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公益通報者の匿名性: 「通報者探し」(通報者の探索)をしてはいけないことの根拠条文(日本)

最近何かと話題の公益通報について。 業務上、社内の不正などに関する内部告発について取り扱う機会が多いので(特に中国は匿名での内部通報は多いです。)、少し書き留めておきます。 匿名での通報があったときに、なぜ「通報者探し」(※)をしてはいけないのか?という点について、法令上の根拠条...

2021年12月15日水曜日

12月第2週:①中小企業に対する未払金の精算、②国有金融機関の資産の譲渡に関する新たな通知、③期限切れ間際の特許の活用、④5G消息(メッセージ)の商業利用

①中小企業に対する未払金の精算

資料p.2について。
近年はこの時期になると見慣れた号令になってきた印象もありますが、国務院常務会議から各政府機関や事業単位に対して、中小企業に対する支払を遅らせている買掛金や工事代金などをきちんと支払うように、という呼びかけが出されています。
《中小企業代金支払保障条例》が昨年9月から施行されており、政府機関や大企業については、毎年3月31日までに前の年の中小企業への未払金の契約数量・金額等の情報を公表しなければならないというルールが始まっています。
各企業の財務や営業のご担当者は、長期未回収になっている売掛金が、取引先側できちんと公示されているかどうか、一度見てみていただくのは如何でしょうか。

②国有金融機関の資産の譲渡に関する新たな通知

国有系の金融機関が保有している資産の譲渡に関する新しい通知が出ています。
昨今の恒大集団の件などもあり、企業が自らの有する資産の換価を進めていく動きは今後も推進されていくことが見込まれるところですが、国有系の金融機関やそのグループ会社(地方政府が出資しているものを含みます)の有する株式等の資産の譲渡については、国有資産監督管理委員会の定めた《金融企業国有資産譲渡管理弁法》が従来から存在しており、国有資産の一部である財産が廉価で売却されてしまうことがないように厳格な手続が定められています。つまり、国有資産は迅速・機敏に譲渡して換価することが制度上できないことになっています。
今回の上記通知でも、資産評価や公開取引などの手続を厳格に履践するように求めているわけですが、一点、注目すべき点として、広く譲受人を募る公開取引をせずに直接、第三者への譲渡契約を締結できる場面の一つとして、「投資合意や契約で約定した条項の履行として退出する場合」や「契約の約定に基づき第三者に優先購入権を行使する場合」には、国有金融機関内部の決裁プロセスを経て、直接に譲渡を行うことができるとしている点があります。
今回の通知は国有系金融機関やそのグループ会社が出資している株式・出資持分などの譲渡に関するものですが、金融機関でない一般の国有企業に関しても、合弁契約や投資契約において優先購入権や売渡請求権を約定しておくことは改めて重要になってくると思われます。

③期限切れ間際の特許の活用

かねてから特許紛争を繰り返している中国の電器メーカー2社の間での紛争について、日系企業から権利期間の満了を目前にした特許を買い取って、その特許に基づいて相手方に対して賠償請求するという新しい「手口」が開発されたようで、裁判所もそのような権利行使を認めたという事例が出ていました。資料p.4の事例です。
日系企業各社は多数の特許を中国でも登録されていると思いますが、既に権利期間満了を間近に控えているものも多いと思われます。そういった場合、このように中国企業において活用いただく可能性もあるかと思いますので、一つのアイデアとして考慮していただくと可能性が広がるのではないかと思います。

④5G消息(メッセージ)の商業利用

日本ではリッチコミュニケーションサービス(RCS)と呼ばれるようですが、従来のショートメッセージの機能を拡充して、テキストのみならず画像や動画を使った相互通信ができるようになり、アプリのインストールや「お気に入り」登録などをせずとも、ショートメッセージから直接、予約や購入ができるというものだそうです。日本で言うと、「+メッセージ」というアプリもこれに該当するそうです。
この「5G消息」の商業利用が徐々に進んでおり、冬季五輪でも運用されるとのこと。中国聯通、中国電信、中国移動といった通信事業者がそれぞれ商業利用への投入を進めており、中国移動が工商銀行と共同でリリースしたデジタル人民元サービスも既に10月から始まっているそうです。
確かにアプリがたくさんになり過ぎて分からなくなりますし、便利になるのは良いことなのですが、今でもショートメッセージはどれが本物でどれがニセモノだろうか?と迷ってしまうくらいですから、一ユーザーとしては、正しく活用できるようについていくのは大変なような気もします。一方で、ビジネスのうえでは欠かせない存在となってくることが予想されますから、是非、ユーザーに使いやすいものが開発されていくことを期待したいです。

