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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2022年7月18日月曜日

7月第2週: ①天津濱海新区法院の十大ファイナンスリース典型事例、②職業分類の改訂(意見募集)、③ビットコインのマイニングに関する契約

①天津濱海新区法院の十大ファイナンスリース典型事例

天津濱海新区では比較的早くからファイナンスリースについて特区を設けて奨励しています。その濱海新区の人民法院からファイナンスリースについての十大事例が紹介されていました。
電子署名のみで締結された契約について資質のある第三者認証機関が発行した証明書をもって契約が有効に成立したものと認めた事例(事例二)、実際には被告本人に到達していなくても契約書上に記載された送達場所への送達をもって送達されたとみなした事例(事例三)など契約書の管理について参考になる事例もあります。
少し変わった事例では、誤った支払遅延情報(信用不良情報)の削除請求に関する事例(事例十)もあります。

②職業分類の改訂(意見募集)

《職業分類大典》という職業分類の一覧表があり、その改訂に関する意見募集が行われています。職業訓練や就労支援などの分野で使用されるものです。
「电子商务师」(eコマース師)、「互联网营销师」(インターネットマーケティング師)といったデジタル関係の職業が追加されたことや、「森林資源評価専業人員」といった環境保護関連の職業が追加されたことがポイントとして挙げられています。

③ビットコインのマイニングに関する契約

北京市第三中級人民法院から、ビットコインのマイニングを委託する契約の有効性に関する裁判例の発表がありました。
某会社がブロックチェーン事業を行う会社にマイニングを委託し、管理費用を支払う代わりに、マイニングされたビットコインを取得するという契約で、1000万元を支払った後、約18ビットコインの収益が支払われた後、その後ビットコインの引渡しがなされなくなったため、マイニングにより得られた残りのビットコインの引渡しを求めた事例でした。
裁判所は、仮装通貨(暗号資産)のマイニングは経済金融秩序を乱し、電力資源を浪費するなど公共利益に反するものとして、マイニングに関する契約を無効と認定しました。





2022年7月11日月曜日

7月第1週: ①データ出国安全評価弁法、②労働関係の指導案例7件、③北京への移動制限

①データ出国安全評価弁法

《データ安全法》による重要データの国外移転規制についての具体的規定が新たに一つ発布されました。
先週に引き続いて、《個人情報保護法》第38条第1項各号による個人情報の国外移転に関する話題でもあります。
データ出国安全評価を申請しなければならない場面は、以下の4つです(第4条)。
 (1)データ処理者が重要データを国外提供する場合。
 (2)基幹情報インフラストラクチャー運営者と100万人以上の個人情報を処理するデータ処理者が国外に対して個人情報を提供する場合。
 (3)前年1月1日から累計で国外に対して10万人の個人情報又は1万人の機微な個人情報を提供したデータ処理者が個人情報を国外に対して提供する場合。
 (4)国家ネットワーク情報部門が定める、データ出国安全評価の申請が必要なその他の状況。
施行日は9月1日からですが、既にデータの国外移転を行っており、この弁法の規定に適合していない場合でも、施行日から6ヶ月以内に是正すれば良いそうです(第20条)。
ですので、申請が必要になる場合でも、過去に遡って処罰されることもなさそうですし、また施行前に慌てて申請しなくても大丈夫なようですが、来年の2月末までには申請が必要となります。日本のお正月休みに加えて中国の春節休暇もありますので、年内を目途と考えておく方がよさそうです。

②労働関係の指導案例7件

最高人民法院から、新たな指導案例7件(179号~185号)が公表されました。今回は珍しく、労働法関連の事例が紹介されています。
合作契約名目での偽装請負に関する事例、賞与支給前に離職した従業員の賞与に関する事例、戸籍所在地による就職差別の事例など、人事労務管理に関する参考になる事例となっています。

③北京への移動制限

北京との正常な往来を保障するということで、北京との往来制限が見直されています。
他都市から北京への移動制限について、「14日のうちに1例以上の感染者が発生した県(市、区)」への立ち寄り履歴があると制限を受けていたところ、「14日」が「7日」に短縮されるなど緩和されます。
一方、7月11日から、人が集まる場所に入るときはワクチン接種済みであることが求められるようです。もっとも、ワクチン接種に適しない人などは不要ですし、PCR検査証明での代用なども可能という情報もあり、中国での規制も日々変化している様子です。

2022年7月4日月曜日

6月第5週:①個人情報の国外移転のための標準契約書式、②個人情報の国外移転のための認証実践指針、③《反独占法》改正に関する意見募集6件

①個人情報の国外移転のための標準契約書式

《個人情報保護法》第38条第1項第3号に定める標準契約の書式について、現在まで発布されておらず実務上「ルールを守りたくても守れない」困難を生じていたのですが、標準契約の具体的なイメージが持てる文案が公表されたことで、ようやく問題が解消されそうです。
この標準書式を見ると、同法同条第3項からすると受領者側も中国のルールを知らなければならないので当たり前のことではありますが、中国国内の提供者側が、外国の受領者側の求めに応じて、中国国内の関連法令及び技術基準の副本を提供しなければならないということも書いてあります。(書式第2条(五)部分)
もちろん、外国の受領者側の義務(書式第3条部分)も詳細に規定されており、この書式自体が、《個人情報保護法》対応のために何をしなければならないのかについてのマニュアル、チェックリストとして使えそうな内容になっています。もちろん、この書式を使って実際に個人情報の国外への提供を行おうとすれば、当然、守らなければならない内容でもあります。
現在はまだ意見募集段階であり、正式発布ではありませんが、事前に見て準備しておいた方がよい事項もありそうな気もいたします。

