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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年12月4日月曜日

12月第1週:①中小企業の長期未収債権、②郷村振興と都市再開発の土地政策指南、③男女間でのトラブル

①中小企業の長期未収債権

例年どおり、今年も《中小企業代金支払保障条例》に基づく特別活動が行われています。12月10日まで継続予定とのこと。新法令ではありませんが、もともと年末は長期未収債権の回収に関しては重要なタイミングですので、ここでご紹介しておきます。
各地の市場監督管理局から大型企業向けにサンプリング調査などが行われており、支払遅延の状況などについて隠していた場合には経営異常リストに掲載されて公表されるなどのペナルティがあります。

②郷村振興と都市再開発の土地政策指南

自然資源部弁公庁から、「郷村」、つまり農村の住宅・産業用地などに関する活用のための政策指南が公表されています。
農村に関するものですので直接に事業にかかわることはあまり無さそうですが、建設用地関連の認可や都市計画上の許可、不動産登記その他土地利用に関する各種事項について比較的網羅的に根拠規定を引用しながら説明されていますので、不動産関連の業務を行う際には参考になる部分がありそうに思います。
また、これよりも少し前に、いわゆるスマートシティなど利便性や生活環境を向上させるための都市再開発に関する政策指南も公表されていました。
こちらでも巻末に関連する政策は列挙されていますが、それぞれの説明の箇所ではなく巻末にまとめられていますので、その点は少し体裁が違います。

③男女間でのトラブル

最高人民法院から、家庭内暴力に関する典型事例が発表されていました。第1集と第2集、相次いで発表されています。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/11/id/7657177.shtml
業務上、中国法のかかわる離婚事件を扱う機会もあり、普段から「日本と中国では随分と違うな」と感じているテーマでしたので、少し見てみました。
第1集は婚姻前を含めた男女間での事例など、さまざまな事例が集められています。
恋愛関係の別れ話から暴力・付きまといなどの嫌がらせに発展した事例、夫婦間での感情のもつれから自殺をほのめかしたり職場に押しかけたりする行為のあった事例などが紹介されています。
第2集は未成年者(子女)に関する事例です。未成年の子の連れ去り、虐待防止のための措置などをめぐる事例となっています。
日本の感覚でごく普通に過ごしていても、文化・風習の違いによってセクハラ、パワハラになってしまうこともあります。もちろん、日本の方々だけでなく、中国の方々にも同じことが言えるのではありますが、感情もかかわる微妙な話題ですので、気にしておくに越したことはなかろうと思います。

2023年12月1日金曜日

ドローンに関する国務院令、2024年1月1日から施行です。


今年も師走の時期に入り、そろそろ来年のことを考える時期になってきています。
いつもご紹介している中国の法令・政策の関係でも、来年から規制が変わるもの、いろいろとありますが、あれこれ見ていると、ご紹介が漏れていたものも多々あります。

そのうちの一つ、ドローンに関する国務院と中央軍事委員会の暫定規定が6月28日に出ていたものがありましたので、随分と遅くなってしまいましたが、遅まきながらご紹介しておきます。
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202306/content_6888800.htm
民用ドローンには実名登録が必要であること、管制区域では微小型のものを含めて一律にドローン飛行は禁止(許可制)であること、一定の仕様以上のものについては識別情報発信機能が必要であることなどが規定されています。
ドローンの輸出規制の方はニュースでも大きく取り上げられていましたが、こちらは中国国内のことですので、あまり注目されていないかもしれません。
中国に赴任・出張でいらっしゃる日本の方々、最近は《反スパイ法》違反の嫌疑など敏感な時期ですので、不用意にドローンを飛ばして処罰を受けることがないように、中国でドローンを飛ばすには諸々の規制があること、しっかり覚えておき、さまざまな意味で気をつけていただければと思います。