2021年12月10日金曜日

セミナーに登壇させていただきました。(中国《データ安全法》と《個人情報保護法》に関する対応)

昨日、標記のセミナーに登壇させていただきました。
相変わらず拙いお話で、一時間半という短い時間でしたが、
参加者の方々皆様、熱心にお聞きくださっていたようで、
改めて関係者各位に御礼申し上げます。
2分で分かる!という触れ込みでありながら、
実際には一時間半かけても話し尽くせないところがあったため
そこはどうなのか?というご指摘もあろうかと思いますが、
どうぞご寛容を賜れますようお願いいたします。

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日本国際貿易促進協会京都総局 様
【終了】2021.12.09(木) 第113回専門セミナー(ウエブセミナー)
演題『中国データ安全法(データセキュリティ法)と、中国個人情報保護法に関する対応』
講師 金藤 力 氏(弁護士法人キャストグローバル大阪事務所 代表弁護士・中小企業診断士)



2021年12月7日火曜日

12月第1週:①インターネット医療と処方箋、②消費者保護のダブルスタンダード、③交通運輸業界の「新業態」の就労人員の権益保障

①インターネット医療と処方箋

《インターネット診療監督管理細則(意見募集稿)》に関する記事が出ていました。2018年に《インターネット診療管理弁法(試行)》などのインターネット診療に関する法令が発布されましたが、その後、細則は未だ整理されていなかったとのこと。
この試行弁法では、初診の患者に対してはインターネット診療は不可としつつ、オンラインでのデジタル処方箋発行を一定の条件のもとで認めています。DTP薬局(Direct to Patient)がオンライン診療のうえで処方箋が発行できるような仕組みができれば、病院に長蛇の列を作るような必要もなくなり、非常に効率的になるように思われるわけですが、利便性ゆえに様々な新しい問題も起こり得ます。
今回のこの記事では、「統方」(医師の薬品使用につき統計し、それを医薬販売員に提供して、その薬品使用に応じたリベートを渡す行為)、「補方」(先に薬品を販売して後で処方箋を補充する行為。すなわち医師の関与なく患者と薬局がどの薬を使うか決めてしまう。)といった行為を禁止対象としています。日本でも昔から「薬漬け医療」という言葉もあり、過剰な投薬が行われる問題についての対策が講じられてきました。適切に使われてこそ大きなメリットをもたらす医薬品のことですから、経済目的の不正な方法がはびこらないように、効率的な管理が広まって、より効率的に正しく入手できるようになって欲しいものです。
折しも日本でもオンライン診療のガイドラインの見直しが行われており、オンライン診療の普及には逆にオフラインの「かかりつけ医師」(日頃より直接の対面診療を重ねている等、患者と直接的な関係が既に存在する医師)の方々の活動が重要になってくる面もあるなど、オンラインとオフラインの連係を取る仕組みが今後も大切になるのは日本も中国も共通なのだろうと思います。

