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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2023年12月27日水曜日

12月第4週:①会社法改正の第4次審議(途中)、②特許法実施細則の改正成立、③人体器官提供及び移植条例、④来週休載

①会社法改正の第4次審議(途中)

全人代のWebサイトを見ていましたら、会社法改正について、第4次審議稿の審議に入ったとの記事がありました。
http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202312/t20231226_433775.html
第3次改正草案で終わりかと思っていたのですが、またいくつかの点で修正があるようです。
出資者の出資責任の強化、払込未了持分の失権制度、さらに解散清算の検討段階での従業員の意見聴取、といった内容が列挙されています。
詳細は全文を見てから分析しようと思います。

②特許法実施細則の改正成立

少し前にご紹介していた、特許法実施細則の改正が成立に至りました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6921633.htm
まず最初に目に入ってくるのは、電子申請に関する規定が拡充されている部分です。
また、2020年の改正特許法で導入された「開放許諾」の制度について、公告すべき事項などが明確化されました。
その他、国際出願に関する優先権など手続に関する規定もあるようです。

③人体器官提供及び移植条例

国務院から臓器提供と移植に関する行政法規が出ています。
2007年に既に《人体器官移植条例》という法令があったようなのですが、今回は「臓器提供」の部分についての重要性を強調するということで、臓器提供は自発的・無償を原則にすることや、生体移植は配偶者や近親者への移植に限ること、近親者が死後臓器提供をしたことがある人は移植手術において優先されることなどが規定されています。
移植に関する医療技術の向上を求めている部分もありますので、これに用いられる技術や器具等については、今後、需要が増してくるのかもしれません。

④来週休載

来週はお正月休みのため休載いたします。あしからずご容赦ください。
2024年は中国建国75周年だそうです。良い年になることを期待したいと思います。

2023年12月22日金曜日

租税法律主義

日本では、税金の賦課・徴収の根拠は全て国会が制定する法律によって定めることが求められています。これを「租税法律主義」と言います。これは憲法にも明文で定められている原則です。
日本「憲法」
第八十四条〔課税の要件〕 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

中国でも同じく、税金の賦課・徴収の根拠は法律によって定めることを求める条文はあるのですが、憲法ではなく、《立法法》という別の法律で規定されています。
中国《立法法》
第11条  次に掲げる事項については、法律のみを制定することができる。
(六)税目の設定、税率の確定及び租税徴収管理等の租税基本制度

ただ、中国の税収の大きな割合を占める増値税については、《増値税法》という法律が未だ成立しておらず、国務院が定めた行政法規に過ぎない《増値税暫定施行条例》によって課税されているという現状でもあります。
年内とは限らないものの比較的短期の間に成立が見込まれていたので(5月の記事)、そろそろかもしれないのですが、税収に影響があるので景気を見ながらなのかもしれません。

2023年12月19日火曜日

12月第3週:①上場会社の内部統制評価、②政府調達の透明性、③独禁法違反の警告書

①上場会社の内部統制評価

上場会社及び上場予定の会社の内部統制についての内部統制評価及び監査の強化に関する通知が財政部と証監会から出ています。
中国ではここ数年、証券法改正など上場会社に対する管理を厳しくしてきています。今年も会計事務所企業自身の会計監査等の管理強化が求められてきていました。
今回は、内部統制の有効性向上のために、企業自身が内部統制評価を行い、会計事務所による監査を受けることが求められています。
取引先や合弁パートナーの側で、このような内部統制との関係でさまざまな制約を受ける場面がありますので、留意ください。

②政府調達の透明性

財政部関係でもう一つ、政府調達の関係で透明性を高めるための通知が出ています。
http://gks.mof.gov.cn/guizhangzhidu/202312/t20231214_3922192.htm
入札で落札が決まった後にこっそり契約条件を変更してしまう例があるようで、そのような行為を禁じることや、全過程において電子プラットフォームでの取引実施を推進することなどが挙げられています。

③独禁法違反の警告書

反独占・反不正競争委員会と市場監督管理総局から、《反独占法》違反に関する「三書一函」(3つの書面と1つのレター)についての通知が出ました。
これら書面のうち、一番最初の段階のものは「注意喚起・督促レター」(提醒敦促函)という書面です。この書面は早期に予防及び是正の目的で発行されるもので、これを受け取った企業は直ちに状況報告とともに是正措置をとる必要がありそうです。