2023年11月30日木曜日

個人の破産制度が無いことで


拙著など含めさまざまな場面でご紹介していることですが、中国には今でも、個人の破産制度がありません。

企業については《企業破産法》があり、この《企業破産法》に基づいて破産清算のほか、和議、重整(日本の会社更生と民事再生に対応)といった再生型の手続も用意されています。企業については、取引先や従業員など多数の利害関係者がいて、地元の税収や雇用にも影響がありますので、債務超過・倒産状態になった企業の破綻処理を行うことは企業自身以外の利益にも適うところがあります。
一方、個人については、中国では個人が自由に事業を行うことはできず、個人事業者(个体工商户)としての登録を受けないと事業ができませんから、企業のように破綻処理の制度を用意する必要性は低そうですし、いわゆるモラルハザードの懸念もあるでしょう。
そのように制度の必要性の面でかなり差があるのかもしれないと推測しています。

実際、深センでは試験的に個人の債務整理の制度が実施されていますが、2021年3月の開始から2023年8月までの2年半ほどの間で中級人民法院での受理件数は2000件余り、そのうち受理されたものは632件という状況であり、深センの人口や経済規模から考えるとそれほど多くはない数字にとどまっている印象です。
(2023年10月11日深セン市人民政府Webサイト掲載記事参照。

このように個人の破産制度が用意されていない結果として、個人はいくら負債があっても整理ができないので、ご家族や友人に代わりに借入や契約をしてもらうことをお考えになるようです。個人的には、これが比較的気楽に他人の名義を借りる現象が多く見られるなど、とても複雑な状況を生み出している一因になっているようにも感じます。

2023年11月27日月曜日

11月第4週:①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置、②銀行業のカントリー・リスク管理、③化学工業園区のリスク評価

①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置

中国外交部の報道官の定例会見で、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6ヶ国を対象に商用(中国語「经商」)、旅行、親族訪問、トランジットを対象に「一方的」に15日以内のノービザ入国を認めるとの発表がありました。
日本が対象国に含まれていないことは残念ですが、「一方的」措置、つまりその国が中国との関係でノービザ入国を認めていなくても、ノービザ入国の措置を認めてもらうことができるということで、これであれば日本との関係でもノービザ入国を再開いただけるのでは?という期待もできるように感じています。
人民日報日本語版にも記事が出ていました。(下記URLご参照ください。)

②銀行業のカントリー・リスク管理

国家金融監督管理総局から、銀行業の「国別リスク管理」に関する規定の改正が発布されています。
銀行業については、銀行がカントリー・リスクに対して適切に引当がなされているか監督当局が国別に適切な最低引当額を設定するなどの管理がなされており、今回の改正は13年前に設定されたガイドラインを「弁法」として修正したものです。
銀行が内部・外部のリソースを利用して評価をすることなどが求められています。

③化学工業園区のリスク評価

応急管理部から、化学工業園区のリスク評価に関するガイドラインの改訂が公表されています。
化学工業園区については以前から管理が強化されてきているところですが、今回も全国に640あるとされる化学工業園区について全面的にリスク評価を行って、整理を進めていくとのこと。
省レベルで3年ごとに全面的に安全リスク等級の確認を行い、高リスクと判断された場合には是正期間中は新たなプロジェクトや既存プロジェクトの拡張を禁じることなどが定められています。


2023年11月23日木曜日

宅建試験に合格しました


私ごとですが、令和5年度宅地建物取引士資格試験に合格しまして、その合格証書が届きました。(日本の、です。念のため。)
試験当日、会場では中国語でお話されている方々も見かけましたので、大阪で不動産関係のお仕事にかかわっておられる中国の方々も多いのだなと実感しました。
業務上、不動産にかかわる案件に接する機会も増えてきていますが、まだまだ勉強しなければならないことは多いなと感じることばかりです。今後もさまざまな機会で情報発信に努めていければと思っています。