②個人情報の国外移転のための認証実践指針

もう一つ《個人情報保護法》第38条第1項各号の関係では、国のネットワーク安全・情報化部門の規定に従い専門業務機構の実施する国外移転に関する個人情報保護認証について、指針が公表されました。こちらは意見募集ではなく正式に公表されたものです。
《情報安全技術 個人情報安全規範》(GB/T 35273)に基づき認証機関が個人情報のクロスボーダー処理活動につき個人情報保護認証を行う際の実践指針ですので、これでようやく、認証機関に委託してこの認証を得る道も実際に開かれてくることになりそうに思います。
上記の①と合わせて、今までは「まだルールが決まっていないから」と言えたところ、ルールが整備されてきています。中国の《個人情報保護法》による国外移転についての規制の本格化に向けての地ならしが進んでいるのかもしれません。

③《反独占法》改正に関する意見募集6件

改正《反独占法》が8月1日から施行されますが、それに向けて、6つの関連する細則規定の改正についての意見募集が行われています。
《反独占法》の改正内容自体は直接に実務に影響するのか分かりづらい部分があるのですが、こちらの細則規定については、直接、実務を左右する部分が含まれています。

2022年6月28日火曜日

6月第4週: ①応急管理部の安全生産通報システム、②中国共産党の指導者・幹部親族による企業経営、③反独占法改正

①応急管理部の安全生産通報システム

企業の生産活動において安全面でのリスクがあるときや、事故があったのに隠匿・虚偽報告がなされているときに、誰でも通報できるシステムがリリースされました。
実名と匿名、両方の通報が可能であり、通報後の進捗状況を見ることも可能になっています。
(ちなみに、匿名通報の方を選ぶと、「もし事実が確認されても奨励金を受領することができませんが、よろしいですか?」というポップアップが表示されます。)
匿名でも連絡先は記入しないといけませんし、中国は電話もネットも実名制ですから、結局は身分が分かるのでは?とも思いますが、場所を選んで通報内容を記載すれば手軽に通報できるようになっています。
通報をきっかけにした調査等が入ることもあり得ますので、生産安全管理には引き続きご留意ください。

②中国共産党の指導者・幹部親族による企業経営

中国共産党の指導者・幹部の配偶者、子女とその配偶者が企業を経営することについての管理を強化するという通知が出ていました。
局レベル以上の指導者・幹部のこれら親族の方々については、企業を設立すること、私営企業や外資系企業の高級職位に就くこと、私募ファンドでの投資・就業、有償の社会仲介及び法律サービスなどの行為が制限の対象となります。
レベルの高い指導者・幹部であるほど制限も厳しくなるそうです。親族が事業をやめるか、本人の職位を調整するか、という対応になるとのこと。

③反独占法改正

《反独占法》が改正され、8月1日から施行となっています。
実務上よく問題になる取引相手方との間での転売価格に関する合意については、「安全港(セーフ・ハーバー)」制度が設けられ、「関係市場における市場占有率が反独占法律執行機構の規定する基準より低いことを証明できる場合」には、禁止対象にならないことが明文化されました。
ただ、具体的な市場占有率の基準がまだ明示されていませんので、基準が速やかに示されることを期待したいと思います。


2022年6月25日土曜日

(日本の話題)商法第512条、ご存じですか? (『サービス』の有償・無償について)

日本の商法には、商法第512条という規定があり、商人の行為は原則として有償である、つまり商人に何かを頼めば費用が発生するのが原則、ということになっています。
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日本「商法」
第五百十二条(報酬請求権) 商人がその営業の範囲内において他人のために行為をしたときは、相当な報酬を請求することができる。
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ちなみに、細かい説明は省きますが、会社の行為は通常は「商人がその営業の範囲内において」行ったものと推定されます。

これは日本の商法上のルールですから、一般の消費者の方々や外国人の方々はご存じでなくても当然なのですが、ご相談を受けてお聞きしている話からすると、どうやら商法が適用されることが当然であるビジネスの場面でも、稀に、「合意がない限り何を頼んでも無償」という誤ったご認識を持たれている取引先や顧客の方々もいらっしゃるようです。

ちなみに、取引先に「『サービスで』これもやってよ!」と無償で何かをさせるというのは、下請法が適用される場面では、不当な経済上の利益の提供要請ということで下請法違反になります。
また、下請法が適用される場面でなくても、優越的地位の濫用(独禁法違反)に該当する場合もあります。


この商法第512条が適用された裁判例というと、例えば、 仙台高等裁判所昭和48年1月24日判決があります。
 https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/997/023997_hanrei.pdf
この事例は、不動産仲介業者に対して、不動産の購入を希望する者が場所、広さ、価格などの自己の希望条件を示し、これに適合する物件を探すように依頼して、現場案内まで受けたにもかかわらず、結局はこの不動産仲介業者を通さずに(仲介費用も払わずに)、あろうことか別の業者を通じてその物件を購入してしまったという事例でした。
もちろん、この最初に物件を案内した不動産仲介業者には一定の報酬をもらう権利があるという判決になっています。
不動産仲介の場面ではよくあるトラブルと言えると思いますが、もちろん、他の様々な業務の場面でも同じ道理が成り立ちます。
似たようなお話はビジネスの日常でもたくさんあると思いますが、裁判例としてはあまり数は多くないように思います。日本では暗黙の常識として、不義理なことはしないという商売上のルールを皆さんが守っておられるからかもしれません。