2023年12月15日金曜日

債権者による破産申立てのハードル



中国企業相手のビジネスに関する業務に携わっておりますと、売掛金のある取引先が事実上倒産状態にあるのに一向に破産などの法的手続に入ってくれない、差押など法的措置によって債権回収をしようにも既に多数の差押があって回収の見込みがない、という場面がよくあります。
こういう場面で、日本でもバブル崩壊後によく見られたのですが、財産散逸防止や損金処理などのために債権者破産の申立てによって回収を図ることがあります。

日本の場合、破産申立ての際には、その後の管財人による活動など破産費用に充てるために、申立人があらかじめ予納金を納付する必要があります(日本「破産法」第22条第1項)。この予納金、会社の規模などによりますが、裁判所に納付する予納金が100万円以上必要になる場合も多く、債権者とすれば自身の貸付金や売掛金が回収できていないのに、さらに破産会社のために比較的大きなおカネを立て替える形になりますので、これはなかなかハードルが高いです。

一方、中国の場合、債権者側が破産の申立てをするときは、費用をあらかじめ納付する必要がありません。(中国《訴訟費用納付弁法》第20条第2項但書、《「企業破産法」の適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の規定(1)》第8条参照。)
実際には管財人の活動や資産評価のための会計事務所・評価事務所への委託など、さまざまな費用が発生してくるのですが、これらは破産会社の財産(破産財団)から拠出されることになっています。
ですので、中国では日本に比べて、債権者破産の申立てのためのハードルは低いと申し上げてよさそうに思います。

2023年12月11日月曜日

12月第2週:①民法典・契約編通則の司法解釈、②外国法の調査費用、③大気汚染改善

①民法典・契約編通則の司法解釈

民法典の契約編のうち通則部分についての司法解釈が出ました。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/12/id/7681709.shtml
《民法典》の契約編として統合される前の《契約法》に関する司法解釈(一)及び(二)は、民法典の施行(契約法の廃止)に伴って廃止されており、《民法典》の条文に取り込まれた部分以外は空白が生じていたのですが、今回のこの司法解釈でその部分がアップデートされて補われる形になります。
条文数はそれほど多くないのですが、
  • 意向書や備忘録の形式で意向を示しただけで将来の契約締結を約束していないような場合には契約が成立したものとは認めない(第6条)、
  • 政治・経済・軍事など国家安全に悪影響を及ぼす契約、社会の安定を損なう契約、社会の善良な風俗に反する契約などは、法律・行政法規の強制性規定に違反していなくても無効とする(第17条)、
などなど、実際の取引に影響しそうな重要な内容もかなり含まれているようです。
債権譲渡についての規定も大幅に拡充されていますので、細かく読み込んでみる必要がありそうに思っています。

②外国法の調査費用

《渉外民事関係法律適用法》という国際私法のルールに関する法律(日本の「法の適用に関する通則法」、昔の「法例」に相当する法律)の司法解釈(二)が出ました。
https://www.chinacourt.org/law/detail/2023/12/id/150495.shtml
人民法院が外国法を適用しようとするとき、その調査方法はいくつかあるのですが、そのうち一つとして「中国・外国の法律専門家により提供されたもの」があります。このとき、人民法院はその専門家に対して出廷して質問を受けるように通知することができるのですが、現地での出廷が確実な困難な場合はオンラインで質問を受けることもできます。もっとも、単に外国法についての理解を述べるだけで、その他の法廷活動に関与することはできません。
ちなみに、このような外国法の調査のための費用については、「当事者間に約定があれば」その約定に従うものとされています。約定がない場合、裁判所が判決時に合理的負担を定めることができることとされていますので、思わぬ費用負担を生じないように、契約書の準拠法条項には「外国法調査費用は各自負担、裁判所による調査費用は敗訴者負担」など、何らかの約定を追加しておいた方がよさそうです。

③大気汚染改善

国務院から空気品質持続的改善行動計画が公表されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6919000.htm
PM2.5の削減や非化石燃料へのシフトなど、それぞれ具体的な数値目標が示されています。鉄鋼や自動車などの産業分野についての記述もあり、私には技術的な事項はよく分からないのですが、環境関連の事業には影響する部分があるのかもしれません。


2023年12月6日水曜日

弁護士レター(中国語「律师函」)についての再考


弁護士からの「通知書」や「催告書」、「警告書」など、いわゆる弁護士レターが届いた場合、日本と中国ではその取扱いには実務上かなり差があるものと長年にわたって感じてきました。
しかし、最近では、日常業務においてさまざまな案件に接するうち、急速にそのイメージが変わってきているように感じることが多くなってきました。

