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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2021年10月27日水曜日

10月第3週:①対外的な活動はしないことが仕事の日、②「品質インフラ」(NQI)の充実、③知的財産権の故意侵害の認定基準?、④契約における特許保証条項、⑤石炭価格への介入措置

①対外的な活動はしないことが仕事の日

某大手企業が新製品発表会の日付の選択のせいで処罰されたという新聞記事がありました。本当に日付だけで?と半信半疑で、何か広告内容や宣伝方法に不備があったのでは?と思って行政処罰の内容を見てみたのですが、残念ながら、本当に、新製品発表の日付と時間帯の問題で炎上して社会を騒がせたからという理由だけのようでした。
「国の尊厳又は利益を損なった」という広告法の規定が根拠規定となっているのですが、ネットを見てみると、「なぜわざわざ7月7日、しかも夜10時に?」というコメントから段々と盛り上がり、製品がカメラであったということもあって、原爆投下時の写真や、日本の敗戦直後の写真などが次々と掲示板にアップされて、確かに大炎上してしまっていたようです。
ただ、日付と時間だけでここまで盛り上がるとは、今回はちょっと驚きでした。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりの日付は要注意です。
以前は、中国に赴任する方々は必ず赴任前研修などで教えてもらっていたと思うのですが、私も中国赴任してから10年以上経ったので、最近は忘れていることも多いです。
この現象・事態そのものが是か非かという議論はともかくとして、中国ビジネスにかかわる一人としては、とりあえず改めて、この4つの日は「対外的には何もしないのが仕事の日」と認識しておこうと思います。

②「品質インフラ」(NQI)の充実

「品質インフラ(质量基础设施)」は、英語のNQI(National Quality Infrastructure)から来ているそうで、標準化、適合性評価、計量、認定といった品質関連の枠組みを指すそうです。
こういった品質インフラについて、ワンストップの公共サービスを提供することで、中小企業の技術的能力や信頼性の不足を解消して、個々の企業の製品・サービスの品質、ひいては産業チェーン全体の飛躍につなげようという考えが示されています。
言われてみると、工場見学などにうかがったときのことを思い出すと、大企業と中小企業では、検査・測定用の機器の充実度合いが全く違うような印象があります。
検査は生産性に直接は影響せずにむしろコストを増やす、検査員が頑張ると製造担当部門から煙たがられる、そのような景色の中で、日常の場面では検査が軽んじられてしまうこともあります。しかし、実は高付加価値で競争力ある製品を展開していくには検査・軽量・測定の部分がそれを支えているということは確かにあると思いますので、その部分を重視しているというのは、「なるほど」と感じます。

③知的財産権の故意侵害の認定基準?

今年の3月第1週のワークショップでもご紹介しましたが、ここ数年で、《特許法》や《著作権法》などの知的財産関連法令の改正が行われ、知的財産分野では全面的に懲罰的賠償制度が導入済みとなっています。
懲罰的賠償の枠組みとしては、概ね、「故意」で且つ「情状が劣悪」な場合に懲罰賠償を命じることになっているのですが、このときご紹介した、故意侵害の認定にかかわる要素は、以下のようなものでした。
 ①通知又は警告を経た後も権利侵害行為を継続した
 ②被告が原告の関係者である
 ③以前に勤務や提携関係がある
 ④以前に業務取引や契約交渉をしたことがある
 ⑤海賊版又は登録商標冒用の行為である
 ⑥その他の事情
今回は、黒竜江省の知的財産権局から中央への照会があったようで、ある事情を「故意」の要素として考慮するのか、それとも「情状が劣悪」の要素として考慮するのか?という問題について、「前者(故意)は主観的要因、後者(情状劣悪)は客観的要因なので、両者を混同してはならない」という見解が示されています。
ですので、結論としては「それは故意かどうかの問題ではなく、情状劣悪かどうかの問題ですね」という回答になっており、通知文書のタイトルと違う内容でした。ときどきこういうこともあるのですが、故意認定の要因をおさらいする機会にはなりました。

④契約における特許保証条項

日本ではサプライヤーが顧客を訴えた構図となって一躍話題となっている、電磁鋼板をめぐる特許権侵害紛争ですが、中国ではごく普通の、サプライヤー間の特許紛争です。
日本での訴訟は、知的財産の仕事をなさっている方々はお分かりになると思いますが、実はこれは非常にショッキングでして、サプライヤーとの契約における特許保証条項の重要性が高まるのはもちろんなのですが、「特許保証条項さえあれば良いのか?」という新たな課題について考えてみる機会でもあります。
まさに法務部と知財部が連携して対応すべき課題と場面ですので、ぜひ話題にして交流してみていただければと思います。

⑤石炭価格への介入措置

石炭価格が過去最高を更新し続け、製造業のコスト負担を増やし、冬場に向けた暖房供給に対しても悪影響を及ぼしているということで、石炭価格に対する介入措置が検討されています。
中国の《価格法》では、重要な商品・サービスに顕著な価格高騰が見られる場合や、市場価格の全体水準に劇的な変動等の異常が生じた場合には、価格届出制度や、緊急価格凍結措置といった介入措置をとることが規定されています。
価格統制は、経済学の理論から言えば必要十分な供給がされなくなり、闇市場を生み出して二重価格構造を生み出すだけで、根本的な解決にならないということは、一般論としてはあるのだろうと思います。ただ、今の中国ほど強力に社会の動きを監視・統制して、闇市場が生まれることを十分に抑制できる能力があるという前提条件のもとならば、果たしてどのような効果が生じるのか、個人的には少しだけ興味があるところです。
世の中には、「高いから買うのをやめよう」と思うものと、「高くても買わざるを得ない」ものがあるので、とりあえず企業の運営に携わる一員としては、コストが高騰せずに済むことは良いことと思っています。

2021年10月20日水曜日

【動画】2分で解説!? 中国《データ安全法》と《個人情報保護法》への対応

昨日、セミナーに登壇させていただいたテーマについて、
試みにこのような動画を作成してみました。

2分で分かる!中国データ安全法(データセキュリティ法)と中国個人情報保護法に関する対応(Youtube動画)


3時間のセミナー、90ページの資料があるものでしたので、
本当にごく一部だけのご紹介ですが、どうぞ(文字通り)ご笑覧ください。


2021年10月19日火曜日

中国赴任の前に必ず教えてもらう日付


中国で、日系企業が気をつけるべき日付がいくつかあります(中国語で「国恥日」という)。昔は、中国に赴任する方々は赴任前研修などで必ず教えてもらったと思うのですが、私も毎年、忘れています。
5月9日、7月7日、9月18日、12月13日、このあたりは、中国のネットでもよく見かけるので、ビジネスに携わる方々は覚えておいて損は無いかと思います。

10月第2週:①中国の国家基準とISOなどの国際基準、②施設の「退役」費用の積み立て、③児童用化粧品の新規制、④決済用QRコードの規制、⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

①中国の国家基準とISOなどの国際基準

中国の国家基準を見ていると、最初の方に、「国際基準であるISO●●:●●を採用している」など、参照している国際基準が明記されているのをよく見かけます。
ISOなどの国際基準と中国の国家基準を見比べたとき、一見すると非常に似ているので、同じようなものと理解していると、意外な部分で少し中国独特の要素が入っていたり、逆に国際基準の一部が中国の国家基準には取り込まれていなかったり、といったこともあります。
今回公表された《国家標準化発展綱要》では、発展目標として、国家基準と国際基準の基幹技術指標の一致性の程度を大幅に引き上げ、国際基準の(国家基準への)転化率を85%以上に引き上げることを提唱しています。
グローバルで事業展開をしていく企業各社にとっては、ルールが共通である方が便利で助かることが多いと思います。中国の国家基準が世界をリードして国際基準に反映されていく場面も多くなってくるかもしれません。ただ、当面はまだ、「15%くらい、国際基準と違うところもある」というイメージを持っておいた方が良いようです。