2023年11月21日火曜日

取締役(董事)の選任方法


合弁会社において、それぞれの出資者・株主が何名の取締役(董事)を派遣できるのかは、合弁会社の経営の在り方を左右するポイントになる事項です。
ところが、この点について、日本と中国では、一部、気づかないうちに逆転が生じそうな部分があります。

日本では、取締役は株主総会の決議により選任されますが、取締役が2人以上いる場合、累積投票、すなわち株主の議決権の比率に応じて取締役が選任される仕組みが原則になっています(日本「会社法」第342条)。条文に「定款に別段の定めがあるときを除き」とあるとおり、これを排除するには定款の定めが必要です。つまり、日本では、例えば出資比率がA社60%:B社40%であり取締役が5名いる場合、通常、A社が3名、B社が2名を取締役として選ぶことができます。

これに対して、中国では、董事は株主会の決議によって選任されることになっており、通常の有限公司の場合、その投票のしかたについては特に定めがありません(中国《会社法》第37条第1項第2号、第43条)。株式有限公司の場合は累積投票制もありますが(中国《会社法》第105条)、なぜか有限公司の場合はこれに対応する規定がありません。
2020年1月1日に《外商投資法》施行に伴って《中外合資経営企業法》が廃止されるまでは、各株主が出資比率に応じて董事を任命派遣(指名)することになっていたので、特に何も意識して定款に規定を置かなくても、結果として日本と同じように、出資比率が董事会メンバーの構成に反映されるようになっていました。
しかし、現在は董事の選任方法について、《会社法》が適用される結果、特に定款で異なる規定を置いていない限りは単純に出資比率で決議されてしまう(上記の例ですと5名全てがA社の意向に沿ったメンバーになる)、そういった事態もあり得る状況になっていますので、特に定款の定めが重要になっています。

逆に、日中双方ともにですが、もし出資比率どおりではなく、より大株主の意向が反映されるようにしたければ、これも定款での規定が必要になります。興味深いことに、インターネットなどで公表されている定款の書式のうちには、日本における「別段の定め」(累積投票としない旨の規定)がデフォルトで入っているものがあります。経営上の意思統一のしやすさに重きを置いているのでしょうか。
この場面に限らずですが、書式を選ぶときにも、場面に適したものを選んでいただければと思います。


2023年11月20日月曜日

11月第3週: ①危険廃棄物管理の変更、②中小企業向け公共サービス、③会計事務所の監査報酬

①危険廃棄物管理の変更

危険廃棄物管理についての新しい通知が生態環境部弁公庁から発布され、2024年1月1日からの変更点もいくつか言及されています。
2024年1月1日から、リスク評価について全国固体廃棄物管理情報システムを通じて行うこと、重点監督管理単位についてはこのシステムで電子ラベルのQRコードを生成取得して電子管理を行うこと、危険廃棄物の移転も同様にこのシステム及びアプリなどを使ってリアルタイムで記録することなどが規定されています。

②中小企業向け公共サービス

工業情報化部から、中小企業向け公共サービスに関する指導意見が出ています。
中小企業向けのサービスについて全国統一ネットワークを構築し、地方レベルでもワンストップでのサービスを提供すること、そこではサービス項目やサービス内容など6項目を公開するなど情報公開を進めることなどが規定されています。研修や職業訓練などサービス人材の面での保障についても言及しています。

③会計事務所の監査報酬

とても当たり前のことだと思うのですが、財政部から、会計事務所の監査費用について、金額と監査結果を関連付けてはならないという通知が出ています。
「上場インセンティブ」として、上場が実現できるか否か、社債発行ができるか否かなどによって、監査費用が増減するような方式があるようですが、このような費用決定方法は禁止とされています。
その他、会計事務所側が違法な報酬を支払おうとする顧客のリスクを慎重に評価しなければならないこと、財政部門が会計事務所の報酬基準の問題を監督検査の重点事項としていることが記載されています。