例として、以下のような2つの事例を挙げます。
(1)当社の競合他社であるA社が、当社の顧客に対して、当社の特許を侵害している製品を販売しようとしている旨の情報を得た。そこで、当社は弁護士に依頼して、A社に対して、侵害を行わないよう警告するレターを送付した。
(2)当社はB社との間で、継続的に製品を供給してきた。数ヶ月前から、B社からの支払が滞るようになってきており、営業担当者が支払を催促しても猶予を求めるばかりで支払おうとしない。

(1)(2)いずれも、日本の場合であれば、弁護士から内容証明郵便で弁護士レターを送付すると、通常、少なくとも黙殺はされず、反論や解決の申出など何らかのフィードバックが得られます。そうして、弁護士を介しての協議が行われ、訴訟に至らず解決できるケースも比較的多いでしょう。これは、今も昔もそう変わらないように思います。日本では弁護士代理が強制されているので(過去の記事はこちら)、訴訟になると被告側も弁護士に応訴対応を依頼せざるを得なくなりますから、その負担を回避するための訴訟前の協議解決が促されるという面が一つあろうかと思います。
一方、中国はといえば、弁護士レターを送っても黙殺されるケースが日本に比べて明らかに多いというのが実感でした。むしろ提訴前にレターを送ることによって相手方に提訴対応のための余裕を与えてしまうなどデメリットもあるので、証拠さえ揃っていれば(つまり訴訟前の協議を通じて証拠を補充していく必要が特になければ)直接に提訴・民事保全をしてしまう、「奇襲攻撃で短期解決を目指す」戦略による方が時間と費用が節約できることが多いというイメージでした。
しかしながら、ここ数年、特に今年に入ってからは、弁護士レターを送付することで相手方が速やかに対応してくれるケースが明らかに目立つようになってきました。上記のA社の事例であれば特許の許諾を求めてくる、B社の事例であればごく近い時期での支払や分割払いの具体的提案をしてくる、そのような迅速な解決につながる回答が得られるようになってきています。

その原因や背景について個人的に思うところは、次のようなものです。
A社のような知的財産権をめぐる事例については、現在では特許法のみならず、商標法、著作権法、さらには不正競争防止法でも懲罰的賠償を認める制度が設けられており、実際に懲罰的賠償を認める事例も見られるようになってきていることがあると思います。弁護士レターの受領によって故意侵害としてこのような懲罰的賠償を求められることになってしまう危険が意識されることで、侵害を自主的に思いとどまってもらうことができるというわけです。これは、当社から見れば(不当な)競合他社を排除して売上が確保できることにつながるので、費用対効果が見えやすく、良い弁護士レターの活用方法であるように思います。
B社のような支払を遅らせる取引先の場合については、いわゆるブラックリストなど信用にかかわる制度の充実が2015年頃から進められてきましたが、この1~2年は、ある裁判所でB社が提訴されたという情報が公表されると、多くの会社から提訴が「殺到」して、数ヶ月のうちに通常の事業継続が困難な程度の信用不安に至ってしまうという現象が見られるようになってきました。これは、訴訟に関する情報の公開が非常に進んだこと、最高人民法院や各地の裁判所の運営するWebサイトでの掲載のみならず、アプリで取引先情報を登録しておけば自動的に危険な情報を察知して配信してもらえるサービスもあるなど、関係するサービスの利用が普及した結果という一面もあろうかと思われます。つまり、「提訴された」という情報そのものが伝播することを避けるために、提訴される前の協議による解決を希望するケースが増えてきており、結果として、弁護士レターがトラブル解決に役立つ割合が増えてきたという理解をしています。

弁護士レターについて、私自身も自らの認識をアップデートして、改めて活用のしかたを考えてみたいと思っているところです。

2023年12月4日月曜日

12月第1週:①中小企業の長期未収債権、②郷村振興と都市再開発の土地政策指南、③男女間でのトラブル

①中小企業の長期未収債権

例年どおり、今年も《中小企業代金支払保障条例》に基づく特別活動が行われています。12月10日まで継続予定とのこと。新法令ではありませんが、もともと年末は長期未収債権の回収に関しては重要なタイミングですので、ここでご紹介しておきます。
各地の市場監督管理局から大型企業向けにサンプリング調査などが行われており、支払遅延の状況などについて隠していた場合には経営異常リストに掲載されて公表されるなどのペナルティがあります。