私が社会人になった当時はまだビジネス上の常識として、「タダより高いものはない」といいますか、他人・他社に何かお願いするときは気持ちだけでも何か費用をお支払する意識があったと思うのですが、もしかするとそういう意識も薄れてきてしまっている部分もあるのかも?というように感じました。
(たまたま私が一緒にお仕事をさせてもらった方々が常識をわきまえた方々だったから、ということでもあるでしょうけれど。)
日本の会社にもそこにお勤めの方々にも余裕がなくなってしまっているからなのか、寂しい気持ちもしますが、共存共栄でお仕事を円滑に進めていただくことを少しでもお手伝いできることがあればと思っています。

2022年6月24日金曜日

「健康コード」に関する職権濫用事件

河南省鄭州市で起きた、感染の疑いがある方々の移動制限に使われている「健康コード」が濫用され、感染の疑いがない市民の方々の移動が制限された事件について、中国共産党中央紀律検査委員会でも処分に関する記事を掲載していました。

とある銀行の預金者の方々の「健康コード」を赤色(移動制限)にしたとのことです。
「健康コード」については、《個人情報保護法》成立の背景となった個人情報保護に関する意識の高まりの一つのきっかけにもなった面があるように思われます。当時から指摘されていた濫用の懸念が現実のものになったという意味で、なかなか重要な事件のように感じましたので、備忘のため書き留めておきます。

ちなみに、処分内容については、主犯格の疾病対策部門の部長は職務取消処分、副部長は降級処分になりましたが、ほか3名は過失記録(昇級・昇格停止など)の処分とのこと。いろいろと情状酌量すべき事情があったのかもしれません。

2022年6月21日火曜日

6月第3週:①応急管理部の「一案双罰」典型事例、②モバイルアプリ情報サービス管理規定の改正、③「COD除去剤」を用いた環境規制の潜脱

①応急管理部の「一案双罰」典型事例

応急管理部から、安全生産に関する処罰事例が公表されました。今回は、法人と責任者個人、双方に対する処罰(いわゆる両罰規定)の適用が大きく取り上げられています。
発生した事故について、法人と責任者個人の双方がそれぞれ処罰を受けるのはごく一般的な処理なのですが、今回、興味深いのは、これらの事例はいずれも検査によって安全生産管理体制の不備が指摘されたことで処罰が行われた事例であることです。
事故が起こったときの対応はもちろんですが、事故が起きていなくても管理不備で責任者の処罰につながってしまうことがあります。

②モバイルアプリ情報サービス管理規定の改正

スマホアプリなどに関する管理規定が改正されました。アプリ提供者がコンテンツがもたらす結果に対して責任を負うこと、したがって違法な情報が伝播しないよう自覚的に不良な情報に対して予防することを求めています。また、いわゆるボットを使ったアクセス水増しや高評価の捏造などによってユーザーをダウンロードするよう誘導することを禁止することなども規定されています。

③「COD除去剤」を用いた環境規制の潜脱

水質汚濁の指標の一つとして化学的酸素要求量(COD)という指標があるところ、この指標を下げることを目的とした「COD除去剤」という商品があるそうです。実際には排水の水質を向上させる効果がないのに、環境モニタリング設備で検出されるCODの数値だけを下げるということで、環境汚染の規制を不正に逃れるための手段と認定されて、会社に罰金20万元、主たる責任者であった被告に執行猶予付きの懲役刑が言い渡された事例が紹介されていました。便利過ぎる商品にはお気をつけください。

2022年6月15日水曜日

(日本の話題)日本国内で外国人間で交わされた契約の解釈(当事者間に周知の外国法の法理)

仕事柄、日本にお住まいの中国人の方々からのご相談を承ることもありますが、基本的なことでも、よく考えるとまだまだ知らないことも多いなと感じることがあります。


ともに日本に居住し、同じ国から来ている外国人の方々が、外国人同士で契約を締結しているとき、果たして、その契約に細かい定めがない部分について、どう解釈するべきなのでしょうか。

契約解釈は当事者の合理的意思によるべきと言いますが、外国人の方々が同じ国から来られている場合、その合理的意思は、よく知らない日本法ではなく、慣れ親しんだ本国法の発想に近い場合が多いのでは?という気がします。
この点、私も詳しく研究したことはなかったのですが、判例百選にも掲載された裁判事例があり、以下のような判示がなされていたようです。
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大阪高裁昭和37年10月19日判決
...わが法律(日本法)を準拠法とする場合においても、契約自由の原則の範囲内において、契約の内容の細目の定めをなさないで、その部分につき外国法の規定ないし当事者間に周知の外国法の法理に委ねることも許される。また現実にかかる明示的の指定がなくとも、契約の性質その他の諸般の事情から推定される当事者の合理的意思により定まる法律ないし法理により右契約を規律しうるものと解されている。...
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離婚や相続の場合は、法の適用に関する通則法で本国法になる場合が多いので分かりやすいのですが(外国国籍のご夫妻が夫婦喧嘩をしているとき、日本法を考えているとは到底思えませんので)、契約の場合は、多種多様でありケースバイケースで異なるところもあるので、なかなか奥が深いなと感じます。