②施設の「退役」費用の積み立て

重点危険廃棄物の集中処理施設については、従来から、《固体廃棄物環境汚染防止処理法》において、「退役」(=稼働終了)時において発生する費用を事前に積み立てておく管理が求められていました。今回は、そのうちの埋め立て処理場について、新たに「退役」費用の積み立て管理についての細則規定が出ました。
2016年に、化学工場跡地に建設された外国語学校の大勢の生徒らが体調不良を生じた「常州毒地事件」が大きく取り上げられ、化学工場跡地の有害物質の除去、土壌修復についての機運が高まって、2018年の《土壌汚染防止処理法》に至った大きなきっかけの一つになりました。危険廃棄物の処理施設は、当然ながら危険廃棄物が集積され、土壌や地下水への漏洩等の危険も大きいわけですから、稼働終了時における土壌修復費用も非常に多額にのぼることがあるのだろうと推測します。
日本でも、化学工場跡地で土壌汚染がある土地のうえにマンションが建設・分譲販売されて大きな問題として報道されたことがあったかと思います。いったん建物が建ってしまった後に問題が発覚すると非常に解決困難な状況に陥ることがありますから、やはり、更地になったタイミングでしっかり対応しておくことは大切なように思われます。そのとき、資金がないと何年も放置するか、そのまま目をつぶって新しい建物を建てて活用するか、非常に困った決断を迫られることになります。
今回は埋め立て処理場についての規定ですから直接関係は無いのですが、平時からの事前の積み立て、法律上の強制ではなくても、考えておくのは良いことと思います。(ただ、実際に積み立てようとしても、税制上の手当てが無いのでは難しいのですけれども。)

③児童用化粧品の新規制

《児童化粧品監督管理規定》という新しい規定が出ました。子供用の化粧品、キッズコスメということで、日本でも流行しているようです。
「誰にでも適する」とか「皆が使える」といったような、子どもでも使えることを明示又は暗示するような記載のある化粧品については、「保護者の監護のもとで使用してください」といったような警告表示を加えなければならないとのこと。
ここでいう「児童」は12歳以下の子どもですので、子どもがそういった注意書きを書いて理解できるのだろうか?(12歳当時の私を思い出すと、仮に理解できても無視するような...)という気もしますが、化粧品の企画・販売に携わる方々は、子供向けでなくても子供向け商品としての規制がかかってしまう可能性がある点にご注意ください。

④決済用QRコードの規制

中国で買物に行くと、商品の横に印刷されたQRコードが置いてあって、そのQRコードをスマホでスキャンして代金を支払う、そんな光景を目にすることがあると思います。日本でも随分と目にする機会が多くなってきました。
今回、このような「静態」QRコードについて、個人については、リモートや非対面での使用を原則禁止するとのこと。
個人が自分の決済用QRコードを提供して、決済代行に使わせることで何%かの手数料を得るという「跑分平台」というサービスがあり、2月頃にも一度、マネーロンダリング等に利用されていることをご紹介していましたが、QRコードをめぐる規制も実情に合わせて変わってくる部分があります。

⑤石炭発電の電力卸売価格の変動幅拡大

天然ガスの価格高騰、中国での事業にはさまざまなところで影響が出てきています。
今年ほど暖冬を願う冬も珍しいかもしれません。



2021年10月5日火曜日

9月第5週:①電力不足による操業停止、②全民医療保障計画、③仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締、④来週休載のお知らせ

①電力不足による操業停止

中国駐在経験者の方々はよくご存じかと思いますが、北京では建物の中は非常に暖かく、家の中では半袖で十分に過ごせるほどです。北京にいたときよりも上海にいたときの方が、よほど寒くて風邪をひいていました。さらに北方に出張することもありましたが、もちろん、一歩外に出れば厳寒で、マイナス10度を下回るような寒さですから、こんなに建物内を暖かくするにはさぞかし大量の石炭が必要だろうなと思いながら、巨大な火力発電所を眺めていたことを思い出します。
中国では、産業用の電力料金が、一般個人の住居向けの電力料金よりもかなり高めに設定されていることが多いですので、中国で工場運営にかかわられた方々は電力コストの高いことに驚かれたこともあるかもしれません。高いにもかかわらず供給が安定しない、なかなか困ったことですが、生産計画等については各社ともその都度、調整なさっていると思います。ただ、今般はどうも普段よりも急だったのか、工場での事故につながってしまったようで、新聞記事になっていました。急な停電でも重大な事故につながらないよう、社内の対応マニュアルに1ページ、足しておいていただければと思います。

②全民医療保障計画

2週間ほど前に、全民医療保障計画が国務院常務委員会を通過したというニュースをお知らせしていましたが、詳細内容が国務院弁公庁から発布されました。
主要指標が表になっていたり、かなり項目も多くなっていますので、医療・製薬などヘルスケア業界の方々はご覧いただけると参考になる箇所もあろうかと思います。

③仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締

発展改革委員会から、仮想通貨の採掘(マイニング)活動の取締についての通知が出ています。エネルギー消費・二酸化炭素排出量が多いわりには国民経済への貢献度が低く、産業・科学技術の発展にもあまり役立たないということで、「産業構造調整目録」の「淘汰類」に分類し、投資を禁止する産業とされました。
中国人民銀行からも、いわゆるステーブルコインであっても仮想通貨を貨幣として市場で流通させてはならないということ、国外の取引所がインターネットを通じて同様の活動を行うことも禁止されているということ、いずれも通知で明確にされています。
ブロックチェーン技術は役に立ちますが、仮想通貨は役に立たないということで、方向性としては数年前からはっきりしてきているところですが、改めて明確に意識しておきたいところです。

④来週の休載のお知らせ

なお、今週が国慶節の連休ですので、来週は休載させていただきます。


2021年9月28日火曜日

9月第4週:①ソフトウェアのアップデート時の条項、②高層ビル火災と電動自転車、③知的財産権強国、④恒大集団関連の記事

①ソフトウェアのアップデート時の条項

とあるEV(電気自動車)のメーカーがあり、そのメーカーが展開している車種では、オンラインでのアップグレードによってソフトウェアが更新でき、運転支援などの機能が向上していって最高でL4の自動運転機能まで実現できるという触れ込みになっています。
しかし、そのEVメーカーからの更新通知を受けた車両オーナーからの話によると、「個人のナビゲーション及び音楽再生の履歴の収集」などプライバシーに関する条項があり、且つ、その更新通知には「同意しない」のボタンがなく「閲読して同意しました」のボタンしかないとのこと。しかも、その同意ボタンを押さないと、引き続きクルマを使うことができなくなったそうです。しかも、今回が初めてではなく、7月にも同様にアプリの更新で「不同意」を押すとアプリが強制終了され、アプリが使用できず、クルマの機能が使えなくなってしまうということがあったとのこと。
自動運転と、OTA(Over the Air)技術によるオンライン更新、この2つの技術はまさに車の両輪のように今後の新たな車種での技術を牽引していくはずですが、更新のたびに意に沿わない条項に同意しなければクルマが使えなくなるようですと、消費者からの苦情が絶えないことになりそうです。しかし、ソフトウェアが更新されずバラバラなまま運用されているというのも危険なように思います。
個人情報保護法やデータ安全法にも関わる新たな課題、どのように解決されていくのか気になります。

②高層ビル火災と電動自転車

6月に民間用の高層建築についての消防管理規定が発布された関係によるものなのか、中国のビルにおける火災のニュースを目にすることが増えた印象があります。
電動自転車を建物内に持ち込んで充電していると、そこから出火して火災になってしまうことがあります。2009年以降だけで、この原因による火災で3名以上がなくなった事故が70件以上あるとのこと。バッテリーも使っているうちに劣化してくると思いますし、耐用年数もあるはずですが、車検のように何年かごとにチェックする仕組みがないと、危ないまま使ってしまっていることもあるのではないかという気もします。
充電場所を決めて防火設備を設置する、過剰充電の遮断機能をつける、といった規制が設けられていますので、電動自転車の駐輪と充電にはお気をつけください。
ついでに脱線しますと、かつて私が上海にいたころ、マンションで大きな火災事故があり、そのあおりを受けて建設中の工場の消防検査が非常に厳しくなってしまい、操業開始が大きく遅れてしまったという事例がありました。また、北京では事務所の隣の部屋が消防検査に不合格になり、ずっと使えない状態になっていたこともありました。(私自身も「こんなに要るだろうか?」と思いながら何本も消火器を買い揃えたことを覚えています。)
それ以降、大きな火災のニュースには個人的にはいつも気をつけるようにしています。「対岸の火事」と思わずに、消防検査が厳しくなることを予測する一つの材料をご理解ください。