②郷村振興と都市再開発の土地政策指南

自然資源部弁公庁から、「郷村」、つまり農村の住宅・産業用地などに関する活用のための政策指南が公表されています。
農村に関するものですので直接に事業にかかわることはあまり無さそうですが、建設用地関連の認可や都市計画上の許可、不動産登記その他土地利用に関する各種事項について比較的網羅的に根拠規定を引用しながら説明されていますので、不動産関連の業務を行う際には参考になる部分がありそうに思います。
また、これよりも少し前に、いわゆるスマートシティなど利便性や生活環境を向上させるための都市再開発に関する政策指南も公表されていました。
こちらでも巻末に関連する政策は列挙されていますが、それぞれの説明の箇所ではなく巻末にまとめられていますので、その点は少し体裁が違います。

③男女間でのトラブル

最高人民法院から、家庭内暴力に関する典型事例が発表されていました。第1集と第2集、相次いで発表されています。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/11/id/7657177.shtml
業務上、中国法のかかわる離婚事件を扱う機会もあり、普段から「日本と中国では随分と違うな」と感じているテーマでしたので、少し見てみました。
第1集は婚姻前を含めた男女間での事例など、さまざまな事例が集められています。
恋愛関係の別れ話から暴力・付きまといなどの嫌がらせに発展した事例、夫婦間での感情のもつれから自殺をほのめかしたり職場に押しかけたりする行為のあった事例などが紹介されています。
第2集は未成年者(子女)に関する事例です。未成年の子の連れ去り、虐待防止のための措置などをめぐる事例となっています。
日本の感覚でごく普通に過ごしていても、文化・風習の違いによってセクハラ、パワハラになってしまうこともあります。もちろん、日本の方々だけでなく、中国の方々にも同じことが言えるのではありますが、感情もかかわる微妙な話題ですので、気にしておくに越したことはなかろうと思います。

2023年12月1日金曜日

ドローンに関する国務院令、2024年1月1日から施行です。


今年も師走の時期に入り、そろそろ来年のことを考える時期になってきています。
いつもご紹介している中国の法令・政策の関係でも、来年から規制が変わるもの、いろいろとありますが、あれこれ見ていると、ご紹介が漏れていたものも多々あります。

そのうちの一つ、ドローンに関する国務院と中央軍事委員会の暫定規定が6月28日に出ていたものがありましたので、随分と遅くなってしまいましたが、遅まきながらご紹介しておきます。
https://www.gov.cn/zhengce/zhengceku/202306/content_6888800.htm
民用ドローンには実名登録が必要であること、管制区域では微小型のものを含めて一律にドローン飛行は禁止(許可制)であること、一定の仕様以上のものについては識別情報発信機能が必要であることなどが規定されています。
ドローンの輸出規制の方はニュースでも大きく取り上げられていましたが、こちらは中国国内のことですので、あまり注目されていないかもしれません。
中国に赴任・出張でいらっしゃる日本の方々、最近は《反スパイ法》違反の嫌疑など敏感な時期ですので、不用意にドローンを飛ばして処罰を受けることがないように、中国でドローンを飛ばすには諸々の規制があること、しっかり覚えておき、さまざまな意味で気をつけていただければと思います。



2023年11月30日木曜日

個人の破産制度が無いことで


拙著など含めさまざまな場面でご紹介していることですが、中国には今でも、個人の破産制度がありません。

企業については《企業破産法》があり、この《企業破産法》に基づいて破産清算のほか、和議、重整(日本の会社更生と民事再生に対応)といった再生型の手続も用意されています。企業については、取引先や従業員など多数の利害関係者がいて、地元の税収や雇用にも影響がありますので、債務超過・倒産状態になった企業の破綻処理を行うことは企業自身以外の利益にも適うところがあります。
一方、個人については、中国では個人が自由に事業を行うことはできず、個人事業者(个体工商户)としての登録を受けないと事業ができませんから、企業のように破綻処理の制度を用意する必要性は低そうですし、いわゆるモラルハザードの懸念もあるでしょう。
そのように制度の必要性の面でかなり差があるのかもしれないと推測しています。

実際、深センでは試験的に個人の債務整理の制度が実施されていますが、2021年3月の開始から2023年8月までの2年半ほどの間で中級人民法院での受理件数は2000件余り、そのうち受理されたものは632件という状況であり、深センの人口や経済規模から考えるとそれほど多くはない数字にとどまっている印象です。
(2023年10月11日深セン市人民政府Webサイト掲載記事参照。

