【中国法務レポート】
中国《データ安全法》(データセキュリティ法)
https://www.smbc.co.jp/hojin/international/resources/pdf/CM202107_01.pdf#page=15
弁護士 金藤力(かねふじ ちから)のブログです。 毎週1回、中国で公布・発布された各種の法令や通達、ガイドラインなどの情報をご紹介しています。また、業務で接することのある日中両国間の制度や運用の比較などついても、ときどき投稿しています。
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2021年7月19日月曜日
中国《データ安全法》(データセキュリティ法)に関する記事を掲載いただきました。
2021年7月16日金曜日
7月第3週: ①電子労働契約、②月36時間残業、③経営者集中(企業結合)禁止事例、④セキュリティ脆弱性管理弁法、⑤虚偽の検査証書の販売、⑥AI医療用ソフトウェア
①電子労働契約
電子労働契約の締結についてのガイドライン(《電子労働契約締結指針》)が発布されました。
電子労働契約については、既に各都市で先行しているところがあり、例えば杭州市の人力資源社会保障局が牽引する電子労働契約サービスのプラットフォーム(通称「杭云签」)があり、2020年12月に正式リリースされて以来、既に6月中旬で130万件以上の締結実績があるとのこと。
一度も会わずに労働契約が締結できるということで、コロナ禍の時代にはピッタリなようにも思います。
さまざまな場面で活用が考えられるところです。
②月36時間残業
もう一つ、人事労務の話題では、月36時間の残業上限を超えて処罰された事例がニュースになっていました。
《労働法》では毎月の残業時間は36時間が上限と定められているのですが、人手不足や季節要因などもありますので、管理が難しいところではあります。日本では原則45時間ですが、36協定によって延長できますので、日本よりも中国の方が厳しいです。
それにしても、10年前の中国の様子を思い出すと、中国でそんなに残業が増えるとは思いませんでした。
③経営者集中(企業結合)禁止事例
「虎牙」と「斗魚」の合併を禁止した反独占法の経営者集中(企業結合)審査の事例が出ました。いずれもゲームのライブ動画配信プラットフォームのようですが、市場シェア40%と30%で、虎牙は腾讯(Tencent)が支配権を持っているとのこと。
反独占法で経営者集中が禁止された事例というのは、確か2008年に反独占法が施行されてから1件か2件しか無かったと思いますので、非常に珍しい事例と言えます。
今のIT企業に対する風当たりの強さを象徴する事例と言って良いのではないでしょうか。
④セキュリティ脆弱性管理弁法
最近話題のサイバーセキュリティ関連では、工業情報化部、国家インターネット情報弁公室、公安部の3部門から、セキュリティ脆弱性の管理規定が発布されました。
セキュリティ脆弱性が発見された場合、ネットワーク製品の提供者は2日以内に工業情報化部のセキュリティ情報共有プラットフォームに情報を報告する必要があります(第7条第1項第2号)。
ここにいう「ネットワーク製品」には、ハードウェアも含まれます。例えばネットワークカメラなど、最近の機器はネットにつながる場合も多いですから、当然といえば当然です。
ネットワーク製品の提供者が情報提供を受け付ける仕組みを作り、情報提供に対して報奨を与えることを奨励する(第7条第3項)ともありますが、見ず知らずの第三者から「御社の製品に脆弱性がありますよ」という連絡が来て対応する場面を考えてみると、なかなか大変なようにも思えます。
⑤虚偽の検査証書の販売
もはやECプラットフォーム上で買えないものはないほどの勢いですが、虚偽の検査・測定報告書も売りに出ているとのこと。
7月7日に一部メディアでそのことが報道された後、翌日7月8日には直ちに市場監督管理総局が各プラットフォームが自主的にこれを調査・排除するように要請したとのことで、検査・測定に関する市場の信頼を重視していることが見て取れます。
⑥AI医療用ソフトウェア
最後に、医療の業界の話題としては、AIを使った医療用ソフトウェア製品は医療機器として承認・登録が必要になっているところ、医療用のものかどうかの区分のガイドラインが出ています。
例えば、単に医療機器のデータを処理・分析するためのソフトウェアや、患者の主訴・検査結果などを記録するだけのソフトウェアであれば医療機器にはならず、一方で、同じく医療機器のデータを処理・分析して何らかの病変の特徴識別や性質判定、服薬指導などに使おうとすると、医療機器として管理されることになるようです。
2021年7月13日火曜日