②消費者保護のダブルスタンダード

資料p.3の記事について。
10年も前に書いた論稿でも書きましたし、その後も何度も同じことを色んな場面で申し上げているところですが、「中国国内における消費者保護は、中国以外の諸外国(日本を含む)における消費者保護に比べて、同様に設定されていなければならない」というのは、法律の世界でもそうですが、それ以上に、マーケティングの観点からは必須と言えます。
今回は、この典型的な問題で、カナダグースのダウンジャケットが「炎上」したという記事をご紹介しました。すっかり寒くなって、ダウンジャケットが活躍する時期ですので、こういった時期に販売に悪影響が及ぶ話題は、会社の方々としてはメーカーも販売店も驚かれただろうなと思います。
特に製品のリコールなどの場面では、「中国人の生命・身体の安全は、他国の方々よりも軽いと言うのですか?」という極めてまっとうなご指摘を招くことになります。
日本企業各社の製品は、世界でも有数の繊細と思える日本文化の中で暮らす日本の消費者の方々の目を通ってきたものですから、中国の消費者の方々は日本の消費者の方々よりはまだしも大らかではないかな?と思い、堂々と「ご不満があればどうぞおっしゃってください」と販売すれば良さそうにも思うのですが、なにぶんにも実際に応対する店舗や販売者の方々もまた中国の方々ですから、応対に不備が生じることもあります。
クレーム対応は企業の顔の一つですから、どうか日本企業各社は面倒に思わずに、堂々と中国でも展開していっていただければと希望しています。

③交通運輸業界の「新業態」の就労人員の権益保障

Uber(Eatsではない方)、滴滴のなどインターネット配車サービスについて、運転手と乗客に向けてプラットフォームが公示すべき価格計算ルールについて、8部門から連合で新たな政策意見が発布されました。今後、滴滴で配車サービスを利用した後、精算のときには、乗客が支払った総額がいくら、運転手の労働報酬がいくら、その総額から報酬を差し引いた「手数料」がいくら、ということを表示することが求められるとのことです。
また、これらのサービスで働く運転手について、社会保険に参加することを支援していくとの記載もあります。完全に労働関係が掲載させている場合でなくても、配車サービスのプラットフォーム企業が運転手を社会保険に参加させるように促していくそうで、段々と「従業員」ではない労働者の方々が社会保険の仕組みに参加していく仕組みに変わっています。
先日、ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用についての講演を拝聴する機会があって、(薄々感づいてはいたものの)やっぱり日本は特殊なのだなと改めて思ったところですが、「中国だから」の一言で片づけるのではなく、我々が慣れ親しんだ日本の制度と正しく比較のうえで、人事労務の管理を考えていただければと思います。

2021年11月30日火曜日

11月第4週:①労働契約の「解除」と「終了」、②「潼関バーガー」など地域ブランド、③新時代の高齢者業務に関する意見

①労働契約の「解除」と「終了」

中国の人事労務や労働法に関しては、解雇・雇止めのときに発生する「経済補償金」がよく話題になるところですが、今回はその解雇・雇止めの場面について、なかなか興味深い事例が新聞で紹介されていたので、ご紹介しています。
労働契約の「解除」と「終了」は、それぞれ中国の《労働契約法》で解除事由や終了事由が列挙されています。
労働契約の「解除」とは、懲戒解雇・リストラや自主退職などの場面で労働契約関係が終わることであり、労働契約の「終了」とは、定年退職や会社の解散・清算などによって労働契約関係が終わる場面です。
いずれも、世間一般にいう「退職」「離職」であって、従業員の地位を失うという点で違いはありませんので、法律の専門家でもなければ、この2つの用語の違いにあまり神経質にこだわることはないでしょう。(専門家ですら、人事労務を専門にしていないのか、両者を混同されているのを見かけることがあります。)
しかし、この事例では、無断欠勤を理由とする解雇のときに、「労働契約『終了』通知書」と書いてしまったために、裁判所から「本件では『終了』事由は無い」と揚げ足を取られてしまい、解雇無効という判決を出されてしまいました。
この事案の経緯からすると、体調不良を理由とした配置転換が議論されていたようで、配置転換の妥当性や手続についての争いがあったと推測され、この点についての判断に微妙な部分があったので分かりやすい理由を判決理由として挙げた(つまり、違法解雇と判断された本当の理由は別にある)のではないかと考えられますが、企業側からすれば、雇用者側を負けさせるのに便利な口実を与えてしまったことは確かだと言えるでしょう。
言葉一つのことと侮ることなく、スキのない文書管理を心掛けていただければと思います。