このブログはあまり中国から来られた方々がご覧になることは無いと思いますが、一つ、何かのときにはご参考になればと思います。


2022年6月14日火曜日

6月第2週:①上海市の経済回復・復興加速行動方案に関する100のQ&A、②反独占法執行の年度報告、③契約モデル文書ライブラリ

①上海市の経済回復・復興加速行動方案に関する100のQ&A

5月末に上海市が発表した、封鎖解除後の経済回復・復興加速に関する行動方案について、6月3日に100のQ&Aが公表されていました。
従来から報道等でも紹介されているような税制優遇や政策補助などについて、実際に申請しようとするときに気になる具体的な事項が記載されており、分かりやすくなっていると思います。
例えば、
  • 飲食業などを対象とした特定業種向けの支援に自社が該当するかどうかにつき、業種を知るために経営範囲の照会システムで検索することができる。
  • 自社が政策補助の対象となる小規模零細企業に該当するのかどうかにつき、小規模零細企業の名簿が作成されており、企業信用情報公示システムで関連データを入力すれば自動的に判定されて名簿に掲載される(判定プロセス無し)。
といったような、最新のシステムを活用した実務上役立つ知識が掲載されています。

②反独占法執行の年度報告

国家反独占局が2021年の反独占法関連の法執行状況についての年度報告を発表しました。市場支配的地位の濫用や企業結合規制などに関してインターネット、公共事業、医薬、建築材料、半導体、物流、新エネ車、化学工業の各業界で多くの典型事例が紹介されており、最近の反独占法の重点的なトピックを振り返って頭を整理するには便利かと思います。

③契約モデル文書ライブラリ

国家市場監督管理総局のWebサイト上に、「契約モデル文書ライブラリ」が掲載されました。
https://www.samr.gov.cn/(首頁→服務→合同示範文本庫)
従来から建築工事請負契約や土地使用権払下契約などは中央政府所定の書式で統一的に運用されていましたが、そういった実務上必ず使われる書式が一つのところに集められているので、便利に活用いただけるかと思います。
但し、中国国内の各種取引に関するものであるため海外から見る必要はそもそも無いだろうということなのか、日本からのアクセスはうまくできない場合があるようです。

2022年6月6日月曜日

6月第1週:①経済安定のための33項目の政策措置、②中小企業からの購買の強化、③GB 23350-2021改正

①経済安定のための33項目の政策措置

国務院から包括的経済対策として33項目の政策措置が発表されました。
増値税の還付政策や中小企業向け金融支援、国有建物の賃料減免など、従来から既に実施されているものが多い印象ですが、中には、「エネルギー分野で基本的条件が整っていて今年の着工が可能な重大プロジェクトについてはなるべく早く実施することを推進する」といったように、ニュースで見るような出来事の政策的背景が改めて分かるようなものもあります。

②中小企業からの購買の強化

政府調達の分野でも中小企業からの購買を強化する施策が財政部から打ち出されています。
上記の33項目の包括的経済対策にも含まれていますが、400万元以下の工事プロジェクトは可能な限り中小企業から調達することなどが規定されています。
また、大企業が小規模零細企業とコンソーシアムを組成することも奨励されており、入札評価において加点事由として考慮されるとのこと。
自社及び主要な取引先が企業規模の分類上どのランクに分類されるのか、政策によって異なる場合もありますが、こまめにご覧いただくことをお勧めいたします。

③GB 23350-2021改正

2021年9月に食品・化粧品の包装に関する強制性国家基準についてご紹介しました。施行期日は2023年9月1日からとご紹介していました。
ところが、今回、月餅と粽子(中華ちまき)の過剰包装問題が突出しているということで、「第1号修正書」が発布されました。
月餅と粽子については包装の上限を4層から3層にスリム化させ、包装コストも100元以上の月餅と粽子の場合は上限を20%から15%へと制限を厳しくする内容で、2022年8月15日から施行することになったとのことです。
今後も、来年9月を待たず、一部の商品について先行して規制が強化される可能性もありますので、商品を企画される際は包装をスリム化することもご検討ください




2022年5月31日火曜日

5月第4週:①安全生産の重点取締活動、②上海市工会条例の改正、③離職証明書の発行時期

①安全生産の重点取締活動

安全生産の重点取締「百日清零行動」が6月初めから9月上旬にかけて行われます。
2021年11月第3週にご紹介していたとおり、この3月までの間を自主検査・是正期間と位置付けて特定業種や特定の職業資格などいくつかのテーマを重点項目とした取締に関する通知が出ていましたが、今回は2022年3月第1週に重点取締対象とされた旨をご紹介していた鉄鋼、アルミ加工、粉塵作業などが重点範囲として挙げられています。

②上海市工会条例の改正

上海市で労働組合(工会)に関する条例が改正されました。
報道では、個人で宅配業務を請け負ういわゆるフリーランスの人たちにも労働組合に参加する権利があることに言及するなど、労働組合の都市の運行安全保障に関する機能を強化したものと紹介されています。
上海ではもともと労災死亡事故や従業員の健康問題への重大危害に対する調査処理には必ず労働組合が参加しなければならないとされていましたが、生産安全事故もこのような労働組合が調査処理に参加すべき場面の一つであることが明記されるなど、企業活動に影響がありそうな内容も含まれています。