このように個人の破産制度が用意されていない結果として、個人はいくら負債があっても整理ができないので、ご家族や友人に代わりに借入や契約をしてもらうことをお考えになるようです。個人的には、これが比較的気楽に他人の名義を借りる現象が多く見られるなど、とても複雑な状況を生み出している一因になっているようにも感じます。

2023年11月27日月曜日

11月第4週:①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置、②銀行業のカントリー・リスク管理、③化学工業園区のリスク評価

①6ヶ国に対して一方的なノービザ入国(査証免除)措置

中国外交部の報道官の定例会見で、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、マレーシアの6ヶ国を対象に商用(中国語「经商」)、旅行、親族訪問、トランジットを対象に「一方的」に15日以内のノービザ入国を認めるとの発表がありました。
日本が対象国に含まれていないことは残念ですが、「一方的」措置、つまりその国が中国との関係でノービザ入国を認めていなくても、ノービザ入国の措置を認めてもらうことができるということで、これであれば日本との関係でもノービザ入国を再開いただけるのでは?という期待もできるように感じています。
人民日報日本語版にも記事が出ていました。(下記URLご参照ください。)

②銀行業のカントリー・リスク管理

国家金融監督管理総局から、銀行業の「国別リスク管理」に関する規定の改正が発布されています。
銀行業については、銀行がカントリー・リスクに対して適切に引当がなされているか監督当局が国別に適切な最低引当額を設定するなどの管理がなされており、今回の改正は13年前に設定されたガイドラインを「弁法」として修正したものです。
銀行が内部・外部のリソースを利用して評価をすることなどが求められています。

③化学工業園区のリスク評価

応急管理部から、化学工業園区のリスク評価に関するガイドラインの改訂が公表されています。
化学工業園区については以前から管理が強化されてきているところですが、今回も全国に640あるとされる化学工業園区について全面的にリスク評価を行って、整理を進めていくとのこと。
省レベルで3年ごとに全面的に安全リスク等級の確認を行い、高リスクと判断された場合には是正期間中は新たなプロジェクトや既存プロジェクトの拡張を禁じることなどが定められています。


2023年11月23日木曜日

宅建試験に合格しました


私ごとですが、令和5年度宅地建物取引士資格試験に合格しまして、その合格証書が届きました。(日本の、です。念のため。)
試験当日、会場では中国語でお話されている方々も見かけましたので、大阪で不動産関係のお仕事にかかわっておられる中国の方々も多いのだなと実感しました。
業務上、不動産にかかわる案件に接する機会も増えてきていますが、まだまだ勉強しなければならないことは多いなと感じることばかりです。今後もさまざまな機会で情報発信に努めていければと思っています。


2023年11月21日火曜日

取締役(董事)の選任方法


合弁会社において、それぞれの出資者・株主が何名の取締役(董事)を派遣できるのかは、合弁会社の経営の在り方を左右するポイントになる事項です。
ところが、この点について、日本と中国では、一部、気づかないうちに逆転が生じそうな部分があります。

日本では、取締役は株主総会の決議により選任されますが、取締役が2人以上いる場合、累積投票、すなわち株主の議決権の比率に応じて取締役が選任される仕組みが原則になっています(日本「会社法」第342条)。条文に「定款に別段の定めがあるときを除き」とあるとおり、これを排除するには定款の定めが必要です。つまり、日本では、例えば出資比率がA社60%:B社40%であり取締役が5名いる場合、通常、A社が3名、B社が2名を取締役として選ぶことができます。

これに対して、中国では、董事は株主会の決議によって選任されることになっており、通常の有限公司の場合、その投票のしかたについては特に定めがありません(中国《会社法》第37条第1項第2号、第43条)。株式有限公司の場合は累積投票制もありますが(中国《会社法》第105条)、なぜか有限公司の場合はこれに対応する規定がありません。
2020年1月1日に《外商投資法》施行に伴って《中外合資経営企業法》が廃止されるまでは、各株主が出資比率に応じて董事を任命派遣(指名)することになっていたので、特に何も意識して定款に規定を置かなくても、結果として日本と同じように、出資比率が董事会メンバーの構成に反映されるようになっていました。
しかし、現在は董事の選任方法について、《会社法》が適用される結果、特に定款で異なる規定を置いていない限りは単純に出資比率で決議されてしまう(上記の例ですと5名全てがA社の意向に沿ったメンバーになる)、そういった事態もあり得る状況になっていますので、特に定款の定めが重要になっています。

