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中国で提出する書類の記入・署名: なぜ「ボールペン不可」「万年筆で記入」なのか?

中国に関係するビザ申請の関係書類や、中国で会社登記機関(市場監督管理局)や裁判所(人民法院)などの公的機関に提出する書類を記入したり署名したりするときに、「ボールペンで記入しないでください」「万年筆で記入してください」と言われたことはないでしょうか。

2023年9月14日木曜日

従業員との間の労働契約書(雇用契約書)の締結義務

労働契約(雇用契約)は、日本では「期間の定めのない」労働契約であることが一般的です。そして、日本では労働契約書を締結することも強制されていません。ですから、長らくの間、そもそも労働契約書を締結しておらず、労働条件通知書のみで雇用関係が成立している状態が「正社員」であって、労働契約書を締結する場合は「契約社員」と称されてきました。

2023年9月11日月曜日

9月第2週:①企業名称管理の細則の改訂、②企業の設備投資に関する税制優遇、③不法移民の送還、④今年の国慶節休暇は8連休

①企業名称管理の細則の改訂

企業名称についての弁法が改正されています。
自己使用目的ではなく悪意をもって先に他社の名称などを登録してしまう行為や、一定の影響力のある名称に近い名称を故意に登録することなどが禁じられています。
また、不正に登録されている企業名称を排除する方法・手続については、従来どおり、①登記機関に名称紛争処理を申請する、②不正競争行為として行政機関に通報する、③人民法院に対して提訴する、これら3つの方法があります。

②企業の設備投資に関する税制優遇

8月はさまざまな税制優遇が相次いで発布されており、特に企業における設備購入を後押しするものが目立つようです。
先進的な製造業企業における仕入増値税控除の優遇措置:
設備・機器等の固定資産の企業所得税上の加速償却:
外資R&D機構における科学研究設備・装置等の増値税還付:

③不法移民の送還

日本でも話題になった不法移民の送還について、この送還前の外国人の身柄拘束中の取扱いに関する規定が出ていました。
ビデオ監視システムの録画資料は少なくとも90日は保存すること、身柄拘束された人員にも毎日2時間以上の室外活動時間を与えることなどが規定されています。
また、送還先は国籍国とは限らず、近くで便利な国に送還するとされています。

④今年の国慶節休暇は8連休

昨年12月に既に発表されていたところですが、今年は中秋節の連休が国慶節の連休とつながって、9月29日から10月6日までの8連休になっています。
https://www.gov.cn/gongbao/content/2023/content_5736714.htm
10月7日と8日の土日が振替出勤になっていますので、私を含め、中国業務にかかわる皆様にとっては多少不便があるかもしれません。スケジュール帳に書いておいていただければと思います。


2023年9月2日土曜日

9月第1週:①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集、②《民事訴訟法》改正、③《外国国家適用除外法》成立、④《行政再議法》改正

8月末はさまざまな法令や政策が相次いで出てきましたので、一度に全てご紹介することができないのですが、法律の制定・改正の件だけご紹介しておきます。

①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集

8月末にも成立するかと見込んでいた《会社法》改正ですが、すんなり成立とはいかず、3回目の意見募集が行われることになりました。
意見募集期間は9月1日から9月30日となっています。
内容についてはまだ詳しく見ていませんので、おって改めて別の機会にご紹介できればと思います。

②《民事訴訟法》改正

《民事訴訟法》が改正されました。2024年1月1日施行となります。
日系企業との関係では、国際裁判管轄に関する規定が拡充されている点が重要と思います。
当事者が管轄異議を出さず、答弁又は反訴をしたときは、中国の人民法院が管轄を有するとみなされることや、同一の紛争について一方当事者が外国、他方当事者が中国国内、それぞれ訴えを提起した場合、特に外国の裁判所を専属管轄裁判所とする合意がなければ受理してよいとすることなどの規定が追加されました。
また、外国当事者がかかわる場合の送達や外国判決の承認執行に関する規定も改正されているようです。