③離職証明書の発行時期

裁判事例で、退職した従業員について、次に新しい会社に就職するために離職証明書を求められたところ、前の会社の方が直ちに離職証明書を発行しなかったため、再就職機会を失ったとして賠償を命じられた事例が紹介されていました。
離職証明書には、離職に至った事由(自己都合か会社都合かなど)が記載されるほか、離職後における制限事項などが記載されることがあります(2021年9月第4週ppt資料参照)。ですので、どのように記載すべきか迷う場面もあるかもしれませんが、発行時期が遅れてしまうとそれ自体が別のトラブルを招くことになります。

2022年5月24日火曜日

5月第3週:①上海市でのコロナ禍対応に関する法律問題FAQ、②公平競争審査制度の改善、③生態環境損害賠償管理規定

①上海市でのコロナ禍対応に関する法律問題FAQ

上海市司法局から、コロナ禍における法律問題に関するFAQの第4集が公表されていました。
政府機関が実施している各種の制限措置については、《伝染病防止法》や《突発事件対応法》は「授権性立法」であり、重大な社会的危害をできるだけ早く制御・軽減・除去できるように政府関係部門に一連の緊急対応措置をとる比較的大きな権限・裁量の余地が付与されていることなどが説明されています。
第1集から第3集はいずれも3月末に相次いで発表されていたので、少し間隔が空きましたが、内容的には第1集から第3週の方が、従業員関連の人事労務対応や取引先との契約の処理に関する事項が対象となっていたので、企業活動にとっては参考になる内容であったかと思います。

②公平競争審査制度の改善

市場監督管理総局から、公平競争審査制度について、4つの面からそれぞれテスト地域を選定して改善の検討を行うことが発表されています。
例えば、江蘇省と重慶市では情報の自動収集やビッグデータ分析による審査レベルの向上、安徽省と広東省では市場主体からの通報に対する処理の改善など、各地で異なる改善項目がテスト対象となっているようです。
ちなみに、「公平競争審査制度」とは、市場主体の経済活動にかかわる法令や政策の制定にあたり、市場競争に対する影響を評価し、競争排除・制限効果を有するような法令については調整をしたうえで発布するという制度です。
詳細は2021年6月に発布された《公平競争審査制度実施細則》などをご参照ください。

③生態環境損害賠償管理規定

環境汚染があった場合の損害賠償に関する新しい規定が発布されています。
環境汚染が修復できる場合と修復できない場合の2つに分けて、修復できる場合には修復する、修復できない場合は損失を賠償又は代替措置により環境機能を同等に回復する、といったことが規定されています。
環境汚染に関しては司法と行政の重なり合う部分があるため、手続についても細かく規定されています。
引き続き環境汚染については関心の高い政策テーマということになりそうです。

2022年5月17日火曜日

5月第2週:①先週休載のお詫びとお知らせ、②職業資格の「ニセモノ証書」にご注意、③企業のコスト負担軽減の各種政策、④民間企業における職務侵奪犯罪の典型事例

①先週休載のお詫びとお知らせ

先週はブログの更新を怠っておりました。ご覧いただいている皆様にお詫び申し上げます。
先週、会員制Webサイト「キャスト中国ビジネス」のサイトがリニューアルになりました。
15年ぶりの大幅刷新で、スマホからも見られるようになり、画面もとても見やすくなっています。私も新しい動画コンテンツを掲載してもらっています。
人事異動の時期です。中国にこれから赴任される方々、既に中国事業に長らくかかわっておられる方々、どちらにも是非お役立ていただければと思っています。
機会がございましたら、どうぞ一度ご覧ください。

②職業資格の「ニセモノ証書」にご注意

人力資源社会保障部とネットワーク情報弁公室から、技能類「山寨」証書の取締活動に関する通達が出ていました。
「山寨」というのは、海賊版や模倣品といった意味の言葉ですが、職業資格まで海賊版が作られているのかと驚きました。
ネット上では、「政府推奨」、「合格保証」、「好待遇就職」などの宣伝文句で、「職業資格」「職業技能鑑定」など如何にも就職に有利なように見える資格が取得できるように見せて受講者を集める悪質な業者がいるようですので、個人でスキルアップを目指す方々はお気をつけください。
逆に、事業者の立場で言うと、国家が定めた職業資格以外に、何らかの職業資格と紛らわしいような制度を作ってしまうと、これら悪質業者と同列に扱われてしまうかもしれないと言えるかと思います。
コロナ禍で出勤できない間に自己研鑽に励もうという熱心な方々が、かえって思いがけないトラブルに遭ってしまわないように願っています。

③企業のコスト負担軽減の各種政策

国家発展改革委員会、工業情報化部、財政部、人民銀行が連名で、企業のコスト負担軽減のための政策メニューに関する通達(2022年版)を出しています。
小規模零細企業向けの税還付など税制優遇、貸し渋り(限贷)や貸し剥がし(抽贷)の防止などの金融施策、行政許可事項の削減などによる制度性コストの低減、失業保険・労災保険の納付猶予などの人件費負担軽減、賃料減免などコスト低減、通行料免除など物流コスト低減、中小企業への代金支払遅延の取締、IT活用支援など、見慣れた項目が並んでいます。
概略のみの箇条書きのような内容ですので、具体的な内容はそれぞれ各企業の所在地のルールを見る必要がありますが、自社で活用可能なメニューを見落としていないかどうか、全体を見渡してみるチェックリスト的に使うにはよさそうに思います。