②「潼関バーガー」など地域ブランド

陕西省の潼関という地域の名物で、「潼関肉挟饃」という中華式ハンバーガーがあるそうですが、この名物にまつわる商標の事例が知的財産権局から紹介されたということで、記事になっていました。
日本でも地域団体商標制度という地域ブランドを商標として登録する制度があり、陶器の「久谷焼」の例が有名ですが、中国でも地理的標識を集団商標として登録出願することができる「集団商標」という制度があります。「潼関肉挟饃」はこの集団商標として、潼関肉挟饃協会という協会が登録しており、事業者に対して商標使用費の支払を求めて提訴したところ、区域内の事業者から「加盟費」を徴収する権利は無いとされました。また、河南省の「逍遥鎮」という地名も逍遥鎮胡辣湯協会という協会により商標登録されているところ、これは単なる普通商標ということですが、同様に「会費」を徴収する根拠にはならないとのことです。
中国でもこのような地域の業種協会はたくさんあり、反独占法(独禁法)のカルテル摘発事例でもよく見かけるのですが、どうも日本の同じような協会とは少し毛色が違うようなところもあるように感じます。

③新時代の高齢者業務に関する意見

人口の高齢化に対応する国家戦略を積極的に推し進め、高齢者の達成感、幸福感、安心感を高めようということで、新時代の高齢業務についての政策意見が公表されています。
日本の報道でも紹介されていますが、中でも、家庭内における養老、個人の自身による養老という部分を重視している部分は注意を引きます。
在宅で地域コミュニティのネットワークを生かした養老サービスということで、「コミュニティ+不動産管理+養老サービス」の組合せによるモデルがまず掲げられています。その次には養老施設の充実も挙げられていますが、これは経済困難・独居・要介護などの事情がある高齢者向けのものと位置づけられ、施設ありきではなく、まずは在宅での養老をという方向性を打ち出しています。
近年は高齢者に厳しい風潮もときに見られる世の中ですが、「高齢者友好型社会」ということで、社会の敬老の雰囲気を高めていこうということも言われており、これも中国の特徴かと思います。アプリや最新機器を使った健康管理などが目を引きがちですが、それだけではなく、公園で皆が太極拳をしている風景や道端でマージャンに興じている姿なども思い浮かべながら、高齢者サービスを考えていただくのも、中国の高齢者向け事業を考えるうえでの一つの視点になるかと思います。

2021年11月23日火曜日

11月第3週:①中国企業の国外での独禁法コンプライアンス、②知的財産の資産としての活用、③安全生産の特別取締活動

①中国企業の国外での独禁法コンプライアンス

市場監督管理総局から《企業の国外反独占コンプライアンス指針》が発布されました。中国企業が中国国外で活動するにあたり、カルテル等の独禁法違反事件を発生させないように、業種協会への加入前における調査や留意事項、競争業者間で合弁・提携などを行う場合や自社の市場シェアが高い場合の潜在的危険などが説明されています。
中国が《反独占法》を制定してから、まだ10数年しか経過していませんので、まだまだ多くの中国企業では「独禁法のない世界」で育ってきた方々が経営陣に多数いらっしゃいます。もちろん、若手の方々であっても、日本の会社のような独禁法のコンプライアンス教育など受けていないわけですから、おそらく、中国企業内部の独禁法コンプライアンスの意識は日本企業の方々とは差があるものと推測します。
コロナ禍の前は、大挙して海外旅行に繰り出す中国からの団体観光客のマナーが新聞などで取りざたされることも多かったですが(少し懐かしいですね)、中国企業各社が外国にあっても中国国内と同じように振る舞うことは、言われてみればありそうな光景にも思えるので、このようなガイドラインはあった方が良いような気がします。

②知的財産の資産としての活用

先月からの引き続きの話題ですが、早速、特許権の質権設定に関して、より幅広く登記を認める法令改正がありました。
中国企業各社は経済的インセンティブの有無に対して非常に敏感ですから、知的財産権を担保として資金調達ができる機会が広まっていけば、さらに知的財産自身の開発も促進されることが見込まれます。
以前にも少し述べましたが、日系企業各社においても、知的財産を現地法人に持たせて資金調達に役立てることを合弁会社の中国側パートナーから求められる機会が増えてくると見込まれますので、大きな方向性としては知っておいていただければと思います。