過去にラッキンコーヒー(luckin coffee、瑞幸咖啡)の粉飾決算事件についてご紹介したこともありましたが、投資にかかわる場面では、監査法人との間の報酬の取り決めのしかたについても見ておく方が良いということかと思います。
【参考】キャストグローバル中国ビジネス2020年4月17日記事
 ラッキンコーヒー(luckin coffee)粉飾決算事件から(無料公開)

2023年11月17日金曜日

連載第4回まで来ました。

東海日中貿易センター様の会報誌で隔月で掲載いただいている連載「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」ですが、第4回まで来ました。

第1回: “攻め”と“守り”両面を見据えた体質改善
第2回: “攻め”(内販強化、新規事業)で直面する課題とその対処法
第3回: “守り”(事業売却・縮小、リストラ、外注化など)で直面する課題とその対処法 
第4回、第5回: 組織作りのポイント~組織・人員(本号、次号で掲載)
第6回: 組織作りのポイント~資産、取引、その他

原稿を書き始めた頃からたった半年あまりで、スパイ容疑での邦人の身柄拘束問題や、不動産業界をはじめとする経済状況の変化、輸出入の制限に関する問題など、随分と景色が変わってしまったなような印象もあります。
書いても書いても足りないようなところもありますが、どのような局面にあっても機敏に対応できるように、何かの参考にしていただけるようでしたら幸いです。




2023年11月13日月曜日

11月第2週: ①外資に対する差別待遇、②入札分野での地方保護・市場分割、③政府と社会資本の合作(PPP)

①外資に対する差別待遇

商務部から、各地方・各部門が発布している政策措置や、事業単位や社会団体が制定している各種措置について、外資企業に対する差別待遇がないか特別整理活動が行われることが公表されています。
例えば、以下のような状況があるとのこと。
・ ある業界で外資企業の行政許可申請について内資企業よりも申請に時間がかかる、求められる資料が多い、審査が厳しい。
・ 新エネルギー車の消費促進政策につき、国内メーカー車を購入・使用した消費者のみに補助を与える。
・ 業種協会の制定した工事プロジェクトの評価で内資1点、合弁0.5点、外資独資0点という評価項目を設ける。
・ 地方での財政補助について国有・民営企業にのみ個別に通知するなどして外資系企業が公平に政策を享受することができていない。
・ 業種協会での登録表示について、明文規定はないが実際の運用においては外資系企業の申請を受理しない扱いとなっている。

②入札分野での地方保護・市場分割

国家中央が全国統一市場の形成を促しているのに対して、地方では入札における信用評価の面で、現地での支店設立有無や社保納付実績などを評価基準に加えることで「形を変えて」参入障壁が設けられている例が見られるということで、国家発展改革委員会から通知が出ています。
https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/tzgg/202311/t20231108_1361858.html
ごく短い通知ですが、各地の関係部門とともに全面的な調査を行うこと、入札分野での信用評価の運用におけるモニタリングの強化、「信用中国」Webサイトや全国公共資源取引プラットフォームなどでの公表を行っていくことが規定されています。

③政府と社会資本の合作(PPP)

官民連携(PPP・Public Private Partnership)に関する新しい指導意見が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6914161.htm
受益者負担プロジェクトについて採算性があるかどうかのチェックなどによる地方政府の隠れた負債の防止などについて言及されており、見るべき内容は多そうですが、詳細のご紹介は別の機会に譲りたいと思います。


2023年11月8日水曜日

一般保証(単純保証)と連帯保証


中国では、以前は特に明示がなければ連帯保証と見なされることになっていましたが、2021年の《民法典》の施行後は、連帯保証ではない一般保証と見なされることになりました(《民法典》第686条第2項)。それまでは逆に、どちらなのか不明確な場合は連帯保証とされていました(廃止された《担保法》第19条)。
日本では民法にはそのような条文はありませんが、ビジネスの場面では「商法」第511条第2項の規定によって連帯保証になる場合が多いでしょうし、通常は契約書面上でも連帯保証であることが明記されていることが多いと思われます。