④民間企業における職務侵奪犯罪の典型事例

最高人民検察院から、職務侵奪罪(日本で言えば横領や背任)に関する典型事例6件が新たに公表されました。
昔からある経費精算をめぐる不正行為や商流への親族・知人の介在などの事例ですが、Eコマースの世界で「発票」が無い支出が増えている状況を反映した事例や、コロナ禍で現地捜査がしづらい中でチャット履歴などの証拠で犯罪行為を立証した事例などがあります。
昔からある類型の不正行為でも、時代に合わせて手口も対策も少しずつ変わってきていますので、ときどきは勉強しておこうと思っています。


2022年5月2日月曜日

4月第4週:①上海市における労働関係に関する通知、②ドローン輸出と《輸出管制法》、③職業に関する民間資格、④中国学術文献データベース(「知網」)をめぐる紛争

①上海市における労働関係に関する通知

上海市の人社局から、コロナ禍での操業停止に関連する人事労務関連の各種事項についての通知が出ていました。
  • 労働報酬、業務方式、労働時間などの変更については、メールやチャットアプリでの意見徴求と協議による変更も「コロナ禍期間のみに適用」とすれば可能とする。(二)
  • 政府による外出制限によって一つの賃金支払周期(例えば月給制なら一ヶ月)を超えて業務に従事できない場合(テレワークできる場合は除く)、労働者側との協議を経て、一ヶ月を超えた後は生活費のみ支給することができる。(九)
といったような、上海での現地法人の人事労務管理に携わっている方々は必ずご覧いただくべき内容が含まれておりますので、現地法人の人事労務のご担当者には是非一度、見ていただくようにお伝えいただければと思います。

②ドローン輸出と《輸出管制法》

ドローン大手のDJI(大疆)がロシアとウクライナでの商業活動を暫定的に停止したとのこと。
《輸出管制法》を含む関連法令のコンプライアンスを改めて自社内で見直すためというコメントも出ているようです。
これまで、中国の《輸出管制法》に関心を払うべき場面は多くはなかったように思いますが、民用技術が戦争にもかかわってしまうことが増えているのかもしれないと思いました。

③職業に関する民間資格

江蘇省のとある民間の試験認証センター(資格学校?)が「全国」で「職業資格」として認められるかのような「登録職業資格証書」を勝手に作っていたようで、問題になっています。今回、人社部から、このセンターの資格証書は国家資格に関するものではなく、採用や昇級、個人所得税優遇などの如何なる職業資格に関する優遇もありません、という声明が出ていました。
コロナ禍で外出できない時間を自己研鑽に、と考える前向きな方々を騙すような話でもありますので、お気をつけいただければと思います。

④中国学術文献データベース(「知網」)をめぐる紛争

精華大学が主導する「知網」という学術文献を一括して大きなデジタル図書館のようなものを作るプロジェクトがあります。CNKIとも略称されます。教育部や国家版権局などの協力のもと推進されており、学校や研究機関が会員になってデータベースを利用するのですが、その費用が高すぎるということで、反独占法違反の市場支配的地位の濫用行為があるとの訴訟を起こされています。実はこのプロジェクトは、単に利用者から費用を取るだけではなく、逆に、利用される論文などを掲載した人たちに対しては収益を分配するということになっているのですが、徴収される費用と分配される収益のバランスが取れていないということも問題視されているようです。
郭兵氏という浙江理工大学法政学院の特任副教授の方がいらっしゃいまして、今回の訴訟ではこの方が原告になっているのですが、実はこの方、杭州野生動物園を訴えて顔認証に関する中国初の裁判事例とされる事例の原告にもなった方です。単に発生した裁判事例だけを観察して分析・論評するだけではなく、自分で原告になってこういった新たな事例を作ってしまうというのは、本当に仕事が好きな方なのだろうなと思います。

2022年4月27日水曜日

4月第3週:①中国版iDeCo?、②中国向けEMSがサービス停止に、③操業再開と移動制限

①中国版iDeCo?

個人が任意に加入する個人養老金に関する新たな政策意見が出ていました。
専用口座を開設すること、年間の上限額が決まっていること、年金受給年齢に達するまで引き出せないこと、さらに、どの金融商品で運用するかは個人が決められることからすると、中国版iDeCoに相当するものかなと思います。銀行の理財商品や年金型の生命保険など、さまざまな金融商品が対象になるようです。
節税メリットがどの程度あるのかにもよりますが、中国の皆さんが何十年も先にならないとおろせないようなものに積立をするというのは、一昔前のイメージではちょっと考えづらいような気もしますが、私自身も一昔前のイメージから脱却しなければならないのかもしれません。

②中国向けEMSがサービス停止に

  (※ こちらは4月22日時点でのコメントです。)
日本の新聞に出ているのを見逃して、中国の新聞の記事を見て日本での変化に気づくというのもお恥ずかしい話ですが、日本から中国に向けたEMSと小包の取扱いが停止になったようです。
日本郵政のWebサイトでも確認してみました。(4月22日現在)
中国の記事を見ていると、一時的なもののようですが、再開時間未定とのこと。
業務に支障が予想されますので、事前の確認と早めのご準備をお勧めします。

③操業再開と移動制限

上海で企業の操業再開が進んでいるとの記事を目にして、「家から出られないのに、どうやって再開するのだろうか?」と不思議に思っていましたら、ちょうど、「15のよくある質問への回答」という記事が出ていました。
このうち問14部分で、「操業再開のために小区を出て職場に戻る申請をしたものの、小区がそれを許してくれません。どうすれば良いですか?」との質問があります。
基本的に企業側で人員の補充をして対応せよということですが、一部のキーになる職位の従業員の方については一定の条件で職場復帰を許すという仕組みも作るようです。工場の操業は一定の人数は必要ですし、リモートワークというわけにもいかず、工場に行くには当然ながら交通手段も必要ですから、ちょっと想像もつかないですが、早めの正常化を願うばかりです。