補足:違法なアプリの取締(滴滴)
7月第2週のコメントについての補足です。
7月9日の22:00に、インターネット情報弁公室から「滴滴」(Didi)関係のアプリの公開停止についての発表が出ていました。
個人情報の重大な違法収集・使用の問題ということで、関係する国家基準も参照して是正するように求められています。
国家基準は意見募集しているものを含め多数ありますので、関係あるものを探すのもなかなか大変なように思いますが、この機会に改めて見ておく方がよさそうです。
2021年7月9日金曜日
7月第2週: ①中国IT企業の海外上場の記事、②違法なアプリの取締、③深センのデータ条例、④破産と虚偽訴訟、⑤2011年のことで処罰
①中国IT企業の海外上場の記事
日本では、中国IT企業の海外上場の規制強化というような見出しの記事を見かけましたが、おそらく、今回ご紹介している証券犯罪の取締強化に関する意見のことかと思います。
この意見は、全体としては、何度かご紹介している「康美」の巨額粉飾事件など、証券市場における違法行為によって中国国内の投資家が損害を受けないように保護しようという趣旨のように思われます。
ずっと下の方(五、とある部分)まで読まないと海外上場の話は出てこないのですが、こういうごく一部が拾い上げられて上記のような記事になっているというのは、記事を見ているだけでは分かりづらいですね。
今回のリニューアルで、「法令の全体像」を浅く広く伝えるのはやめて、一つでも二つでも、業務や事業に直接役立つ部分をクローズアップしてお届けすることにしたのですが、あまりにも一部だけを取り上げてしまうと誤解を招くこともあるので、その点はこの配信時のメールや勉強会などの機会になるべく補うようにしたいなと思っています。
②違法なアプリの取締
違法なアプリの取締についても、日本では「滴滴(Didi)」の件が注目されていますが、中国ではほとんど毎月のように100件を超えるようなアプリの取締が行われておりまして、今回もまた129件のアプリの取締の発表がありました。
著名企業のアプリや、一般の方々がよく使っているアプリも、この中に含まれています。(「滴滴」は今回のこのリストには入っていないようです。)
ライブ配信アプリなどは、広告宣伝や、ライブコマースなどに使われている場合もあり、アプリが使えなくなると売上にも影響するかもしれませんから、IT業界以外の方々でも、自社に関係するかどうか見ておいた方が良いこともあるかと思います。
③深センのデータ条例
深センのデータ条例ですが、「データ安全法」(データセキュリティ法)が成立して直ちにこのような条例を出すのは、
さすがアジアのシリコンバレーといわれる深セン、ハードウェアのみならずアプリ開発でも先進的な地域なのかなと思います。
内容としては、第一章の総則の後、第二章に個人情報(個人データ)に関する章が設けられており、かなり充実した規定ぶりになっているように思われます。第三章は公共データ、第四章はデータ要素市場、第五章がデータ安全という章建てになっています。
深セン限定の地方性法規ですから、詳細をご紹介する機会は無いかもしれませんが、他の地方でもこれに倣う可能性もありますから、参考としての価値はあろうかと思います。
④破産と虚偽訴訟
なお、「高額年俸」云々という記事は、人事労務のお話ではなく、何度もご紹介している「虚偽訴訟」の事例です。
破産した会社については、実務上、管財人から「とりあえず従業員の賃金だけは先に払わせてくれ」という要請が債権者に対して行われることがありまして、会社が破産するのは良いが、それがゆえに賃金が支払われずに騒動が起こると困る、ということで、法律上の順位よりも労働者保護が重視される傾向があります。
日本では未払賃金立替払制度という別のセーフティネットが担うこの役割、中国でも同じような制度があれば良いのにと思いますが、そうするとまた制度を不正に利用する手口を考える人も出てくるかもしれませんので、制度作りというのは国により状況により難しいものなのだなと思います。
⑤2011年のことで処罰
最後に、経営者集中(企業結合)の未申告で22件の罰金処罰が決定された件。
これも日本でも報道されていますが、なんと、10年前(2011年9月)に合弁会社を設立したときのことを取り上げて処罰しているものがあります。
私が知る限りでは、2011年9月当時は、(商務部の見解としては当時から申告が必要とのことでしたが)合弁会社設立時に申告が必要という明文規定はありませんでしたし、未申告の調査・処罰に関する弁法が発布されたのは2011年12月、初めての処罰事例が出たのは2014年のことでした。
