。)


2021年11月1日月曜日

ユーザー名称やプロフィール画像の規制

中国で《インターネットユーザーアカウント名称情報管理規定》の意見募集が出ています。

http://cac.gov.cn/2021-10/26/c_1636843202454310.htm

個人ユーザーのアカウント名称は充分に個人の特徴を表現すべきとのこと。「なりすまし」は2015年の現行規定でも禁止でしたが、ユーザー名やプロフィール画像も要注意となるようです。


2015年の現行規定は下記URLからご覧いただけます。ご参考まで。

http://www.cac.gov.cn/2015-02/04/c_1114246561.htm

2021年10月27日水曜日

10月第3週:①対外的な活動はしないことが仕事の日、②「品質インフラ」(NQI)の充実、③知的財産権の故意侵害の認定基準?、④契約における特許保証条項、⑤石炭価格への介入措置

①対外的な活動はしないことが仕事の日

某大手企業が新製品発表会の日付の選択のせいで処罰されたという新聞記事がありました。本当に日付だけで?と半信半疑で、何か広告内容や宣伝方法に不備があったのでは?と思って行政処罰の内容を見てみたのですが、残念ながら、本当に、新製品発表の日付と時間帯の問題で炎上して社会を騒がせたからという理由だけのようでした。
「国の尊厳又は利益を損なった」という広告法の規定が根拠規定となっているのですが、ネットを見てみると、「なぜわざわざ7月7日、しかも夜10時に?」というコメントから段々と盛り上がり、製品がカメラであったということもあって、原爆投下時の写真や、日本の敗戦直後の写真などが次々と掲示板にアップされて、確かに大炎上してしまっていたようです。
ただ、日付と時間だけでここまで盛り上がるとは、今回はちょっと驚きでした。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりの日付は要注意です。
以前は、中国に赴任する方々は必ず赴任前研修などで教えてもらっていたと思うのですが、私も中国赴任してから10年以上経ったので、最近は忘れていることも多いです。
この現象・事態そのものが是か非かという議論はともかくとして、中国ビジネスにかかわる一人としては、とりあえず改めて、この4つの日は「対外的には何もしないのが仕事の日」と認識しておこうと思います。

②「品質インフラ」(NQI)の充実

「品質インフラ(质量基础设施)」は、英語のNQI(National Quality Infrastructure)から来ているそうで、標準化、適合性評価、計量、認定といった品質関連の枠組みを指すそうです。
こういった品質インフラについて、ワンストップの公共サービスを提供することで、中小企業の技術的能力や信頼性の不足を解消して、個々の企業の製品・サービスの品質、ひいては産業チェーン全体の飛躍につなげようという考えが示されています。
言われてみると、工場見学などにうかがったときのことを思い出すと、大企業と中小企業では、検査・測定用の機器の充実度合いが全く違うような印象があります。
検査は生産性に直接は影響せずにむしろコストを増やす、検査員が頑張ると製造担当部門から煙たがられる、そのような景色の中で、日常の場面では検査が軽んじられてしまうこともあります。しかし、実は高付加価値で競争力ある製品を展開していくには検査・軽量・測定の部分がそれを支えているということは確かにあると思いますので、その部分を重視しているというのは、「なるほど」と感じます。

③知的財産権の故意侵害の認定基準?

今年の3月第1週のワークショップでもご紹介しましたが、ここ数年で、《特許法》や《著作権法》などの知的財産関連法令の改正が行われ、知的財産分野では全面的に懲罰的賠償制度が導入済みとなっています。
懲罰的賠償の枠組みとしては、概ね、「故意」で且つ「情状が劣悪」な場合に懲罰賠償を命じることになっているのですが、このときご紹介した、故意侵害の認定にかかわる要素は、以下のようなものでした。
 ①通知又は警告を経た後も権利侵害行為を継続した
 ②被告が原告の関係者である
 ③以前に勤務や提携関係がある
 ④以前に業務取引や契約交渉をしたことがある
 ⑤海賊版又は登録商標冒用の行為である
 ⑥その他の事情
今回は、黒竜江省の知的財産権局から中央への照会があったようで、ある事情を「故意」の要素として考慮するのか、それとも「情状が劣悪」の要素として考慮するのか?という問題について、「前者(故意)は主観的要因、後者(情状劣悪)は客観的要因なので、両者を混同してはならない」という見解が示されています。
ですので、結論としては「それは故意かどうかの問題ではなく、情状劣悪かどうかの問題ですね」という回答になっており、通知文書のタイトルと違う内容でした。ときどきこういうこともあるのですが、故意認定の要因をおさらいする機会にはなりました。