③知的財産権強国

「知的財産権強国」建設のための2035年までの綱要が公表されました。
綱要ですので、特に具体的なことが書かれているわけではないのですが、特許集約型産業の育成に力を入れることが大きな目標として掲げられており、さらには知的財産権取引価格の統計発布メカニズムを構築することや、国有知的財産権の帰属及び権益分配メカニズムを改革することといったように、知的財産権の価値の実現・運用のメカニズムを整備していくことが掲げられています。
また、知的財産権を担保とする知的財産権融資モデルについてもイノベーションを模索していく、著作権取引プラットフォーム、作品の資産評価、登録認証などサービスについても整備していく、といった施策が掲げられています。
もちろん、データについても、データの開放とプライバシーの調整処理を改善して、知的財産権としての価値を有するデータ資源の市場価値を実現させるための制度を整備していくとのことです。
その他、人材育成などを含めたさまざまな施策が挙げられていますので、今後も具体的にどのような制度が導入・運用されていくのか注目していきたいと思います。

④恒大集団関連の記事

毎週さまざまな中国のニュース記事を見ていますが、恒大集団に関する記事については、かなり大きな影響が出ていると取り上げているものもあれば、逆に中国語版リーマンショックなんてあり得ないとするもの、さらには比較的中立・客観的な記事まで、なかなかバリエーションに富んでいます。
普段、中国でのニュースの内容は方向としては似たり寄ったりという感じなのですが、今回は両極端な記事を含めてバラバラな印象で、どれかの記事を取り上げるとその記事を支持しているような印象になってしまうかと思い、選べませんでした。
一方で、日本でのこの恒大集団の件についてのニュースなど見ていると、どちらかというと悲観的なものに偏っているようで、「共同富裕」だから救済できないというような内容にある程度方向が揃っているように感じるところもあります。あくまで個人的な印象だけですが、「皆がそう言っている」という状況の方が情報を選ぶ苦労が無くてむしろ楽なのだなぁと実感したこの数日でした。

2021年9月21日火曜日

9月第3週:①ネットに対する規制は今後も強化の方向、②国民皆保険計画、③世界ロボット大会、④税関の企業等級分類の改正

①ネットに対する規制は今後も強化の方向

中共中央弁公庁、国務院弁公庁から、《ネットワーク文明建設の強化に関する意見》が発布されています。
オンラインゲームの規制などが最近は話題ですが、中国政府として、ネット空間における思想や道徳の面での対応を強めていくことが示されています。青少年の保護についてプラットフォームの責任を強化するなど、今後も新たな規制が導入されてくると見込まれます。
「清朗」「浄網」といった一連のネット環境の改善のための活動もさらに推し進めるとのこと。個人情報保護法やデータ安全法の執行も含めて、一般市民の法的知識・素養を高めていくことも掲げられています。
歴史虚無主義に反対する、品性・人徳が高いネット文明環境を形成する、といったことも述べられているので、中国のネットユーザーも視野に入れたコンテンツの制作・提供にも影響してくると思います。

②国民皆保険計画

第14次5ヶ年計画期間における全民医療保障計画が公表されました。
「全民保険加入(国民皆保険)」計画を確実に実行していくということで、都市居住者が居住地・就業地で保険加入することを推進、また、柔軟性就業人員(個人請負などの形態での就労者)について保険参加のための戸籍面での制限を緩和するとされています。商業健康保険、特に高齢者向けの保険商品も発展させていきましょう、とのこと。
また、省を跨ぐ医療保険の手続について、オンラインで精算できるようにするということも掲げられています。他の省で病院に行っても地元の省で医療保険の精算をしなければならないという手続負担が軽減されていくことが見込まれます。

③世界ロボット大会

9月12日まで北京で「世界ロボット大会」が行われたということで、外骨格ロボット、手術ロボット、柔性ロボットアームなどの製造・物流業務で使われるロボットのほか、掃除ロボット、配膳ロボット、ロボット犬といったサービス・娯楽ロボット、さらに消防ロボット、AIゴミ集積所といった特殊ロボットなど、さまざまなロボットが展示されたそうです。
記事によると、中国の工業ロボット市場規模は8年連続で世界第一位とのことで、国家統計局のデータでは2016年から2020年にかけて工業ロボット生産量も年平均31%伸びたとのこと。医療・養老・教育といった分野でのサービスロボット、特殊ロボットの需要も伸びていくことが期待されています。
もちろん、工業分野においても、労働集約型産業における求人難・人件費高騰を受けて、ロボットによる代替が進んでいくことも見込まれています。ハイエンド分野ではまだまだ中国国産メーカーのシェアは低いそうですが、全体としての国産シェアは高まっているとのこと。中国的特色あるロボット、どんなものが出てくるのか楽しみです。

④税関の企業等級分類の改正

税関の企業等級分類が4段階→3段階に変わりました。
ご参考まで。

2021年9月15日水曜日

9月第2週:①食品・化粧品過剰包装の国家基準、②文化・道徳に関する通知、③販売員の使う資料(コロナ予防に有効?)、④ワクチン接種とスーパー入店、⑤「建設単位」≠建設会社

①食品・化粧品過剰包装の国家基準

食品・化粧品の過剰包装の制限についての強制性国家基準GB 23350-2021が改正されました。改正前のものは2009年版だったそうで、この新たな国家基準は「2023年」9月1日から(つまり2年後に)施行となります。
法律レベルでも《固体廃棄物環境汚染防止処理法》第68条において、過剰包装を制限する国家基準を遵守すべきことが規定されています。商品が市場に出ていって販売され終わるまでの期間を考えても、2年はずいぶん長いなと感じます。
ちょうど中秋節ですから、過剰包装の代表格としてどうしても頭に浮かんでしまうのは「月餅」です。特に北京にいた頃は、お菓子を買っているのか箱を買っているのか分からないほど、箱の方が立派でした。月餅は日持ちするので早めに買う人も多いのですが、さすがに、去年の月餅というのは無いでしょうし...。
一方で、化粧品は、これから企画することを考える場合には、市場に出て全てが売り切れるまでには2年以上かかりそうですから、今から新しい基準に適合させるようにしておく方が良さそうです。
今回の改正では、中身の重量又は体積と最も外側の包装の体積や、包装が何層になっているかなどが変わったようです。全文は下記URLからご覧ください。
 中国 国家基準全文公開システム: http://openstd.samr.gov.cn/bzgk/gb/
国家基準の改正に合わせて商品の仕様変更が必要なのに、その施行日までに仕様変更をするのを忘れていたり、間に合わなかったり、という事例をときどき見かけます。法律は直接に商品仕様に影響することは多くないですが、国家基準は例えば包装で言えばラベルの色や注意書きのフォントなど細かく具体的なことが書いてあることが多く(今回の過剰包装かどうかという問題とは別ですが)、機能や形状の面でもダイレクトに商品仕様の変更が必要になってくることが多いですので、国家基準、ゆめゆめ軽視することのないようにした方がよろしいかと思います。

②文化・道徳に関する通知

社会的に影響力が大きい著名人の方々については、スキャンダルが発生すると影響が大きいです。ですので、芸能人をはじめとする文化・芸術分野の人たちには、憲法や著作権法、税法などの重要な法律法規をしっかり学習してもらうように、ということが文化観光部からの新たな通知で発布されています。
「実際の業務と結びつけた形での法律教育を行うこと」と書かれており、これは私も企業内弁護士時代の経験から非常に重要と思っており、常に意識していることでもありますし、このワークショップの趣旨・目的でもあります。
また、ビジネスの面で言うと、違法行為をした、非道徳的・非模範的なことをした人員に対しては、舞台やプラットフォームを提供してはいけない、ということも規定されています。
せっかく高いギャラを払っているイメージキャラクターのタレントさんのCMが使えなくなる、商品を紹介してもらっているSNSが閉鎖される、そのようなことも起こりやすくなっていると思いますので、宣伝・広告関係の契約書には「道徳を守り、模範的な行動を」ということを書かないといけないのかな?とも考えています。

③販売員の使う資料(コロナ予防に有効?)

