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2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。 下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦くださ...

2024年2月9日金曜日

2月14日の中国会社法改正セミナー:セミナー資料の目次(予定)

中国の会社法改正について、2月14日にオンラインセミナーでお話させていただく予定になっていますので、そのセミナー資料の目次をご紹介します。

下記は現時点で手元に用意してある資料案によるものですが、当日は時間の関係で全部はお話できない可能性がありますので、その点はどうぞご容赦ください。(資料には全部入れておきます。)


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【オンラインセミナー】2024年2月14日(水)
「会社法」改正と合弁契約・定款変更実務


復習: 外商投資法対応
Q1 昔と今とでは、定款に記載すべき事項は違っているのでしょうか。
Q2 古い中外合弁会社の定款を、現行《会社法》に合わせるには、どのような修正が必要なのでしょうか。
Q3 《外商投資法》では、全ての事項について《会社法》に準拠することを求めているのでしょうか。

総論:定款と合弁契約の関係
Q4 中国の会社法のもとで、定款に記載すべき事項にはどのようなものがありますか。
Q5 定款に記載すべき事項は、合弁契約に定めてもよいのでしょうか。
Q6 合弁契約は不要になったのでしょうか。
Q7 合弁契約と定款に不一致がある場合、どちらが優先されるのでしょうか。
Q8 定款において、合弁契約など別途の株主間での合意や契約を参照・引用することは有効でしょうか。それとも、定款においても逐一、合弁契約の内容と同じ内容を定款の条項として記入する必要があるでしょうか。
Q9 合弁契約で定める場合と、定款で定める場合、他にどのような差がありますか。

持分譲渡や出資者変更に関する条項
Q10 会社法改正で、「持分譲渡について他の株主の同意を得る必要がなくなった」と聞きました。当社は、当社の同意なく合弁パートナーが変わると困ってしまうのですが、従来どおり持分譲渡に当社の同意を必要とする旨を規定したい場合、どのように規定すればよいでしょうか。
Q11 《外商投資法》施行に伴って、増資についても全株主の同意なく株主会の3分の2で決議できるようになったと聞いています。増資の決議がなされた場合、反対株主も増資の払い込みをする義務を負いますか。 払込をせず出資比率が低下することを避ける方法はありますか。
Q12 全会一致決議の要求(拒否権の設定)以外に、少数株主の権利を保護するための条項としては、どのようなものが考えられますか。
Q13 支配株主の株主権濫用について、何か定めを置いておくことは必要でしょうか。
Q14 持分の質入(担保設定)については、どのように規定すべきでしょうか。

会社の機関・決議事項に関する条項
Q15 当社はこれまで、全ての事項を董事会での全会一致で決めてきました。今後も同様の運営をしていきたいと希望しています。その場合、どのような対応が必要でしょうか。
Q16 株主会や董事会の決議事項は、今回の改正に応じて変更が必要でしょうか。
Q17 《会社法》所定の株主会の決議事項の一部を、董事会決議事項とすることは可能でしょうか。
Q18 では、逆に、《会社法》所定の董事会の決議事項の一部を、株主会決議事項とすることは可能でしょうか。
Q19 董事の選任については、どのように規定すべきでしょうか。
Q20 総経理についての条項は、何か変える必要があるでしょうか。
Q21 改正法では、小規模な会社では監事を設置しなくてよくなったと聞きました。監事を廃止しても良いのでしょうか。
Q22 現状、当社では2名の監事を置いて、合弁当事者それぞれが1名を任命派遣することになっています。今回の改正で、監事は1名でなければならないことになったと聞きました。定款変更をする必要があるでしょうか。

その他
Q23 日本本社との取引に関して、特に定款に記載しておいた方がよい事項があるでしょうか。
Q24 中国現地法人の董事や監事に就任する際に、従来とは異なる配慮が必要な部分はあるでしょうか。
Q25 解散・清算の場面について、何か従来と異なる定めを置くことは検討すべきでしょうか。
Q26 減資について、特別の定めを置いておくことは必要でしょうか。
Q27 その他に、今回の改正について対応が必要な項目はありますか。


2024年2月7日水曜日

中国《会社法》改正: 少数株主からの持分買取請求のできる場面の拡大

中国《会社法》が改正されましたので、この機会に改めて、いくつかの話題について、備忘を兼ねて書き留めておきたいと思います。


今回の改正《会社法》でも、株主会決議について全会一致決議事項は設けられておらず、従来どおり、定款変更等の重要事項についても3分の2以上の議決権を有していれば決議ができます。
ただ、「落とし穴」として、少数株主からの持分買取請求がありますので、そのような請求を受けないように留意いただきたい旨、以前にご紹介していました。
 (2023年8月31日《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 株主会の全会一致決議事項)

今回の改正《会社法》では、この持分買取請求ができる場面がさらに拡大されて、
「会社の株式支配株主が株主としての権利を濫用し、会社又は他の株主の利益を重大に損なった場合」に、
他の株主から会社に対して持分買取請求ができることが新たに規定されました。