④契約における特許保証条項

日本ではサプライヤーが顧客を訴えた構図となって一躍話題となっている、電磁鋼板をめぐる特許権侵害紛争ですが、中国ではごく普通の、サプライヤー間の特許紛争です。
日本での訴訟は、知的財産の仕事をなさっている方々はお分かりになると思いますが、実はこれは非常にショッキングでして、サプライヤーとの契約における特許保証条項の重要性が高まるのはもちろんなのですが、「特許保証条項さえあれば良いのか?」という新たな課題について考えてみる機会でもあります。
まさに法務部と知財部が連携して対応すべき課題と場面ですので、ぜひ話題にして交流してみていただければと思います。

⑤石炭価格への介入措置

石炭価格が過去最高を更新し続け、製造業のコスト負担を増やし、冬場に向けた暖房供給に対しても悪影響を及ぼしているということで、石炭価格に対する介入措置が検討されています。
中国の《価格法》では、重要な商品・サービスに顕著な価格高騰が見られる場合や、市場価格の全体水準に劇的な変動等の異常が生じた場合には、価格届出制度や、緊急価格凍結措置といった介入措置をとることが規定されています。
価格統制は、経済学の理論から言えば必要十分な供給がされなくなり、闇市場を生み出して二重価格構造を生み出すだけで、根本的な解決にならないということは、一般論としてはあるのだろうと思います。ただ、今の中国ほど強力に社会の動きを監視・統制して、闇市場が生まれることを十分に抑制できる能力があるという前提条件のもとならば、果たしてどのような効果が生じるのか、個人的には少しだけ興味があるところです。
世の中には、「高いから買うのをやめよう」と思うものと、「高くても買わざるを得ない」ものがあるので、とりあえず企業の運営に携わる一員としては、コストが高騰せずに済むことは良いことと思っています。

2021年10月20日水曜日

【動画】2分で解説!? 中国《データ安全法》と《個人情報保護法》への対応

昨日、セミナーに登壇させていただいたテーマについて、
試みにこのような動画を作成してみました。

2分で分かる!中国データ安全法(データセキュリティ法)と中国個人情報保護法に関する対応(Youtube動画)


3時間のセミナー、90ページの資料があるものでしたので、
本当にごく一部だけのご紹介ですが、どうぞ(文字通り)ご笑覧ください。


2021年10月19日火曜日

中国赴任の前に必ず教えてもらう日付


中国で、日系企業が気をつけるべき日付がいくつかあります(中国語で「国恥日」という)。昔は、中国に赴任する方々は赴任前研修などで必ず教えてもらったと思うのですが、私も毎年、忘れています。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりは、中国のネットでもよく見かけるので、ビジネスに携わる方々は覚えておいて損は無いかと思います。

10月第2週:①中国の国家基準とISOなどの国際基準、②施設の「退役」費用の積み立て、③児童用化粧品の新規制、④決済用QRコードの規制、⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

①中国の国家基準とISOなどの国際基準

中国の国家基準を見ていると、最初の方に、「国際基準であるISO●●:●●を採用している」など、参照している国際基準が明記されているのをよく見かけます。
ISOなどの国際基準と中国の国家基準を見比べたとき、一見すると非常に似ているので、同じようなものと理解していると、意外な部分で少し中国独特の要素が入っていたり、逆に国際基準の一部が中国の国家基準には取り込まれていなかったり、といったこともあります。
今回公表された《国家標準化発展綱要》では、発展目標として、国家基準と国際基準の基幹技術指標の一致性の程度を大幅に引き上げ、国際基準の(国家基準への)転化率を85%以上に引き上げることを提唱しています。
グローバルで事業展開をしていく企業各社にとっては、ルールが共通である方が便利で助かることが多いと思います。中国の国家基準が世界をリードして国際基準に反映されていく場面も多くなってくるかもしれません。ただ、当面はまだ、「15%くらい、国際基準と違うところもある」というイメージを持っておいた方が良いようです。

②施設の「退役」費用の積み立て

重点危険廃棄物の集中処理施設については、従来から、《固体廃棄物環境汚染防止処理法》において、「退役」(=稼働終了)時において発生する費用を事前に積み立てておく管理が求められていました。今回は、そのうちの埋め立て処理場について、新たに「退役」費用の積み立て管理についての細則規定が出ました。
2016年に、化学工場跡地に建設された外国語学校の大勢の生徒らが体調不良を生じた「常州毒地事件」が大きく取り上げられ、化学工場跡地の有害物質の除去、土壌修復についての機運が高まって、2018年の《土壌汚染防止処理法》に至った大きなきっかけの一つになりました。危険廃棄物の処理施設は、当然ながら危険廃棄物が集積され、土壌や地下水への漏洩等の危険も大きいわけですから、稼働終了時における土壌修復費用も非常に多額にのぼることがあるのだろうと推測します。
日本でも、化学工場跡地で土壌汚染がある土地のうえにマンションが建設・分譲販売されて大きな問題として報道されたことがあったかと思います。いったん建物が建ってしまった後に問題が発覚すると非常に解決困難な状況に陥ることがありますから、やはり、更地になったタイミングでしっかり対応しておくことは大切なように思われます。そのとき、資金がないと何年も放置するか、そのまま目をつぶって新しい建物を建てて活用するか、非常に困った決断を迫られることになります。
今回は埋め立て処理場についての規定ですから直接関係は無いのですが、平時からの事前の積み立て、法律上の強制ではなくても、考えておくのは良いことと思います。(ただ、実際に積み立てようとしても、税制上の手当てが無いのでは難しいのですけれども。)