ですから、2011年9月は予見可能性が十分ではなかったように思われるのですが、これを10年経った今、改めて取り上げて処罰したのは、なかなか衝撃的です。
行政処罰決定書からは読み取れませんが、もしかすると単純な会社設立ではなく、事業や資産を現物出資するなどM&Aに近い形で行われたのかもしれません。
ただ、規定も運用も明確でない時期のこととすると、それを処罰するのは少し過酷なようにも思えますね。
2021年7月7日水曜日
不正輸出について(安全保障貿易管理ガイダンス)
【2021年7月7日掲載】
不正輸出について、過去の違反事例など見ていると、大手の企業でも顧客や用途の確認を中国の現地子会社や現地社員に一任していたことが違反原因として指摘されている事例がありまして、実務に携わっている身としては「さもありなん」と思うところもあります。
昔のココム規制が無くなった後、今はワッセナー・アレンジメントという別の取り決めに基づいて各国が輸出規制を定めています。日本では外為法に基づき規制しています。
今は経産省で丁寧に説明してくださっていて、Youtubeの動画も活用なさっているようです。ぜひGoogleの「安全保障貿易ガイダンス」でご検索を。
↓
日本・経済産業省:安全保障貿易管理ガイダンス[入門編](令和3年3月)
https://www.meti.go.jp/policy/anpo/guidance.html
【2022年7月13日追記】
中国の商務部でも、「中国輸出管制情報ネット(中国出口管制信息网)」というWebサイトを作って、よくある質問と回答(FAQ)や、制度の解説動画を掲載しています。
http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/
http://exportcontrol.mofcom.gov.cn/
輸出管理のコンプライアンスに関する事例(各社での取り組み)も掲載されていますので、参考になるかと思います。
2021年7月5日月曜日
滴滴(Didi)アプリについての2つの発表について
中国の滴滴(Didi)のアプリにつき、ネットワーク安全審査を行うこと及び審査期間中は新規ユーザー登録を停止すること(7月2日)、個人情報収集の重大な違法によりアプリストアに「滴滴出行」の公開停止を通知したこと(7月4日)、2つの公式情報が出ています。
一つめは国家安全法とネットワーク安全法の2つを根拠とし、国家安全・公共利益の観点からのものですが、二つめはネットワーク安全法のみを根拠とし、個人情報保護を目的にした措置です。似たような法律が登場して混同されそうですが、中身は多面的です。
報道等では米国ADR上場との関係も指摘されていますし、アプリの個人情報収集については3月に出た必要個人情報の範囲についての規定もありますから、複数の要因があるでしょうが、中国でアプリが公開停止になるのは珍しいことではないですし、よく勉強しておきたいと思います。
(ワークショップ資料3月第4週分より)
2021年7月2日金曜日
7月第1週:①資料をリニューアルしました! ②汚染防止設備がいつのまにか停止していて
①資料をリニューアルしました!
中国共産党成立100周年とは何ら関係ありませんが、7月1日から、いつもご紹介しているワークショップの資料の構成・体裁をリニューアルしました!
「どの業務を担当なさっている方にご覧いただきたいか」を最初に書いていますので、
ご自身の業務に関係あるものだけを選んでご覧いただければと思います。
相変わらず、日本語・中国語の両文の資料を週1回、同時に配信していますので、
中国現地の方々と一緒にご覧いただければと希望しております。
②汚染防止設備がいつのまにか停止していて
今週ご紹介したうちの一つ、上記の記事は、
工場で、いつのまにか汚染防止処理の設備が止まってしまっているのに気づかないまま、
23時間、そのまま操業してしまっていたとのこと。
周辺住民が異臭か何かに気づいて通報したのかと思ったら、
設置されているモニタリングシステムで環境局に発見されてしまったのだそうです。
丸一日にも満たないのに発見されて処罰されてしまうとは、
一昔前では考えられない厳しさですね。
時代に置いていかれないように、現地の方々とともに勉強していきたいと思いますので、
どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。
2021年6月25日金曜日
6月第4週:①価格指数の新しい管理弁法、②リハビリ医療の発展促進、③仮想通貨の資金源、④知財法廷の事例紹介、⑤「新型学徒制」と実習生、⑥資料リニューアル予定
今週のキーワード:
キーワード: オンライン訴訟規則、新型学徒制、特許共同実施者
①価格指数の新しい管理弁法