日本では個人根保証契約や事業に係る債務についての保証契約の特則など、保証をめぐるルールが近時改正されましたが、中国では元々、日本のように経営者や代表者が金融機関からの借入にあたって会社の保証人になる習慣がなかったためか、そのような特別のルールは特に無いようです。
それでも会社の債務について返済できない場合は経営者や代表者が会社とともに被告や被執行人になっている例をよく見かけますので、「保証していないから責任がない」というものでもないのですが、日本と中国、それぞれの習慣に応じたルールがありますので、ご留意ください。

2023年11月7日火曜日

11月第1週:①一部の罰金の取消及び調整、②特許法実施細則の改正意見募集、③出入国時の健康申告カード

①一部の罰金の取消及び調整

国務院から、各種法令に定められている行政処罰としての罰金の一部について、取消及び調整の決定が発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6913197.htm
内容は表形式になっていて、非経営性インターネット情報サービスの届出番号の下に届出管理システム上のリンクを置かない行為についての罰金を「所定の期限に是正されなかった場合に罰金を科す」という内容に改めるなど、各種の罰金規定について各部門に60日以内に改正作業を求めています。
あまり業務上直接の影響はなさそうですが、ビジネス環境改善の一環として公表されていますので、ご参考までに。

②特許法実施細則の改正意見募集

11月3日の国務院常務会議で、特許法実施細則の意見募集稿の改正が採択されて、今後、全人代常務委員会での審議に供される旨の発表がありました。
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202311/content_6913486.htm
具体的な内容はまだ公表されていないようですが、特許の申請及び審査に関する制度をさらに改善するとのことです。

③出入国時の健康申告カード

11月1日から出入国時の健康申告カードの記入を不要とする旨の税関総署の公告が出ていました。
空港でQRコードをスキャンしてWeChatのミニプログラムで記入していたので、紙のカードには見覚えがなかったのですが、とにかくまた一つ、出入国が便利になりました。
ただ、発熱、咳、嘔吐、下痢などの症状があるときは自主的に申告して、検査を受けることが求められていますので、その点はご留意ください。



2023年10月31日火曜日

10月第4週:①愛国主義教育法、②未成年者ネットワーク保護条例、③消費者クレーム情報の公開

①愛国主義教育法

日本でもニュースで報道されていますが、「愛国主義教育法」という法律が制定されました。
対象としては全国民ですが、そのうち特に学校や家庭における青少年・児童の教育は特に重視されているようです。また、国家機関の公職者や、企業の従業員、香港・マカオ・台湾の同法、海外の華僑など、それぞれに対して教育活動を行うべきことが規定されています。
歴史文化教育や「一国二制度」、さらには「台湾独立」や分裂に対する対抗などについても言及されています。
日本企業にとっては、抗日戦争勝利記念日や南京大虐殺公祭日などについても規定されているところが注意点となると思います。
(その他、日系企業の方々に気をつけていただきたい日付については、こちらもご覧ください。東海日中貿易センター様の会報誌5月号にもご掲載いただいています。)
山河の観光などにより悠久の歴史や文化に触れることなどにも触れられており、なかなか興味深い内容になっています。

②未成年者ネットワーク保護条例

ネット上における未成年者の保護に関する基本的な法令となるべく、《未成年者ネットワーク保護条例》が制定されました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6911288.htm
内容については、色情的、暴力的なものや、賭博、さらには自傷自殺へ誘引するような情報は禁止されています。具体的な種類や範囲、判断基準、注意喚起表示の方法などは、各関係政府部門により確定されるとのこと。
ネットにはまってしまって正常な学習生活が送れなくなってしまうことの予防や対策についても規定されています。