③児童用化粧品の新規制

《児童化粧品監督管理規定》という新しい規定が出ました。子供用の化粧品、キッズコスメということで、日本でも流行しているようです。
「誰にでも適する」とか「皆が使える」といったような、子どもでも使えることを明示又は暗示するような記載のある化粧品については、「保護者の監護のもとで使用してください」といったような警告表示を加えなければならないとのこと。
ここでいう「児童」は12歳以下の子どもですので、子どもがそういった注意書きを書いて理解できるのだろうか?(12歳当時の私を思い出すと、仮に理解できても無視するような...)という気もしますが、化粧品の企画・販売に携わる方々は、子供向けでなくても子供向け商品としての規制がかかってしまう可能性がある点にご注意ください。

④決済用QRコードの規制

中国で買物に行くと、商品の横に印刷されたQRコードが置いてあって、そのQRコードをスマホでスキャンして代金を支払う、そんな光景を目にすることがあると思います。日本でも随分と目にする機会が多くなってきました。
今回、このような「静態」QRコードについて、個人については、リモートや非対面での使用を原則禁止するとのこと。
個人が自分の決済用QRコードを提供して、決済代行に使わせることで何%かの手数料を得るという「跑分平台」というサービスがあり、2月頃にも一度、マネーロンダリング等に利用されていることをご紹介していましたが、QRコードをめぐる規制も実情に合わせて変わってくる部分があります。

⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

天然ガスの価格高騰、中国での事業にはさまざまなところで影響が出てきています。
今年ほど暖冬を願う冬も珍しいかもしれません。



2021年10月5日火曜日

9月第5週:①電力不足による操業停止、②全民医療保障計画、③仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締、④来週休載のお知らせ

①電力不足による操業停止

中国駐在経験者の方々はよくご存じかと思いますが、北京では建物の中は非常に暖かく、家の中では半袖で十分に過ごせるほどです。北京にいたときよりも上海にいたときの方が、よほど寒くて風邪をひいていました。さらに北方に出張することもありましたが、もちろん、一歩外に出れば厳寒で、マイナス10度を下回るような寒さですから、こんなに建物内を暖かくするにはさぞかし大量の石炭が必要だろうなと思いながら、巨大な火力発電所を眺めていたことを思い出します。
中国では、産業用の電力料金が、一般個人の住居向けの電力料金よりもかなり高めに設定されていることが多いですので、中国で工場運営にかかわられた方々は電力コストの高いことに驚かれたこともあるかもしれません。高いにもかかわらず供給が安定しない、なかなか困ったことですが、生産計画等については各社ともその都度、調整なさっていると思います。ただ、今般はどうも普段よりも急だったのか、工場での事故につながってしまったようで、新聞記事になっていました。急な停電でも重大な事故につながらないよう、社内の対応マニュアルに1ページ、足しておいていただければと思います。

②全民医療保障計画

2週間ほど前に、全民医療保障計画が国務院常務委員会を通過したというニュースをお知らせしていましたが、詳細内容が国務院弁公庁から発布されました。
主要指標が表になっていたり、かなり項目も多くなっていますので、医療・製薬などヘルスケア業界の方々はご覧いただけると参考になる箇所もあろうかと思います。

③仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締

発展改革委員会から、仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締についての通知が出ています。エネルギー消費・二酸化炭素排出量が多いわりには国民経済への貢献度が低く、産業・科学技術の発展にもあまり役立たないということで、「産業構造調整目録」の「淘汰類」に分類し、投資を禁止する産業とされました。
中国人民銀行からも、いわゆるステーブルコインであっても仮想通貨を貨幣として市場で流通させてはならないということ、国外の取引所がインターネットを通じて同様の活動を行うことも禁止されているということ、いずれも通知で明確にされています。
ブロックチェーン技術は役に立ちますが、仮想通貨は役に立たないということで、方向性としては数年前からはっきりしてきているところですが、改めて明確に意識しておきたいところです。