③安全生産の特別取締活動

安全生産の特別取締活動が行われます。来年4月から7月にかけて検査が行われますが、その前に11月から来年3月にかけて、各社が自主検査・是正活動を行うことが求められています。
工場での事故防止活動については、日系各企業では平素から取り組みが行われていると思いますが、逆に形式面で、研修はしているのに研修実施記録を残していない場合などがありますので、形式面で資料が整っているかどうか、見直してみる機会としていただくのも良いのではないでしょうか。


2021年11月17日水曜日

中国《個人情報保護法》における同意取得のあり方

中国の話題です。
2021年11月14日付で《ネットワークデータ安全管理条例》の意見募集稿が出ましたが、この中に個人情報に関する同意取得の方法についての規定が若干含まれています。
「単独の同意」はどう取れば良いか?など実務上の疑問を解消する材料の一つになるかと思います。

タイトルから見て、個人情報に関する記述があるのを見逃してしまう方がいらっしゃるかもしれませんので、念のためにて。

2021年11月16日火曜日

11月第2週:①外国人の養老保険(年金)受領問題に関する通達、②個人の破産事件と初の「破産人」、③虚偽訴訟の典型事例、④原料薬産業の発展

①外国人の養老保険(年金)受領問題に関する通達

外国籍で中国の社会保険に加入している方々について、養老保険待遇を受ける(年金を受給する)ときの条件についての通達が出ていました。
定年退職年齢に達したとき、その地方での社会保険加入年数が10年に満たない場合には、前に10年以上の納付実績がある地方で養老保険待遇を受けることなどが示されています。ちなみに、中国での永住権を取得している場合には、中国籍の方々と同じく、納付年数が足りなくても最低年数に達するまで納付を延長して、年金を受給することができるそうです。
日本は年金が地方ごとに分かれておらず、全国で統一的に運用されていますから、何の規定なのかピンと来ない方が多いと思われますが、中国では日本とは異なり地方ごとに社会保険の取扱いが異なるために、どの地方で年金を受け取れるのかという問題が生じます。
ちなみに、実はこの問題は外国人に限ったことではありません。多くの日系企業で、定年退職する従業員が増えてきていますが、これも年金を受給できない従業員が発生するなど、トラブルが多くなっています。中国赴任歴が長い方々でもこれまで出遭わなかった新たな問題ですので、是非、「我が社で定年に近い人はどれくらいいるだろうか?」と一度興味を持って見てみていただければと思います。

②個人の破産事件と初の「破産人」

pptには目次のみ挙げていますが、個人破産の事例について。
「中国で初めての個人破産制度が深センで先行開始」という記事をキャスト中国ビジネスで3月に掲載しましたが、その後、第1号の事件については7月16日に再生(重整)計画が債権者集会で採択されて裁判所に認可され、初の個人再生事例となっていました。
ワークショップでは7月第4週に「全国初の個人破産事件の裁定が確定: 男性が75万元の負債を負って再生を申請」という記事をご紹介していましたが、これは個人再生の事例でした。クレジットカード会社など10社からの負債約56万元について、破産清算では弁済率が33.34%にしかならないところ、再建計画では36ヶ月かけて元本全額を弁済するという計画となったようです。
一方、今回は新たに、上記のような再生ではなく、「破産宣告」を受けた事例が発生して、初めての「破産人」(個人の破産者)として報道等で取り上げられています。
中国の「破産宣告」(中国語でもそのまま「破产宣告」です。)は、申立て受理後に破産要件を満たすときに宣告され、受理が決定された次のステップとなります。破産宣告によって個人は破産者となり、その財産は破産財産となります。
破産宣告に先立って、破産者が引き続き持つことができる財産や支出することができる生活費の金額などにつき管財人が意見を述べ、債権者集会で採択されました。こうして、破産宣告の日から3年間の「考察期間」が始まり、この期間は財産状況の報告義務や高額消費の制限などが引き続き課されることになります。
今後、おそらく全国にも展開される参考になる事例と思われますので、与信管理のご担当者の方々などは一度ご覧いただくと具体的なイメージがつかめて良いのではないかと思います。