③消費者クレーム情報の公開

市場監督管理局が受け付けたクレーム情報の公示について、新しい規則が発布されています。
12315プラットフォーム上で原則公開されることになっています。
虚偽や悪意のクレームについては公開されないことになっていますので、初動対応で如何に事実の根拠の有無を確認するかが重要になってきそうです。


2023年10月27日金曜日

賃貸借契約の期間



賃借物件を工場・倉庫として使っているとき、契約期間を30年と定めて借りていたのに、ある日、「法律上は20年が上限です」と言われて立ち退きを求められ、賃料の値上げなどを要求されるケースがあります。

賃貸借の期間については、日本でも中国でも法律上の制限があります。
日本では、民法上は50年が上限となっています(日本「民法」第604条)。以前は20年でしたが、民法が改正されて50年になりました。日本では不動産の賃貸借については借地借家法が適用される場合が多く、土地の賃貸借については下限が30年になっているので(日本「借地借家法」第3条)、民法上の上限よりも借地借家法の下限の方が長くなるという少し不思議な状況でしたが、それは解消されています。
一方、中国では、賃貸借期間の上限は、以前の日本と同じく20年となっています。そして、20年を超える部分は無効とされています。(中国《民法典》第705条)
更新することはできますので、当事者間で改めて契約すればよいだけなのですが、冒頭に述べた事例のとおり、条件が悪化することもあります。

中国では土地は国家・集団所有であり、企業や個人は土地使用権が付与されるに過ぎません(中国《憲法》第10条)。そして、この土地使用権には期限が付されているので、土地使用権と賃借権を混同してしまって勘違いされている例もあります。気をつけてみていただければと思います。




2023年10月23日月曜日

10月第3週:①非銀行金融機構の行政許可事項、②特許の実用化推進、③汚染物排出の自動モニタリングデータ

①非銀行金融機構の行政許可事項

銀行以外の金融機関(リース会社など)に関する行政許可事項の実施弁法が改正されました。
海外の非金融機構が金融資産管理会社の出資者となることを認めるなど、参入条件が若干緩和された部分があるようです。また、出資者の資質審査についての規定を拡充したとのこと。
純資産など財務状況に関する条件も具体的な数字で示されているので、実務上は関係する事業をされている場合は参照する機会がある規定かと思います。

②特許の実用化推進

特許の実用化推進のための特別行動方案(2023~2025年)が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6910281.htm
スタートアップへの投資などにつき優先株や転換社債、科学成果とストックオプションによる資本参加、知的財産の証券化などについて言及されています。

③汚染物排出の自動モニタリングデータ

最高人民法院、公安部、生態環境部の3部門共同で、環境関連の汚染物排出の自動モニタリング設備への干渉、データの改ざんなどを行ったことに関する処罰事例を公表しています。
https://www.mee.gov.cn/ywgz/sthjzf/zfzdyxzcf/202310/t20231019_1043534.shtml
「COD除去剤」による汚染の隠蔽など、既に他のところでも見たような事例が紹介されていますが、事案の経過が比較的細かく紹介されているので、環境汚染に関する事案の発覚から処罰の決定までのプロセスについて、参考になるものと思います。


2023年10月20日金曜日

会社の印鑑の差押


会社の公印(中国語「公章」)は、会社名義での各種手続をするのにも、契約を締結するのにも使います。果たして、これが差し押さえられてしまうことがあるでしょうか。

日本の「民事執行法」では、「実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの」は差押禁止動産の一つです(第131条第7号)。

中国でも、差押禁止動産は日本と概ね似たような物品が列挙されているのですが、印鑑はその中に含まれていません(《人民法院の民事執行における財産の封印、差押え及び凍結に関する最高人民法院の規定(2020年)》第3条各号参照)。
ですので、会社の公印が差し押さえられることもあり、実際に一部の裁判所では、公印の差押をして労働者への未払賃金の支払を実現した成功事例を公表しているところもあります。
公印を差し押えても競売を通じて売るわけにもいかないでしょうし、いったいどう処理するのか不思議ですが、裁判所も、法律に反しない範囲でいろんな方法を工夫しているようです。