何が「濫用」なのか、何が「重大」なのかは、個別の場面で異なりますので、裁判例などを参照しながら考慮する必要があるわけですが、
文言上はかなり幅広く適用されそうな条文でもありますので、
マジョリティを占めている多数派株主の立場にある場合こそ、意思決定の手続については万全を期していただくようにしていただくのがよさそうです。


2024年2月5日月曜日

1月第5週: ①発票管理弁法実施細則の改正、②不動産登記の利便性向上、③家電・家具の回収体系

①発票管理弁法実施細則の改正

国家税務総局から、発票管理に関する細則規定の改正が発布されています。3月1日から施行です。
・ 電子発票について紙の発票と同様の効力があるのでその受領を断ってはならないこと。
・ 「実際の経営業務状況と一致しない」発票発行は発票の虚偽発行となり犯罪行為となるところ、この行為には取引がない又はあっても内容が異なる場合が含まれること。
・ 電子発票情報システムの開発のための発票データのダウンロード等に関する規制。
など、改正内容は電子発票に関するものが多いようですが、紙の発票に関する規定も補充されています。
発票の虚偽発行については重大な問題に発展しやすいため、この規定も参照する機会は比較的よくありそうです。

②不動産登記の利便性向上

自然資源部など4部門から、不動産登記の利便性を高めることに関する通知が出ています。
http://gi.mnr.gov.cn/202402/t20240201_2836868.html
頻度の高い事項は全過程オンラインでの処理率を高めること、オンラインでの情報照会の改善、企業再編時の手続効率化、商品建物の予告登記の推進などが挙げられています。
死亡証明や親族証明などについて告知承諾制を模索するという記述もあります。

③家電・家具の回収体系

商務部など9部門から、廃棄される家電や家具の回収ネットワークの合理化などに関する通知が出ています。
http://www.mofcom.gov.cn/article/zwgk/gkzcfb/202401/20240103470314.shtml
回収企業のフランチャイズや協議合作等の方式による組織化、回収センターなどによる回収の大規模化・集約化といった項目があり、メーカーや物流企業とつながった回収の仕組みなども挙げられています。新しい業態も出てくるのかもしれません。


2024年1月31日水曜日

中国《会社法》改正: 持分譲渡につき他の株主の同意が不要に 【追記あり】

今回の《会社法》改正では、中外合弁会社の合弁パートナー同士の関係が大きく変わってしまう可能性がある改正項目があります。
それが、持分譲渡につき他の株主の同意を得る必要がなくなるという改正です。(現行法第71条、改正法第84条)

比較的早期から中国に進出している中外合弁会社の場合、法律上、「合弁当事者の一方は、第三者に対しその持分の全部または一部を譲渡する場合には、必ずほかの合弁当事者の同意を経る」ことが求められていましたので(廃止された「中外合資経営企業法実施条例」第20条第1項)、自社が知らない又は同意しないうちに合弁パートナーが変わってしまって見知らぬ会社と合弁事業をしなければならないという事態は起きませんでした。

また、「会社法」では、「(持分譲渡に)同意しない株主は、当該譲渡される出資持分を購入しなければならない。」としつつ、同時に、「会社定款に出資持分の譲渡について別段の定めのある場合には、当該定めに従う。」としていましたので、定款に定めを置いておくことで、同じように、自社の同意なく合弁パートナーが変わってしまうという事態を避けることができました。

それが今や、同意を求められることもなく、単に優先購入権を行使するかどうかの選択ができるだけになろうというのですから、変化は相当大きいと思います。

今回の改正でも、「会社定款に出資持分の譲渡について別段の定めのある場合には、当該定めに従う。」との条文はそのまま残っています。ですので、今回の改正にもかかわらず、従来どおり持分譲渡について他の株主の同意を要するという約定をすることは可能です。但し、それは定款で定めておく必要があります。

日本でいう株式譲渡制限のある会社ということですが、日本でも、譲渡を承認しない場合には、会社自身がその株式を買い取るか、その株式の買受人を誰か指定しなければならないことになっています。
ですので、「譲渡に同意しないならば買い取れ」というのは別に酷な話というわけでもなく、実は、日本とあまり変わりありません。
ただ、出資している合弁会社が買い取るのか、株主自身が買い取るのかでは、株主自身がキャッシュを出さなければならないかが違いますので、株主自身が買取を求められるという点では、少しだけ酷ではあります。
「会社に買い取らせる」という選択肢はあり得ますが、中国の一般の有限公司は自社株買いを基本的に認めませんので(少数株主による持分買取請求権行使の場面のみ明文規定があります)、できるのはできるのですが少し難度は高くなります。

ですので、この点については、できる限り、定款に何らかの約定を置くことで対策を講じておかれることをお勧めします。
この定款に定める内容としては、共同売却(Tag-along)の約定を置くこともできます。また、優先買取権は特に約定せずとも法律上ありますので、その優先買取権の行使のための前提条件の部分で、買受意向者に関する情報を開示させ、買受意向者との間で協議を行って同意するかどうかを決定する、そのようなプロセスを定款で定めておくことも一案でしょう。
さまざまな方法が考えられるかとは思いますが、どの方法であれ定款での定めが必要になる場合が多いと思われますので、定款変更の際には是非忘れずに検討ください。