③虚偽訴訟の典型事例

虚偽訴訟についての典型事例が紹介されています。債務逃れのために債務を仮装することは犯罪行為でもあります。裁判所も、まっとうな債権者が害されることがないように、執行逃れのための担保設定などには厳しく対応するようですから、裁判所への情報提供なども考えていただくのが良いかと思います。

④原料薬産業の発展

原料薬(原薬)の発展に関する実施方案が出ています。
その解説を見てみると、現状としては、(1)企業のR&Dの能力が不足しており、国際市場では全世界の原料薬貿易額の4分の1程度を占めているものの大部分は付加価値の低いものである、(2)都市化によって原料薬生産企業の移転が必要なのに環境容量不足などの問題がある、(3)生産過程中で用いる溶剤・試薬などの種類が多く、排出量が大きく成分が複雑なため処理が難しい、といった問題が指摘されています。
先端技術を駆使した新薬開発の促進などが方向性として挙げられており、高性能な生産設備や生産過程で用いられる消耗材料を導入していくことを重視するとされていますので、医薬業界に限らず幅広い分野に関係するかもしれません。


2021年11月9日火曜日

11月第1週:①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動、②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)、③安全生産の企業等級

①IT企業に対する個人情報保護などの「524」活動

 IT企業に対する個人情報保護などを含む対応を求める通知が出ています。5つの改善、2つのリスト、4つの向上ということで、短縮して「524」活動と名付けられています。
 名宛人となっているのは中国移動など基礎電信事業者のほかインターネット企業であり、Tencentをはじめとした大手IT企業の主要サービスを列挙したリスト39社分が第一弾として掲載されています。
 今年12月や来年3月を〆切として各種の対応を求めており、アプリやポップアップのウインドウを閉じるボタンを分かりやすく表示すべきことや、カスタマーサービスの月平均応答時間を30秒以内にする目標などが掲げられ、なかなかに細かいことを言われています。アプリやWebサイトの仕様、カスタマーサービスの体制などに影響してくると思われますので、関係ありそうな企業の方はご一読ください。

②美容広告のガイドライン(容貌焦慮)

 自分の外見に自信が持てない、容姿に不安を感じている、そのような心境を指す「容貌焦慮」という言葉が流行しているそうです。今回は美容医療の広告に関するガイドラインが発布されており、このような「容貌焦慮」を生み出してしまうような広告や、容姿の良し悪しと貧富や素養を結びつけるような広告などが、重点的な取締対象とされています。
 日本でも、外見のコンプレックスを煽るような広告はかえって嫌悪・忌避されるということが言われていますが、外見による差別については「ルッキズム」という言葉も話題になっているようですし、少し注意すべき世の中になっているようです。
 ここでいう美容医療は創傷性又は侵襲性の医学技術方法で容貌を修復・再生することを指し、医療機関が行うものですから、適法な資質を有する医療機関でなければならないことは当然で、日系企業に直接関係するわけではなさそうですが、マーケティングの考え方として、一つ、こういった流れを作ろうとしていることは知っておいた方がよさそうです。
 ちなみに、日本でも今年7月に医療広告規制におけるウェブサイトの事例開設というのが出ておりまして、医療機関のマーケティングに携わる方々にとっては参考になるものと思われますので、URLをご紹介しておきます。

③安全生産の企業等級

 税関や外貨管理の規制上は以前から取り入れられている企業の等級分類によって優遇を与える制度ですが、安全生産の分野でも取り入れられることになりました。早速、今月から開始とのことです。
 詳しくはまた別の機会にご紹介しようかとも考えていますが、労災保険料率が下がる、安全生産責任保険の保険料率が下がるなどの優遇が得られるようですので、一度ご検討いただくのも良いのではないかと思います。

2021年11月3日水曜日

10月第4週:①個人情報保護法の施行を迎えての対応、②不動産税の試行拡大、③中小企業に対する段階的納税猶予、④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