地味ですが企業活動には重要なものとして、価格指数に関する新しい管理弁法が出ています。
営業であれ購買であれ、世間の「相場」を見ながら取引価格を商談して決めているのが通常と思われますが、この「相場」を知るために実際にお仕事をされている各位がご覧になっているのが、業界における各種の指数です。
これには、公開の取引所における株価等の指数や、政府機関が発表している各種物価指数のほかに、民間や各種団体で出されている各地の不動産価格指数、各地の市場での原材料価格指数など、どこからどう計算してきたのか必ずしも明確でない指数もあります。変わったものでは、マスクの価格指数というものもあるそうです。
日本は長らくデフレが定着し、物価が極めて安定しているので、商習慣として「値上げ」に対して非常に消極的になる習慣が染みついてしまっています。しかし、中国では日本とは全く異なり、価格は変動しますし、基本的にインフレ基調を保つものです。
ですから、「機敏・柔軟な価格調整」は、少なくとも中国で事業を営むならば必須であり、そのための指数も皆さんよくご覧になっていますので、是非、この機会に、どんな指数を見るか、その指数の信頼性はどうか等々、考えてみていただければと思います。
②リハビリ医療の発展促進
リハビリ医療の発展を促進する指導意見は、日本での経験を活かして事業展開することを考えるには一見の価値ありかと思います。
リハビリ治療師(康復治療師)には、物理療法、作業療法、言語療法といった方法があるそうで、日本では理学療法士とか作業療法士という国家資格がありますが、中国でも試験と資格証書の制度があり、その人数を2022年までに10万人あたりリハビリ医師6人、リハビリ治療師10人に増やす、という目標を立てています。
注目すべき点として、リハビリ医療に関するサービス価格についても医療保険の支払管理を含めて見直していくこと、臨床とリハビリの連携したサービルモデルを構築していくことが挙げられていますので、このあたりは日本での経験を活かしていただけるチャンスがありそうにも思えます。
③仮想通貨の資金源
意外にビジネスに影響があるかもしれないのが、仮想通貨(暗号資産)の話題です。
今回は、CCTVで紹介されていたニュースを取り上げましたが、中央銀行から主要銀行とアリペイなどの第三者決済サービス事業者に向けて、仮想通貨取引のために口座や資金が使われないように、顧客の身分確認や資金用途を確認するようにという行政指導が行われたそうです。
「国境を跨ぐ違法な資産移転」やマネーロンダリングに使われているということですが、書籍でも触れたとおり、中国は外為規制が厳しいですので、仮想通貨を使って中国から日本に資金を持ち出して日本で不動産を買う、といった資金移動が行われているようです。
このルートがふさがれることは、日本で不動産投資にいそしんでいる中国の方々の資金繰りがショートしてしまう可能性をはらんでいるので、仮想通貨の取引とは無縁の我々にも影響してきてしまうかもしれません。
中国でも日本でも、やはり、その場で現金一括決済が一番ですね。
④知財法廷の事例紹介
最近、最高人民法院の知財法廷が毎週、ブログのような形で典型事例を1つずつ発表しているようでして、これがなかなか、他の政府機関から嫌われそうな(?)事例を出しているので、個人的には興味をもってご紹介をしています。
先週、今週の資料では最後のページに入れたものですが、中国で知財業務を担当なさっている方には参考になると思います。
当方で全部ご紹介できるものではありませんが、出典をお知らせしておきます。
⑤「新型学徒制」と実習生
なお、ppt資料でも取り上げた「新型学徒制」ですが、技能人員の育成目的のために、学生を企業が受け入れて職業訓練を施す産学連携の活動が行われています。
学生を受け入れる企業の側には補助金が支給されます。在学中に「実習生」として工場などで働く人たちは以前からいましたが、労働法の世界では、これらの方々が労働者として適切な保護を受けていないなどの問題も多く見られました。
ただ、ニーズがあるのは確かなのですから、このようにルールを作って推進していくのは良いことのように思います。
日本は今後も労働人口がどんどん減少していきますので、例えば、中国にある工場側でこういった学生さんを受け入れてもらって、一定のスキルを身につけた人に日本に来てもらえないか誘うといったことも考えられるかもしれません。
ただ、残念ながら、中国では人件費は今も変わらず一貫して上昇しているので、これは「安い労働力」調達の目的ではおそらく使えないことにはご留意ください。
⑥資料リニューアル予定
ところで、来週か再来週から、このワークショップ資料は構成・体裁を変えて、リニューアルの予定です。