【2/15追記】
 私自身、セミナーでお話をしているうちに改めて強く意識したのですが、「30日」という非常に短い期間のうちに、合弁パートナーが入れ替わるという重要事項について判断するのは極めて難しいと思われます。
 せめて、この「30日」を3ヶ月や6ヶ月といった現実的に判断が可能な期間に改めておくことは、定款で考慮すべき一つの重要な記載事項になるのではないでしょうか。

2024年1月29日月曜日

1月第4週: ①経営者集中申告(企業結合届出)の基準改訂、②档案法実施条例、③製造業の「中試」

①経営者集中申告(企業結合届出)の基準改訂

M&Aや新合弁会社設立に関して、中国《反独占法》(日本の独禁法に相当)に基づき届出を行う必要があるかどうかを定める基準が改訂され、1月22日に公布されました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202401/content_6928387.htm
公布と同日に施行となっています。

これまで:
 経営者集中にかかわる当事者の
 1-1: 全世界における前年度の営業額(売上高)合計が100億元超、又は
 1-2: 中国国内における同合計が20億元超
  且つ、
 2: うち2名の当事者の前年度の中国国内の営業額がいずれも4億元超
今後:
 上記の各金額について、それぞれ、
  1-1: 100億元→120億元超、
  1-2: 20億元→40億元超、
  2: 4億元→8億元超
 に変更されています。

2022年6月に意見募集が出ていて、同年8月1日の改正《反独占法》施行に合わせて発布されるかと思っていたのですが、
それがようやく正式発布に至ったということになります。

②档案法実施条例

「档案」について新しい規定が出ていました。従来の《档案法実施弁法》を廃止して、新たにこの条例となったようです。
政府機関における档案の管理に関する内容であり、档案関連業務の職責や収集管理、保管制度などについて規定されています。デジタル化に対応した規定もあります。

③製造業の「中試」

工業情報化部と国家発展改革委員会から、製造業の「中試」、すなわち量産段階に至る前の試作段階での小規模・過渡的な試験について、その能力を高めるための実施意見が出ています。
https://www.gov.cn/govweb/zhengce/zhengceku/202401/content_6927680.htm
デジタル化、ネットワーク化、スマート化、ハイエンド化といった各面からの措置が挙げられており、検査・測定機器やソフトウェアについても改善していくことで、ボトルネック解消を図っていくとされています。


2024年1月26日金曜日

中国《会社法》改正: 競業行為や利益相反取引と刑事処罰(《刑法》改正)

中国《会社法》が改正されましたので、この機会に改めて、いくつかの話題について、備忘を兼ねて書き留めておきたいと思います。


今回の中国《会社法》改正と合わせて、同時期に、中国《刑法》も改正されています。
経営陣や幹部従業員による競業行為や利益相反取引については、今回の《会社法》改正によって規定がより具体的になり、規制される範囲も広がっているのですが、それに加えて、さらに、《刑法》でも競業行為や利益相反取引についての処罰規定が改正されて、競業行為や利益相反取引について刑事処罰の対象になることがより明確になりました。

競業行為(改正《刑法》第165条):
① 企業の董事、監事又は高級管理者であること。
② 職務上の便宜を利用し、その任職する会社又は企業と同類の営業を自ら経営し、又は他人のため経営すること。
③ ②によって不法な利益を取得し、金額が巨額であること。
④ ②の行為が、法律又は行政法規の規定に違反していること。
⑤ 会社又は企業の利益に重大な損害を受けさせたこと。
→ ④について、《会社法》など関連する法令の条文を参照することになります。
 ですので、《会社法》の改正内容とともに見ていただく必要があるものと考えています。

利益相反取引(改正《刑法》第166条):
① 企業の董事、監事又は高級管理者であること。
② 職務上の便宜を利用し、次のいずれかの行為をすること。
 1) 会社の業務を自己又は親族・知人に引き渡す。
 2) 市場価格から明らかに乖離する価格で自己又は親族・知人の会社と取引する。
 3) 自己又は親族・知人の会社から不合格品を購入すること。
③ ②の行為が、法律又は行政法規の規定に違反していること。
④ 会社又は企業の利益に重大な損害を受けさせたこと。
→ ③について、同じく、《会社法》などの条文を参照することになります。


日本の「刑法」でも、横領や背任については具体的場面が列挙されているわけではなく、具体的には裁判例などを参照しているのですが、それに比べると、中国の方が法律でこのように列挙してくれているので分かりやすい部分があるようにも思います。

2024年1月24日水曜日

中国《会社法》改正: 株主会決議事項を、董事会決議事項に変更できるか?