日本の新聞でも報道されていますが、ヤクルトが上海の某スーパーで「善玉菌は新型コロナウイルスの予防において重要な作用がある」という内容の宣伝チラシを配り、消費者からの通報を受けて直ちに回収したものの、市場監督管理局から罰金の処罰を受けたとのこと。
少し脱線しますが、ヤクルトといえば、マーケティングの世界ではヤクルトレディによる販売方式が非常に特徴あるものとして有名です。これまで、中国の労働者はどこかの「単位」(企業など)に所属して賃金をもらうスタイルが基本だったのですが、最近では、新たな就業形態の促進ということで、宅配などいわゆるギグワーカー(個人事業主?)として働く人も増えていますから、ヤクルトレディのような仕組みも中国では広まるかもしれません。
そのようなとき、個々人がどんな販売促進資料を持って商品を売りに回っているか、きちんとチェックすることは難しいのでは?という気もします。

④ワクチン接種とスーパー入店

中国では以前から「健康コード」というQRコードを使った行動制限がありますが、現在はさらにワクチン接種記録もスマホのQRコードで表示されるようになっており、この2つのQRコードでの感染予防が行われています。
中国の一部の地方では、ワクチン接種を加速するために、ワクチンを接種していない人たちはスーパーマーケットや病院などの公共スペースへの立入を制限するという措置を採っていることがあるらしいです。ただ、このような制限措置については、ワクチン未接種の人たちに非常に不便をもたらすということで、そのような措置を採っている地方に対しては是正を求めているとのこと。ワクチンを打ちたくても打てない人もいるでしょうから、スーパーに買い物にも行けないというのは、さすがに少しやり過ぎということでしょう。
中国ではワクチン接種回数は累計21億回以上、接種完了した人の数は9億6972万人とのことで、かなりの人たちがワクチン接種を済ませているようですが、これから中秋節、国慶節の連休期間に向けて引き続き感染予防が呼びかけられています。

⑤「建設単位」≠建設会社

工事建設分野における農民工への賃金支払を確保するための2つの法令が出ています。
工事を発注する側の企業に義務が課されている部分もありますので、建設業界以外の会社でも知っておいていただければと思います。
ちなみに、工事関係の法令ではよく「建設単位」という言葉が出てくるのですが、これが日本語訳では概ねそのまま「建設単位」となっているか、「建設会社」「建設企業」のように意訳されていたりしますので、非常に誤解が生じやすいです。
「建設単位」は、日本語にいう「建設会社」(=実際に建設工事を行う建設業者)のことを指しているのではなくて、建設工事を発注する主体(工場や倉庫などを建設するために、その工事を発注する会社)のことを指している場面が多いですので、日本語訳を見るときに勘違いしてしまわないように十分ご注意ください。

2021年9月8日水曜日

9月第1週:①経済・財政に関するネット情報の取締、②ダンプカーのナンバープレートをめぐる行政独占、③音楽の独占配信権を放棄、④医療サービス価格改革、⑤「十四五」就業促進計画


①経済・財政に関するネット情報の取締

国家インターネット情報弁公室では、ブログやSNSなどを通じて発信されている経済・財政類の情報について、10月26日まで、特別取締の第一段階を実施するとのこと。
財政部、中国人民銀行、証監会、銀保監会などの部門とともに、主に8つの類型の違法問題を打撃するとしています。
①経済・財政政策方針やマクロ経済データを曲解、②中国の経済・財政政策分野についての海外の報道をそのまま転載、③「独占スクープ」「関係者が語る」など非公開情報を騙ったデマ、④適法な経済・財政ニュースの一部に悪意ある編集を加えて転載、⑤「黒嘴」(SNS等を使って株式投資を勧めて会費を得るなどの違法行為を行う者)など市場攪乱行為、⑥ネガティブ情報の喧伝などによるゆすり・たかり、⑦社会的事件の喧伝により不安など情緒をあおって金融商品等を販売、⑧厳格な本人確認を経ずに政府部門関係者や専門家等の名義でアカウントを開設するなど。
会社の業務としてこれらの情報発信を行うことは通常は無いと思いますが、個人で何かつぶやいてしまうことはあるかもしれませんので、ご参考まで。

②ダンプカーのナンバープレートをめぐる行政独占

中国の《反独占法》は、民間の企業・団体のみならず、政府機関による行政独占も規制対象としており、行政権力の濫用による競争の排除・制限を禁じています。
今回は、深セン市の交通運輸局と公安局警察局が、ダンプカーのナンバープレートについて、全国的ルールとして定められているもの以外に、地方独自の届出番号や合格証取得を義務付けたことについて、他地域の運輸企業や個人の運転手が土砂の運送に従事するハードルを法的根拠なく高めているとして《反独占法》第37条違反として立件調査対象となりました。
各地域で業界団体を作らせ、そこでの研修を経た人にだけ特定業務に従事できる資格を付与するやり方も、比較的よく見られるところです。
「郷に入れば郷に従え」ということで、実務としてはそのようなローカルルールに従わざるを得ないのですが、ナンバープレートのように総数や枠が決まっているものなど、参入障壁が高そうな場合、市場監督管理局に相談してみるのも一案かもしれません。

③音楽の独占配信権を放棄

Tencentが運営しているQQ音楽という事業があるのですが、その事業に関して、2016年にTencentが中国音楽集団という会社の株式の60%超を取得したことがあり、それにつき7月に企業結合の届出をしていないということで処罰を受けていました。
この両社、アクティブユーザー数がそれぞれ1.6億人、2.3億人、市場シェアは33.96%と49.07%という圧倒的シェアで、この2社が結合することにより上流の版権元から独占的ライセンスを提供させたとのこと。
届出をしていなかった違反による罰金を支払うことのほか、市場競争状態を回復させるための措置として、上流の版権元から独占的ライセンスを受けていたものについて、独占権を放棄することを命じられていました。
今回はこれを受けてTencentが各版権元に対して独占権放棄の通知をしたとのことで、消費者にとっても、音楽配信市場に参入したい各社にとっても、音楽の配信を受けられるルートが増えることになります。
良い作品が良い形で流通するようになって欲しいと思います。

④医療サービス価格改革

医療サービス価格項目の改革について、今後3~5年で試行による経験を積み、2025年から全国に普及させるとの目標が示されています。
公立病院での医療サービスについては、現状では地方によって差があるのですが、そのサービス価格項目編製のルールを細かくしていくことで差を解消していく方向のようです。医療サービス価格の制定・調整ルールを綿密に設計することで、行政部門の自由裁量権を小さくするとも言及されています。
一方で、価格調整メカニズムの面では、一般的な医療サービス項目の基準価格は、都市ごとの就業人員の平均賃金によって定期的に調整することになっていることなど、多様な要素が考慮されるようですから、医療の場面でもデータの活用が今後も重要視されてくると思われます。
非公立の医療機関については、価格決定は市場メカニズムに委ねられることになっていますが、品質と価格が合うことなど、行政指導や公表措置などを通じて良好な価格秩序が維持されるようにするとのこと。医療保険を使うときは当然、医療保険基金から支払われる金額に拘束されるわけですが、それ以外の場面でも、医療サービスの価格の決め方については完全に自由ではないと理解しておいた方がよさそうです。

⑤「十四五」就業促進計画

都市部の新規就業者数増加などの目標と、そのための措置について定めた第14次5ヶ年計画期間の就業促進計画が発表されています。
新たな就業形態、さまざまな形での柔軟性ある就業、これまでの雇用慣行とは異なる就業形態が促進されることも見込まれます。
社会保険の登録など、関係する制度の運用についても今後は変化が生じてくると思われます。

2021年8月31日火曜日

8月第4週:①自動車データ安全管理若干規定、②会社の「休眠」制度、③「農民工」(出稼ぎ労働者)、④食品安全関連の6件の著名事件

①自動車データ安全管理若干規定

自動車関連のデータセキュリティに関する規定が発布されました。施行は《データ安全法》と《個人情報保護法》のちょうど中間、10月1日の予定です。内容から考えて、「2022年」の10月なのでは?と不思議に思い、2回、3回と見直してみましたが、やっぱり今年、「2021年10月1日」と書いてありました。
ずっと以前からあるカーナビや地図案内アプリはもちろん、日本では最近「あおり運転」の問題があって搭載が増えたドライブレコーダー、カメラやレーダーなどを使ったセーフティ・サポートカーなど、自動車の走行に関しては敏感な地図データ、運転者の個人データなどを含めて、多くのデータが収集・処理されますし、今後はもっとその傾向が加速するでしょう。
今回の規定では、「重要データ」は中国国内に保存しなければならないことが定められました(第11条)。安全評価を受けて認められれば中国国外に提供することもできるようですが、安全評価時に明確にした目的・範囲・方式及びデータの種類・規模などの範囲を超えることができません(第12条)。《データ安全法》第31条では、従来から《ネットワーク安全法》で規制されていた範囲以外の「重要データ」の国外移転について、別途の安全管理弁法を制定することとされていましたが、今回のこの自動車データの安全規定がそのうちの一つということになるのでしょう。
草案段階では、「個人情報」も中国国内での保存となっていたようですが、正式発布された内容では、対象は「重要データ」に限られています。「重要データ」には、顔やナンバープレートなど社外の画像データや、10万人を超える個人にかかわる個人情報などが含まれますが(第3条)、それ以外の個人情報の国外提供の安全管理については、別途、関係する法令の規定に従うとされています。
(ちなみに、「重要データ」の一番目にはもちろん、軍の施設や党の機関などの重要な敏感区域に関する地理情報や人員・車両の通行量などのデータが挙げられています。うっかりこれらの情報を国外に持ち出すと、スパイの嫌疑を受けることにもなりそうです。)
データの保管場所を変えるのは10月1日までにできそうな事柄には思えませんので、先んじて中国にデータセンターを確保していた各企業の方々は非常に先見の明があったということになりそうですね。
このほか、4つの原則(第6条)が掲げられていますが、このうち「デフォルト不収集」原則というのは、毎回の運転時にデフォルトの設定としてデータを収集しない設定にするようにすることが提唱されています。本人が自主的な設定で変更することは可であるものの、データ収集にあたっての告知事項が細かく、さらに、ユーザーマニュアルや車載画面、音声、アプリなどで目立つ方式で告知しなければならないとされているので(第7条)、もし毎回の設定になると、なかなか面倒なようにも思います。
その他、自動車業界に限らず、《データ安全法》と《個人情報保護法》のもとでは同様の規制が多方面で見られるようになるのではないかという気もしますので、是非、参考にしていただければと思います。