③《外国国家適用除外法》(外国国家豁免法)成立

《対外関係法》が先だって成立したとおり、中国は渉外法治の面についての法律の整備を進めています。
今回は《外国国家免除法》という法律が新たに公布・施行されました。これも2024年1月1日施行です。
外国国家やその財産に関する民事事件の司法手続について全面的・系統立てて規定して、国内法治と渉外法治を統合的に進めるとのことです。
外国国家が行う商業活動で、中国国内で行われるか中国国内に直接影響するもの(金銭の貸借を含む)については、外国国家に対する管轄免除の対象にはならない、つまり中国の司法権のもとで管轄があるものとして取り扱うことができることなどが規定されています。
国際条約等に定められた外国の外交機関などの特権が影響を受けるものではなく、国際条約等が優先されることも明記されているので、直ちに何らかの影響があるものではありません。しかし、外国側が中国の国家とその財産に対して与える免除待遇がこの法律に規定するよりも劣っている場合、対等の原則によるものとされているので、詳しく見ていく必要があるのかもしれません。

④《行政再議法》(行政复议法)改正

行政処分についての不服申し立てについて定める《行政再議法》が改正されました。同じく2024年1月1日施行です。
行政再議の対象範囲に収用決定及びその補償に関する決定が含まれることが明記されるなど、行政再議の範囲が拡大したことなどが改正点として挙げられています。


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その他、社会保険の異なる地方での引継ぎなどを含む事務取扱に関する規定や
若年者人材育成についての政策、また住宅ローン関連の緩和政策なども出ていました。


2023年8月31日木曜日

《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 株主会の全会一致決議事項

先週ご紹介した、外商投資法対応の件で、もう一つ、是非知っておいていただきたい注意事項がありましたので、引き続き僭越ながら、ここで書かせていただきます。

従来、中国にある中外合弁会社においては、定款変更など重大事項については出資者双方が任命した董事全員が一致して決議する必要がありました。(《中外合資経営企業法実施条例》第33条第1項)
これに対し、《会社法》では、

2023年8月28日月曜日

8月第4週: ①水害からの復興、②「1件目」の住宅ローン、③15件の行政法規の改廃

①水害からの復興

各地で台風や豪雨による被害が出ているようで、その復興や水害防止の工事に関して、「以工代赈」(仕事を与えて救済に代えること)が奨励されています。
現地の群衆を工事に参加させて労働報酬を支払うことで家計に困難のある群衆に収入をもたらすとともに、工事に参加する過程で就業技能を高めること(「以工代训」)も求められています。
公共工事が行われることで復興関連需要も生じてくると思われますので、知っておくと何かのお役には立つかもしれません。

②「1件目」の住宅ローン

住宅ローン利率に関する優遇政策の適用に関し、「1件目」の住宅かどうかの認定基準について通知が出ています。
従来から、1件目の住宅取得時には住宅ローンの金利を低く抑えてもらえる政策優遇があるのですが、この1件目に該当するかどうかの基準に関する通知です。
「本人や家族がその都市で住宅を購入したことがなければ」、それ以前に住宅ローンを借りたことがあろうとなかろうと1件目と認定してよいとされています。
不動産をめぐる状況は各都市で異なるので、「一城一策」(一都市一政策)ということで各都市それぞれの政策が打ち出されています。およそ中国全般と一括りにするのではなく、各都市の状況を見る必要があるようです。

③15件の行政法規の改廃

国務院から14件の行政法規の改正と1件(製品品質監督試行弁法)の廃止が発布されていました。
《行政処罰法》に基づいて不合理な罰則等を取消・調整したこと、国際海運条例、道路運輸条例などの罰則の見直しといった内容だそうです。


2023年8月23日水曜日

《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 株主会と董事会

《外商投資法》施行に伴っていわゆる外資三法が廃止され、中外合弁会社では《会社法》に適合するように定款変更(※)が求められています。
 (※)従来の中外合弁会社に関する《中外合資経営企業法》では「合弁契約」と「定款」が登場しましたが、《会社法》には「合弁契約」は登場しません。
  ですので、「合弁契約」の重要性は一歩後退して、「定款」の変更が主たるテーマとなります。

2024年末まで5年間の移行期間が設けられていますが、このうち2020年~2022年の3年間はコロナ禍による往来制限により面談ができず、「まだ5年もある」状況でしたので、しばらく様子見のままに過ぎていたような印象です。

2023年8月21日月曜日

8月第3週: ①知的財産権法執行強化、②団体標準から推薦性国家基準へ、③環境事件に関する2つの司法解釈

①知的財産権法執行強化

国家市場監督管理総局から、新時代の知的財産権の取締強化ということで意見が出ています。
2025年までにネットワーク環境における取締の難題を解決するとの目標や、業界団体や仲介機構(特許事務所など)との連携などについて述べられています。