中国《会社法》が改正されましたので、この機会に改めて、いくつかの話題について、備忘を兼ねて書き留めておきたいと思います。


株主会決議事項と董事会決議事項については、以前にも少しご説明しましたが
 (2023年8月23日《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 株主会と董事会)
「株主会と董事会をそれぞれ招集・開催するのが面倒なので、どちらかに一本化したい」
そのような御要望はよく聞きます。

このとき、なんでも全て株主会で決議したらどうか?という点については以前に書いたとおりですが、
では逆に、全て董事会に委ねることにして、
定款に「株主会決議事項を全て董事会に授権する」と書くことは認められるでしょうか。

この点、改正《会社法》は第59条第2項として、「社債の発行」について董事会に授権してよい旨の条文を新たに追加しました。
逆に言うと、この第59条第2項に列挙された事由のうち、社債発行以外については、董事会に授権することを許す規定がありません。
このことからすると、社債発行以外の事項は、株主会は董事会に委ねてはいけないという趣旨であると解されます。

ですので、やはり、面倒ではありますが、株主会は株主会、董事会は董事会、それぞれ招集・開催する方がよさそうです。

なお、今回の改正《会社法》では、いずれの会議についても、特に定款に定めがなくても電子通信方式でよいことも明文化されました(改正法第24条)。
ですので、2つの会議を開催するとしても、比較的手軽に開催いただけるものと思います。
ご参考までにて。


2024年1月23日火曜日

1月第3週:①生産安全事故罰金処罰規定、②手続のワンストップ・一括処理、③業界団体に関する反独占ガイドライン

①生産安全事故罰金処罰規定

生産安全事故(工場での人身事故、火災など)についての罰金処罰に関する規定が改正されました。
http://mem.gov.cn/gk/zfxxgkpt/fdzdgknr/202401/t20240115_475152.shtml
2021年に改正された《安全生産法》を受けての改正とのことで、どのような事故のときにどのような処罰を行うのか、比較的細かく基準が定められています。
例えば、事故発生時に主たる責任者が政府機関への報告を怠ると、前年の年収の40~60%の罰金が科されます。重大な悪影響が生じた場合などは60~80%となっています。前年の年収が不明な場合は現地の平均賃金の5~10倍で計算されます。
会社に対する罰金はもちろん、その他の責任者や安全管理人員についての処罰についての規定もありますので、事故が起きたときには参照ください。

②手続のワンストップ・一括処理

国務院から各種の手続について窓口を統一して一件の事項については一つの申請をすれば足りるように便利にするということで、新しい指導意見が出ています。
後ろには重要事項リストというのが付いていまして、企業については、会社の破産情報や登記抹消や、物流業や飲食業に関する手続などが挙げられています。

③業界団体に関する反独占ガイドライン

業界団体に関する反独占ガイドラインが出ています。
従来から業界団体の価格行為に関するガイドラインはあったのですが、今回は価格面に限らず市場分割などの問題についても言及しています。現場の方々は業界団体の活動に参加する機会も多いかと思われますので、社内教育などに活用いただいては如何でしょうか。


2024年1月17日水曜日

《外商投資法》施行による《会社法》準拠対応: 董事会への代理出席

日本では、取締役会に取締役が出席できないとき、他の者に代理で出席してもらうことはできません。一般的にそのように理解されています。
一方で、中国の董事会については、従来の中外合弁企業の場合には、明文で、代理出席が認められていました。
つまり、《外商投資法》施行後5年の過渡期における《会社法》対応が未了で、いまだに株主会がなく董事会だけがある会社の場合にあっては、代理出席が法律上明文で可能です。
これは、従来の中外合弁企業は所有と経営の分離が未分化の状態にあって、株主に対する董事の義務履行という意識が希薄だったことが背景と思われます。

これに対して、《会社法》の適用される会社では、困ったことに、董事会での代理出席を認める明文規定がありません。
つまり、《外商投資法》に対応する定款変更済みで、株主総会が設置された中外合弁会社の場合には、董事会における代理出席ができるかどうか明文規定がなくなってしまうという困った事態になっています。

ただ、株式有限公司の場合の条文としては、原則として董事本人の出席が必要としつつも、「事情により出席することができない場合には、書面により【他の董事に】委託して代理出席させることができる」とする規定があります。
このことから、株式有限公司ではない一般の有限公司の場合であっても、董事会の議事規則(現行《会社法》第48条第1項)として【定款により】代理出席を認めることは問題なく、一般の中外合弁会社については従来から上記のように代理出席が認められていた背景もありますので、定款自治の範囲において、【定款に定めがあれば】代理出席を可とするものと理解されているようです。

ということで、この部分では、定款に定めがあるかどうかが実務上、意外に重要になります。

中外合弁会社の過去の定款を踏襲すれば、通常、代理出席の条文も入っているはずなのですが、部分的に《会社法》に基づく定款の書式を参照するなど、うっかり定款に記載するのを忘れてしまうと困ったことになります。
改正《会社法》においては、新たに、董事会会議の開催には董事の過半数の出席を要する旨の規定が追加されましたので(改正《会社法》第73条第2項)、代理出席ができないと会議が開催できないという不都合も起きかねません。
定款変更を検討される際には、ぜひご留意ください。


2024年1月15日月曜日

1月第1~2週:①データ資産管理、②「美麗中国」(美しい中国)、③外国籍人員の訪中便利化

①データ資産管理

財政部からデータ資産管理の強化に関する指導意見が出ました。
いわゆる「データ三法」(この呼び方は中国ではしないようですが。)に基づき制定されたとのことで、データをデジタル経済発展のための重要な戦略資源と位置づけ、データの収集・生成・保存・管理の全過程での権益保護を求めています。
2022年末頃の中共中央・国務院意見でも提唱されていたことですが、「原始データは外に出さず、データは利活用はできるが見ることはできない」形式でデータ資産の運用を進めること、データ資産について「投入・貢献・受益」の対応を原則としてデータに関する収益分配メカニズムを改善することなどが記載されています。
データ資産の資本化及び証券化についても言及されていますが、仲介機構の支援を得てその潜在リスクについて制御することも求められています。