②会社の「休眠」制度

以前にもご紹介したことがあったかと思いますが、会社の「休眠」制度が正式に全国で適用されるものとして国務院から規定されました。企業等の登記に関する規定の一部で定められています。
「休眠」の登記をすることによる具体的効果がどうなのか、今後の運用を見ながら考えていかなければなりませんが、事実上「休眠」状態にある会社は既に多数存在しているのが実態ですので、それらの会社はわざわざ「休眠」登記の申請をすることはなさそうな気もします。
一点、中国ではペーパーカンパニーは認められないと長らく言われてきましたが、今回のこの条例では文書送達場所をもって登録住所と見なすとされています。「休眠」状態であればバーチャルオフィスも何もなくてもOKとなりましたので、この点は一つ、無駄なオフィス賃料を節約できて良いことかと思います。
一方で、取引先管理という観点では、債務の支払をしないまま「休眠」状態に入ってしまう会社も出てくると思われます。会社が運営している状態ならば、継続的な収益から弁済を受けることも期待することもできますし、売掛金や在庫商品などからの回収も図れるのですが、事業活動が止まってしまうと取引先としては困ることも増えそうです。(ただ、これまでは登記や届出の制度がなかっただけで、事実上は知らないうちに休眠してしまっている会社もありましたから、実はそれほど実務面での影響は無いのかもしれません。)

③「農民工」(出稼ぎ労働者)

「農民工」と言えば、上海万博や北京五輪の当時に建設現場などでよく見かけたような、農村から大きな布団を持って都市に出てきて働く出稼ぎ労働者をイメージします。しかし、現在、北京に出稼ぎに来ている人たちのうち半数以上は、肉体労働ではなくIT業界などで働いているそうです。
80年代以降に生まれた比較的若い世代の出稼ぎ労働者は、農業にほとんど従事したこともなく、報酬の多寡だけではなく自身の将来性などを考慮して仕事を選ぶ、といった傾向がみられるとのこと。
特段の技能を要しないローエンドの製造業などで働き、流動性が比較的高い伝統的な出稼ぎ労働者が農村からほぼ無限に供給された時代は終わりを迎え、都市化のための新たな戸籍制度も推進されてきています。
10年で大きく変わった中国、「農民工」という言葉のイメージも少し変えていかないといけないようです。

④食品安全関連の6件の著名事件

「民有所呼,我有所应」。民衆の呼ぶ声があればそれに応えるということで、今年4月以来話題となった食品安全関連の6件の著名事件(火鍋店や喫茶店、ファーストフード店やスーパーなど)について、それぞれ厳しく取り締まった状況が発表されています。
「四个最严」、4つの面から最も厳しい取り締まりがなされたとのことで、①問題が発見された店舗だけでなく同ブランドの全店舗を対象とした調査、②末端の店舗だけでなく本部及び地域支部への行政指導、③店舗だけでなく店長や責任者個人への処罰、④当該企業だけでなくサプライチェーンの上下流の同業関係企業にも調査を広げる、といったことが紹介されています。
食品安全には「ゼロリスク」はないが、あらゆる違法行為に「ゼロ容認」を貫くとのこと。これまでも、取引先や同業他社で何らかの事故や不備があると我が社にも調査が波及してくるという事例は目にしたことがありますが、今後はさらにそういった展開も予測しておくべきということになりそうです。


2021年8月24日火曜日

セミナー告知: 中国《データ安全法(データセキュリティ法)》、《個人情報保護法》の対応

中国の《個人情報保護法》が成立して、11月1日施行まで、およそ2ヶ月となります。
10月には国慶節休暇期間もありますので、対応は早めに進めておいた方が良い部分もあるかもしれません。

日本では、施行までの準備期間も長く設定されていることが多いですし、どのような対応を取れば良いかについても、公的機関や各種業界団体からさまざまな形での情報発信がなされ、比較的取り組みやすい親切な環境があります。
しかし、中国ではそういった便利な情報が少なく、今回の中国《個人情報保護法》についても、具体的に何をすれば良いのか、分かりやすい情報はあまり見当たりません。
また、中国《個人情報保護法》の内容についてネット上で参照することができる記事も、現在のところ、まだ過去の意見募集稿に関する古いものが多いようです。(ネットの記事を参照する際は気をつけてみてください。)

ちょうど10月19日に登壇させていただくセミナーもありますので、この機会にお知らせしておきます。


化学工業日報社様主催:
10/19ライブ配信《ビジネスセミナー》
『中国データ安全法(データセキュリティ法)と、中国個人情報保護法に関する対応』

2021年8月23日月曜日

8月第3週:①個人情報保護法が成立! ②基幹情報インフラ安全保護条例、③保険を解約して再契約させる違法行為、④「刷酸(ピーリング?)」美容施術は医療行為

①個人情報保護法が成立!

中国の《個人情報保護法》がついに成立しました。6月に成立した《データ安全法》と並行して審議されていたので、そろそろかと思っていましたが、8月18日に第三次審査稿が出たという発表があってから数日での正式公布という急展開となりました。
正式公布になった全文は、下記URLから見ることができます。
(今回配信の資料では、まだ、第三次審査稿が出たという発表までしか反映できておりません。ご容赦ください。)
施行は11月1日からとなっています。
詳細はまだ見ていませんが、個人との間で契約を結ぶために必要な情報や、会社が個人を雇用するために必要な情報の処理は、同意不要になったようで、少し安心しています(第13条第1項第2号)。もちろん、同意なしでできる範囲は限られるので、結局は同意を得なければならないということも考えられますが、これは今後の課題となります。
一方、個人情報の国境を跨いだ提供については、単独の同意が必要であること(第39条)など、概ね従来の意見募集稿と変わりないようですから、これらについては今後、各企業においても対応が必要になる部分と思われます。
ちょうどお盆休みのうちにセミナーの資料を作成しておりまして、残念ながらその資料の内容は修正しなければならなくなりましたが、10月のセミナーでしたので、開催直前の変更ではなくてよかったとホッと胸をなでおろしています。

なお、同じく8月20日付で、自動車データ安全管理に関する若干の規定(試行)も発布されています。こちらでも個人情報に関する規定がありますし、中国国外へのデータ提供についての安全評価制度が導入されているなど、実務に影響がありそうですが、こちらも今回の資料では間に合いませんでしたので、来週以降取り上げます。

②基幹情報インフラ安全保護条例

基幹情報インフラストラクチャ―安全保護条例も発布されています。
ネットワーク安全法(サイバーセキュリティ法)では、基幹情報インフラの安全を非常に重視しており、その運営者には通常のネットワークに比して段違いに重い各種の義務を課しています。
(些事ですが、ネットワーク安全法はまさにネットワークの安全に関するものであり、サイバー空間はネットワークの中にあるとか限らないのでは?と常々疑問に思っています。ですので、私は頑固にずっとネットワーク安全法と呼んでいます。)
滴滴の一件でも話題になった《ネットワーク安全審査弁法》もありますが、銀行ATM一つとっても問題が生じると多数の人たちに非常に不便を生じることを考えると、この方面での規制が厳重になるのは自然かとも思います。
《ネットワーク安全法》で定められていた「専門のネットワーク安全管理機構の設置」及び「ネットワーク安全管理責任者及び基幹職位の人員に対する安全背景審査の実施」について、より具体的な規定が出るかと少し期待していましたが、見たところその部分は特に従来と変わりないようです。
テロ対策との関係でも求められている「安全背景審査」、オリンピック関係者のお話もありましたが、今の時代、どこでも人選にあたって従来とは異なる配慮が必要になっているのだなと思います。