逆に、日中双方ともにですが、もし出資比率どおりではなく、より大株主の意向が反映されるようにしたければ、これも定款での規定が必要になります。興味深いことに、インターネットなどで公表されている定款の書式のうちには、日本における「別段の定め」(累積投票としない旨の規定)がデフォルトで入っているものがあります。経営上の意思統一のしやすさに重きを置いているのでしょうか。
この場面に限らずですが、書式を選ぶときにも、場面に適したものを選んでいただければと思います。


2023年11月20日月曜日

11月第3週: ①危険廃棄物管理の変更、②中小企業向け公共サービス、③会計事務所の監査報酬

①危険廃棄物管理の変更

危険廃棄物管理についての新しい通知が生態環境部弁公庁から発布され、2024年1月1日からの変更点もいくつか言及されています。
2024年1月1日から、リスク評価について全国固体廃棄物管理情報システムを通じて行うこと、重点監督管理単位についてはこのシステムで電子ラベルのQRコードを生成取得して電子管理を行うこと、危険廃棄物の移転も同様にこのシステム及びアプリなどを使ってリアルタイムで記録することなどが規定されています。

②中小企業向け公共サービス

工業情報化部から、中小企業向け公共サービスに関する指導意見が出ています。
中小企業向けのサービスについて全国統一ネットワークを構築し、地方レベルでもワンストップでのサービスを提供すること、そこではサービス項目やサービス内容など6項目を公開するなど情報公開を進めることなどが規定されています。研修や職業訓練などサービス人材の面での保障についても言及しています。

③会計事務所の監査報酬

とても当たり前のことだと思うのですが、財政部から、会計事務所の監査費用について、金額と監査結果を関連付けてはならないという通知が出ています。
「上場インセンティブ」として、上場が実現できるか否か、社債発行ができるか否かなどによって、監査費用が増減するような方式があるようですが、このような費用決定方法は禁止とされています。
その他、会計事務所側が違法な報酬を支払おうとする顧客のリスクを慎重に評価しなければならないこと、財政部門が会計事務所の報酬基準の問題を監督検査の重点事項としていることが記載されています。

過去にラッキンコーヒー(luckin coffee、瑞幸咖啡)の粉飾決算事件についてご紹介したこともありましたが、投資にかかわる場面では、監査法人との間の報酬の取り決めのしかたについても見ておく方が良いということかと思います。
【参考】キャストグローバル中国ビジネス2020年4月17日記事
 ラッキンコーヒー(luckin coffee)粉飾決算事件から(無料公開)

2023年11月17日金曜日

連載第4回まで来ました。

東海日中貿易センター様の会報誌で隔月で掲載いただいている連載「中国現法“攻め”と“守り”の組織作り」ですが、第4回まで来ました。

第1回: “攻め”と“守り”両面を見据えた体質改善
第2回: “攻め”(内販強化、新規事業)で直面する課題とその対処法
第3回: “守り”(事業売却・縮小、リストラ、外注化など)で直面する課題とその対処法 
第4回、第5回: 組織作りのポイント~組織・人員(本号、次号で掲載)
第6回: 組織作りのポイント~資産、取引、その他

原稿を書き始めた頃からたった半年あまりで、スパイ容疑での邦人の身柄拘束問題や、不動産業界をはじめとする経済状況の変化、輸出入の制限に関する問題など、随分と景色が変わってしまったなような印象もあります。
書いても書いても足りないようなところもありますが、どのような局面にあっても機敏に対応できるように、何かの参考にしていただけるようでしたら幸いです。




2023年11月13日月曜日

11月第2週: ①外資に対する差別待遇、②入札分野での地方保護・市場分割、③政府と社会資本の合作(PPP)

①外資に対する差別待遇

商務部から、各地方・各部門が発布している政策措置や、事業単位や社会団体が制定している各種措置について、外資企業に対する差別待遇がないか特別整理活動が行われることが公表されています。
例えば、以下のような状況があるとのこと。
・ ある業界で外資企業の行政許可申請について内資企業よりも申請に時間がかかる、求められる資料が多い、審査が厳しい。
・ 新エネルギー車の消費促進政策につき、国内メーカー車を購入・使用した消費者のみに補助を与える。
・ 業種協会の制定した工事プロジェクトの評価で内資1点、合弁0.5点、外資独資0点という評価項目を設ける。
・ 地方での財政補助について国有・民営企業にのみ個別に通知するなどして外資系企業が公平に政策を享受することができていない。
・ 業種協会での登録表示について、明文規定はないが実際の運用においては外資系企業の申請を受理しない扱いとなっている。