②「美麗中国」(美しい中国)

中共中央・国務院から、生態環境向上のための新しい意見が出ています。
https://www.gov.cn/zhengce/202401/content_6925405.htm
18億ムー(約1.2億ha)の耕地を最低線として、長期・安定利用できる耕地をこれ以上は減らさないとのことです。日本の耕地面積は432万ha(昭和30年代で600万ha)ほどだそうですから、20~30倍の耕地があるようで、農業関連市場のすそ野は広そうです。
2027年までに新エネルギー自動車の比率を45%まで高める(古い内燃機関の自動車は基本的に淘汰)、大気中の微細顆粒物質濃度を2027年までに28μg/㎥、2035年までに25μg/㎥まで下げて大気を刷新して青空にする、といった目標が掲げられています。

③外国籍人員の訪中便利化

外国人の訪中について、5つの便利化措置が発表されました。
国外でのビザ申請手続が間に合わない場合の中国の空港や港でビザ申請や、北京首都空港などでのトランジット時の24時間ビザ免除、短期滞在者の中国国内でのビザ更新、反復して入国する場合の再入国ビザ、他の情報で確認可能な場合に紙の資料の提出を省略とっいった細かい内容に見えますが、少しずつ緩和されてはいるようです。

2024年1月9日火曜日

2023年12月第5週: ①会社法改正、②刑法改正、③企業の抹消に関するガイドライン、④その他

※ これまでは記事を書いた月の週をタイトルにしていましたが、法令が出た時期とずれてしまって誤解が生じやすかったですので、今回から、法令が出た時期を書くように改めます。

①会社法改正

12月29日、会社法の改正が可決・公布に至りました。
12月第4週のブログ記事でも書いていたとおり、珍しく第四次審議稿まで審議が長引いていましたので、ようやくの成立となります。
第三次審議稿と見比べると、まず最後の第266条(施行時期)の条文に第2項が追加されて、出資の払込期限(第47条、第228条)について既存の会社も新法に合わせるよう「徐々に調整」することとなっている点が目につきます。
これ以外には既存の会社についての記述はないので、他の部分は、既存の会社にあっては現行法のままで良いのか、今後の関連法令を待つことになります。
「解散」「破産」について事前に労働組合や従業員代表の意見聴取をしなければならないことが追加で明記されたこと(第17条第3項)も、実務的には、上場会社の場合の適時開示規制とどう整合させるか、悩ましいことになりそうです。
その他、第三次審議稿と比べて、条文の順番が入れ替わって条文番号が変更になっている箇所や、文言の変更・調整が行われた箇所があるようですが、詳細は私自身も比較しきれていませんので、おって寄稿など別の機会にご紹介したいと思います。

②刑法改正

同じく12月29日、刑法の改正も公布されました。
腐敗(社内での不正)及び贈賄についての7つの条文が改正されたもので、親族・知人の会社との取引を通じて所属企業の利益を損なう行為などにつき、従来は国有企業のみに適用されていたいくつかの条文が民間企業にも適用されることになります。
従来から他の条文でカバーされる場合が多かったものの、より適用しやすい条文が活用できることになり、社内での不正行為の抑止に寄与することが期待できます。
贈賄に関する条文の改正と合わせて、不正な資金の流れを絶ってコンプライアンス上の問題に巻き込まれることを予防するために活用できればと考えています。

③企業の抹消に関するガイドライン

市場監督管理総局・税関総署・国家税務総局から、企業の抹消に関するガイドラインが公表されました。2021年版からの改訂となります。
注目すべき点として、株主が音信不通になってしまった場合や、株主が既に死亡してしまっている場合、営業許可証や公印を紛失してしまった場合など、各種の手続困難についての指針を示しているので、今後、清算すべき状況にあるのに清算手続ができていない出資先の処理などに活用できるように思われます。

④その他

年末でしたので、その他、糧食安全保障法、慈善法、加工貿易発展のための10部門意見、速配市場管理弁法など多数の法令が出ていましたが、多忙ゆえご紹介できないこと、ご容赦ください。
来週以降、もし目立った法令等なければ、思い出して改めてご紹介したく。

それでは、本年もどうぞよろしくお願いいたします。


2024年1月4日木曜日

会社法の改正が成立・公布されました。7月1日施行です。

中国の会社法、改正されました。7月1日から施行になります。

第三次審議稿までは追いかけて、SMBCチャイナマンスリーにも拙稿を掲載いただき、ブログでもときどき触れていました。
(SMBCチャイナマンスリーの原稿は、こちらをご覧ください。)

12月下旬に第四次審議稿で様々な指摘や修正があったようなので、詳細は後日に改めて。
これまでの審議の経過も、まとめて全人代Webサイトに掲載されています。
http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c12435/


【1月5日追記情報】
新しい会社法の邦訳(日本語訳)を、キャストグローバルのWebサイトに期間限定で掲載してもらっています。
PDFでダウンロードできるようになっていますので、この機会にどうぞ社内の中国関連業務にかかわる皆様一緒にご覧になってください。