②団体標準から推薦性国家基準へ

社会団体などが制定・公布した団体標準のうち技術的な先進性、指導性のあるものを推薦性国家基準に採用することに関する暫定規定が出ています。
https://www.samr.gov.cn/zw/zfxxgk/fdzdgknr/bzjss/art/2023/art_646c3799c2d348ef8fd90a2437fdcf95.html
全国で比較的受け入れられており効果の高い団体標準については、推薦性国家基準に取り上げる際の手続を短縮することなども盛り込まれています。

③環境事件に関する2つの司法解釈

環境関連の権益侵害紛争における法律適用に関する司法解釈と、同じく環境関連事件における証拠をめぐる規定が発布されています。
環境汚染事件においては因果関係が複雑であり損害との関わりが直ちには判明しないことを考慮して、時効の起算点を被害者保護に有利なように、加害者その他行為者が判明した時点から起算することなど、環境事件特有の事情に配慮した内容になっているとのこと。
証拠についても、一般的被害者の手元に証拠が乏しいことから立証責任を軽減するための書証提出命令の活用や、司法鑑定に時間や費用がかかることや専門家の鑑定への過度の依存による問題などを考慮した規定が置かれているとのことです。

2023年8月16日水曜日

【体験レポート】自動翻訳の附属ツール「TexTra Files」(+VoiceTraアプリ)

NICT(情報通信研究機構)から提供されている「みんなの自動翻訳@TexTra®」という自動翻訳サービスがあり、個人的にときどき使ってみています。
この「みんなの自動翻訳」の関連アプリで、
「PCのデスクトップにショートカットを置いておいて、
 翻訳したいファイルをそこにドラッグ&ドロップすれば自動で翻訳してくれる」
というツールが紹介されていたので、使ってみました。

2023年8月14日月曜日

8月第2週:①外商投資環境のさらなる改善、②高温・寒冷に関する労働者保護(モデル文書)、③フォーラム活動に関する規制

①外商投資環境のさらなる改善

国務院から7月25日付で、外資による投資をさらに呼び込むことに関する意見が出ていました。
入札によらない「首购」「订购」(イノベーション推進のために、市場に出ていない先進技術等を政府調達すること)による支援も内国民待遇の対象として言及されていることは、外資系企業の事業にも有利かと思います。
ビザについても、外資誘致や展覧会などのために必要な場合にマルチ(多次)の商用ビザを発給する措置などが挙げられています。
他に目を引く項目としては、「重要データ」や「個人情報」の国外移転(出境)について、「グリーンゲート」(绿色通道)として安全評価を効率よく行うこと、北京、天津、上海、珠江デルタなどでは試験的に「自由に流通可能な一般データリスト」の作成を模索することが述べられています。

②高温・寒冷に関する労働者保護(モデル文書)

暑い日が続く中、業務場所の高温・寒冷な気候における労働者保護についてのモデル文書が、人社部、全国総工会などから共同で公表されています。
《防暑降温措置管理弁法》では企業は防暑降温業務制度を確立することが求められており、何らかの問題があったときには制度が未制定・不備であること自体が法定の義務違反として指摘される可能性もあります。
今回のものはあくまで「参考文書」ですが、社内規程を整備する際の参考になると思われ、それほど分厚いものでもないですので、機会があればお目通しいただくと良いかと思います。

③フォーラム活動(论坛活动)に関する規制

政府機関や正規の組織が行っているフォーラム活動と紛らわしい、「ニセモノ」のフォーラムが開催され、市場秩序が乱されているということで、このような「ニセモノ」フォーラムの取締に関する通知が出ています。
先般、7月8日にも、11部門から共同で、フォーラム活動に関する特別整理業務に関する通知が出ていました。
フォーラムの名目で違法な詐欺などの犯罪を行うものに関与しないことは当然として、それ以外にも、商業目的で「中国」「中華」「全国」「国際」「高峰」などの用語を使ってフォーラムを開催することは違法となることがあるなど、注意すべき点があります。

2023年8月9日水曜日

外国人の雇用と、刑法の国外犯処罰(国外での行為は罪に問えない?)

ちょうど《対外関係法》も成立・公布されましたので、少し、日本の経営者・人事労務管理者の方々に知っておいていただきたい話題を一つご紹介します。
「刑法犯の国外処罰」についてです。

日本も中国も、それぞれ自国内で犯罪行為が行われた場合には、自国民であろうが外国人であろうが、当然、刑法による処罰対象となります。
一方、【国外で】犯罪行為が行われた場合については、