ご覧いただける方々のお役に立つものをご提供できるように、随時見直しをしながら作り上げていきたいですので、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
2021年6月18日金曜日
6月第3週:①データ安全法、②反外国制裁法、③「網紅」がニセモノ販売で懲役、④中国製ワクチンと隔離免除、⑤水曜は「ノー残業デー」、⑥公的機関による特許実施と許諾
今週のキーワード:
データ安全法、安全生産法、高速道路差別化料金、特許権侵害判断事例
①データ安全法
「データ安全法」については、キャスト中国ビジネスのニュースレターでもご紹介しましたが、データの国外移転に関する具体的な規則は今回の法律の中には規定されておらず、別途定められることになっています。《ネットワーク安全法》では基幹インフラ運営者の重要データだけが対象だったところ、これに規制が上乗せされることにはなるものの、内容は未定ということで、引き続き細則や国家基準の制定を待つこととなります。
データの分類・分級保護についても、各部門、各地方が業界ごとの基準などを定めていくようです。
②反外国制裁法
「反外国制裁法」については、G7直前に公布されたので注目を集めました。
「報復リスト」に掲載されると、会社の場合は経営陣や支配株主などにつき入国禁止や国外追放、資産凍結、中国企業との取引禁止・制限などの措置が講じられるとのこと。
ある国の行う制裁に「制定、決定又は実施に直接的又は間接的に参与」すると報復リストに入れられてしまうようですが、「制定、決定」はともかく、国が決めればその国の組織・団体は「実施」には参与することになるのだろうか?という気もします。
昨年9月に出た《信頼できないエンティティリスト規定》によるリストも未だ出ていないようですので、具体的な運用がどうなるのか見てみないと分かりませんが、「誰も見たくない」場面とも言えるでしょうから、なんとなくモヤモヤしたままの方が平和なようにも思います。
③「網紅」がニセモノ販売で懲役
「網紅」とは、ネット上の人気者(インフルエンサー)のことです。
今回紹介した記事では、SK-II、資生堂などの化粧品のニセモノを大量に購入してきて、アリババのライブ配信チャンネルで販売し、懲役3年3ヶ月及び罰金22万元の処罰を受けたとのこと。
燕の巣であったり、ダイエット薬であったり、「網紅」が関与するトラブルはときどき話題になります。
「網紅」自身がわざわざニセモノを買い集めてきて売る悪質な事例は稀と思いますが、たくさんのファンがいる「網紅」は影響力が大きく、商品を紹介してもらうための「広告料」も高額なようですから、トラブルも起きやすくなります。「網紅」を起用するときは、その人が他に紹介している商品がどんなものかなどを含めて、イメージが合うかどうかをよく見ていただく方がよさそうですね。
(といっても、如何にもニセモノを売っていそうな人は人気者にならないと思いますが...。)
④中国製ワクチンと隔離免除
COVID-19のワクチンですが、中国製ワクチンを含む一定のワクチンを接種していると、キプロスやスペインで隔離が免除されるという記事がありました。韓国でも条件付きですが7月1日から中国製ワクチンを接種していると隔離が免除される見込みとのこと。
個人的には、中国製ワクチン接種で中国入国時の隔離措置が免除されるように将来的にはなってくるのかどうかを気にしています。
⑤水曜は「ノー残業デー」
Tencentのゲーム関連の一部門では、毎週水曜日は強制的に6時で退勤するというルールを導入したとのことで、Weiboで話題になったそうです。
中国では「996(9時から9時まで週6日勤務)」という言葉が随分前から流行していますが、この社内通知では、「業務効率を高めるのに996は不要だということを証明しましょう」と書いてありました。
日本でも水曜をノー残業デーにする試みは以前からありましたし、少し親近感と懐かしさを感じます。プレミアムフライデーも、コロナ禍が過ぎ去ったら、辛い時期を過ごした飲食業界の方々を応援するためにも再び盛り上がると良いですね。
⑥公的機関による特許実施と許諾
なお、資料の最後でご紹介した特許に関する裁判事例は、最高人民法院の知的財産権法廷が紹介している事例の一つですが、飼料添加剤に関する特許を有する特許権者(個人)が、中国農業科学院飼料研究所、北京市大興区農業農村局を相手取って、無許諾での実施に対する賠償を求めたものです。
《特許法》第11条は、特許権者の許諾なしに「生産経営の目的のために」特許等を実施してはならないことを定めているところ、これは「営利目的」を意味するものではなく、公益性事業を行う公的機関だからといって許諾なく特許等を実施できるわけではない、という事例です。