2023年12月27日水曜日

12月第4週:①会社法改正の第4次審議(途中)、②特許法実施細則の改正成立、③人体器官提供及び移植条例、④来週休載

①会社法改正の第4次審議(途中)

全人代のWebサイトを見ていましたら、会社法改正について、第4次審議稿の審議に入ったとの記事がありました。
http://www.npc.gov.cn/npc/c2/c30834/202312/t20231226_433775.html
第3次改正草案で終わりかと思っていたのですが、またいくつかの点で修正があるようです。
出資者の出資責任の強化、払込未了持分の失権制度、さらに解散清算の検討段階での従業員の意見聴取、といった内容が列挙されています。
詳細は全文を見てから分析しようと思います。

②特許法実施細則の改正成立

少し前にご紹介していた、特許法実施細則の改正が成立に至りました。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6921633.htm
まず最初に目に入ってくるのは、電子申請に関する規定が拡充されている部分です。
また、2020年の改正特許法で導入された「開放許諾」の制度について、公告すべき事項などが明確化されました。
その他、国際出願に関する優先権など手続に関する規定もあるようです。

③人体器官提供及び移植条例

国務院から臓器提供と移植に関する行政法規が出ています。
2007年に既に《人体器官移植条例》という法令があったようなのですが、今回は「臓器提供」の部分についての重要性を強調するということで、臓器提供は自発的・無償を原則にすることや、生体移植は配偶者や近親者への移植に限ること、近親者が死後臓器提供をしたことがある人は移植手術において優先されることなどが規定されています。
移植に関する医療技術の向上を求めている部分もありますので、これに用いられる技術や器具等については、今後、需要が増してくるのかもしれません。

④来週休載

来週はお正月休みのため休載いたします。あしからずご容赦ください。
2024年は中国建国75周年だそうです。良い年になることを期待したいと思います。

2023年12月22日金曜日

租税法律主義

日本では、税金の賦課・徴収の根拠は全て国会が制定する法律によって定めることが求められています。これを「租税法律主義」と言います。これは憲法にも明文で定められている原則です。
日本「憲法」
第八十四条〔課税の要件〕 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

中国でも同じく、税金の賦課・徴収の根拠は法律によって定めることを求める条文はあるのですが、憲法ではなく、《立法法》という別の法律で規定されています。
中国《立法法》
第11条  次に掲げる事項については、法律のみを制定することができる。
(六)税目の設定、税率の確定及び租税徴収管理等の租税基本制度

ただ、中国の税収の大きな割合を占める増値税については、《増値税法》という法律が未だ成立しておらず、国務院が定めた行政法規に過ぎない《増値税暫定施行条例》によって課税されているという現状でもあります。
年内とは限らないものの比較的短期の間に成立が見込まれていたので(5月の記事)、そろそろかもしれないのですが、税収に影響があるので景気を見ながらなのかもしれません。

2023年12月19日火曜日

12月第3週:①上場会社の内部統制評価、②政府調達の透明性、③独禁法違反の警告書

①上場会社の内部統制評価

上場会社及び上場予定の会社の内部統制についての内部統制評価及び監査の強化に関する通知が財政部と証監会から出ています。
中国ではここ数年、証券法改正など上場会社に対する管理を厳しくしてきています。今年も会計事務所企業自身の会計監査等の管理強化が求められてきていました。
今回は、内部統制の有効性向上のために、企業自身が内部統制評価を行い、会計事務所による監査を受けることが求められています。
取引先や合弁パートナーの側で、このような内部統制との関係でさまざまな制約を受ける場面がありますので、留意ください。

②政府調達の透明性

財政部関係でもう一つ、政府調達の関係で透明性を高めるための通知が出ています。
http://gks.mof.gov.cn/guizhangzhidu/202312/t20231214_3922192.htm
入札で落札が決まった後にこっそり契約条件を変更してしまう例があるようで、そのような行為を禁じることや、全過程において電子プラットフォームでの取引実施を推進することなどが挙げられています。

③独禁法違反の警告書

反独占・反不正競争委員会と市場監督管理総局から、《反独占法》違反に関する「三書一函」(3つの書面と1つのレター)についての通知が出ました。
これら書面のうち、一番最初の段階のものは「注意喚起・督促レター」(提醒敦促函)という書面です。この書面は早期に予防及び是正の目的で発行されるもので、これを受け取った企業は直ちに状況報告とともに是正措置をとる必要がありそうです。

2023年12月15日金曜日

債権者による破産申立てのハードル



中国企業相手のビジネスに関する業務に携わっておりますと、売掛金のある取引先が事実上倒産状態にあるのに一向に破産などの法的手続に入ってくれない、差押など法的措置によって債権回収をしようにも既に多数の差押があって回収の見込みがない、という場面がよくあります。
こういう場面で、日本でもバブル崩壊後によく見られたのですが、財産散逸防止や損金処理などのために債権者破産の申立てによって回収を図ることがあります。