③保険を解約して再契約させる違法行為

今回のニュース記事の中では、社内不正関連の題材として、保険の勧誘について、元の保険を解約して改めて契約させるという違法行為が摘発されていた事件を取り上げました。
日本でもかんぽの事例がありましたが、全然異なる点として、日本のかんぽの問題は過剰なノルマをこなそうという「会社のため」の真面目さの表れでしたが、こちらの中国の事例は「新規顧客獲得」インセンティブをせしめるための「個人のため」の不正行為でした。日本のかんぽの事例は被害者は個人の消費者でしたが、中国のこの事例は被害者は保険会社である、という点も異なります。(保険会社の従業員になりすまして販売している点も異なります。この点は、オレオレ詐欺にも似ていますね。)
ただ、保険の業界に限らず、営業活動について様々なインセンティブを付与している例は多いと思いますので、その制度を悪用している人がいないか、内部統制にかかわる方々には視点として持っておいていただければと思います。
また、異なる背景、異なる動機であっても、現れてくる現象としては共通ということもありますので、やはり、何らかの現象に違和感を感じて察知する感性は日ごろから磨いておきたいなと思っています。

④「刷酸(ピーリング?)」美容施術は、医療行為

国家薬品監督管理局から発表された注意喚起情報によると、「刷酸」という美容用語が流行しているとのこと。
「刷酸」とは、美容施術の一種で、角質除去・保湿、新陳代謝促進、毛穴をきれいにする、といったように美容に良いとされているのですが、腫れ、シミ、痛みなどの副作用も出てくることがあり、傷跡が残ってしまうこともあるそうです。
ですので、「刷酸治療」は必ず医療資質のある病院や診療所で、研修を受けた専門スタッフの施術を受けるようにしてください、という注意喚起になっています。
化粧品の中でも「酸で皮膚を入れ換える」といったような宣伝をしているものがあるらしいですが、化粧品は医療作用があるものではないので、「刷酸治療」とは本質的に別のものだということも説明されています。ですから、化粧品についてこのような宣伝をしてはいけないと言われています。
いつもセミナー等で申し上げていることですが、日本での宣伝文句をそのまま中国語に訳していると、中国では違法となってしまう場面がありますので、どうぞご留意ください。

2021年8月16日月曜日

8月第2週:①個人情報不正取得の処罰事例、②女性従業員の会食同席、③「鴻蒙」の商標、④職務発明の退職後出願、⑤家電業界の回収目標責任制、⑥商貿物流分野での行動計画

①個人情報不正取得の処罰事例

顔認識については司法解釈が出たことを前々回にご紹介しましたが、今回はその関連で、「315晩会」でも取り上げられたKOHLERの店舗での顔情報収集についての行政処罰決定書が7月26日付で出ていましたので、その事例を取り上げました。
全国222店舗に565台のカメラを設置し、220万件あまりの顔情報を取得したとのことで、罰金50万元の処罰を受けています。
3月15日に「315晩会」で報道されたので、翌々日3月17日に立件し、調査の結果、膨大な量の個人情報が集められていたことが判明したので4月20日に公安に移送したものの、6月22日に公安から不受理で戻ってきたので、改めて調査のうえ行政処罰した、と書かれています。
結果としては《消費者権益保護法》違反による行政処罰で終わっているわけですが、この経緯から見ると、一歩間違えると刑法上の個人情報不正取得罪(《刑法》第253条の1)で刑事犯罪として処罰されてしまうかもしれなかったようです。思いのほか重い罪になる可能性があるのですね。

②女性従業員の会食同席

ネットで話題になっている事例を取り上げている報道の中では、とある女性従業員が勤務時間外に顧客との食事(飲酒)に同席するように求められ性的被害に遭ったと述べている事例など、「8時間以外」(※勤務時間外、の意味。)の上司に絶対服従という風潮が蔓延しているとの問題意識が取り上げられています。上司の迫力に負けてお酒を飲むのも「No」と言えない、これも権力による圧迫の悪性の現れと言われています。
今はコロナ禍ですので、日本ではあまり機会は無いかもしれませんが、上司・部下が異性である場合には特に、中国でも、勤務時間外をめぐる習慣が変わってきている時代でもありますので、是非ご留意ください。

③「鴻蒙」の商標

Huaweiの新しいOS「鴻蒙」(Harmony)、米国からの制裁によりAndroid OSの最新バージョンが搭載できなくなることに対応するために開発したものですが、商標をめぐっては既に「鴻蒙」という別の登録された商標が存在していたようで、「鴻蒙HongMeng」というように中国語のピンイン表記と併記してみたり、「鴻蒙Harmony」と英語名称と併記してみたり、さまざまな工夫をして商標登録をしようと苦心しているようです。
このうち、「鴻蒙HongMeng」は中国語読みを併記したものですが、「鴻蒙」という先行商標の存在を理由に登録が拒絶され、Huaweiはこれを不服として裁判所に提訴していました。しかし、どうやら第一審ではHuaweiの訴えを退ける判決が出たようです。
OSの名称をコロコロ変えるわけにもいかないでしょうし、商標やブランド、商品名の命名は難しいものだなと思います。

④職務発明の退職後出願

職務発明について、会社を退職した人が退職後に特許出願してしまう事例につき、最高人民法院はさまざまな事情を考慮して決めると言っていますが、
判断要素が増えれば増えるほど、どういった結論が出るのか、予測可能性は小さくなっていくので、実務上は応対に困ることになってきます。
こういったトラブルに備えて、そこまで多くの事情を考慮せずとも結論が明確に見通せるように、会社内でも証拠を確保しておく習慣を作っていただくことを是非お勧めしたいところです。

⑤家電業界の回収目標責任制

家電業界について、テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンの4種類の製品については、メーカーによる回収目標責任制が奨励されています。
奨励とは言うものの、活動に取り組んでいる企業リストが公表されるほか、回収目標任務や実施状況の評価結果が公表されることになっています。
家電製品の更新・買換え消費を盛り上げていく政策の方向性の中では、必然的に古い家電製品の回収機能を販売・流通ネットワークの中に組み込んでいく必要がありますので、その面での政策的な措置が強化されている状況と理解しています。

⑥商貿物流分野での行動計画

商務部など9部門から、商貿物流分野での行動計画が出ています。
スマートラベルや自動搬送車両(AGV)、自動仕分機など先進的な流通配送システムの導入を進めることや、コールドチェーン物流のインフラ整備など、重点的に設備投資が行われそうな話題がそれなりに見て取れるように思われます。
また、小さな話題ですが、配送車両に対する駐車料金や反則金をみだりに徴収する例があるようで、「通行難、駐車難、積卸難」を解決するとされています。
また、業界団体による課題研究、コンサルティング、人材研修などの面での積極的な作用を発揮させるということも書かれていますので、日本と同じように、それぞれの業界に必要な法規制の情報が業界団体から発信されるようになれば便利になるだろうと期待しています。

2021年8月6日金曜日

8月第1週:①オリンピックと全民健身計画、②半導体価格吊り上げ、③飲食チェーン店の衛生問題、④粉塵爆発防止、⑤一定の業務完了を期限とする労働契約、⑥発票と支払どちらが先か?