ちなみに、この特許法第11条も2020年改正での変更はなく、従来どおりのものですので、「今さら」の感もありますが、念のため。
2021年6月11日金曜日
6月第2週:①「証照分離」改革(規制緩和とコンプライアンスは表裏一体)、②大量固体廃棄物総合利用、③新エネ車と「永久無料」、④商業賄賂の不起訴事例
今週のキーワード:
審査認可制度改革、コンプライアンス第三者監督評価、企業コンプライアンス事例、新エネルギー車アフターサービス
①「証照分離」改革(規制緩和とコンプライアンスは表裏一体)
審査認可制度に関する「証照分離」改革、よく見かけるキーワードですので、少しご説明しておきます。
経営許可証と営業許可証の分離という意味で、個別業種の経営許可証は日本語と同じく許可『証』、営業許可証は中国語の「营业执『照』」で、この2つを分離しています。
昔は、営業許可証の取得(会社設立登記と同時)の前に、食品なら食品、建設なら建設、化学品なら化学品、それぞれの業種にかかわる許可を事前に取得する必要がありました。
ですから、「その業種の許可が先に取れないと、営業許可証がもらえない」、つまり会社が設立できない仕組みでした。
現在では、とりあえず先に会社を作って営業許可証(照)をもらっておいて、後で個別業種の許可証(証)をもらう、ということができるようになっています。
逆に言うと、営業許可証の経営範囲に「食品卸売」と書いてあっても、その許可証を持っているとは限らないことになっており、今では経営範囲よりも個別の許可証が大切になっています。
以前から中国ビジネスにかかわっておられる方々は、5年も経つと仕組みが大きく変わっていますので、お気をつけください。
今回の通知では、さらに、事前審査そのものを無くす業務分野が増えるとのことです。
ただ、例えば広告発行登録が廃止されても、広告法違反の処罰は多いです。そのように、規制緩和に見合った自己チェックがセットになります。
「規制緩和と企業コンプライアンスは表裏一体」、日本ではごく当たり前の常識になっている観点ですね。
(例えばネット上でも、下記のような分かりやすいご説明も掲載くださっています。
しかし、一方で中国を見ると、このような考え方はまだ「全く」浸透していませんから、中国子会社で体制・習慣を作っていくのは大変です。
②大量固体廃棄物総合利用
大量固体廃棄物の総合利用についての指導意見。
金属精錬くずを道路や建築資材に活用する、建設ゴミを道路工事で再利用する、農産物のわらをエネルギー利用や環境保護製品に再加工する、そういった産業のモデル基地を作るそうです。
2019年の総合利用率は55%であったところ、これを2025年までに60%に高めるとのこと。
リサイクルしやすさを考えた商品設計、B to Bの場面でも少し考慮する項目に入ってくるでしょうか。
③新エネ車と「永久無料」
新エネルギー自動車のお話。
新エネルギー車の販売量、使用量の増加とともに、品質問題やアフターサービスなどの問題も中国で「炎上」しています。
日本でも「永久無料」と書かれた広告を見かけることがありますが、それを「無制限に」と理解する人はあまり多くないと思います。
中国は広いですから、「いくら使っても」永久無料なのか!と喜んでしまう素朴な人たちがまだまだ多いのかもしれませんね。
同じ言葉、同じ説明をしても、受け止め方が変わってしまえばトラブルになりますから、広告の世界は難しいです。
④商業賄賂の不起訴事例
企業コンプライアンスのお話では、今回の資料では2ページを費やしました。
「商業賄賂」(取引先の担当者個人への利益供与)についての事例も紹介しています。
H社の音響設備のサプライヤーであるY社の営業担当の王さんは、累計で、H社の購買担当の劉さんに25万元、技術総監の陳さんに24万元を贈りました。その資金は別のA社という会社からY社が何かを購入したことにしてY社から支出されており、Y社の副総裁と財務総監が承認していました。
H社が公安に通報して、上記各関係者はそれぞれ処罰されたのですが、ここでの問題はY社の会社としての処罰です。
Y社の関係者らが贈賄をしたのはY社の売上のためですから、Y社も処罰を受けることになりそうですが、そこで、資料に書いたとおり、Y社は「コンプライアンス監督管理協議書」なる契約を検察との間で取り交わして、起訴を免れたという事例でした。
昔からある話ではありますが、果たして、第三者の監督機関が入ってきたとして、「中秋節に結構お高めの月餅を贈っても良いですか?」と聞かれたらどう答えるのか、個人的にはとても興味があります。
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