日本の場合、破産申立ての際には、その後の管財人による活動など破産費用に充てるために、申立人があらかじめ予納金を納付する必要があります(日本「破産法」第22条第1項)。この予納金、会社の規模などによりますが、裁判所に納付する予納金が100万円以上必要になる場合も多く、債権者とすれば自身の貸付金や売掛金が回収できていないのに、さらに破産会社のために比較的大きなおカネを立て替える形になりますので、これはなかなかハードルが高いです。

一方、中国の場合、債権者側が破産の申立てをするときは、費用をあらかじめ納付する必要がありません。(中国《訴訟費用納付弁法》第20条第2項但書、《「企業破産法」の適用に係る若干の問題に関する最高人民法院の規定(1)》第8条参照。)
実際には管財人の活動や資産評価のための会計事務所・評価事務所への委託など、さまざまな費用が発生してくるのですが、これらは破産会社の財産(破産財団)から拠出されることになっています。
ですので、中国では日本に比べて、債権者破産の申立てのためのハードルは低いと申し上げてよさそうに思います。

2023年12月11日月曜日

12月第2週:①民法典・契約編通則の司法解釈、②外国法の調査費用、③大気汚染改善

①民法典・契約編通則の司法解釈

民法典の契約編のうち通則部分についての司法解釈が出ました。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/12/id/7681709.shtml
《民法典》の契約編として統合される前の《契約法》に関する司法解釈(一)及び(二)は、民法典の施行(契約法の廃止)に伴って廃止されており、《民法典》の条文に取り込まれた部分以外は空白が生じていたのですが、今回のこの司法解釈でその部分がアップデートされて補われる形になります。
条文数はそれほど多くないのですが、
  • 意向書や備忘録の形式で意向を示しただけで将来の契約締結を約束していないような場合には契約が成立したものとは認めない(第6条)、
  • 政治・経済・軍事など国家安全に悪影響を及ぼす契約、社会の安定を損なう契約、社会の善良な風俗に反する契約などは、法律・行政法規の強制性規定に違反していなくても無効とする(第17条)、
などなど、実際の取引に影響しそうな重要な内容もかなり含まれているようです。
債権譲渡についての規定も大幅に拡充されていますので、細かく読み込んでみる必要がありそうに思っています。

②外国法の調査費用

《渉外民事関係法律適用法》という国際私法のルールに関する法律(日本の「法の適用に関する通則法」、昔の「法例」に相当する法律)の司法解釈(二)が出ました。
https://www.chinacourt.org/law/detail/2023/12/id/150495.shtml
人民法院が外国法を適用しようとするとき、その調査方法はいくつかあるのですが、そのうち一つとして「中国・外国の法律専門家により提供されたもの」があります。このとき、人民法院はその専門家に対して出廷して質問を受けるように通知することができるのですが、現地での出廷が確実な困難な場合はオンラインで質問を受けることもできます。もっとも、単に外国法についての理解を述べるだけで、その他の法廷活動に関与することはできません。
ちなみに、このような外国法の調査のための費用については、「当事者間に約定があれば」その約定に従うものとされています。約定がない場合、裁判所が判決時に合理的負担を定めることができることとされていますので、思わぬ費用負担を生じないように、契約書の準拠法条項には「外国法調査費用は各自負担、裁判所による調査費用は敗訴者負担」など、何らかの約定を追加しておいた方がよさそうです。

③大気汚染改善

国務院から空気品質持続的改善行動計画が公表されています。
https://www.gov.cn/zhengce/content/202312/content_6919000.htm
PM2.5の削減や非化石燃料へのシフトなど、それぞれ具体的な数値目標が示されています。鉄鋼や自動車などの産業分野についての記述もあり、私には技術的な事項はよく分からないのですが、環境関連の事業には影響する部分があるのかもしれません。


2023年12月6日水曜日

弁護士レター(中国語「律师函」)についての再考


弁護士からの「通知書」や「催告書」、「警告書」など、いわゆる弁護士レターが届いた場合、日本と中国ではその取扱いには実務上かなり差があるものと長年にわたって感じてきました。
しかし、最近では、日常業務においてさまざまな案件に接するうち、急速にそのイメージが変わってきているように感じることが多くなってきました。

例として、以下のような2つの事例を挙げます。
(1)当社の競合他社であるA社が、当社の顧客に対して、当社の特許を侵害している製品を販売しようとしている旨の情報を得た。そこで、当社は弁護士に依頼して、A社に対して、侵害を行わないよう警告するレターを送付した。
(2)当社はB社との間で、継続的に製品を供給してきた。数ヶ月前から、B社からの支払が滞るようになってきており、営業担当者が支払を催促しても猶予を求めるばかりで支払おうとしない。