①オリンピックと全民健身計画

《全民健身計画(2021~2025年)》。ちょうどオリンピック期間に合わせて発表なさったのかなと思いますが、フィットネスクラブなど直接のサービスにかかわる企業のみならず、スポーツウェアやスポーツ用品などの業界にも関係します。さらに、日本と同じく、健康寿命を延ばすということも考えると、高齢者介護などにも関係するかもしれません。
2025年までの目標として、体育鍛錬への経常参加比率を38.5%、千人あたりの体育指導員2.16名、全国の体育産業の総規模は5兆元まで高めるとのこと。
普段はまったく運動しない不健康な私のような人間でも、オリンピックを見ていると何か運動でもしようかという気持ちになります。一人で家でできるオリンピック種目があると良いのですけれども。

②半導体価格吊り上げ

日本でも半導体不足の影響が各業界に広がっていますが、中国でも自動車業界での半導体不足が取りざたされています。自動車のスマート化に伴って需要も大きいところ、価格の吊り上げ行為も見られるようで、価格のモニタリング及び通報に基づいて政府部門の調査が開始されたとのこと。
中国の新聞記事を見ても、多くの自動車メーカーで半導体チップ不足が今年のうちは継続し、もしかすると来年も継続するかもしれないと見込んでいるようで、供給遅延や価格変動によるトラブルが起こりやすい環境にあります。

③飲食チェーン店の衛生問題

飲食チェーン店の衛生問題は消費者に近いこともあり話題になりやすいですが、新聞記者が潜入取材で店舗や工場に従業員として入り込んで、「ゴキブリがいる」とか「傷んだ果物を使っている」といったような記事を書かれることがあります。
今回ご紹介した記事の事例では、報道が出た後、各地の政府部門からの調査や行政指導が入り、しかも複数の政府機関が関与してくるので、企業としては対応に追われる結果となりました。
ネット社会ですから、情報が広がるのも早いですし、政府機関が動くのも早いですので、各企業においては「避難訓練」のような形でときどきシミュレーションしておかれないと、なかなか即座に正しく対応することは難しいのではないかというようにも思います。

④粉塵爆発防止

法令の面では、個人的には、《工貿企業粉塵防爆安全規定》が現場では大事だろうと思います。工場や倉庫では様々な粉末を保管されていると思いますが、火の気がないところでも、電気配線の劣化・腐食等によって火花が散って爆発が起こってしまうこともあるようです。
「可燃性粉塵目録」というリストがあり、各種の金属粉、繊維、樹脂粉末などが列挙されています。塗料・染料や防腐剤などもありますし、幅広い産業で留意いただく必要があるものですから、この機会に是非一度ご覧ください。

⑤一定の業務完了を期限とする労働契約

雇用契約の期間に関して、中国《労働契約法》では、①固定期間、②無固定期間、③一定の業務の完成を期限とする、これら3種類とされていますが、このうち③については、なかなか使いづらく、あまり普及していないように思っています。
教科書的には、(1)あるソフトウェアの開発、(2)ある建設工事の完了、(3)農産物の収穫時期だけの臨時雇用、といった例が挙げられているのですが、その都度、社会保険に加入させ、退職時に経済補償金を払うという実務処理は、実際には煩瑣でメリットもあまりないので、活用するのがなかなか困難です。また、賃金をなるべく長くもらうために、ゆっくり仕事をして開発や工事の完成を引き延ばした方が労働者にとって得になってしまう(企業の利益と整合しない)という問題もあります。
今回、北京市では、「企業の雇用の柔軟性を高めるために」として、この一定業務完成を期限とする労働契約についてモデル文書とその締結ガイドラインを出しています。少し期待して中身を見てみましたが、まだ上記のような困難が解消されるものではないようでした。

⑥発票と支払どちらが先か?

中国では代金を請求するとき「先に発票をください。発票がないと払えません」と言われることがあります。逆に自社から取引先への支払のときにも、会社の財務の人に「発票を持ってきてもらわないと経費精算できません」と言われることがあるのではないでしょうか。
一方、発票を発行する側は、その時点で増値税を納税することになりますので、発票を発行した後に代金支払を受けられないと、増値税だけ払って代金がもらえないという困ったことになります。ですので、本当は、支払を受けてから発票を発行したいところです。
どちらが正しい処理なのか、社内の処理もあってなかなか難しいですが、よくある話題なので事例を紹介しておきました。支払が先か発票が先か、もし話題になったときには是非この事例をご活用ください。
なお、「発票」は「インボイス」と訳されることがありますが、誤解を招きやすいので、私はいつも、そのまま「発票」とご説明しています。中国で事業をするなら「発票」は基礎の基礎ですから、正確に理解しておいていただければと思います。

2021年7月29日木曜日

7月第5週:①女性従業員の定年退職年齢、②Eコマースの不正レビュー、③決済分野での規制強化、④自家用車「三包」規定改正、⑤各地の外資向け補助金

①女性従業員の定年退職年齢

従業員の「定年」について、今週は、女性従業員の定年年齢を間違ってしまい、本来の定年退職ならば生じずに済んだはずの経済補償金を支払うことになってしまった事例を紹介しました。中国では女性の定年退職年齢が50歳の場合と55歳の場合があるので、こういう間違いも起こりやすいです。
多くの日系企業が中国に進出した時期、工場は若い人ばかりでしたから、「定年」が人事労務のテーマになることはありませんでした。つまり、経験が決定的に欠けているわけです。そこに今、従業員が高齢化して徐々に定年する例が出始め、社歴が長い=日本式年功序列システムで賃金がそれなりに高い人たちが定年退職し始めています。一つ処理を間違うと、本来なら必要なかった経済補償金が発生して、人事担当者の賃金の何倍もの余計な費用が発生してしまうということになります。
大きな政策の方向としては定年延長も視野に入れるとして、足元の定年退職時の処理、しっかり見直してみることをお勧めします。

②Eコマースの不正レビュー

Eコマースの分野では、相変わらず、あの手この手の「サクラ」でレビュー・評価を高める手法が開発されているようで、正確でない評価を創り出している虚偽宣伝だということで《反不正競争法》違反で処罰されています。
日本でも少し前にAmazonで不正なレビュー・評価についての対策を強化しているという話題が出ていました。日本でも何らかの形で処罰するようになるのだろうか?という疑問も湧きますが、少なくとも、中国で横行している手法を学んでおくことは騙されないために大切なのかなと思います。

③決済分野での規制強化

今年に入ってから日本でも大きく報道された各事例に象徴されるように、ITやフィンテックなどの先進分野では、上場に関する規制が強まっているようです。
今週は《非銀行支払機構重大事項報告管理弁法》という規定が出ており、ここでは、その会社の上場はもとより、さらに、主要出資者・実質支配者の上場(いわゆるVIEスキームによる海外上場を含む)についても、事前報告を要する重大事項とされています。上場以外にも、担保設定などを通じた形を変えた支配権移転、さらにはシステムの重要なバージョン変更、会計事務所の変更といった事項まで含まれています。
この他、突発的な事態(個人情報の流出、決済業務の中断など)についてもレベルにより直ちに報告が必要となっています。
2010年に《非金融機構支払サービス管理弁法》が発布され、オンライン決済の免許取得のためにAlipay(支付宝)の株主を内資企業に変えるなどのドタバタがありましたが、あれから10年、スマホ全盛の時代となり、オンライン決済はもちろん、それに結び付いたフィンテックの分野についても、規制の動向を注視ということになりそうです。

④自家用車「三包」規定改正

自家用自動車のいわゆる「三包」(修理・交換・返品)についての規定が改正されました。動力電池、駆動モータなど、新エネルギー自動車の故障についての規定が追加されたようです。
三包証明書に動力蓄電池容量の減衰下限値を記載しなければならない、ということも書かれています。
2年又は5万キロ、3年又は6万キロという三包期間の下限については、2012年の規定(現行のもの)から変更は無いようです。ユーザーの購入(発票)又は引渡のときから起算されます。自動車部品のメーカー目線では、こちらの期間は重要ですね。
なお、改正規定の施行は来年1月1日とのことです。

⑤各地の外資向け補助金

広州市は、外資導入のために大盤振る舞いの政策を出しています。
一定規模以上の外資系の新規又は増資プロジェクトについての補助金の申請基準が示され、基準を満たしていれば外資金額の2%の奨励、最高で1億元の奨励を出すとのこと。
また、外資多国籍企業の地域本部についても省レベルの財政への貢献に応じて、最高で1億元の奨励があるようです。
広州市がこういう政策を出しているということは、他の都市でも同様の補助金があるかもしれませんから、条件を満たしているのにうっかり申請を忘れる、そんなもったいないことが起こらないようにしたいですね。
(といっても、申請できることに気づかない=申請漏れにも気づかない場合、もったいないと思うことすら無いわけですが...)