①個人情報保護法の施行を迎えての対応

11月1日、《個人情報保護法》の施行日を迎えました。成立・公布後、国慶節休暇を挟んだこともあり、準備万端とはいかない部分もありますが、施行日が近づくにつれ、各企業における取り組みも進みつつあるようです。ただ、《個人情報保護法》による規制は多岐にわたりますので、11月1日までに全ての対応を終えた企業は少ないものと思われ、何に優先して取り組むのかという悩みもあるようです。
この点について、今回、中国消費者協会からは、企業に対して5点、消費者に対して5点、それぞれに向けた注意喚起が発表されており、企業における取り組みの参考になるかと思われます。
但し、私個人としては、各企業の優先順位は一律ではないはずであろうと考えています。事業活動の状況によって事実上問題になりやすい部分とそうでない部分を分けてみて、それによって優先順位を決めて対応した方が現実的でしょう。

②不動産税の試行拡大

5月にご紹介したとおり、「住宅は住むために用いるものであり、投機のために用いるものではない」(「房子是用来住的,不是用来炒的」)ということで、中国では不動産の価格抑制政策が打ち出されています。
今回は、一部地域における不動産税改革の試行についての政策が出て、日本でも報道されています。建物については「房産税(建物税)」、土地については「城鎮土地使用税」が以前から存在していましたが、さらに「房地産税(不動産税)」が課されるということになるようです。既に2011年から、上海では2件目以降の住居、重慶では別荘や高級住宅について課税されていたようですので、まったく新たな税というわけでもなく課税範囲が拡大されるだけのようではあります。土地払下収入に依存していた地方財政からの脱却ということも背景の一つにあるようです。
日本でバブル崩壊に至ったきっかけとしては、不動産向け融資の総量規制と、いわゆる地価税の導入が挙げられることがあります。今の中国の施策を見ると、ついつい日本のバブル崩壊を連想してしまうのですが、中国政府の方々は当然ながら、日本の経験を十分研究したうえで施策を決定しているはずですから、歴史の新たな経験則が生み出されていくのか、興味が湧くところです。
脱線ですが、日本でバブル経済と税金に関する記事を見ていると、明治時代の「ウサギ税」という税金のことが紹介されていました。中国では古酒や骨董品も高値で取引されているようですが、もしかすると今後は何か変わった税金が誕生するのかも?と想像してみたりもします。

③中小企業に対する段階的納税猶予

国際商品市況の高騰、生産コスト上昇などによる影響は製造業について特に大きなものとなっています。そのため、国務院は第4四半期につき中小企業に対して企業所得税や増値税などの納税猶予措置を打ち出しています。年間売上高2000万元以下の製造業の小型・零細企業(個人事業者を含む)については全額の納税猶予、年間売上高2000万元から4億元の製造業の中型企業については50%の納税猶予、特別困難企業については全額猶予となっています。納税猶予は11月1日から来年1月の申告期終了までとなっています。
また、同じ記事で、国外機関投資家が国内債券市場で得た利息収入について企業所得税と増値税を徴収免除する政策が2025年12月31日まで延長されたことが発表されていました。最近話題になっている社債市場でのデフォルトをめぐる不安を解消するための措置と思われます。

④データ安全法に基づく出国安全評価弁法の意見募集

国家インターネット情報弁公室から、重要データの国外移転時に必要となる出国安全評価の細則の意見募集が出ています。《データ安全法》第31条に基づき別途制定することとされていたものです。
「重要データ」については先日もお伝えしたとおり工業データ一般についてのデータ安全管理弁法も意見募集中です。
また、この意見募集稿では、個人情報保護法により国外移転時に必要となる安全評価についても対象としています(意見募集稿の第2条)。《個人情報保護法》第40条では一定数量以上の個人情報処理者に国外移転時の安全評価を求めているのですが、この意見募集稿では、100万人以上の個人情報処理者がその一部を国外提供する場合か、「累計で」10万人以上の個人情報又は1万人以上の機微な個人情報を国外提供する場合を対象としているようです(同第4条)。(なお、《個人情報保護法》第55条で個人情報の国外移転の場面一般に求められる「個人情報保護影響評価」と混同してしまわないようにご留意ください。)