②入札分野での地方保護・市場分割

国家中央が全国統一市場の形成を促しているのに対して、地方では入札における信用評価の面で、現地での支店設立有無や社保納付実績などを評価基準に加えることで「形を変えて」参入障壁が設けられている例が見られるということで、国家発展改革委員会から通知が出ています。
https://www.ndrc.gov.cn/xwdt/tzgg/202311/t20231108_1361858.html
ごく短い通知ですが、各地の関係部門とともに全面的な調査を行うこと、入札分野での信用評価の運用におけるモニタリングの強化、「信用中国」Webサイトや全国公共資源取引プラットフォームなどでの公表を行っていくことが規定されています。

③政府と社会資本の合作(PPP)

官民連携(PPP・Public Private Partnership)に関する新しい指導意見が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6914161.htm
受益者負担プロジェクトについて採算性があるかどうかのチェックなどによる地方政府の隠れた負債の防止などについて言及されており、見るべき内容は多そうですが、詳細のご紹介は別の機会に譲りたいと思います。


2023年11月8日水曜日

一般保証(単純保証)と連帯保証


中国では、以前は特に明示がなければ連帯保証と見なされることになっていましたが、2021年の《民法典》の施行後は、連帯保証ではない一般保証と見なされることになりました(《民法典》第686条第2項)。それまでは逆に、どちらなのか不明確な場合は連帯保証とされていました(廃止された《担保法》第19条)。
日本では民法にはそのような条文はありませんが、ビジネスの場面では「商法」第511条第2項の規定によって連帯保証になる場合が多いでしょうし、通常は契約書面上でも連帯保証であることが明記されていることが多いと思われます。

日本では個人根保証契約や事業に係る債務についての保証契約の特則など、保証をめぐるルールが近時改正されましたが、中国では元々、日本のように経営者や代表者が金融機関からの借入にあたって会社の保証人になる習慣がなかったためか、そのような特別のルールは特に無いようです。
それでも会社の債務について返済できない場合は経営者や代表者が会社とともに被告や被執行人になっている例をよく見かけますので、「保証していないから責任がない」というものでもないのですが、日本と中国、それぞれの習慣に応じたルールがありますので、ご留意ください。

2023年11月7日火曜日

11月第1週:①一部の罰金の取消及び調整、②特許法実施細則の改正意見募集、③出入国時の健康申告カード

①一部の罰金の取消及び調整

国務院から、各種法令に定められている行政処罰としての罰金の一部について、取消及び調整の決定が発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202311/content_6913197.htm
内容は表形式になっていて、非経営性インターネット情報サービスの届出番号の下に届出管理システム上のリンクを置かない行為についての罰金を「所定の期限に是正されなかった場合に罰金を科す」という内容に改めるなど、各種の罰金規定について各部門に60日以内に改正作業を求めています。
あまり業務上直接の影響はなさそうですが、ビジネス環境改善の一環として公表されていますので、ご参考までに。

②特許法実施細則の改正意見募集

11月3日の国務院常務会議で、特許法実施細則の意見募集稿の改正が採択されて、今後、全人代常務委員会での審議に供される旨の発表がありました。
https://www.gov.cn/yaowen/liebiao/202311/content_6913486.htm
具体的な内容はまだ公表されていないようですが、特許の申請及び審査に関する制度をさらに改善するとのことです。

③出入国時の健康申告カード

11月1日から出入国時の健康申告カードの記入を不要とする旨の税関総署の公告が出ていました。
空港でQRコードをスキャンしてWeChatのミニプログラムで記入していたので、紙のカードには見覚えがなかったのですが、とにかくまた一つ、出入国が便利になりました。
ただ、発熱、咳、嘔吐、下痢などの症状があるときは自主的に申告して、検査を受けることが求められていますので、その点はご留意ください。