2021年7月26日月曜日

義務教育段階の学生の宿題と課外学習の負担軽減について


中国で「学科類研修機構」(学習塾?)の上場などへの新たな規制が導入されたとのこと。私が上海にいた当時通っていた語学学校の名前も新聞に出ていました。子供向けの教育もしていたのですね。
他にも、海外からの授業提供なども規制されています。オンライン教育コンテンツは視力保護のために30分以内、インターバル10分以上など、細かいルールもあります。Edtechに関わるときには、見ておく必要がありそうです。
スマホで問題を撮影してアップロードすると数秒で回答と説明が表示されるという便利なアプリ(「拍照捜題」)なども禁止すると書いてありました。勉学に近道無しです。

なお、発表されている説明を読むと、5月21日には既に中央全面深化改革委員会というところでの審議を通過していたようですので、少し話題についていくのが遅いかもしれませんが、ご容赦ください。



2021年7月24日土曜日

7月第4週:①賃金の「月末締め翌月20日払い」、②浙江省公共データ分類分級基準、③知的財産権データの開放、④非銀行金融機関の行政許可事項

①賃金の「月末締め翌月20日払い」

毎週、裁判の事例などをご紹介していますが、今回は、深センのとある事例が新聞で紹介されていたので、その件をご紹介しています。
「月末締め、翌月20日払い」。日本ではよく見られる賃金支払方式であり、私の知る多くの日系企業でも同様の方式が採用されていますが、なんと、深センでは、これが法令違反であるとのこと。
さらに、それを理由にして退職した従業員から「経済補償金」(法定退職給付。自己都合退職の場合は不要)の支払を求められ、裁判所も支払義務を認めたという衝撃的な事例です。
本当は自己都合退職なのに、会社の法令違反を理由として指摘すれば、本来はもらえなかったはずの経済補償金がもらえるという、無から有が生まれる「錬金術」が成立してしまうことになってしまいますので、おかしな事例と思いますが、新聞で紹介されていましたので、真似をする人も出てきそうです。
深センでは、「月末締め」なら、最も遅くとも「翌月7日」には支払いが必要とのこと。営業日ではなく暦日でしょうか。だとすれば、「国慶節はどうするつもりですか!?」と言いたくなりますね。
とはいえ、労働法の世界では、ローカルな条例などが意外に重要です。ローカルルール、侮らずにしっかり所在地の法令を確認したいところです。

②浙江省公共データ分類分級基準

《データ安全法》(データセキュリティ法)の施行を9月1日に控えて、各地方では、それぞれ分級分類管理についてのルールなどを出しています。今週分では、浙江省の省レベルの地方基準を紹介しています。地方により異なるというのは企業向けの規制ではなくて、地方が持っている公共データの管理についての部分のようですね。
データの管理が地方によって変わるのは不思議に思っていましたが、各地方の持っているデータということなら、それぞれの地方によって重要性は変わるでしょうから、それであれば、なんとなく納得感があります。
しかし、企業側が具体的に何をどうすれば良いのかは、未だによく分かりません。
これまでであれば、中国では、「具体的なルールが出てから対応すれば良い」と考えていたのですが、先日の滴滴のように、随分前の、まだ明文規定もガイドラインも無いような時期の行動を対象に処罰されるとすると、そうノンビリもしていられません。
とりあえず、グループ内のデータ共有について、①日中間で往来しているデータは何があって、②その通信・同期は自動か手動か、という2点については整理しておくのが良いのではないかと思います。(データを分類して管理せよを言われている以上は、どのみち必要になる作業ですので。)
そのうえで、今回ご紹介している浙江省の公共データの例のように、③各データにラベルをつけて、④それぞれ異なる管理をする、という展開が予想されますが、③のラベルのつけかた、分類のしかたが分からないとどうしようもありませんので、まずは①②をしておいて、あとは、各データにラベルをつけるか格納場所を分けられるように準備しておく、という程度が今できることかな?と思っています。

③知的財産権データの開放

国家知的財産権局の知的財産権データの開放範囲拡大については、今話題の半導体関連で、回路配置利用権関係のデータが拡充されたようです。
それと同時に、日本や欧州、韓国などの特許についてのデータも追加されたとのこと。
特許については属地主義とはいいながら、今はどの分野でもビジネスも製品もグローバル化、グローバル展開ありきですから、国を跨いだデータは特に重要ですね。
日本からも中国の知的財産権局のサーバーへのアクセスがスムーズであるように、と願っています。

④非銀行金融機関の行政許可事項

非銀行金融機関について、行政許可事項に関する申請書類などの細則が出ています。
メーカー各社でも、リース会社をグループ内に持っておられる会社も多いと思います。
そのような金融関連業務をなさっている会社については、マネーロンダリングや反社会的組織とのつながり、背後の実際の株主まで遡った出資者の調査などが拡充されるようですので、合わせてご留意ください。


2021年7月16日金曜日

7月第3週: ①電子労働契約、②月36時間残業、③経営者集中(企業結合)禁止事例、④セキュリティ脆弱性管理弁法、⑤虚偽の検査証書の販売、⑥AI医療用ソフトウェア

①電子労働契約

電子労働契約の締結についてのガイドライン(《電子労働契約締結指針》)が発布されました。
電子労働契約については、既に各都市で先行しているところがあり、例えば杭州市の人力資源社会保障局が牽引する電子労働契約サービスのプラットフォーム(通称「杭云签」)があり、2020年12月に正式リリースされて以来、既に6月中旬で130万件以上の締結実績があるとのこと。
一度も会わずに労働契約が締結できるということで、コロナ禍の時代にはピッタリなようにも思います。
さまざまな場面で活用が考えられるところです。

②月36時間残業

もう一つ、人事労務の話題では、月36時間の残業上限を超えて処罰された事例がニュースになっていました。
《労働法》では毎月の残業時間は36時間が上限と定められているのですが、人手不足や季節要因などもありますので、管理が難しいところではあります。日本では原則45時間ですが、36協定によって延長できますので、日本よりも中国の方が厳しいです。
それにしても、10年前の中国の様子を思い出すと、中国でそんなに残業が増えるとは思いませんでした。

③経営者集中(企業結合)禁止事例

「虎牙」と「斗魚」の合併を禁止した反独占法の経営者集中(企業結合)審査の事例が出ました。いずれもゲームのライブ動画配信プラットフォームのようですが、市場シェア40%と30%で、虎牙は腾讯(Tencent)が支配権を持っているとのこと。
反独占法で経営者集中が禁止された事例というのは、確か2008年に反独占法が施行されてから1件か2件しか無かったと思いますので、非常に珍しい事例と言えます。
今のIT企業に対する風当たりの強さを象徴する事例と言って良いのではないでしょうか。

④セキュリティ脆弱性管理弁法

最近話題のサイバーセキュリティ関連では、工業情報化部、国家インターネット情報弁公室、公安部の3部門から、セキュリティ脆弱性の管理規定が発布されました。
セキュリティ脆弱性が発見された場合、ネットワーク製品の提供者は2日以内に工業情報化部のセキュリティ情報共有プラットフォームに情報を報告する必要があります(第7条第1項第2号)。
ここにいう「ネットワーク製品」には、ハードウェアも含まれます。例えばネットワークカメラなど、最近の機器はネットにつながる場合も多いですから、当然といえば当然です。
ネットワーク製品の提供者が情報提供を受け付ける仕組みを作り、情報提供に対して報奨を与えることを奨励する(第7条第3項)ともありますが、見ず知らずの第三者から「御社の製品に脆弱性がありますよ」という連絡が来て対応する場面を考えてみると、なかなか大変なようにも思えます。

⑤虚偽の検査証書の販売

もはやECプラットフォーム上で買えないものはないほどの勢いですが、虚偽の検査・測定報告書も売りに出ているとのこと。
7月7日に一部メディアでそのことが報道された後、翌日7月8日には直ちに市場監督管理総局が各プラットフォームが自主的にこれを調査・排除するように要請したとのことで、検査・測定に関する市場の信頼を重視していることが見て取れます。

⑥AI医療用ソフトウェア

最後に、医療の業界の話題としては、AIを使った医療用ソフトウェア製品は医療機器として承認・登録が必要になっているところ、医療用のものかどうかの区分のガイドラインが出ています。
例えば、単に医療機器のデータを処理・分析するためのソフトウェアや、患者の主訴・検査結果などを記録するだけのソフトウェアであれば医療機器にはならず、一方で、同じく医療機器のデータを処理・分析して何らかの病変の特徴識別や性質判定、服薬指導などに使おうとすると、医療機器として管理されることになるようです。


2021年7月13日火曜日

補足:違法なアプリの取締(滴滴)


7月第2週のコメントについての補足です。

7月9日の22:00に、インターネット情報弁公室から「滴滴」(Didi)関係のアプリの公開停止についての発表が出ていました。

個人情報の重大な違法収集・使用の問題ということで、関係する国家基準も参照して是正するように求められています。
国家基準は意見募集しているものを含め多数ありますので、関係あるものを探すのもなかなか大変なように思いますが、この機会に改めて見ておく方がよさそうです。