(1)(2)いずれも、日本の場合であれば、弁護士から内容証明郵便で弁護士レターを送付すると、通常、少なくとも黙殺はされず、反論や解決の申出など何らかのフィードバックが得られます。そうして、弁護士を介しての協議が行われ、訴訟に至らず解決できるケースも比較的多いでしょう。これは、今も昔もそう変わらないように思います。日本では弁護士代理が強制されているので(過去の記事はこちら)、訴訟になると被告側も弁護士に応訴対応を依頼せざるを得なくなりますから、その負担を回避するための訴訟前の協議解決が促されるという面が一つあろうかと思います。
一方、中国はといえば、弁護士レターを送っても黙殺されるケースが日本に比べて明らかに多いというのが実感でした。むしろ提訴前にレターを送ることによって相手方に提訴対応のための余裕を与えてしまうなどデメリットもあるので、証拠さえ揃っていれば(つまり訴訟前の協議を通じて証拠を補充していく必要が特になければ)直接に提訴・民事保全をしてしまう、「奇襲攻撃で短期解決を目指す」戦略による方が時間と費用が節約できることが多いというイメージでした。
しかしながら、ここ数年、特に今年に入ってからは、弁護士レターを送付することで相手方が速やかに対応してくれるケースが明らかに目立つようになってきました。上記のA社の事例であれば特許の許諾を求めてくる、B社の事例であればごく近い時期での支払や分割払いの具体的提案をしてくる、そのような迅速な解決につながる回答が得られるようになってきています。

その原因や背景について個人的に思うところは、次のようなものです。
A社のような知的財産権をめぐる事例については、現在では特許法のみならず、商標法、著作権法、さらには不正競争防止法でも懲罰的賠償を認める制度が設けられており、実際に懲罰的賠償を認める事例も見られるようになってきていることがあると思います。弁護士レターの受領によって故意侵害としてこのような懲罰的賠償を求められることになってしまう危険が意識されることで、侵害を自主的に思いとどまってもらうことができるというわけです。これは、当社から見れば(不当な)競合他社を排除して売上が確保できることにつながるので、費用対効果が見えやすく、良い弁護士レターの活用方法であるように思います。
B社のような支払を遅らせる取引先の場合については、いわゆるブラックリストなど信用にかかわる制度の充実が2015年頃から進められてきましたが、この1~2年は、ある裁判所でB社が提訴されたという情報が公表されると、多くの会社から提訴が「殺到」して、数ヶ月のうちに通常の事業継続が困難な程度の信用不安に至ってしまうという現象が見られるようになってきました。これは、訴訟に関する情報の公開が非常に進んだこと、最高人民法院や各地の裁判所の運営するWebサイトでの掲載のみならず、アプリで取引先情報を登録しておけば自動的に危険な情報を察知して配信してもらえるサービスもあるなど、関係するサービスの利用が普及した結果という一面もあろうかと思われます。つまり、「提訴された」という情報そのものが伝播することを避けるために、提訴される前の協議による解決を希望するケースが増えてきており、結果として、弁護士レターがトラブル解決に役立つ割合が増えてきたという理解をしています。

弁護士レターについて、私自身も自らの認識をアップデートして、改めて活用のしかたを考えてみたいと思っているところです。

2023年12月4日月曜日

12月第1週:①中小企業の長期未収債権、②郷村振興と都市再開発の土地政策指南、③男女間でのトラブル

①中小企業の長期未収債権

例年どおり、今年も《中小企業代金支払保障条例》に基づく特別活動が行われています。12月10日まで継続予定とのこと。新法令ではありませんが、もともと年末は長期未収債権の回収に関しては重要なタイミングですので、ここでご紹介しておきます。
各地の市場監督管理局から大型企業向けにサンプリング調査などが行われており、支払遅延の状況などについて隠していた場合には経営異常リストに掲載されて公表されるなどのペナルティがあります。

②郷村振興と都市再開発の土地政策指南

自然資源部弁公庁から、「郷村」、つまり農村の住宅・産業用地などに関する活用のための政策指南が公表されています。
農村に関するものですので直接に事業にかかわることはあまり無さそうですが、建設用地関連の認可や都市計画上の許可、不動産登記その他土地利用に関する各種事項について比較的網羅的に根拠規定を引用しながら説明されていますので、不動産関連の業務を行う際には参考になる部分がありそうに思います。
また、これよりも少し前に、いわゆるスマートシティなど利便性や生活環境を向上させるための都市再開発に関する政策指南も公表されていました。
こちらでも巻末に関連する政策は列挙されていますが、それぞれの説明の箇所ではなく巻末にまとめられていますので、その点は少し体裁が違います。

③男女間でのトラブル

最高人民法院から、家庭内暴力に関する典型事例が発表されていました。第1集と第2集、相次いで発表されています。
https://www.chinacourt.org/article/detail/2023/11/id/7657177.shtml
業務上、中国法のかかわる離婚事件を扱う機会もあり、普段から「日本と中国では随分と違うな」と感じているテーマでしたので、少し見てみました。
第1集は婚姻前を含めた男女間での事例など、さまざまな事例が集められています。
恋愛関係の別れ話から暴力・付きまといなどの嫌がらせに発展した事例、夫婦間での感情のもつれから自殺をほのめかしたり職場に押しかけたりする行為のあった事例などが紹介されています。
第2集は未成年者(子女)に関する事例です。未成年の子の連れ去り、虐待防止のための措置などをめぐる事例となっています。
日本の感覚でごく普通に過ごしていても、文化・風習の違いによってセクハラ、パワハラになってしまうこともあります。もちろん、日本の方々だけでなく、中国の方々にも同じことが言えるのではありますが、感情もかかわる微妙な話題ですので、気にしておくに越したことはなかろうと思います。