2023年10月16日月曜日

10月第2週:①工業情報化部などの編制変更、②「普恵金融」推進、③中国共産党の幹部教育

①工業情報化部などの編制変更

いくつかの政府部門について、その職責、組織機構などについて、編制の調整が行われています。
工業情報化部については、科学技術部に属していた科学技術開発区などの建設業務や、技術市場・科学技術仲介などの業務が工業情報化部に移されています。
https://www.gov.cn/zhengce/202310/content_6908734.htm(工業情報化部)
中国人民銀行、国家衛生健康委員会、社会科学院についても同様にいくつかの組織や職責の調整が行われているようです。

②「普恵金融」(Financial Inclusion:金融包摂)の推進

普遍的にあまねく全ての人々が金融サービスを受けられることを推進していくということで、「普恵」、普遍的に恩恵のある金融体系についての実施意見が国務院から出ています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6908495.htm
農村などで金融機関の視点などが置かれていない地方でも金融や保険のサービスが受けられる、零細企業や個人事業主でも直接に融資が受けられる、脱貧困のための小額貸付が得られるなど、広く金融サービスが受けられることを目標としています。
地方ごとの特徴ある農産品保険の奨励など、比較的具体的な施策も挙げられています。
消費水準がまだそれほど高くない地方都市や農村に向けたビジネス展開を考慮するときには、これら政策の活用も考慮いただくと有益かと思います。

③中国共産党の幹部教育

これは業務にはほとんど関係ないのですが、中国共産党中央委員会から幹部の教育研修に関する業務についての条例の改正が公表されていました。
https://www.gov.cn/zhengce/202310/content_6909282.htm
内容については勉強不足なのでよく分からないのですが、研修に参加する日数や時間数が決められているようで、また財政支出によらず本人負担で参加しなければならない研修もあるなど、幹部になるのも楽ではなさそうだということだけは感じられます。

2023年10月13日金曜日

銀行口座の開設(会社名義の銀行口座)

中国では、会社設立と銀行口座開設は一連の手続です。
そもそも資本金を払い込む時点から、資本金を払い込む基本口座という口座を開設する必要があり、それが会社設立の手続の一部として組み込まれています。
また、事業における資金決済も、会社の口座を通さなければ営業許可を得た会社の事業と認められず、個人の口座を使うと無許可の個人営業をしているか会社のおカネを横領しているように見えてしまいますから、会社名義の口座が無いということは通常あり得ません。
ですから、中国の方々は、「日本で会社を設立する」→「会社名義の口座ができて当たり前」と思っておられる場合があります。

ところが、日本では、会社を設立しても銀行口座を開設できるとは限りません。
むしろ近時では、個人事業のときから一定の取引実績を作っておかないと、法人成りしようとしても会社名義の銀行口座を開設してもらえないことがあります。
この規制をクリアするために架空の取引実績を作ることを請け負うような業者もいる、という話も耳にするほどです。

例えば、中国の企業や個人が日本のとある会社の事業を引き継ごうとする場面で、
「事業譲渡がよいですか? 株式譲渡がよいですか?」
というご質問を受けることはよくあります。
そういった場面では、この銀行口座をめぐる両国の事情の違いも少し考えてみていただければと思います。


2023年10月11日水曜日

売買代金額の75%の支払(所有権留保の75%ルール)