2022年4月20日水曜日

4月第2週:①商標の悪意による登録行為の10類型、②アカウントのIPアドレス所在地を表示、③大量のユーザーが育てるAIキャラクター

①商標の悪意による登録行為の10類型

悪意による商標登録行為、最近では冬季オリンピックが北京で行われましたので、そのオリンピックのキャラクターである「ビン・ドゥンドゥン(氷墩墩)」も人気です。パンダに似たかわいいキャラクターですね。これに便乗して、「雪墩墩」(氷→雪に変えただけ。)とか、「餅敦敦」(中国語の発音では「氷」と「餅」は声調が違うだけで同じbing。)といった商標登録が申請されているとのこと。
もちろん、話題になったオリンピック選手の名前を勝手に商標登録してしまう例もあります。
これは昔からある例なのですが、今回、国家知的財産権局が発布した通知で悪意の商標登録とされる10類型には、「出願数が多すぎる」、「大量に譲渡している」といったように、商標出願の内容そのものではなく申請者の行為を全体的に観察した類型も挙げられています。
悪意による商標登録の取締、以前から何度も言われていることですが、それでも後を絶たないのは、訴訟などで争って取り消すよりも買ってしまった方が早いということが多いからだとも思えます。定型的且つ大量に処理できるようになればコストも下がるはずなのですが、普通の企業が頻繁に出遭う問題でもないので、なかなか難しいところがあるようにも感じます。

②アカウントのIPアドレス所在地を表示

中国のいくつかのSNSで、事件の関係者になりすまして投稿することで閲覧数を増やそうとするような不正行為が目立つということで、その対策として、アカウントのIPアドレスの所在地を公表するようにしようという話が出ています。
いたちごっこと言えばいたちごっこですが、アプリの仕様が変わったときには、なぜそのように変わったのか、背景を見てみると面白いこともあるかもしれないと思いました。

③大量のユーザーが育てるAIキャラクター

スマホアプリ上でAIのキャラクターと会話をすることができ、且つ、その会話内容は多くのユーザーがアップロードする内容に従って決定されるというアプリがあるそうです。
今回の裁判事例では、実在の人物を基にしてしまったために、その人物の人格権を侵害しているとして賠償を命じられた事例を紹介しましたが、多数の方々の認識が集約されて一つのAIキャラクターが形成されるというのは、なかなか興味深いように思いました。
「一億総クリエイター時代」とも言われますが、誰かがクリエイターになると意識しなくても一人一人の日々の活動から何かが生み出されていく、なんとなくロマンを感じるところもあります。

2022年4月13日水曜日

上海市の「三区」分区差異化管理についてのFAQ


上海では現在、小区(団地のような区画)単位で、封控区(14日隔離)、管控区(7日隔離)、防範区(それ以外)の3つに区域を分けた管理に入っています。
【4月11日】「三区」区分リスト管理の発表

ただ、外出できるはずの防範区でも、実際には外に出られない小区もあるようで、FAQにその問答が掲載されていました。
【4月12日】「三区」分区差異化管理のFAQ
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問4、 なぜ、一部の防範区ではまだ外に出られないのですか?
答 防範区に感染陽性者が発生した場合は、封控区へと調整されます。
  隣接地区に比較的多くの封控区がある、クラスター性のリスクを発生させる可能性がある防範区については、各区は状況に応じて、措置を強化して管理レベルを上げることがあります。
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问4、 为什么有的防范区还是不能出门?
答 如防范区内出现阳性感染者,则调整为封控区。对毗邻地区有较多封控区、可能产生聚集性风险的防范区,各区可根据情况,强化措施提级管理。
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中国では公表された方針に実態がなかなか追いついてこないことがあるので、現場の情報はとても大切だと思います。





4月第1週:①「信訪」(陳情)に関する条例、②化学工業園区への移転促進、③失業保険と雇用安定還付金、④金融安定法の意見募集

①「信訪」(陳情)に関する条例

中国に赴任されたことがある方々は目にされたことがあると思いますが、私が北京にいたときは、毎朝、通勤の途中で、ずっと人が並んでいるのを見かける場所がありました。人気のお店などではなく、裁判所の陳情窓口でした。各種の政府機関にも同じような陳情窓口がありました。
「お上に直訴」するにもルールがありまして、《陳情条例》という法令で「多数で陳情に来る場合は代表5人までを選んで」というような決まりもあったのですが、今回はこれに代わって《陳情業務条例》というのが発布されたようです。ちなみに、多人数で押しかけるのではなく5人の代表を選んで、というルールは変わりがないようです。
会社が従業員と揉めたとき、従業員が政府に「あの会社はけしからん」と集団で陳情に押しかけることがあります。そういった状況も頭に入れて応対いただく必要がありますので、平素から政府機関との根回しは配慮しておいていただくのがよいかと思います。

②化学工業園区への移転促進

石油化学その他化学工業の化学工業園区への移転を促進する政策が出ていました。都市部にある危険化学品生産企業の移転を全面的に完了すること、2025年までに化学工業園区に業界の総生産額の70%を集約すること等の方針が示されています。
従来から都市人口の拡大に伴って化学工業分野の企業の郊外への移転は求められてきたところですが、化学工業は大規模なプラント投資を伴う業界でもありますので、移転に伴う補償などの予算がつくのかどうかも気になるところではあります。