④来週の休載のお知らせ

なお、今週が国慶節の連休ですので、来週は休載させていただきます。


2021年9月28日火曜日

9月第4週:①ソフトウェアのアップデート時の条項、②高層ビル火災と電動自転車、③知的財産権強国、④恒大集団関連の記事

①ソフトウェアのアップデート時の条項

とあるEV(電気自動車)のメーカーがあり、そのメーカーが展開している車種では、オンラインでのアップグレードによってソフトウェアが更新でき、運転支援などの機能が向上していって最高でL4の自動運転機能まで実現できるという触れ込みになっています。
しかし、そのEVメーカーからの更新通知を受けた車両オーナーからの話によると、「個人のナビゲーション及び音楽再生の履歴の収集」などプライバシーに関する条項があり、且つ、その更新通知には「同意しない」のボタンがなく「閲読して同意しました」のボタンしかないとのこと。しかも、その同意ボタンを押さないと、引き続きクルマを使うことができなくなったそうです。しかも、今回が初めてではなく、7月にも同様にアプリの更新で「不同意」を押すとアプリが強制終了され、アプリが使用できず、クルマの機能が使えなくなってしまうということがあったとのこと。
自動運転と、OTA(Over the Air)技術によるオンライン更新、この2つの技術はまさに車の両輪のように今後の新たな車種での技術を牽引していくはずですが、更新のたびに意に沿わない条項に同意しなければクルマが使えなくなるようですと、消費者からの苦情が絶えないことになりそうです。しかし、ソフトウェアが更新されずバラバラなまま運用されているというのも危険なように思います。
個人情報保護法やデータ安全法にも関わる新たな課題、どのように解決されていくのか気になります。

②高層ビル火災と電動自転車

6月に民間用の高層建築についての消防管理規定が発布された関係によるものなのか、中国のビルにおける火災のニュースを目にすることが増えた印象があります。
電動自転車を建物内に持ち込んで充電していると、そこから出火して火災になってしまうことがあります。2009年以降だけで、この原因による火災で3名以上がなくなった事故が70件以上あるとのこと。バッテリーも使っているうちに劣化してくると思いますし、耐用年数もあるはずですが、車検のように何年かごとにチェックする仕組みがないと、危ないまま使ってしまっていることもあるのではないかという気もします。
充電場所を決めて防火設備を設置する、過剰充電の遮断機能をつける、といった規制が設けられていますので、電動自転車の駐輪と充電にはお気をつけください。
ついでに脱線しますと、かつて私が上海にいたころ、マンションで大きな火災事故があり、そのあおりを受けて建設中の工場の消防検査が非常に厳しくなってしまい、操業開始が大きく遅れてしまったという事例がありました。また、北京では事務所の隣の部屋が消防検査に不合格になり、ずっと使えない状態になっていたこともありました。(私自身も「こんなに要るだろうか?」と思いながら何本も消火器を買い揃えたことを覚えています。)
それ以降、大きな火災のニュースには個人的にはいつも気をつけるようにしています。「対岸の火事」と思わずに、消防検査が厳しくなることを予測する一つの材料をご理解ください。

③知的財産権強国

「知的財産権強国」建設のための2035年までの綱要が公表されました。
綱要ですので、特に具体的なことが書かれているわけではないのですが、特許集約型産業の育成に力を入れることが大きな目標として掲げられており、さらには知的財産権取引価格の統計発布メカニズムを構築することや、国有知的財産権の帰属及び権益分配メカニズムを改革することといったように、知的財産権の価値の実現・運用のメカニズムを整備していくことが掲げられています。
また、知的財産権を担保とする知的財産権融資モデルについてもイノベーションを模索していく、著作権取引プラットフォーム、作品の資産評価、登録認証などサービスについても整備していく、といった施策が掲げられています。
もちろん、データについても、データの開放とプライバシーの調整処理を改善して、知的財産権としての価値を有するデータ資源の市場価値を実現させるための制度を整備していくとのことです。
その他、人材育成などを含めたさまざまな施策が挙げられていますので、今後も具体的にどのような制度が導入・運用されていくのか注目していきたいと思います。

④恒大集団関連の記事

毎週さまざまな中国のニュース記事を見ていますが、恒大集団に関する記事については、かなり大きな影響が出ていると取り上げているものもあれば、逆に中国語版リーマンショックなんてあり得ないとするもの、さらには比較的中立・客観的な記事まで、なかなかバリエーションに富んでいます。
普段、中国でのニュースの内容は方向としては似たり寄ったりという感じなのですが、今回は両極端な記事を含めてバラバラな印象で、どれかの記事を取り上げるとその記事を支持しているような印象になってしまうかと思い、選べませんでした。
一方で、日本でのこの恒大集団の件についてのニュースなど見ていると、どちらかというと悲観的なものに偏っているようで、「共同富裕」だから救済できないというような内容にある程度方向が揃っているように感じるところもあります。あくまで個人的な印象だけですが、「皆がそう言っている」という状況の方が情報を選ぶ苦労が無くてむしろ楽なのだなぁと実感したこの数日でした。