所有権留保付き売買について、中国には独特なルールがあります。

所有権留保の約定があっても、買主が75%以上の代金を支払っていると、売主は目的物を取り戻すことができなくなります(《売買契約紛争事件を審理する際の法律適用問題に関する最高人民法院の解釈(2020年)》第26条)。
破産の場合でも、売主が破産した場合であれ、買主が破産した場合であれ、売主はもはや目的物を取り戻すことができなくなります《「企業破産法」の適用にかかる若干の問題に関する最高人民法院の規定(二)(2020年)》第35条、第37条)。
さらに、2021年1月1日から施行された《民法典》では、「売主が目的物について留保する所有権は、登記を経ない場合には、善意の第三者に対抗することができない。」という条文が追加されました(《民法典》第641条第2項)。これに伴い、現在では、動産を対象とする場合であっても、中国人民銀行信用調査センターでの登記が第三者対抗要件として必要になっています。
設備の売買などでは、最終回の支払として10%程度を「品質保証金」などの名目で納品後1年ほど残してあることが多いのですが、そのような場合、残代金の回収のために所有権留保を主張することはできないという難点があります。

日本では、所有権留保については「代金が完済されるまで所有権は移転しない」とされることが通常であり、法律上も上記のように一定の比率を定めて所有権移転を強制するような制度はありません。
また、所有権留保は主に動産の売買について利用され、自働車など登記・登録の制度がある場合でなければ対抗要件は占有改定等の方法によることになり、機械・設備などで所有権留保を示すプレート等を付す例もありますが、いずれにせよ登記・登録を第三者対抗要件として必ず要求しているものではありません。

なにより、中国では以前から会計・税務上の取扱いとして「所有権が留保されている場合は、自社の資産であるから、自社の資産として計上し続けなければならない」(つまり、支払を受けるまで売上を計上することができない)という実務的な慣行が見られることから、営業部門にとって非常に不評であるためでしょうか、もともとあまり活用されていませんでした。しかし、債権回収の場面では、取引先が破産した場面でも所有権留保の条項があったゆえに危うく難を逃れることができたこともあります。
75%ルールなど、日本と違って落とし穴にもなりやすい部分がありますが、所有権留保、なるべく取引に活用を考えていただければと思います。

2023年10月9日月曜日

9月第5週:①企業档案管理規定、②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見、③10月の「敬老月」活動

先週は国慶節の連休でしたので、1週間遅れて、9月末の分をご紹介します。

①企業档案管理規定

企業档案管理規定が改正されました。
「档案」とは、企業や個人のさまざまな履歴を保存するファイルのことで、人事档案、文書档案、会計档案など様々な種類の「档案」があり、国や地方政府が保存・管理している档案もあれば、企業その他の組織が保存・管理している档案もあります。
今回の規定は、企業の研究開発、建設、経営及びサービス等の活動により形成される記録に関するものです。
各企業では档案管理のための人員を配置し、火事などに強い場所に保管すべきことなどが規定されています。
また、当然ながら電子データで保存されるものもあるため、档案の情報化という章も設けられています。
なにぶん、档案局という普段あまり業務上かかわることがない政府機関が管轄しているものですから、頻繁に検査が入る安全生産や消防などと違って意識する機会も少なそうですが、情報管理についてはよく話題になる昨今ですので、ご参考までに。

②ネット暴力違法犯罪に関する指導意見

ネット上における誹謗中傷やプライバシー侵害などの行為について、被害者が精神的に追い詰められて自殺などに至ることのほか、社会公衆の安全感も損なわれるということで、取締に関する新しい指導意見が最高人民法院、最高人民検察院、公安部の連名で出ています。
典型事例も発表されています。
ネットを通じて不特定多数に対して個人情報を発信する行為は刑法第253条の1の個人情報侵害罪、悪意をもって煽り立てる行為(いわゆる炎上商法)は刑法第287条の1の情報ネットワーク違法利用罪など、各種の刑法規定が適用されることが紹介されています。

③10月の「敬老月」活動

全国老齢工作委員会から、10月1日~10月31日まで「敬老月」活動を行うという発表がありました。
ボランティアによる独居老人への慰問訪問などの活動が行われるようです。従来から提唱されているITを使った健康管理の普及活動もあります。また、いわゆる健康寿命を延ばすために、太極拳などの伝統的な運動種目を広める活動なども挙げられています。