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中国で提出する書類の記入・署名: なぜ「ボールペン不可」「万年筆で記入」なのか?

中国に関係するビザ申請の関係書類や、中国で会社登記機関(市場監督管理局)や裁判所(人民法院)などの公的機関に提出する書類を記入したり署名したりするときに、「ボールペンで記入しないでください」「万年筆で記入してください」と言われたことはないでしょうか。

2023年10月11日水曜日

売買代金額の75%の支払(所有権留保の75%ルール)

所有権留保付き売買について、中国には独特なルールがあります。

所有権留保の約定があっても、買主が75%以上の代金を支払っていると、売主は目的物を取り戻すことができなくなります(《売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)》第26条)。

2023年10月9日月曜日

9月第5週:①企業档案管理規定、②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見、③10月の「敬老月」活動

先週は国慶節の連休でしたので、1週間遅れて、9月末の分をご紹介します。

①企業档案管理規定

企業档案管理規定が改正されました。
「档案」とは、企業や個人のさまざまな履歴を保存するファイルのことで、人事档案、文書档案、会計档案など様々な種類の「档案」があり、国や地方政府が保存・管理している档案もあれば、企業その他の組織が保存・管理している档案もあります。
今回の規定は、企業の研究開発、建設、経営及びサービス等の活動により形成される記録に関するものです。
各企業では档案管理のための人員を配置し、火事などに強い場所に保管すべきことなどが規定されています。
また、当然ながら電子データで保存されるものもあるため、档案の情報化という章も設けられています。
なにぶん、档案局という普段あまり業務上かかわることがない政府機関が管轄しているものですから、頻繁に検査が入る安全生産や消防などと違って意識する機会も少なそうですが、情報管理についてはよく話題になる昨今ですので、ご参考までに。

②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見

ネット上における誹謗中傷やプライバシー侵害などの行為について、被害者が精神的に追い詰められて自殺などに至ることのほか、社会公衆の安全感も損なわれるということで、取締に関する新しい指導意見が最高人民法院、最高人民検察院、公安部の連名で出ています。
典型事例も発表されています。
ネットを通じて不特定多数に対して個人情報を発信する行為は刑法第253条の1の個人情報侵害罪、悪意をもって煽り立てる行為(いわゆる炎上商法)は刑法第287条の1の情報ネットワーク違法利用罪など、各種の刑法規定が適用されることが紹介されています。

③10月の「敬老月」活動

全国老齢工作委員会から、10月1日~10月31日まで「敬老月」活動を行うという発表がありました。
ボランティアによる独居老人への慰問訪問などの活動が行われるようです。従来から提唱されているITを使った健康管理の普及活動もあります。また、いわゆる健康寿命を延ばすために、太極拳などの伝統的な運動種目を広める活動なども挙げられています。

2023年9月26日火曜日

インボイス制度のインボイス(発票、適格請求書)の書式

日本のインボイス制度、いよいよ来月からスタートです。
直前になってようやくですが、始まるにあたって、これはなかなか大変なことであることが個人的に実感として分かってきたので、少し話題として触れます。

2023年9月25日月曜日

9月第4週:①税務関連業務の基本準則、②道路運送の重大事故リスク判定基準、③ビザ申請書フォーマットの改訂

①税務関連業務の基本準則

税理士事務所及び税務関連の専門サービスを提供する会計士事務所、弁護士事所、財務・税務コンサルティング会社などを対象とした基本準則と職業道徳規則が、国家税務総局から公表されています。
書面での業務報告又は専門的意見を提供する場合は(個人名ではなく)事務所名義で依頼者に対して提出すべきこと、納税状況審査など4類の業務にかかわる場合はその業務を担当した税理士、会計士又は弁護士が捺印すること等が規定されています。
また、業務過程で知り得た国家安全情報や個人情報の秘密保持についても、職業道徳規則で規定されています。国家安全情報の秘密保持については、最近はさまざまな法令で見かけるようになってきました。

②道路運送の重大事故リスク判定基準

交通運輸部から、旅客や貨物の道路輸送に関する重大事故リスクの判定基準が発布されています。
企業が自らチェックして、問題を発見したときは管轄の交通運輸主管部門へ報告するように求められています。物流企業のみが対象ですが、速度超過や積載量超過、運転者の過労など運用面にもかかわる内容のようですので、ご参考までに。