③失業保険と雇用安定還付金

失業保険、日本の感覚では書類さえ揃えば受給できるはず、という意識になってしまうのですが、私が数年前に聞いた話では、中国の失業保険は受給することが非常に難しいようです。
なぜ受給できないのかも分からないとのことで、補助金の場合と同じように、法定の条件を満たしているかどうかの判断が人による部分があり、さらに、予算による制約があるので、申請者の見えないところで、なぜか受給できないということになるのかと推測しています。ただ、もちろん、日本と同じく、申請者の知識不足で必要書類を用意できていないだけという場合もあるでしょう。
中国でも、飲食、小売、観光、航空、旅客といった業界はコロナ禍により特に大きな打撃を受けており、中小零細企業における雇用安定もさらに重要になっています。こういった部分で、失業保険の給付を拡大するとともに雇用維持に対する奨励を引き上げて、雇用を維持しようという政策が出ています。失業保険が普通に受給できるようになってくれれば、雇用をめぐる会社と従業員とのトラブルも少し解決しやすくなると期待しています。

④金融安定法の意見募集

新聞でも報道されていますが、中国で「金融安定法」という法律を制定しようということで意見募集稿が公表されています。
過去にも中国についてはシャドー・バンキングとか地方政府融資プラットフォームといったシステミック・リスクが指摘されたことがありましたが、現在ではそういったシステミック・リスクが多様化・潜在化している、グローバル化しているといったことも言われています。
金融安定保障基金という基金も設立されるとのことで、システミックな影響をもたらす重大な金融リスクの処置に用いるのだそうです。

2022年4月5日火曜日

3月第5週:①「信用修復」をめぐる詐欺、②他社サイトの実績情報を盗用、③意匠権の権利期間延長(1年経って)

①「信用修復」をめぐる詐欺

中国では、2013年頃から、債務が返済できない債務者のうち一定の悪質とみなされるものについてブラックリストが作成されて「信用中国」Webサイトなどで公表される仕組みがあります。2014年頃からは行政処罰情報も公開されるようになり、さまざまな面で不利益が課されるようになっています。このような不利益を課す制度は信用失墜懲戒(中国語「失信惩戒」)と呼ばれています。
一方で、これらネガティブな情報が公開されてしまっている状態を解消する「信用修復」(中国語「信用修复」)の申請をすることができる制度もあります。これは特にコロナ禍において企業活動を維持するためにも重要になっており、2020年には最高人民法院が信用修復メカニズムを適切に運用するよう求めてもいました。
ところで、今回ご紹介した発改委弁公庁からの通知文によると、この公式な制度・手続である「信用修復」と似て非なる「征信修復」というサービスを宣伝して高額の費用を採る業者がいるそうで、これを厳しく取り締まる必要があるとされています。
「征信」とは、日本語では「信用調査」とか「与信」とか訳出されていますが、ローンの審査などで一般にも知られた言葉で、「征信修復」と言われると公式な制度・手続と非常に紛らわしいようです。
日本でもいわゆる多重債務問題との関係で、金融機関のブラックリストから事故記録を消すという詐欺があったようですが、中国の場合は公に似たような制度がある分、余計に紛らわしいです。

②他社サイトの実績情報を盗用

消費者からのクレームを受け付けて、それをメーカーに連絡することで解決してあげるというWebサイトがあり、これをめぐる判決の記事が一つ、新聞で紹介されていました。私が上海に赴任していたとき、ラジオ番組でも同様のコーナーがあり、タクシーの中でよく運転手さんが聞いていたことを思い出します。音楽番組はあまり聞かなかったので、中国ではこういう社会派の番組が人気なのだなと意外に思っていたものです。
今回はWebサイトに関する事件で、他社がこのサイトに掲載されたクレーム情報を勝手に自社サイトにも掲載して、自社にも多くの解決実績があるような印象を与えるように装ったということで、不正競争防止法違反で提訴されていました。判決では、このように勝手に他社のサイトに掲載された情報を流用することは商業道徳違反であり規制すべきものと判断しました。虚偽宣伝とも認定しているのですが、一つ一つの掲載情報の真実性よりは全体としてデータベース全体を一部盗用していることの適否が問題なわけですから、商業道徳違反という一般条項に基づく判断を持ち込んだのは実態に即した判断と言えると思います。ちょうど2週間前にご紹介した不正競争防止法の司法解釈に関係するもので、具体的な適用場面の事例の一つとして参考になるものと思いました。

③意匠権の権利期間延長(1年経って)

2020年の《特許法》改正により、中国の意匠権(中国語「外观设计专利权」)の権利期間は従来の10年から15年に延長されました。この改正は2021年6月1日から施行となっていましたが、今回は3月下旬に、権利維持のための年金について11~15年目の年金を年3000元とするという通知が出ていました。施行は1ヶ月後の5月5日からとのこと。
もう随分前に施行されていたのになぜかというと、どうやら、年金は毎年の権利期間が過ぎる1ヶ月前に納付するので、去年の6月1日以降に権利期間が延びた分の年金の納付期限がちょうど5月だからということのようです。
《特許法》改正、今年の6月施行だったか?と時間を一年勘違いしてしまい、我ながら歳をとったなと感じました。