2023年10月31日火曜日

10月第4週:①愛国主義教育法、②未成年者ネットワーク保護条例、③消費者クレーム情報の公開

①愛国主義教育法

日本でもニュースで報道されていますが、「愛国主義教育法」という法律が制定されました。
対象としては全国民ですが、そのうち特に学校や家庭における青少年・児童の教育は特に重視されているようです。また、国家機関の公職者や、企業の従業員、香港・マカオ・台湾の同法、海外の華僑など、それぞれに対して教育活動を行うべきことが規定されています。
歴史文化教育や「一国二制度」、さらには「台湾独立」や分裂に対する対抗などについても言及されています。
日本企業にとっては、抗日戦争勝利記念日や南京大虐殺公祭日などについても規定されているところが注意点となると思います。
(その他、日系企業の方々に気をつけていただきたい日付については、こちらもご覧ください。東海日中貿易センター様の会報誌5月号にもご掲載いただいています。)
山河の観光などにより悠久の歴史や文化に触れることなどにも触れられており、なかなか興味深い内容になっています。

②未成年者ネットワーク保護条例

ネット上における未成年者の保護に関する基本的な法令となるべく、《未成年者ネットワーク保護条例》が制定されました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6911288.htm
内容については、色情的、暴力的なものや、賭博、さらには自傷自殺へ誘引するような情報は禁止されています。具体的な種類や範囲、判断基準、注意喚起表示の方法などは、各関係政府部門により確定されるとのこと。
ネットにはまってしまって正常な学習生活が送れなくなってしまうことの予防や対策についても規定されています。

③消費者クレーム情報の公開

市場監督管理局が受け付けたクレーム情報の公示について、新しい規則が発布されています。
12315プラットフォーム上で原則公開されることになっています。
虚偽や悪意のクレームについては公開されないことになっていますので、初動対応で如何に事実の根拠の有無を確認するかが重要になってきそうです。


2023年10月27日金曜日

賃貸借契約の期間



賃借物件を工場・倉庫として使っているとき、契約期間を30年と定めて借りていたのに、ある日、「法律上は20年が上限です」と言われて立ち退きを求められ、賃料の値上げなどを要求されるケースがあります。

賃貸借の期間については、日本でも中国でも法律上の制限があります。
日本では、民法上は50年が上限となっています(日本「民法」第604条)。以前は20年でしたが、民法が改正されて50年になりました。日本では不動産の賃貸借については借地借家法が適用される場合が多く、土地の賃貸借については下限が30年になっているので(日本「借地借家法」第3条)、民法上の上限よりも借地借家法の下限の方が長くなるという少し不思議な状況でしたが、それは解消されています。
一方、中国では、賃貸借期間の上限は、以前の日本と同じく20年となっています。そして、20年を超える部分は無効とされています。(中国《民法典》第705条)
更新することはできますので、当事者間で改めて契約すればよいだけなのですが、冒頭に述べた事例のとおり、条件が悪化することもあります。

中国では土地は国家・集団所有であり、企業や個人は土地使用権が付与されるに過ぎません(中国《憲法》第10条)。そして、この土地使用権には期限が付されているので、土地使用権と賃借権を混同してしまって勘違いされている例もあります。気をつけてみていただければと思います。




2023年10月23日月曜日

10月第3週:①非銀行金融機構の行政許可事項、②特許の実用化推進、③汚染物排出の自動モニタリングデータ

①非銀行金融機構の行政許可事項

銀行以外の金融機関(リース会社など)に関する行政許可事項の実施弁法が改正されました。
海外の非金融機構が金融資産管理会社の出資者となることを認めるなど、参入条件が若干緩和された部分があるようです。また、出資者の資質審査についての規定を拡充したとのこと。
純資産など財務状況に関する条件も具体的な数字で示されているので、実務上は関係する事業をされている場合は参照する機会がある規定かと思います。

②特許の実用化推進

特許の実用化推進のための特別行動方案(2023~2025年)が国務院弁公庁から発布されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202310/content_6910281.htm
スタートアップへの投資などにつき優先株や転換社債、科学成果とストックオプションによる資本参加、知的財産の証券化などについて言及されています。

③汚染物排出の自動モニタリングデータ

最高人民法院、公安部、生態環境部の3部門共同で、環境関連の汚染物排出の自動モニタリング設備への干渉、データの改ざんなどを行ったことに関する処罰事例を公表しています。
https://www.mee.gov.cn/ywgz/sthjzf/zfzdyxzcf/202310/t20231019_1043534.shtml
「COD除去剤」による汚染の隠蔽など、既に他のところでも見たような事例が紹介されていますが、事案の経過が比較的細かく紹介されているので、環境汚染に関する事案の発覚から処罰の決定までのプロセスについて、参考になるものと思います。