③ビザ申請書フォーマットの改訂

外交部の定例会見で、中国入国のためのビザ申請表フォーマットについて簡素化したことが紹介されていました。
https://www.mfa.gov.cn/web/fyrbt_673021/202309/t20230920_11145944.shtml
学歴や家族情報の記述などの項目が簡素化されたようです。
出張時にビザが必要な状況はまだ続きそうですので、申請するときに手間が少しでも省けるのは良いことかと思います。

2023年9月21日木曜日

2023年9月18日月曜日

9月第3週:①福建省の両岸融合発展モデル区(台湾関係)、②経営者集中(企業結合)に関する独禁法上のコンプライアンス、③企業標準化促進弁法

①福建省の両岸融合発展モデル区(台湾関係)

中共中央と国務院から、台湾と福建省の海峡両岸の融合発展モデル区の建設に関する意見が出ています。
台湾の子女が大陸で就学することなど、台湾との間の人員往来を歓迎する方向のようです。法律職業資格を得た台湾住民が福建エリアで弁護士業務に従事できる範囲を拡大することも述べられています。
厦門(アモイ)と金門島の融合発展の加速ということで、金門島に電気・ガスを通したり橋を架けたり、共用インフラを整備していくことも考えられているようです。また、福州と馬祖島も同じく「同城生活圏」を作り上げようということが書かれています。
その他、かなり読み応えのある内容になっていますので、別の機会にじっくり読み解いてみたいと思います。
ちなみに、これに先立って9月2日、東莞も最も早い時期から台湾企業が進出していた地域であるということで、台湾との連携を深める「合作総体方案」が国務院により認可されています。

②経営者集中(企業結合)に関する独禁法上のコンプライアンス

《反独占法》に基づく経営者集中の申告(独禁法上の企業結合の届出)について、買収・M&Aや合弁会社設立を行う企業側の目線でチェックすべき事項についてのガイドラインが出ました。
申告は集中を実施する前に行わなければならないところ、その「実施」の基準については、登記手続の完了有無だけではなく、経営陣の派遣や実際の経営上の意思決定への関与、敏感な情報の交換や実質的な事業の統合などがあるかどうかが考慮されるとのこと。
合弁会社の新設については、合弁当事者が共同支配権を有する場合は申告対象になるところ、これについて具体的な事例(【案例】)として、事業計画や財務予算、高級管理者の任免など経営管理事項に関する拒否権の有無が挙げられています。
内容はこれまで既に法令で定められているところに準拠しており、新たな規制となるものではありませんが、企業側の目線で整理されているので、とても参考になるものと思います。

③企業標準化促進弁法

1990年に制定された《企業標準化管理弁法》が改正されて、新たに《企業標準化促進弁法》として発布されています。
《標準化法》第27条にも定められている企業標準の自己声明公開及び監督制度によって届出管理制度に代えるということで、公共サービスプラットフォーム上で10分で手続できて費用もかからないとのこと。
また、企業におけるイノベーションに寄与すべく、目立った経済社会的効用を生む企業標準については奨励を与えるとされています。



2023年9月14日木曜日

従業員との間の労働契約書(雇用契約書)の締結義務

労働契約(雇用契約)は、日本では「期間の定めのない」労働契約であることが一般的です。そして、日本では労働契約書を締結することも強制されていません。ですから、長らくの間、そもそも労働契約書を締結しておらず、労働条件通知書のみで雇用関係が成立している状態が「正社員」であって、労働契約書を締結する場合は「契約社員」と称されてきました。

2023年9月11日月曜日

9月第2週:①企業名称管理の細則の改訂、②企業の設備投資に関する税制優遇、③不法移民の送還、④今年の国慶節休暇は8連休

①企業名称管理の細則の改訂

企業名称についての弁法が改正されています。
自己使用目的ではなく悪意をもって先に他社の名称などを登録してしまう行為や、一定の影響力のある名称に近い名称を故意に登録することなどが禁じられています。
また、不正に登録されている企業名称を排除する方法・手続については、従来どおり、①登記機関に名称紛争処理を申請する、②不正競争行為として行政機関に通報する、③人民法院に対して提訴する、これら3つの方法があります。

②企業の設備投資に関する税制優遇

8月はさまざまな税制優遇が相次いで発布されており、特に企業における設備購入を後押しするものが目立つようです。
先進的な製造業企業における仕入増値税控除の優遇措置:
設備・機器等の固定資産の企業所得税上の加速償却:
外資R&D機構における科学研究設備・装置等の増値税還付:

③不法移民の送還

日本でも話題になった不法移民の送還について、この送還前の外国人の身柄拘束中の取扱いに関する規定が出ていました。
ビデオ監視システムの録画資料は少なくとも90日は保存すること、身柄拘束された人員にも毎日2時間以上の室外活動時間を与えることなどが規定されています。
また、送還先は国籍国とは限らず、近くで便利な国に送還するとされています。

④今年の国慶節休暇は8連休

昨年12月に既に発表されていたところですが、今年は中秋節の連休が国慶節の連休とつながって、9月29日から10月6日までの8連休になっています。
https://www.gov.cn/gongbao/content/2023/content_5736714.htm
10月7日と8日の土日が振替出勤になっていますので、私を含め、中国業務にかかわる皆様にとっては多少不便があるかもしれません。スケジュール帳に書いておいていただければと思います。


2023年9月2日土曜日

9月第1週:①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集、②《民事訴訟法》改正、③《外国国家適用除外法》成立、④《行政再議法》改正

8月末はさまざまな法令や政策が相次いで出てきましたので、一度に全てご紹介することができないのですが、法律の制定・改正の件だけご紹介しておきます。

①《会社法》改正草案(三次審議稿)の意見募集

8月末にも成立するかと見込んでいた《会社法》改正ですが、すんなり成立とはいかず、3回目の意見募集が行われることになりました。
意見募集期間は9月1日から9月30日となっています。
内容についてはまだ詳しく見ていませんので、おって改めて別の機会にご紹介できればと思います。

②《民事訴訟法》改正

《民事訴訟法》が改正されました。2024年1月1日施行となります。
日系企業との関係では、国際裁判管轄に関する規定が拡充されている点が重要と思います。
当事者が管轄異議を出さず、答弁又は反訴をしたときは、中国の人民法院が管轄を有するとみなされることや、同一の紛争について一方当事者が外国、他方当事者が中国国内、それぞれ訴えを提起した場合、特に外国の裁判所を専属管轄裁判所とする合意がなければ受理してよいとすることなどの規定が追加されました。
また、外国当事者がかかわる場合の送達や外国判決の承認執行に関する規定も改正されているようです。

③《外国国家適用除外法》(外国国家豁免法)成立

《対外関係法》が先だって成立したとおり、中国は渉外法治の面についての法律の整備を進めています。
今回は《外国国家免除法》という法律が新たに公布・施行されました。これも2024年1月1日施行です。
外国国家やその財産に関する民事事件の司法手続について全面的・系統立てて規定して、国内法治と渉外法治を統合的に進めるとのことです。
外国国家が行う商業活動で、中国国内で行われるか中国国内に直接影響するもの(金銭の貸借を含む)については、外国国家に対する管轄免除の対象にはならない、つまり中国の司法権のもとで管轄があるものとして取り扱うことができることなどが規定されています。
国際条約等に定められた外国の外交機関などの特権が影響を受けるものではなく、国際条約等が優先されることも明記されているので、直ちに何らかの影響があるものではありません。しかし、外国側が中国の国家とその財産に対して与える免除待遇がこの法律に規定するよりも劣っている場合、対等の原則によるものとされているので、詳しく見ていく必要があるのかもしれません。

④《行政再議法》(行政复议法)改正

行政処分についての不服申し立てについて定める《行政再議法》が改正されました。同じく2024年1月1日施行です。
行政再議の対象範囲に収用決定及びその補償に関する決定が含まれることが明記されるなど、行政再議の範囲が拡大したことなどが改正点として挙げられています。


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その他、社会保険の異なる地方での引継ぎなどを含む事務取扱に関する規定や
若年者人材育成についての政策、また住宅ローン関連の緩和政策なども出ていました。


2023年8月31日木曜日

《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 株主会の全会一致決議事項

先週ご紹介した、外商投資法対応の件で、もう一つ、是非知っておいていただきたい注意事項がありましたので、引き続き僭越ながら、ここで書かせていただきます。

従来、中国にある中外合弁会社においては、定款変更など重大事項については出資者双方が任命した董事全員が一致して決議する必要がありました。(《中外合資経営企業法実施条例》第33条第1項)
これに対し、《会社法》では、